医院名:近江清秀公認会計士税理士事務所 
住所:〒651-0087 兵庫県神戸市中央区御幸通8丁目1-6神戸国際会館17階 
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相続税、節税に役立つブログ

2024.03.16

遺産分割協議が成立しない場合の相続税の申告書

遺産分割協議が成立しない場合

【質問】

相続税の申告書は、相続開始の日から10ヶ月以内に税務署に提出

しますが、その際に遺産分割協議が成立していない場合もあります。

その場合の相続税の申告書は、どのような申告になりますか?

複数の税理士が申告する場合もあります

【回答】

(1)複数の税理士が・・・

遺産分割がもめてまったくまとまらない場合に

すべての相続人が個別に税理士と契約して相続税の

申告書を作成することもありえます。

相続税の申告書を作成するために必要な情報を

すべての相続人が同じ情報を入手できません

そのため、被相続人が同じであっても

相続税の申告書に記載の財産と債務が完全に一致しない場合が

あります

 

(2)納税資金を確保するために

遺産分割がもめてまったくまもらなくても

申告期限=納税期限であることに変わりありません

相続人全員が自己資産から納税資金を賄うことができる場合は

問題ありませんが、そうでない場合が問題となります

納税資金を確保するために、相続財産に含まれる

金融財産の一部だけでも先に遺産分割をまとめる必要があります

 

(3)相続税をすこしでも少なくするために

遺産分割協議が成立していなければ適用できない特例があります

たとえば、小規模宅地の特例は対象となる土地の

遺産分割協議が成立していなければ適用できません。

もちろん、いったん未分割で申告書を提出し

遺産分割協議が成立後に小規模宅地の特例を適用して

更正の請求を税務署に提出することもできます

 

相続税の申告書類作成業務は、相続税の申告期限までに

遺産分割協議が成立して、なおかつ納税資金を確保しておく必要があります

もちろん、遺産分割協議は相続人間あるいは弁護士を交えて

行うため税理士は関与できません。

しかし、税理士は

未分割の場合にはどのような申告書を提出することになるのか

あるいは、未分割か否かによって税負担にどれだけの差が発生するのか

という、お客様の税金に対する疑問に臨機応変に対応する必要があります

相続税の申告業務と相続税対策は

相続税専門の税理士に相談することを勧めます

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近江清秀公認会計士税理士事務所

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2024.03.10

換価分割って・・・?

相続財産が不動産だけ・・・どうやってわけるの?

相続財産のうち、不動産の占める比率が高く

相続人全員で納得できる分割ができない場合など

換価分割という方法があります

換価分割とは???

換価分割とは、例えば・・・

相続財産が評価額3000万円の土地だけで

法定相続人が3人の場合に、土地の所有権を1/3づつ

登記する方法もありますが

全員が、土地よりもお金が欲しい場合もあります

そんな場合、土地を換金して分ける方法が

換価分割です。つまり、土地を換金してそのお金を

分けるという方法です

具体的な方法

一般的に換価分割の場合、不動産売却手続きを簡単にするために

登記簿上の相続人の名義は、相続人のうち代表者1名だけとします

その後、相続財産の不動産を相続人代表が売却して

売却代金を、他の相続人に分配する方法が、換価分割の

具体的な流れになります

留意事項

換価分割は、不動産比率が高く

現金で相続を希望する場合に多く活用される

遺産分割方法ですが、税務上留意すべきポイントが

一つだけあります

それは、遺産分割協議書に

換価分割する旨を明記する必要があるということです

その記載がないと、資金の流れだけを見ると

親族間の贈与と誤解されるリスクがあります

 

相続税の申告業務は、神戸・芦屋・西宮で

相続専門税理士として24年営業を続けている

私の事務所にお任せください

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2024.03.02

相続税の申告書に添付する印鑑証明書の入手日について

遺産分割協議書と印鑑証明書を税務署に提出する理由

遺言書が作成されている場合以外は

相続税の申告書には、遺産分割協議書と印鑑証明書を

添付する必要があります

 

相続税額の計算に当たって適用される特例には

いくつか種類がありますが

小規模宅地の特例などは、遺産分割の内容によって

摘要の可否が判定されます

 

そのため、相続税の申告書には必ず遺産分割協議書と

印鑑証明書を添付する必要があります

提出する書類の入手日付

お客様から、相続税の申告書に添付する印鑑証明書の入手日について

お問い合わせをいただくことがありますが、

税務署に提出する書類は、相続開始の日以降であれば

いつでもOKです。これは、印鑑証明書だけではなくて

戸籍・住民票などの書類も同様です

効率のいい遺産収集

印鑑証明書は、最終的に土地の名義変更や

預金の解約などで必要になります

ですから、相続開始直後に印鑑証明書を

入手する必要はありません。

むしろ遺産分割協議が成立する頃に

入手すれば、不動産の名義変更や預金の

解約手続きを済ませた後で

印鑑証明書を税務署に提出することができます

 

相続税の申告業務・遺産収集業務は

効率よく作業を進めないと相続人の皆さんに大きな

ストレスが負担になります

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2024.02.17

停止条件付遺贈

[相談]

私には孫がおり、この子が社会に出るまで見届けたいとは思いますが

年齢を考慮するとあまり現実的ではありません。

せめて遺産を学費として使ってもらいたいと思っているのですが

私が死亡した際の相続人に孫は該当しない場合

どうしたら孫にお金を遺せるでしょうか。

私としては学びに使ってほしいという思いがあるので

将来孫に進学の意思がないのであれば、本来の相続人間で分けてほしいと考えています。

[回答]

まず、相続人に該当しない方へ遺産を分けることは「遺贈」にあたりますので

遺言を書いておく必要があります。

遺言がない場合は、法定相続人の共有財産となるため

お孫様へ渡すことはできません(民法第964条、第898条①)。

遺贈にはいくつか種類がありますが

今回のケースであれば遺言に停止条件を設けることにより

相談者様のご意向に添えるのではないかと思います(いわゆる停止条件付遺贈)。

[解説]

①停止条件とは

将来発生することが不確実な事実や内容について

それらが成就したときに法律上の効果が発生する条件のことをいいます。(民法第127条①)

②①を付けた遺言の効力

民法第985条②には、「停止条件を付した場合において

その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は

条件が成就した時からその効力を生ずる」とあります。

例えば、「孫が大学生になったら、●円を遺贈する」と記しておくと

遺言の効力発生時にお孫様が大学へ進学されている場合

指定した額を遺贈することが可能です。

なお、お孫様が進学されない事が確定した場合は、遺贈の効力は生じず

停止条件付に係る財産(●円)は相続人へ帰属するため

この点でもご意向どおりとなります(民法第995条)。

条件を設ける際の注意点として、「生活に困っていたら」や

「幸せなら」といったあいまいな表現は

解釈をめぐるトラブルを引き起こしかねないため、配慮が必要です。

どのような条件を付けるか、トラブルの元にならないような遺言作成のためにも

専門家に相談するとよいでしょう。

2024.02.02

居住用賃貸建物に係る資本的支出の取扱い

[相談]

消費税法上の居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限の規定について

居住用賃貸建物について資本的支出を行った場合の取扱いを教えてください。

[回答]

消費税法上、居住用賃貸建物に係る資本的支出に係る消費税については

原則として、仕入税額控除の規定は適用されないこととされています。

詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の制限の規定の概要

消費税法上、仕入れに係る消費税額の控除の規定は

事業者が国内において行う一定の住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物

(その附属設備を含みます)以外の建物(居住用賃貸建物といいます)

に係る課税仕入れ等の税額については適用しないと定められています。

2.居住用賃貸建物に係る資本的支出の取扱い

上記1.の居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限の規定における

居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額には、その建物に係る資本的支出

(※1)に係る課税仕入れ等の税額が含まれることとされています。

したがって、居住用賃貸建物に係る資本的支出に係る消費税については

原則として、仕入税額控除の規定は適用されないこととなります。

ただし、建物に係る資本的支出自体が居住用賃貸建物の

課税仕入れ等に該当しない場合には

上記1.の規定は適用されないこととされています。

具体的には、以下に掲げる場合が該当することとされています。

  1. ① 建物に係る資本的支出自体が、高額特定資産を取得した場合等の
  2.     納税義務の免除の特例に規定する高額特定資産(※2)
  3.    の仕入れ等を行った場合に該当しない場合
  4. ② 建物に係る資本的支出自体が、住宅の貸付けの用に供しないことが
  5.    明らかな建物に係る課税仕入れ等に該当する場合
  1. ※1 資本的支出とは、事業の用に供されている資産の修理
  2. 改良等のために支出した金額のうち、その資産の価値を高め
  3. またはその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額をいいます。
  4. ※2 高額特定資産とは、棚卸資産および調整対象固定資産
  5. (対象資産)のうち、その価額が高額なものとして一定のものをいいます。

 

2024.01.28

何が延長される? 事業承継税制

[相談]

息子である専務の社長就任にあわせて

私が所有している会社(非上場)の株式を贈与しようと思います。

「事業承継税制」を利用すればこの贈与に係る贈与税が免除されるようですが

事前の計画の提出が2024年3月31日までと聞きました。

今から作成して間に合うか、正直自信はありません。

そのような中、先日

令和6年度税制改正大綱が公表されて事業承継税制に関する延長措置が

出たことを知りましたが、何が延長されるのでしょうか?

[回答]

令和6年度税制改正大綱において

事業承継税制について事前に提出する計画の提出期限が2年延長される

措置が記載されています。

[詳細解説]

1.事業承継税制とは

事業承継税制とは

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(いわゆる「円滑化法」)」

に基づく認定を受け、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について

贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度をいいます。

事業承継税制は、大きく、非上場会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と

個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」に分かれます。

ご相談のケースは、非上場会社の株式ですから、法人版事業承継税制を指します。

法人版事業承継税制には、以下2つの措置があり、現行における主な相違点は、下表のとおりです。

 

●現行における特例措置と一般措置の主な相違点

出典:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・

免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和5年6月)」

2.令和6年度税制改正大綱

令和6年度税制改正大綱(以下、大綱)において

法人版事業承継税制に関する延長措置として

「特例承継計画の提出期限を2年延長する」旨が記載されています。

これは、上記1.の2024年3月31日までとしている期限を

2年後の2026年3月31日までとすることを指します。

なお、今回のご相談には関係ありませんが

個人版事業承継税制についても同様の改正案が記載されています。

3.留意点

上記2.のとおり改正されますと

事前の計画策定や提出に猶予期間が設けられることとなるため

ご相談のケースにおいても十分提出は可能かと思われます。

ただし

適用期限は今回の延長措置に含まれていない点に、ご留意ください。

なお、今般のご相談は特例措置の適用を前提としていますが

一般措置であれば事前の計画の提出も不要で、適用期限もありません。

ただし、特例措置と一般措置では適用要件等が異なる部分もあるため

どちらの措置を適用するかは両者をよく比較検討されるとよいでしょう。

<参考>
国税庁HP「事業承継税制特集
自由民主党・公明党「令和6年度税制改正大綱」

2024.01.21

相続の放棄と相続税の計算

[相談]

私には長男、長女、次女、三女の4人の子がいます。夫は15年前に亡くなり

その際に跡継ぎである長男がほとんどの財産を相続しました。

その長男が、先日亡くなりました。長男は独身で子供もおりません。

私が相続人になるといわれましたが私も年老いていますので

今更財産を相続するのもどうかと思っております。

相続人が多ければ多いほど相続税は安くなると聞いています。

私が相続を放棄すると他の子供たちが相続することになりますが

子供たちが相続した方が相続税は少なくなりますか?(長男の財産は1億3,600万円です。)

[回答]

ご相談者様が相続を放棄されたとしても

その放棄がなかったものとして相続税を計算しますので

相続税は少なくなりません。

[詳細解説]

1.相続の順位
相続に関するルールは、「民法」という法律に定められており
お亡くなりになった方(以下、被相続人)の財産を相続する方には
優先順位があります。
まず優先的に相続できるのは、配偶者と子供(子供が先に亡くなっている場合には孫)です。
子供や孫がいない場合には、配偶者と両親や祖父母、子供(孫)も両親(祖父母)
もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続することとなります。
両親はいるけれど「相続を放棄する」場合には
相続人は次の順位に繰り越され、被相続人の財産は兄弟姉妹が相続することとなります。
つまりご相談の場合には、ご相談者様であるお母様が相続を放棄することによって
ご長男の財産は他のお子様3人が相続することとなります。
2.相続税の計算

上記1.のとおり相続は民法に従うことになりますが相続税の計算は

相続税法に従って計算を行います。

相続税法は「課税」を目的とした法律ですので

人によって課税が不公平になることのないように

同じ相続に関するルールでも一部、民法とは異なる特別なルールが設けられています。

例えば、ご相談のようにお母様が相続を放棄したために

相続人が次の順位の方(兄弟姉妹)に移行した場合にも

この特別ルールが適用されます。

●相続の放棄があった場合の相続税法の特別ルール

法定相続人の数放棄がなかったものとした場合の法定相続人の数
法定相続分放棄がなかったものとした場合の法定相続人の各法定相続分

 これら法定相続人の数や法定相続分は、相続税の計算過程において

 基礎控除や生命保険の非課税金額、相続税の総額の計算などで使用します。

2024.01.13

遺産分割調停における相続税の立替

[相談]

 

数年前に私の妻が亡くなったことから

法定相続人である妻の兄弟と遺産分割協議を行う必要が生じ

この相続人らとの遺産分割協議を試みました。

しかし、協議がまとまらなかったため

現在は家庭裁判所において遺産分割調停手続を行っています。

法定相続分に則り私が大半の相続財産を取得する予定だったので

本調停手続に先立ち、手続の最後に清算をすることを約束した上で

私が全員分の相続税を立て替えて納付しています。

この際、相続人全員から了承も取っていました。

その後、調停手続が進んでいく間に次第に当初の相続人が亡くなり

当初の相続人のそのまた相続人が本調停手続の当事者となっていきました。

しかし、新しく相続人になった者の多くは

相続税の立替払いについて自身で約束したものではないから清算には応じないと主張してきています。

本調停手続あるいはその後の審判にて

私の立て替えた相続税については清算してもらえないのでしょうか。

[回答]

遺産分割調停手続はあくまでも相続財産の分割について協議する手続になりますので

相続財産に含まれない相続税の立替金の問題は

本来調停手続での協議の対象には含まれません。

したがって、調停手続の当事者同士で納得していれば

相続税の清算について取り決めることは可能ですが

反対する者がいる場合においてこの者を含めて清算の取り決めを行うことはできません。

仮に立替金の清算を求めるのであれば

本調停手続とは別に訴訟等の債権回収手段をとる必要があります

(きちんと立替時の資料を保管していれば請求自体は認められるものとは考えますが

納付した金額自体が少ない場合には時間面・費用面のコストを踏まえて

回収に乗り出すかどうか自体を検討しなければならない事案もあります。)。

また、本調停手続において質問者様から当該相手方に代償金を支払う

内容での協議が成立しているのであれば

上記代償金の支払債務との間で相殺を行うことも考えられます。

本件では質問者様は良かれと思い相続税を立て替えたものと思われますが

調停手続や審判の場では共同相続人と対立することもありますので

上記のような状況は往々にして起こり得ます。

そのため、対立が見込まれる相続においては

相続税の納付に関しましても各相続人にて行ってもらう方向で

進めた方がトラブルの回避のためには望ましいといえます。

2023.12.23

生前贈与加算の対象者

[相談]

被相続人Aは、相続開始の年の前年以前から相続開始の年まで数年間連続して

孫Cに暦年課税贈与(各年120万円)を行っていました。

この被相続人Aから今回の相続において財産を取得したのは

Aの子であるB(Cの親)のみなのですが、この場合、孫Cについて

相続税法上の生前贈与加算の規定の適用はあるのでしょうか。教えてください。

[回答]

今回のご相談の場合、孫Cについては

相続税法上の生前贈与加算の規定の適用はないこととなります。

詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

相続税法上、相続又は遺贈により財産を取得した者が

その相続の開始前3年以内(※1)にその相続に係る被相続人から

贈与により財産を取得したことがある場合においては

その者については、原則として

その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額(※2)を

相続税の課税価格とみなして算出した金額(※3)をもって

その納付すべき相続税額とすると定められています(生前贈与加算)。

 

今回のご相談の場合

孫Cは被相続人Aからの相続により財産を取得していないことから

ご相談の孫Cへ行われた暦年課税贈与について

生前贈与加算の規定の適用はないこととなります(※4)。

なお、孫Cが相続開始の年に被相続人Aから受けた暦年課税贈与については

通常どおり、贈与税が課税されることとなりますので

念のためご留意ください。

  1. ※1 「その相続の開始前3年以内」とは
  2.          その相続の開始の日からさかのぼって3年目の応当日から
  3.          その相続の開始の日までの間をいうこととされています。
  4.          なお、令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後に贈与により
  5.          取得する財産に係る相続税については、その相続の開始前7年以内となります。
  6. ※2 相続税の課税価格に加算される財産の価額は
  7.         その財産に係る贈与の時における価額によることとされています。
  8. ※3 その贈与により取得した財産の取得につき課せられた贈与税があるときは
  9.        その金額からその財産に係る贈与税の税額として
  10.        一定の方法により計算した金額を控除した金額となります。
  11. ※4 孫Cが、被相続人Aを特定贈与者とする相続時精算課税適用者である場合には
  12.        孫Cが被相続人Aから相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合であっても
  13.        生前贈与加算の規定が適用されます。

[参考]
相法19、相基通19-1、19-2、19-3、国税庁「令和6年1月1日施行

令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」など

2023.12.16

相続によるインボイス発行事業者の引継ぎ

[相談]

父は、2023年10月下旬に死亡しました。

相続人は母と私の2人で、父が所有していたテナントビルは

相続により私が取得します。

父は適格請求書発行事業者(以下、インボイス発行事業者)として

テナント入居者に対してインボイスを発行していたようです。

私はサラリーマンで、インボイス発行事業者ではありません。

このような場合、父のインボイス発行事業者の登録の効力を相続により引継ぐことはできますか?

[回答]

インボイス発行事業者の登録の効力を、相続により引継ぐことはできません。

ご相談者様がインボイスを発行したい場合には

ご自身の名前でインボイス発行事業者の登録を行う必要があります。

[詳細]

1.インボイス発行事業者

2023年10月1日より、消費税の計算上、仕入税額控除を適用するには

原則としてインボイスの保存が必要となりました。

このインボイスは、インボイス発行事業者でなければ発行できません。

そのため、インボイス発行事業者の登録を受ける必要があります。

ただし、消費税の課税事業者でなければ登録申請をすることはできません。

さらにインボイス発行事業者である間は、免税事業者となることはできず

課税事業者のままです。

つまりインボイスを発行する間は、消費税の申告納税義務が発生することとなります。

2.インボイス発行事業者に相続が発生した場合

インボイス発行事業者が個人の場合で

当該個人が死亡したことにより相続が発生したときは

まずその相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があります。

また、次のいずれか早い日にインボイス発行事業者の登録の効力が失われます。

  1.   ・届出書の提出日の翌日
  2.   ・インボイス発行事業者の死亡日の翌日から4月を経過した日

3.インボイス発行事業者でない者が相続により事業を承継した場合

今回のケースのように、相続により事業を承継した相続人が

インボイス発行事業者でない場合において、インボイス発行事業者の登録を受けるためには

登録申請の手続を行う必要が生じます。

この場合、次のいずれか早い日までの期間は

 相続人をインボイス発行事業者とみなす措置が設けられています。

  1.   ・相続によりインボイス発行事業者の事業を継承した相続人の相続のあった日
  2.    の翌日から、その相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日
  3.   ・インボイス発行事業者の死亡日の翌日から4月を経過した日

この措置が適用されている期間は登録は有効で

その登録番号は相続人の登録番号とみなすこととされます。

そのため、途切れることなくインボイスを発行し続けるには

遅くとも死亡日から4ヶ月以内に相続人自身が登録を受ける必要があります。

なお、インボイス発行事業者である間は、必ず消費税の申告納税義務が生じます。

消費税の申告納税の計算にはいくつか種類があるため

どの計算方法が最も税負担が軽減できるか試算する必要があり

場合によっては届出等を行う必要も生じます。

参考:
国税庁HP「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A

2023.12.08

インボイス制度/相続により個人事業を承継した場合のインボイス登録の取扱い

[相談]

令和5年11月5日に、私の父が他界しました。

生前の父は個人事業(消費税課税売上高は1,500万円程度で

インボイス発行事業者の登録を受けていました)を営んでおり

その個人事業は私が引き継ぎ、私は消費税課税事業者となったのですが

本日(令和5年11月30日)時点で、私はまだインボイス登録事業者の申請を行っていません

(なお、私は父の事業を引き継ぐ前は給与所得者でした)。

このため、私は令和5年12月中にインボイス発行事業者の登録申請を行う予定なのですが

このような場合、私がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間

私が父から引き継いだ個人事業について

個人事業の取引先にインボイスを交付できるのでしょうか。教えてください。

[回答]

ご相談の場合、みなし登録期間という制度が設けられており

そのみなし登録期間中は、ご相談者様は適格請求書(インボイス)発行事業者とみなされ

また、そのみなし登録期間中は、亡くなられたお父様の適格請求書

(インボイス)発行事業者の登録番号がご相談者様の登録番号とみなされますので

ご相談者様がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は

お父様のインボイス登録番号をもって

取引先にインボイスを交付することが可能となります。

[解説]

1.相続があった場合の消費税の納税義務の免除の特例の概要

消費税法では、その年において相続があった場合において

その年の基準期間(※1)における課税売上高が1,000万円以下である相続人

(※2、※3)が、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える

被相続人の事業を承継したとき(※4)は

その相続人のその相続のあった日の翌日からその年12月31日までの間

における消費税の納税義務は免除されない、と定められています。

  1. ※1 基準期間とは、個人事業者についてはその年の前々年をいいます。
  2. ※2 相続人からは、消費税課税事業者選択届出書の提出等により
  3.        消費税を納める義務が免除されない相続人が除かれます。
  4. ※3 相続人には、相続のあった日において現に事業を行っている相続人で
  5.        その相続のあった日の属する年の基準期間における課税売上高が
  6.        1,000万円以下である相続人だけでなく、相続があった日の属する年の
  7.        基準期間において事業を行っていない相続人も該当することとされています。
  8. ※4 「被相続人の事業を承継したとき」とは、相続により被相続人の行っていた
  9.        事業の全部又は一部を継続して行うため財産の全部又は一部を
  10.        承継した場合をいうこととされています。

2.インボイス発行事業者が死亡した場合の取扱い

消費税法上、相続により適格請求書(インボイス)発行事業者の

事業を承継した相続人(適格請求書発行事業者を除きます)がいる場合には

その相続のあった日の翌日から、その相続人が適格請求書発行事業者の登録を

受けた日の前日又はその相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日

の翌日から4ヶ月を経過する日のいずれか早い日までの期間(みなし登録期間)

については、その相続人を適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者とみなす

と定められています(※5)。

また、この場合において、上記のみなし登録期間中は

被相続人の適格請求書発行事業者に係る登録番号をその相続人の登録番号

とみなすと定められています。

したがって、今回のご相談の場合

ご相談者様がインボイス発行事業者の登録を受けるまでの間は

お父様のインボイス登録番号をもって

取引先にインボイスを交付することが可能となります。

  1. ※5 なお、相続人が
  2. 上記のみなし登録期間後も引き続き格請求書発行事業者の登録を受けるためには
  3. 相続人がすでに適格請求書発行事業者の登録を受けていた場合を除き
  4. 適格請求書発行事業者登録申請書の提出が必要となります。

 

2023.12.01

市街化区域内の農地の売却

[相談]

亡父が生前に畑として利用していた市街化区域内の土地を相続しました。

今後、誰もこの土地を利用する予定がないため、私の代で売却することを検討しています。

周辺は農地の多い地域ですが、近ごろでは戸建住宅が点在するようになりました。

この土地を住宅用地として第三者へ売却することは可能でしょうか。

また売却が可能な場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

なお、水路は使用していませんが

親の代から土地改良区に毎年賦課金を支払っています。

[回答]

市街化区域内の農地であることから

土地改良区への地区除外申請手続きを行うとともに

農業委員会に対して農地転用の届出を行うことで

住宅用地として第三者への売却が可能となります。

[詳細解説]

1.土地改良区とは
土地改良区とは、土地改良法に基づいて地域の農業関係者で組織され

農業用施設(水路、農道)等の整備(新設・更新)

農地の区画整理等の土地改良事業(維持管理も含みます)を行う団体をいいます。

土地改良区が設立されると、その地域内の農業関係者全員が土地改良区の組合員とされ

当該組合員には、土地改良事業費の一部を賄うための賦課金の支払い義務が発生します。

すでに農地として耕作しなくなり

農業用施設を利用しなくなった場合でも賦課金は徴収されます。

2.必要な手続き

(1)土地改良区への地区除外申請手続き
売買による権利の移動を理由として

土地改良区への地区除外申請手続きを行う場合

土地改良法により決済金の支払いが義務付けられます。

土地改良事業費は借入金や賦課金等でも賄われており

農地が転用で除外されれば

これら費用の一部を残りの組合員で負担していくことになります

そのため

今後の負担を少しでも軽減させるために農地転用する面積に応じて決済金が請求されます。

決済金は土地改良区によって設定されますが

100~200円/㎡が目安といわれています。

管轄の土地改良区で決済金が確認できますので

それ以外にかかる費用の有無も含め事前にお問い合せされることをお勧めします。

(2)農業委員会に対する農地転用の届出

農地転用とは

農地を住宅や駐車場等の農業以外の目的に転用することをいいます。

市街化区域内の農地で転用と合わせ売買による権利の移動を行う場合

農業委員会に対して農地法第5条の届出が必要となります。

届出は、譲受人(買主)・譲渡人(売主)によって行いますが

行政書士による代行も認められています。

土地改良区への地区除外申請や農業委員会への農地転用の届出には

準備する書類も多岐にわたり時間と労力を費やします。

売却の検討をした段階で

行政書士等の専門家に相談されるとよいでしょう。

2023.11.12

代償分割が行われた場合における配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用可否

[相談]

甲株式会社の前社長(父)が死亡し、その妻(A)と長男(B)の2名が

その遺産を相続することになりました。

AとBによる遺産分割協議は相続税の申告期限までに整い、その結果

亡父の遺産である甲株式会社の株式(相続税評価額3億円)は長男(B)が

そのすべてを相続することとなりましたが、代わりに、B はAに対し

その2分の1相当である1億5,000万円を現金で渡しています(代償分割)。

今回のように代償分割が行われた場合であっても、Aについて

相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減の規定を適用することはできるのでしょうか。

[回答]

 ご相談の場合、配偶者に対する相続税額の軽減の規定は適用可能と考えられます。

[解説]

1.代償分割とは

代償分割とは、共同相続人又は包括受遺者のうち1人又は数人が

相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し

その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務

(代償債務)を負担する分割の方法をいいます。

このとき、代償財産の交付を受けた人(今回のご相談の場合は、B)の相続税の課税価格は

原則として、相続または遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた

代償財産の価額の合計額となり、代償財産の交付をした者(今回のご相談の場合は、A)

の相続税の課税価格は、原則として、相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から

交付をした代償財産の価額を控除した金額となります。

2.相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減制度の概要

相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減とは

被相続人の配偶者がその被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には

その配偶者が取得した財産については、①1億6,000万円と②配偶者の法定相続分相当額の

どちらか多い金額までは、原則として、配偶者に相続税はかからないという制度です。

ただし、相続税の申告期限までに「分割」されていない財産は

原則として、この税額軽減制度の対象にはなりません。

上記の「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により

取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい

その分割の方法が現物分割、代償分割もしくは換価分割であるか

またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問わないこととされています。

したがって、今回のご相談における代償分割された財産は

配偶者に対する相続税額の規定の適用要件における「分割された財産」に該当し

その財産は、配偶者に対する相続税額の軽減制度の対象となります。

[参考]
 相法11の2、19の2、相基通11の2-9、19の2-7、19の2-8など

2023.10.27

相続する財産より引き継ぐ債務の方が多い場合

[相談]

父が経営している会社を数年前に私が引き継ぎ

現在は父が会長で、私が社長になっています。

父は会社から5億円の資金を借り入れ

不動産投資(賃貸ビルの投資)をしています。

この不動産も会社経営に影響することから、父が亡くなったときには

会社からの借金とともにこの不動産を相続する予定です。

現状、不動産の財産評価額として、賃貸ビルが5,000万円

賃貸ビルの敷地部分は2億円となります。

 

他方、借金の残高は4億円あると聞いています。

今、父の相続が開始した場合、2.5億円(5,000万円+2億円)の財産に対して

借金4億円を相続することとなり、引き継ぐ債務の方が多くなります。このようなとき

他の相続人の相続財産から引ききれない債務1.5億円(4億円-2.5億円)を控除することができるのでしょうか?

[回答]

ご相談のような相続した財産よりも引き継ぐ債務の方が大きい場合

他の相続人の相続財産から引ききれない債務を控除することはできません。

[詳細]

1.納付すべき相続税額の計算
納付すべき相続税額の計算は、まず課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き

その差額(課税遺産総額)に対して、法定相続人ごとに法定相続分に従って

取得したものとして“相続税の総額”を計算します。

この相続税の総額を実際に取得した人ごとに割り振り、納付すべき相続税額を計算します。

2.課税価格の計算

 上記1.の計算において、まず課税価格の合計額を計算することになりますが

「課税価格の合計額」とは、相続又は遺贈などにより財産を取得した人ごと

計算した課税価格の合計額を指します。

課税価格は、各人ごとに以下の算式により計算します。

相続又は遺贈により取得した財産の価額 + みなし相続等により取得した財産の価額

ー 非課税財産の価額 + 相続時精算課税に係る贈与財産の価額 ー 債務及び葬式費用の額

= 純資産価額(赤字のときは0)

 

純資産価額 + 生前贈与加算 = 課税価格(1,000円未満切捨て)

 上記のとおり、各人ごとに課税価格を計算する過程において

純資産価額の計算時に赤字(マイナス)となった場合には「0」となることから

マイナス部分を他の相続人の相続財産から差し引くことはできません。

 ご相談の場合、相続財産から引ききれない債務1.5億円は

純資産価額の計算において0円となりますので

他の相続人の相続財産から差し引くことはできません。

また、仮にご相談者様が生前贈与加算を活用して生前贈与を実行したとしても

相続財産から引ききれない債務1.5億円を生前贈与加算分と相殺することもできませんので、ご注意ください。

2023.10.21

改正後の相続時精算課税制度/災害による被害が発生した場合

[相談]

相続時精算課税制度の使い勝手が良くなったと聞いて、活用を検討しています。

ただ、何十年も前の贈与について、相続時に加算することを考えると二の足を踏んでいます。

たとえば相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた建物について

受贈者が所有している間に災害により被害が発生した場合でも

贈与時の価額を相続時に加算しなければならないのでしょうか?

[回答]

確かにご懸念のとおり

何十年前の贈与であっても相続時精算課税制度を適用した場合には

贈与時の価額を相続時に加算する必要が生じます。

ただし、災害による被害については、令和5年度税制改正により

一定の控除が受けられる改正がされています。

[詳細]

1.相続時精算課税制度とは

 相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において

自ら選択することで適用することができる制度です。

一度選択した後は、暦年課税を選択することはできません。

 また、贈与者が亡くなった場合には

相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)の

合計額を相続財産として、相続等により取得した他の財産と合算して

相続税を計算した上で、すでに納めた贈与税額がある場合には

相続税額から控除して相続税額を算出します。

その際、控除しきれない贈与税額があるときは

相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

2.令和5年度税制改正

 令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度が見直されました。

ご相談の内容ですと、以下の改正が該当します。


相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が

当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に

災害によって一定の被害を受けた場合には

当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は

当該贈与の時における価額から当該価額のうち

当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする


 この改正は、令和6年(2024年)1月1日以後に生ずる災害により

被害を受ける場合について適用されます。

 つまり、令和5年(2023年)12月31日以前の贈与であっても

適用対象となる点に注意しましょう。

3.ご相談の内容について

 ご相談は、相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた建物について

受贈者が所有している間に災害により被害が発生した場合でも

贈与時の価額を相続時に加算するのか、になります。

 この点は上記2.にあるとおり、一定の被害を受けた場合には

贈与時の価額からその災害による被災価額を控除することができます。

 この場合の“一定の被害”とは、その建物の想定価額(※1)のうちに

その建物の被災価額(※2)の占める割合が10%以上となる被害をいいます。

  1. ※1 想定価額…その建物の災害発生日における一定の算式により求めた価額
  2. ※2 被災価額…被害額から保険金などにより補塡される金額を差し引いた金額(建物の想定価額が限度)

 なお、この控除を適用するには、別途手続が必要となります。

   この他、災害減免法による贈与税の軽減等の適用との重複適用はできないなど

   適用に関しては留意点があります。

2023.10.14

誤りやすい事例/未分割であった相続財産から生じた不動産所得

大阪国税局が作成した「個人課税関係 令和4年版 誤りやすい事例 所得税法」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、準確定申告で実務上間違いが多い事例の紹介です

誤った取扱い

未分割の相続財産から生ずる不動産所得について、法定相続分で申告したが

後日、法定相続分と異なる遺産分割が行われた場合は

相続時に遡及して是正しなければならないとした。

正しい取扱い

未分割の相続財産(不動産)から生ずる収入は、遺産とは別個のものであって

法定相続人各人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであるから

その帰属につき、事後の遺産分割の影響を受けることはない(最高裁平17.9.8判決)。

なお

遺産分割確定日以後の不動産収入についてはその遺産分割による相続分

により申告することとなる。

2023.10.06

相続人不明の場合の対処

[相談]

95歳の祖母が他界しました。戸籍を調べたところ

祖母には1歳で養子となり転籍した妹がいることが分かりました。

存命であれば90歳になりますが、転籍先の戸籍も存在せず

市役所より証明書(行政証明を発行できないことの理由書)を受領しました。

法務局にて法定相続情報一覧図の作成を試みましたが

相続人不明につき受付ができないとの返答でした。

この場合、どのように対処したらよいでしょうか?

[回答]

件につきましては、失踪宣告の申立てあるいは

不在者財産管理人の選任による対応を採らざるを得ないと考えます。

なお、失踪宣告の申立てにあたっては

通常、失踪者の最後の住所が判明する資料(戸籍の附票、住民票等)が必要になりますが

本件ではその提出が困難であることから

上記の市役所から受領した証明書を添付の上、家庭裁判所に対して

失踪宣告申立書に住所不定である理由(これ以上の調査が不可能である点も含めて)

を丁寧に説明する必要があると思われます。

説明を通じ家庭裁判所の理解を求めることで

失踪宣告が認められる可能性はあると考えます。

2023.09.29

いつまで適用できますか?/空き家の3,000万円特別控除

[相談]

父が生前住んでいた家(私にとって実家)を相続することになったのですが

相続人である子3人とも自宅を所有していることもあり、誰も欲しがりません。

そのため一旦、子3人の共有名義とし、売却後に売却代金(諸費用を除いた手取分)

を等分することになりそうです。

たしか、相続した居住用財産を一定期間内に売った場合は

特別控除が適用できると聞いています。この制度は当分の間、適用できるでしょうか?

[回答]

ご相談の特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)

については、令和5年度税制改正で一部見直しの上、適用期限が4年延長されました。

そのため、2027年(令和9年)12月31日までの間に売って

一定の要件に該当することで当該制度を利用することができます。

[詳細]

1.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは

 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは

相続又は遺贈により取得した一定の被相続人の居住用家屋又はその敷地等

(以下、空き家)を、一定期間内に売り、一定の要件に該当するときに

所得税の計算上、譲渡所得の金額から最高で3,000万円まで控除することができる制度です

(以下、空き家の3,000万円特別控除)。

 一定の要件とは、主として次のとおりです。

  1. (1)売却対象となった空き家について、一定の要件に該当していること
  2. (2)空き家を取得(家屋と敷地の両方を取得)した人が売っていること
  3. (3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  4. (4)売却代金が1億円以下であること
  5. (5)売却対象となった空き家について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除などの、一定の特例の適用を受けていないこと
  6. (6)この空き家について、すでにこの特例の適用を受けていないこと
  7. (7)親子や夫婦、内縁関係者など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

2.令和5年度税制改正

 令和5年度税制改正において、空き家の3,000万円特別控除は主に次の改正がされた上で

適用期限が4年延長されました。これにより改正後の適用期限は

2027年(令和9年)12月31日となりました。

  1. 適用対象となる空き家の要件について、一部見直しがされた
  2. 空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額を最高で2,000万円とする

この改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に行う空き家の売却について適用されます。

3.ご相談のケース

 ご相談のケースは、ご実家が一定の要件に該当し、かつ

一定の要件に該当する売却を行っていれば、2027年12月31日までの売却について

空き家の3,000万円特別控除の適用は受けられるものと思われます。売却日の留意点として

この改正による適用期限よりも前に「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」

が到来する場合には、その到来する日までに売却する必要があります。

その点にご注意ください。

 なお、2024年1月1日以後の空き家の売却については

上記改正のとおり、「空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は

特別控除額を最高で2,000万円とする」こととなります。

ご相談のケースはまさにこの制限の対象となるため

2023年中の売却であれば3人で最高9,000万円(3,000万円×3人)控除できるものが

2024年以降の売却になると最高6,000万円(2,000万円×3人)の控除に減ります。

この点もご留意いただきながら、売却時期をご検討してください

2023.09.17

誤りやすい事例/教育資金の非課税の特例を受けていた場合の相続財産への加算(令和3年4月1日以後)

税務処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 相続税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、教育資金の贈与税の非課税の特例についてです。

誤った取扱い

令和3年5月に祖母から1,500万円の贈与を受け

教育資金の非課税制度の適用を受けたその後、令和4年11月に祖母が死亡した。

なお、受贈者は祖母の死亡日において20歳であり

学校等には在学していなかった。

上記1,500万円のうち学校等へ支払った100万円を控除した残額1,400万円について

相続税の課税価格に算入する必要があると指導した。

正しい取扱い

教育資金管理契約の期間中に贈与者が死亡した場合において

令和3年4月1日以後に贈与者から信託受益権等の取得をし

この非課税制度の適用を受けた場合

管理残額については相続等により取得したものとみなされる(措法70の2の2⑫二)。

しかし、受贈者が贈与者の死亡日において

①23歳未満である場合

②学校等に在学している場合又は

③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合

のいずれかに該当するときは

相続等によって取得したものとはみなされない

(令和5年4月1日以後の取得については取扱いが一部異なる。)(措法70の2の2⑬)。

したがって、受贈者が20歳であるため

管理残額について、相続税の課税対象とはならない

なお

②又は③に該当する場合は、その旨を明らかにする書類を

贈与者が死亡した旨の届出と併せて金融機関等へ提出した場合に限る。

令和3年3月31日以前)の場合の正しい取扱い

教育資金管理契約の期間中に贈与者が死亡した場合

死亡日における管理残額は、原則として

その贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされ

相続財産に加算する必要があるが

次の時期に贈与により拠出された金銭等については

管理残額の計算から除外されるため、相続財産に加算する必要はない

(措法70の2の2⑫、措令40の4の3㉑、平成31年改正令附則38②、令和3年改正令附則29②)。

①平成31年3月31日以前に取得をしたもの
②平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に取得をしたもののうちその贈与者の死亡前3年以内に取得をしたものではないもの

また、受贈者が死亡日において

①23歳未満である場合

②学校等に在学している場合又は③教育訓練を受けている場合のいずれかに該当するとき

(②又は③については所定の手続を行った場合に限る。)には

管理残額が相続又は遺贈によって取得したものとみなされることはなく

相続税の課税関係は生じない(措法70の2の2⑬)

 

2023.09.09

改正後の相続時精算課税制度/110万円の基礎控除

[相談]

先日、ある相続セミナーに参加したところ

令和6年(2024年)1月1日以後の贈与について相続時精算課税制度を適用した場合

毎年110万円までは贈与税もかからず

将来の相続でも加算する必要がないと聞きました。本当でしょうか?

[回答]

令和5年度税制改正で相続時精算課税制度が見直され

令和6年(2024年)1月1日以後の贈与について特別控除の2,500万円だけでなく

毎年基礎控除として110万円を控除することができるようになりました。

そのため、ご相談のとおり、毎年110万円までは贈与税が課税されません。

また、将来の相続時において加算することとなる金額は

この基礎控除を控除した残額となるため、毎年の贈与が110万円に満たない場合には

結果として加算する金額がないこととなります。

[詳細]

1.改正前の相続時精算課税制度

 相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において

自ら選択することで適用することができる制度です。

改正前における制度の特徴としては、主に以下のとおりです。

  1. 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則
  2. この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を
  3. 超えるまで贈与税は課されず超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。
  4. 暦年課税とは違い、基礎控除はありません。この制度を適用することができるのは
  5. 原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり
  6. それぞれに年齢制限があります。
  7. この制度を選択した場合には、その後の相続時精算課税に係る贈与者
  8. (以下、特定贈与者)からの贈与については
  9. 相続時精算課税制度を適用して贈与税の計算をしなければなりません。
  10. 特定贈与者が亡くなった場合には、相続時精算課税制度を適用した
  11. 贈与財産の価額(贈与時の価額)の合計額を相続財産として
  12. 相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で
  13. すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。
  14. その際、控除しきれない贈与税額があるときは
  15. 相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

2.令和5年度税制改正

令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度が見直されました。

ご相談の内容ですと、以下の改正が該当します。

  1. 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した
  2. 財産に係るその年分の贈与税については、改正前の基礎控除とは別途
  3. 課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  4. 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる
  5. 当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は
  6. 上記の控除をした後の残額とする

 

この改正は、令和6年(2024年)1月1日以後に

贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

3.ご相談の内容について

 ご質問は、以下の真否を問うものでした。

  1. ①改正後の相続時精算課税制度について、毎年110万円までなら贈与税が課税されない
  2. ②改正後の相続時精算課税制度について、毎年110万円までなら
  3.  将来の相続において加算する必要がない

上記①については、上記2.にあるとおり

改正後は課税価格から基礎控除110万円を控除することができるため

毎年110万円までの贈与について、贈与税はかかりません。

また相続時精算課税制度は相続時において相続財産に加算して

相続税額を計算することになりますが、上記②についても上記2.にあるとおり

改正後は加算する額は基礎控除110万円を控除した後の残額となることから

毎年110万円までの贈与について加算する金額がない、ということになります。

同じく令和5年度税制改正では、相続税の計算上

相続財産に加算される“生前贈与加算”の対象となる期間が3年から7年へと延長されました。

生前贈与加算の場合に加算される贈与財産の額は

基礎控除110万円を控除するの金額であるため

過去の贈与が毎年110万円未満であっても基本的には控除前の金額を加算することとなります。

そういった意味において、相続時精算課税制度を利用した節税は

今後検討する余地があるのかもしれません。

2023.08.31

保険料贈与の活用

[相談]

私の財産総額は約10億円です。相続対策として子(社会人)に対する現金贈与を

検討していましたが、贈与したお金が有効に活用されないことを懸念し

なかなか実行に踏み切れない状況です。 こうした状況で、金融機関に紹介された

コンサルタントから保険料贈与の提案を受けました。 贈与する資金の使途を明確にでき

相続発生時は死亡保険金を納税資金として活用できる点でも有効と説明を受けました。

贈与金額(保険料相当額)は相続税率や贈与税率などを考慮の上

以下の提案をいただいています。

提案内容について注意事項等があれば教えてください。

 

【提案内容】

  1. 契約者、死亡保険金受取人:子
  2. 被保険者:私
  3. 保険種類:終身保険
  4. 保険金額:3,000万円
  5. 年間保険料:250万円(10年払込)

[回答]

今回の提案内容の場合、贈与する資金の使途を明確にすることができるため

資金の使い込み防止にも有効と思われます。

ただし、元本割れの可能性など留意すべき点がいくつかありますのでご注意ください。

[詳細]

ご相談の提案内容は、コンサルタントからの説明のとおり

毎年相談者様からお子様に保険料相当額を贈与し

お子様が契約者として保険料を支払います。

相談者様が亡くなった時は、お子様が死亡保険金を受け取り

支払われた死亡保険金を納税資金として活用することができます。

また贈与された資金の使途が明確になるため

懸念されている資金の使い込み防止にも有効です。

 

保険料贈与を活用する際の注意点

 保険料贈与を活用する際の注意点は、以下のとおりです。

(1)元本割れの可能性
解約をする場合の意思決定者は契約者(お子様)となります。

保険料払込期間中に途中解約をした場合は、元本割れとなる可能性があります。

保険料贈与を行う目的、途中解約時のリスクを

契約者(お子様)自身が正しく認識した上で、手続きを行うようにしましょう。

また、外貨建て保険や変額保険を活用する場合は

為替変動や運用実績により死亡保険金や解約返戻金の受取金額が

変動する点にも注意が必要です。

(2)贈与の事実を明確にする
贈与の事実が確認できない場合、実質的な保険料負担者が

相談者様とみなされる可能性があります。

税務調査等により贈与が否認されないよう

下記の点に注意してください。

  1. ●贈与契約書を毎年作成する
  2. ●受贈者が贈与を受けたことを認識しており、受贈者自身で贈与財産の管理を行う
    ⇒贈与者は受贈者名義の銀行口座に振り込みを行う
  3. ●受贈者名義の銀行口座から生命保険料を支払う
  4. ●保険料贈与で加入した契約の生命保険料控除を、贈与者(相談者様)が受けないこと

(3)死亡保険金に対する課税

契約者(保険料負担者)、保険金受取人=子、被保険者=相談者様の場合

死亡保険金は相続税ではなく子の所得税(一時所得)の対象となります。

親の財産総額が多いほど、相続税率は高くなります。

相続税率と所得税率を比較した場合、一般的には親の財産総額が多く

子の所得が少ないほど、税負担の観点では有効と考えられます。

ただし、相続税の計算においては

死亡保険金に対する非課税制度があります。

この制度も検討するとよいでしょう。

 

(4)生前贈与加算(相続財産としての加算)

ご相談者様の相続開始にあたり、お子様が相続または遺贈により財産を取得した場合

お亡くなりになった日から遡って3年(改正後は7年)間の贈与は相続税の対象となります。

この期間内に本件の保険料贈与があれば、相続税の対象となる点に注意してください。

贈与する保険料の適正額は

親の財産に対する相続税率や贈与する保険料に対する贈与税率

子の所得税率により異なります。

2023.08.25

誤りやすい事例/結婚・子育て資金の非課税の特例を受けていた場合の相続税の加算

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 相続税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、結婚・子育て資金の贈与税の非課税の特例についてです。

誤った取扱い

孫は、祖父から令和2年4月に1,000万円の贈与を受け

結婚・子育て資金の非課税制度の適用を受けていたが

令和4年1月に祖父が死亡した。

死亡日における結婚・子育て資金口座の管理残額は300万円

(700万円は子育て資金として支出済み)であったため

相続税の計算にあたっては、管理残額300万円を相続財産に加算した。

また、受贈者(孫)は祖父の一親等の血族(その被相続人の直系卑属が相続開始前に死亡し

又は相続権を失ったため、代襲して相続人となったその被相続人の直系卑属を含む。)ではないので

相続税の計算にあたり、相続税額の2割に相当する金額を加算した。

なお、受贈者(孫)は祖父から相続又は遺贈により管理残額以外の財産を取得していない。

正しい取扱い

令和3年3月31日以前に贈与により取得した金額に係る管理残額については

受贈者が被相続人の一親等の血族に該当するか否かにかかわらず

当該管理残額に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の規定(措法18)は適用されない

(令和3年改正法附則75⑤、令和3年改正令附則29⑦)。

したがって、事例の場合、管理残額300万円に対応する相続税額については

相続税額の加算は不要である。

ただし、令和3年4月1日以後に贈与者から金銭等を取得したものがある場合における

その取得分に対応する管理残額に相当する相続税額については

相続税額の2割加算の規定が適用される(措法70の2の3⑫)。

※教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の規定により

管理残額を相続又は遺贈により取得したものとみなされる場合の

管理残額に対応する相続税額についても同様となる(措法70の2の2⑫)。

2023.08.18

いつの相続から改正が影響しますか?/生前贈与加算の改正

[相談]

生前に贈与した財産について、死亡の日からさかのぼって相続財産に加算

(以下、生前贈与加算)される期間が7年に延長されたと聞きました。

令和6年(2024年)からの適用だと雑誌に書いてありましたが

令和6年の相続から適用になるのでしょう?

[回答]

生前贈与加算の改正である、加算期間の3年超7年以内については

令和6年1月1日以後の贈与に係る相続税の計算から適用されます。

つまり、令和9年1月2日以後の相続から順次この改正の影響を受けることとなります。

[詳細]

1.生前贈与の加算

相続又は遺贈により財産を取得した人が、その相続開始前一定期間内に暦年課税に

係る贈与によって被相続人から取得した財産があるときは

その人の相続税の計算上、相続財産に当該財産の価額を加算します。

この場合の加算対象となる“一定期間内”とは、改正前は、3年以内

(その相続に係る被相続人の死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)

とされていました。

これが令和5年度税制改正により、7年以内に延長されました。

ただし、今般の改正部分である3年超7年以内に関しては

その間の生前贈与の価額の合計額から100万円を控除した残額が加算対象となります。

なお、“暦年課税”とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間のうちに

もらった(贈与を受けた)財産の合計額から基礎控除額(110万円)を

差し引いた残額に対して贈与税を計算する方式です。

2.生前贈与加算期間の推移

上記1.の令和5年度税制改正は、令和6年1月1日以後に贈与により

取得する財産に係る相続税から適用されることとなります。

具体的には、令和9年1月2日以後の相続から改正の影響を受けることとなり

徐々に加算する期間が延びていきます。

そして、令和13年1月1日以後の相続から「7年以内」となります。

2023.08.03

相続税額の2割加算と孫養子

[相談]

先日、私の祖母が他界し、その祖母の遺産のうち一部を私(孫)が相続することになりました。

このような場合、私が納付する相続税額が一定額増額されるというルールがあると聞きましたので

そのルールの概要と、私がその適用対象となるのかについて教えてください。

なお、祖母の相続人は、私の父・叔父(2名とも祖母の実子で存命です)と

私(祖母と養子縁組をしています)の3名です。

[回答]

ご相談の場合、相続税額の2割加算の規定が適用されるものと考えられます。

詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.相続税額の2割加算の規定の概要

相続税法では、相続又は遺贈により財産を取得した人が

その相続又は遺贈に係る被相続人の1親等の血族(※1)及び配偶者以外

人である場合においては、その人に係る相続税額は、その人について

算出した相続税額の20%に相当する金額を加算した金額とすると定められています

(相続税額の2割加算)。

  1. ※1 この1親等の血族には、その被相続人の直系卑属(※2)が相続開始以前に死亡し
  2.        又は相続権を失ったため、代襲して相続人となった(※3)
  3.       その被相続人の直系卑属を含むと定められています。
  4. ※2 直系卑属とは、基準となる人(今回のご相談の場合は、祖母)からみて
  5.        子・孫・曾孫など、その基準となる人より後の世代で直通する
  6.       系統の親族のことをいいます。また、養子も含まれますが、(基準となる人の)
  7.       兄弟姉妹、甥、姪、子の配偶者などは含まれません。
  8. ※3 民法では、被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき
  9.        又は相続人の欠格事由の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは
  10.       その人の子がこれを代襲して相続人となると定められています(代襲相続)。
  11.       ただし、被相続人の直系卑属でない人(被相続人と養子が、養子縁組をするに生まれた孫
  12.      (養子の子))は、代襲相続はできません。

2.被相続人の直系卑属が被相続人の養子(孫養子)となっている場合

養子が相続又は遺贈により被相続人である養親の財産を取得した場合においては

その養子は被相続人の1親等の法定血族(養子縁組による法律上の血族)として

原則として上記1.の相続税額の2割加算の規定の適用がないこととなります。

ただし、相続税法では、被相続人の直系卑属がその被相続人の養子となっている場合には

その被相続人の直系卑属が、相続開始以前に死亡し又は相続権を失ったため

代襲して相続人になっている場合を除き、相続税額の2割加算の規定が適用されると定められています。

したがって、今回のご相談の場合は、上記1.の相続税額の2割加算の規定が適用されるものと考えられます。

2023.07.28

いつまで適用できますか?/空き家の3,000万円特別控除

[相談]

父が生前住んでいた家(私にとって実家)を相続することになったのですが

相続人である子3人とも自宅を所有していることもあり、誰も欲しがりません。

そのため一旦、子3人の共有名義とし、売却後に売却代金(諸費用を除いた手取分)

を等分することになりそうです。

たしか、相続した居住用財産を一定期間内に売った場合は

特別控除が適用できると聞いています。

この制度は当分の間、適用できるでしょうか?

[回答]

ご相談の特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)については

令和5年度税制改正で一部見直しの上、適用期限が4年延長されました。

そのため、2027年(令和9年)12月31日までの間に売って

一定の要件に該当することで当該制度を利用することができます。

[詳細]

1.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは

相続又は遺贈により取得した一定の被相続人の居住用家屋又はその敷地等

(以下、空き家)を、一定期間内に売り、一定の要件に該当するときに

所得税の計算上、譲渡所得の金額から最高で3,000万円まで控除することができる制度です

(以下、空き家の3,000万円特別控除)。

一定の要件とは、主として次のとおりです。

  1. (1)売却対象となった空き家について、一定の要件に該当していること
  2. (2)空き家を取得(家屋と敷地の両方を取得)した人が売っていること
  3. (3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  4. (4)売却代金が1億円以下であること
  5. (5)売却対象となった空き家について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除などの、一定の特例の適用を受けていないこと
  6. (6)この空き家について、すでにこの特例の適用を受けていないこと
  7. (7)親子や夫婦、内縁関係者など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

2.令和5年度税制改正

令和5年度税制改正において、空き家の3,000万円特別控除は主に次の改正がされた上で

適用期限が4年延長されました。これにより改正後の適用期限は

2027年(令和9年)12月31日となりました。

  1. 適用対象となる空き家の要件について、一部見直しがされた
  2. 空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額を最高で2,000万円とする
  3. この改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に行う空き家の売却について適用されます。

3.ご相談のケース

ご相談のケースは、ご実家が一定の要件に該当し、かつ

一定の要件に該当する売却を行っていれば、2027年12月31日までの売却について

空き家の3,000万円特別控除の適用は受けられるものと思われます。

売却日の留意点として、この改正による適用期限よりも前に

「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」

が到来する場合には、その到来する日までに売却する必要があります。

その点にご注意ください。

なお、2024年1月1日以後の空き家の売却については、上記改正のとおり

「空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額を最高で2,000万円とする」

こととなります。

ご相談のケースはまさにこの制限の対象となるため、2023年中の売却であれば3人で

最高9,000万円(3,000万円×3人)控除できるものが、2024年以降の売却になると最高6,000万円

(2,000万円×3人)の控除に減ります。

この点もご留意いただきながら、売却時期をご検討いただければ幸いです。

2023.07.22

認知症と公正遺言証書

[相談]

母には法定相続人として私(長男)と弟の2人がいるのですが

最近、私や私の家族と同居している母が私に財産を残すために遺言を作成したいと言っております。

ただ、他方で母は軽度ではありますが認知症を患っており

主治医からは今後も症状は進行していくだろうといわれています。

母には、今のうちに上記の内容にしたがって公正証書遺言を作成してもらいたいと考えているのですが

可能でしょうか。

[回答]

1.遺言能力について

遺言者において公正証書遺言を含めて遺言を作成するにあたっては

遺言能力が必要になります(民法963条)

この遺言能力の有無は、遺言者の精神上の障害の存否・内容・程度、遺言者の年齢

遺言作成の動機や理由、相続人又は受遺者との関係といった諸般の事情が考慮されて判断されます。

そのため、認知症であることをもって直ちに遺言者の遺言能力が

否定されるわけではありませんが、症状の進行度によっては遺言能力がないと判断され
公正証書遺言を作成することができない可能性もあります。
したがって、本件のような場合には
可能な限り早めに作成に取り掛かることをお勧めいたします。

2.公正証書遺言の作成に関して

公正証書遺言を作成する場合、作成に先立ち公証人が遺言者の遺言能力を確認しますので

通常の自筆証書遺言による場合に比べて、相続開始後における遺言の有効性に関する
争いの発生を抑えることが期待できます
ただし、公正証書遺言の方法によっても遺言者の遺言能力が欠如しているとして
当該遺言が無効であると判断されたケースもあります。
東京高裁平成25年3月6日判決、東京地裁平成28年8月25日判決等。

そして、公証人による遺言者の遺言能力の確認方法については

公証人によって異なりますが、口頭で遺言者の氏名・生年月日
相続人又は受遺者と遺言者の関係、これから作成する遺言の内容の概要の聞き取りを行い
これらについて遺言者自身が理解できていれば作成可能と判断することが多いように思われます。

したがって、お母様におかれまして

この点をクリアできるのであれば公正証書遺言を作成できる可能性があります。

3.公正証書遺言の有効性を争われるリスクに備えて

相続人間で当該公正証書遺言の有効性について争いになる場合に備え

公正証書遺言作成当時における遺言者の医療記録の保管や
公正証書遺言作成時における作成過程を動画にて撮影するといった方法により
当時の遺言者の遺言能力に問題がないことを裏付ける資料を残しておくことも
紛争の早期解決に向けて有用だと考えます。
2023.07.14

相続における生命保険の有効性

[相談]

70歳になり相続について真剣に考えるようになりました。

保有している財産状況から相続税は避けられそうにありません。

先日、同世代の知人から、納税資金の準備は預金より生命保険の方が

有効なので加入した方がよいとアドバイスを受け、保険代理店を紹介されました。

預金と家賃収入が十分あり生命保険は不要と考えていたため

これまで加入した経験がありません。

相続対策として預金にはない効果を期待できるなら加入しようと思いますが

営業担当者の説明だけで決断することに不安があります。

客観的な立場から相続における生命保険の有効性

生命保険と預金の違い、注意点について教えてください。

 相続人は妻と子2人の予定です。

受取人は子2人5割ずつ指定すればよいといわれました。

 【保険代理店からの提案プラン】

  1. 契約者、被保険者:私
  2. 死亡保険金受取人:長男、長女 5割ずつ
  3. 保険種類:一時払終身保険
  4. 保険金額:1,000万円
  5. 一時払保険料:9,623,000円
  6. [回答]

  7. 生命保険は預金よりも有効とされるポイントがいくつかあり
  8. 相続において有効と考えられます。
  9. 預金との違いと注意点については詳細解説をご確認ください。

 

[解説]

提案された契約形態で死亡時に子が受け取る死亡保険金は受取人固有の財産ですが

相続税の計算上は、みなし相続財産と扱われ課税対象となります。

相続税の対象となる点は預金と同じですが、以下の点で違いがあり

生命保険は相続において有効と考えられます。

1.生命保険の特徴

  1. ◆非課税枠がある
    契約者(保険料負担者)、被保険者ともに被相続人となる生命保険契約で
  2. 相続人が受け取る死亡保険金は、非課税枠「500万円×法定相続人の数」を適用できる。
  3. ◆生前に死亡保険金受取人を指定できる
    生前に契約者が死亡保険金受取人を指定するため
  4. 契約者の意思により遺したい人に確実に遺せる。
  5. ◆被相続人の預金の払戻しより手間なく受取人の口座に入金できる
    生命保険の死亡保険金は、一般的に保険会社所定の保険金請求書、死亡診断書
  6. 死亡日を証明できる公的書類(除籍謄本など)があれば請求手続きができ
  7. 書類提出から1~2週間で受取人指定の口座に入金されます。
  8. 一方、預金は亡くなった旨の通知があったときから口座が凍結され
  9. 遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では払戻しを受けられないことがあります。
  10. そのため、平成30年の民法改正(平成31年7月施行)により
  11. 遺産分割前に相続預金口座の払戻し制度が設けられ
  12. 相続人単独で払戻しを受けることができるようになりました。
  13. しかし、その手続きには被相続人の除籍謄本以外に相続人全員の戸籍謄本が
  14. 金融機関ごとに必要など、死亡保険金請求よりも必要書類が多く
  15. 払戻し額は一定の範囲内に制限されています。
  16. ◆遺産分割協議の対象にならない
    上記のとおり死亡保険金はあくまでも受取人固有の財産であり
  17. 相続財産ではないため通常は、遺産分割協議の対象にはなりません。
  18. そのため、原則として遺留分を計算する際も対象に含まれません。

 

このように預金よりも有効とされるポイントがいくつかある一方で

次のような注意点もあります。

2.生命保険の注意点

  1. 預金より流動性が劣る
  2. 契約から早期に解約すると元本割れする可能性が高い
  3. 税制が変わり、期待した効果が得られない可能性がある
  4. インフレにより保険金の資産価値が下がる可能性がある

相続対策の検討は、保有している財産全体を踏まえて

納税見込額や財産の分け方などを整理しておく必要があります。

保険金額や受取人についても慎重に検討した方がよいでしょう。

******************

近江清秀公認会計士税理士事務所

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http://www.不動産賃貸税理士.com/

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https://www.ma-hyogo.com/

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2023.07.07

誤りやすい事例/遺留分侵害額請求の訴訟が提起されている場合の特例の適用

税務処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 相続税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、小規模宅地等の課税価格の特例についてです。

 

誤った取扱い

令和4年3月に死亡した父は

相続財産をすべて長男に相続させる旨の公正証書遺言を作成していたが

他の相続人から、遺留分侵害額請求の訴訟が提起された。

そのため、小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択についての

同意が得られないとして、同特例を適用せず期限内申告書を提出した。

 

正しい取扱い

他の相続人から遺留分侵害額請求の訴訟が提起されていたとしても

長男は、遺言により不動産も含め相続財産のすべてを取得しているのであり

小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択について他の相続人の同意を要しないから

同特例を適用して申告することができる(措令40の2⑤、相基通⑪の2-4)。

なお、相続税の申告期限後に

長男が他の相続人に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなり

長男がこれに代えて小規模宅地等の特例の適用を受けた宅地

(以下「特例宅地」という)の所有権を他の相続人に移転させたとしても

当該所有権の移転は、遺留分侵害額に相当する金銭を支払うための譲渡

(代物弁済)と考えられ、長男が遺贈により特例宅地を取得した事実に異動は生じないことから

長男が小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなるということはない。

また、長男から特例宅地の所有権の移転を受けた他の相続人については

上記のとおり、相続又は遺贈により取得したものとはいえないため

特例の適用を受けることはできない。

よって、長男は原則として、遺留分侵害額に相当する価額により

特例宅地を譲渡したとして、所得税が課税される(所法33-1の6)。

2023.06.10

教育資金、結婚・子育て資金贈与Q&Aの改訂版が公表されました

国税庁は5月26日に

「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」と

「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」について

令和5年度改正を反映した改訂版を公表しました

 

今回の改正では、教育資金贈与の非課税制度について

教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡し

その相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは

受贈者が23歳未満である場合等であっても

死亡日における管理残額が相続税の課税対象とされました

令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等に適用されます。

 

教育資金贈与Q&Aでは、改正に伴い管理残額の計算等に関する問などが改訂されたほか

取扱金融機関に相続税の課税価格に関する確認書類等を提出したが

相続税の申告期限後に修正申告書等の提出等により相続税の課税価格の

合計額が5億円超又は5億円以下となる場合には

税務署長から取扱金融機関に通知されることから

受贈者は取扱金融機関への手続が不要であること等が示されました

 

また、両制度について、資金管理契約終了時の残額に

暦年課税の贈与税が課されるときは、一般税率(改正前:特例税率)

を適用するという見直しを受け

両Q&Aでは、資金管理契約終了時の贈与税の計算方法に関する問が追加されました

(教育資金贈与Q5-4、結婚・子育て資金贈与Q5-3)

 

加えて、両制度の資金管理契約の終了に関する調書について一部様式が変更され

「一般贈与財産とみなされる金額」の欄が追加されました

 

2023.06.02

よくある間違い・・・債権放棄に伴う株価上昇分は・・・

代表者から後継者へのみなし贈与に該当

令和5年度改正における相続時精算課税制度の見直しにより

相続時精算課税制度について、相続財産への加算不要の110万円の基礎控除が創設等されました

(令和6年1月1日以後の贈与等に適用)。

基本的に、納税者有利の改正であるため、同制度を適用した生前贈与を検討するケース

が多くなることが想定されます。

 

同制度は、相続財産への加算対象額が贈与財産の「贈与時の時価」で固定されるため

事業承継に伴う株式の贈与時に活用されることも多いですが

予期せぬ“みなし贈与”が存在する点に留意する必要があります。

例えば、会社の代表者(特定贈与者)から今後の値上がりが見込まれる株式を

後継者(精算課税適用者)に贈与する場合において

代表者が会社に貸し付けていた金銭(貸付金債権)の放棄に伴い生じた株価上昇分は

代表者から後継者へのみなし贈与として、相続財産への加算対象額に含まれることになります。

例えば

例えば、

①同族会社X社(非上場)に金銭を貸し付けている代表者(父・特定贈与者)が

②後継者(子・精算課税適用者)にX社株式(贈与時の時価3,000)を贈与した上で

③代表者がX社に係る貸付金債権を放棄し

④X社に生じた債務免除益によりX社株式の価額が500上昇した

 (贈与時の時価3,000→債権放棄時の価額3,500)とする。

 

この場合、代表者がX社に係る貸付金債権を放棄したことにより生じた

X社の債務免除益(経済的利益)は、X社が代表者から贈与で取得したものとされます

そして、同債権放棄に伴うX社株式の価額の上昇分500は、

“株主である後継者が代表者(債権放棄をした者)から贈与により取得したもの”と取り扱われます

つまり、相続財産への加算対象額は、通常であれば、X社株式の贈与時の時価3,000であるものの

債権放棄に伴うX社株式の価額の上昇分500も、後継者が“みなし贈与”により取得したものと取り扱われるため

結果、相続財産への加算対象額は3,500(X社株式の贈与時の時価3,000+上昇分500)となります

 

相続時精算課税制度を適用している場合において

債権放棄に伴う株式の価額の上昇分が相続財産への加算対象額に含まれることは

裁決事例(大裁(所・諸)令3第37号、令和4年3月16日裁決、未公表)でも示されており

同制度の適用時には改めて注意が必要となります

2023.05.26

相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が相続又は遺贈により財産を取得しない場合

今回も、大阪国税局の資料から

『相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が

相続又は遺贈により財産を取得しない場合』の相続税の申告について

ご紹介します

間違った取扱い

甲は、令和4年6月に死亡した父から相続財産を

取得しなかったが、同年5年に父から財産の贈与を受けていたことから

当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格とみなして

相続税の申告を行った

正しい取扱い

相続又は遺贈により財産を取得した者が

相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から

贈与を受けていた場合、その贈与により取得した財産の

価額を加算した価額が相続税の課税価格とみなされ

その者が相続開始の年に贈与を受けていた場合

贈与税の申告は不要となる

 

しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得していない者には

これらの規定は適用されない

 

したがって、甲は相続税の申告は不要であり

贈与については令和4年分の贈与税の申告の対象となる

 

ただし、甲が相続時精算課税適用者であった場合

又は当該贈与について相続時精算課税を適用する場合には

贈与税の申告は不要であり、相続税の課税対象となる

2023.05.19

住宅取得等資金の贈与税の特例と令和5年度税制改正

[相談]

孫が結婚を機に、マイホームを取得しようか検討しています。

そこで、結婚祝いとしてマイホームを取得するための金銭の贈与を予定していますが

マイホームの取得がいつになるか現時点ではわからないため

贈与するタイミングを待っています。

マイホームを取得するための金銭の贈与については

一定額まで贈与税が非課税となると聞いています。

これが今年(2023年)の年末までと聞きましたが

令和5年度税制改正で延長はされないのでしょうか?

[回答]

ご相談の非課税は、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度と考えられますが

こちらについては、令和5年度税制改正で延長は予定されていないため

2023年12月31日の適用期限をもって廃止となります。

[詳細]

1.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

父母や祖父母など直系尊属からの贈与により

自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築

取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下、住宅取得等資金)を取得した場合において

一定の要件を満たすときは、一定の非課税限度額までの金額について

贈与税が非課税となります。

これを「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

(以下、非課税制度)」といいます。

この非課税制度については適用期間が定められており

令和4年(2022年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日となっています。

2.令和5年度税制改正

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には

この非課税制度について何ら記載されていません。

そのため、この非課税制度は適用期限である令和5年(2023年)

12月31日の到来をもって、廃止されることが予定されます。

なお、今回の贈与について“結婚祝い”が背景にあるのならば

令和5年度税制改正により適用期限が2年延長される

「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」について

ご検討いただくとよいでしょう。

適用対象となる資金の範囲に、マイホーム取得のための金銭は含まれていませんが

結婚・子育てに要する一定の資金が対象となります。

ただし、この制度には様々な要件があります。

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2023.05.12

米ドル建て終身保険を活用した贈与は、ほんとに節税???

[相談]

3年前に父が亡くなったとき、母(現在70歳)は預金約1億円と賃貸アパート

(相続税評価額2億円)を相続しました。以後、母は二次相続の税負担を心配して

母の相続人となる私と妹に毎年100万円ずつ預金を贈与しています。

先日、母が「贈与に有効な生命保険の活用方法がある。預金にしておくよりもよい」

と銀行から生命保険の提案を受け、私と妹で検討することになりました。

先に亡くなった父は、私と妹を受取人に指定して父が保険料を払う形で契約していました。

父が契約していた形態とどのような違いがあるのか

また、今回銀行から提案されている内容について検討のポイントを教えてください。

  【銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)】

  1. 保険種類:米ドル建て終身保険
  2. 契約者・保険料負担者:私、妹(それぞれ同じ契約1件ずつ)
  3. 被保険者:母
  4. 死亡保険金受取人:契約者
  5. 保険金額:100,000$
  6. 保険料:年払8,600$(払込期間 10年)

 

[回答]

お父様が契約されていた生命保険は

支払われる死亡保険金がみなし相続財産と扱われるため

相続税の対象となります。

他方、今回銀行から提案されている保険料贈与プランについて

支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税の対象(一時所得)となります。

今回銀行から提案されている内容についての検討のポイントは、

詳細をご確認ください。

[詳細]

1.お父様が契約されていた生命保険

お父様のように自らが契約者(保険料負担者)となる生命保険契約では

支払われる死亡保険金はみなし相続財産と扱われ

他の財産と合算して相続税の対象になります。

また、受取人が相続人であれば、相続税の計算上、一定の非課税枠が適用できます。

2.保険料贈与プラン

保険料贈与プランにおける契約者(保険料負担者)は受贈者です。

お母様が亡くなったときに支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税(一時所得)の対象として扱われます。

一時所得は以下の計算方法で算出します。

課税が発生する場合は、課税対象額を他の所得と合算して税金を計算します。

保険料贈与プランは、贈与によりすでにお母様の財産から切り離された

子の資金を保険料に充てた契約であるため

受け取る死亡保険金はお母様の相続財産や相続税の計算に影響を及ぼしません。

一般的に被相続人の相続財産が多額で相続税が高く

相続人の所得が低いなど、それぞれに適用される税率の差が大きいほど

保険料贈与プランの効果が出やすいと考えられます。

 

3.今回のプランでの検討ポイント

  1. ➡想定されるお母様の相続財産全体と税率
  2. ➡子2人(相談者様と妹様)の所得、税率
  3. ➡納税資金の準備状況
  4. ➡為替変動リスク許容度
  5. ➡払込期間中にお母様からの贈与が途絶える可能性

銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)は米ドル建てであり

相続発生時の為替レートは予測不能です。そのため

支払保険料累計と死亡保険金を円で計算すると

死亡保険金が支払保険料累計を下回る可能性があります。

米ドルで受け取ることもできますが

この保険を納税資金に充てる場合は円に交換する必要があります。

為替変動に左右されるため、結果的に税金面の効果も期待したほど出ないかもしれません。

上記のポイントをおさえて、専門家に相談しながら判断されることをお勧めします。

2023.05.05

贈与税における誤りやすい事例/店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

親から住宅取得等資金の贈与を受け、店舗兼住宅を購入した。

その家屋の居住用部分の床面積が200㎡(家屋全体の床面積300㎡)

であることから、面積制限(40㎡以上240㎡以下)の要件を満たしているため

住宅取得等資金の贈与の特例の適用があるとして申告を行った。

 

正しい取扱い

店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定については

居住の用以外の用に供されている部分の床面積を含めた

家屋全体の床面積で判定することになる。

このことから、居住用部分の200㎡ではなく

家屋全体の床面積300㎡で判定することになる

(措通70の2-6で準用する70の3-6(1))。

したがって、特例の適用を受けられない。

※2人以上の者で共有されている家屋の床面積基準の判定についても

持分に対応する床面積で判定するのではなく

家屋全体の床面積で判定することになる

(措通70の2-6、70の3-6(2))。

2023.04.28

贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

 

今回は、相続時精算課税についてです。

 

誤った取扱い

平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。

その後、平成12年に二男が生まれた。

令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け

それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。

 

正しい取扱い

相続時精算課税の適用に当たっては、受贈者は

贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある。

また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである。

したがって、養子縁組前に生まれた長男については

伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく

また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。

なお、二男については、養子縁組後に生まれているため

伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。

2023.04.21

相続時精算課税制度の贈与額から基礎控除を控除

[相談]

相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、令和5年度税制改正により

基礎控除が控除できるようになると聞きました。

これまでは基礎控除がなかったと思いますが、本当でしょうか?

 

[回答]

改正前の相続時精算課税制度は、非課税贈与額は累計で2,500万円とし

これを超えた場合に一律で20%の贈与税が課される制度で

基礎控除はありませんでした。

これが、令和5年度税制改正において

基礎控除として毎年110万円を控除できるように改正が行われました。

 

[詳細]

1.相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において

自ら選択することで適用することができる制度です。

改正前における特徴としては、主に以下のとおりです。

  1. 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則
  2. この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を
  3. 超えるまで贈与税は課されず
  4. 超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。
  5. 暦年課税とは違い、基礎控除はありません。
  6. この制度を適用することができるのは
  7. 原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり
  8. それぞれに年齢制限があります。

 

  1. この制度を選択した場合には
  2. その後の相続時精算課税に係る贈与者(以下、特定贈与者)
  3. からの贈与については、相続時精算課税制度を適用して
  4. 贈与税の計算をしなければなりません。

 

  1. 特定贈与者が亡くなった場合には
  2. 相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)
  3. の合計額を相続財産として
  4. 相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で
  5. すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。
  6. その際、控除しきれない贈与税額があるときは
  7. 相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

なお、特定贈与者と受贈者の年齢制限については

以下のとおりです。

2.令和5年度税制改正

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には

次の改正が記載されました。

  1. 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係る
  2. その年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途
  3. 課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  4. 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる
  5. 当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は
  6. 上記の控除をした後の残額とする

そしてこの改正は、2023年3月28日に法案が成立したことで

2024年(令和6年)1月1日以後に贈与により取得する財産に

係る相続税又は贈与税について適用されることとなりました。

2023.04.14

贈与税における誤りやすい事例/教育資金非課税申告書は複数の銀行で提出できるか?

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、教育資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

本年、祖父から1,000万円の教育資金の贈与を受け

A銀行で教育資金非課税申告書を提出した。

その後、祖母から500万円の教育資金の贈与を受け

B銀行で教育資金非課税申告書を提出した。

教育資金非課税申告書を提出しているため

それぞれについて教育資金の非課税の特例を受けることができるとした。

正しい取扱い

教育資金非課税申告書は

受贈者がすでに教育資金非課税申告書を提出している場合には提出することはできない

(措法70の2の2⑥)。

したがって、A銀行に提出した分については

教育資金の非課税の特例を受けることができるが、B銀行に提出した分については

教育資金非税申告書を重ねて提出することができないため

教育資金の非課税の特例を受けることができない。

また、この場合は

贈与を受けた500万円が本年分の贈与税の課税価格に算入されることとなる。

なお、非課税限度額(1,500万円)までであれば

最初に教育資金非課税申告書を提出した金融機関に「追加教育資金非課税申告書」を提出すれば

教育資金の非課税の特例を受けることができる(措法70の2の2④)。

 

 

2023.04.06

贈与税における誤りやすい事例/贈与者死亡時の子育て資金口座の残額の取扱い

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、結婚・子育て資金の非課税制度関係についてです。

 

誤った取扱い

令和元年6月に祖父から1,000万円の贈与を受け

結婚・子育て資金の非課税制度の適用を受けていたが

その後、本年10月に祖父が亡くなった。

1,000万円のうち700万円は子育て資金として使用し

結婚・子育て資金口座には300万円の残額(「管理残額」という)があったが

何も手続きをしなかった。

 

正しい取扱い

贈与者が死亡した事実を知ったときは

速やかに贈与者が死亡した旨を取扱金融機関の営業所等に届け出なければならない

(措法70の2の3⑫一)。

また、贈与者が死亡した日において管理残額があるときはその管理残額は

その贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされる

(措法70の2の3⑫二)。

したがって、受贈者は取扱金融機関の営業所等に管理残額を確認し

この残額と祖父から相続又は遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって

財産を取得した各人の課税価格の合計が

遺産に係る基礎控除額を超える場合は

相続税の申告をする必要がある。

2023.03.31

贈与税における誤りやすい事例/教育資金口座から払出し、手元にある金額の取扱い

 贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、教育資金の非課税制度についてです。

 

誤った取扱い

前年に、教育資金口座から800万円の払出しを行い

そのうち500万円を同年中に教育資金の支払いに充て

残額の300万円を本年に教育資金として支払いをした。

教育資金口座から払出した800万円全額が教育資金の支払いに充てられていることから

すべてを非課税とした。

正しい取扱い

教育資金支出額(非課税となる額)は、その年中に払い出した金銭の合計額と

その年中に教育資金の支払いに充てた合計額のいずれか少ない方の金額となる

(措法70の2の2⑨二、⑪、⑮)。

したがって、翌年に教育資金の支払いに充てた300万円は教育資金支出額に該当せず

教育資金口座に係る契約が終了した日の属する年の贈与税の課税価格に算入されることになる。

※受贈者の死亡により契約が終了した場合を除く(措法70の2の2⑭)

2023.03.18

贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の非課税制度と相続時精算課税

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

父から2,500万円の贈与を受け、省エネ等住宅を新築したため

1,000万円の非課税の特例の適用を受けることとしている。

2,500万円から1,000万円を控除した残額の1,500万円については

相続時精算課税を選択できないと考え、暦年課税となるとした。

正しい取扱い

この特例を適用した後の残額については

①暦年課税の基礎控除額(110万円)又は

②相続時精算課税の特別控除額(2,500万円)選択することができる

  (措法70の3①)。

2023.03.12

墓地や墓石の購入と相続税対策

[相談]

先日参加した「相続セミナー」で、墓地や墓石は生前に購入した方が

相続税対策になると聞きました。

借金をしてまでも購入した方がよいのでしょうか?

[回答]

たしかに、墓地や墓石を生前に購入された方が、相続税対策になります。

ただし、借金をしてまで購入することは相続税対策になりません。

[詳細]

1.墓地や墓石の相続税評価

 相続開始時に、被相続人(お亡くなりになったご本人)

が所有していた一定の財産に対して、相続税が課税されます。

 ただし、被相続人が所有していた財産のうち、墓地や墓石は祭祀財産(※)として

相続税が課税されない“非課税財産”となることから、相続税は課税されません。

 他方、相続開始後に購入する墓地や墓石の費用は

相続税の計算上、財産から控除できる「葬式費用」に該当しません。

 (※)祭祀財産には、墓地や墓石のほか、仏壇、仏具なども該当します。

2.生前の購入(相続税対策)

 生前(相続開始前)に墓地や墓石を購入しておくと

その分相続税が課税される現預金が減り、相続税が課税されない墓地や墓石が増えます。

 一方、相続開始後に墓地や墓石を購入する場合には

墓地や墓石を購入するための現預金に対して相続税が課税され

墓地や墓石を購入する費用は「葬式費用」に該当しないため

課税対象となる財産から控除することができません。

 つまり、相続開始前か後かで、墓地や墓石を購入するための現預金相当について

相続税が課税されるか否かが異なってきます。

3.墓地や墓石購入のための借金

 被相続人が所有していた財産から控除できるものとして

先に述べた「葬式費用」のほか「債務」があります。

 この場合の「債務」とは

被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものを指します。

 ただし、この「債務」に、墓地や墓石の未払代金や借金など

非課税財産に紐づく債務は含まれません。

 つまり、相続税の計算上、課税される財産から控除できない借金をつくって

課税されない墓地や墓石を購入することは

相続税対策になりません。ご注意ください。

 

2023.03.04

贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の贈与の特例と住宅借入金等特別控除

贈与税の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、住宅借入金等特別控除の適用についてです。

誤った取扱い

令和3年中に親から贈与を受けた住宅取得等資金と住宅ローンにより

一戸建てを購入したことから、住宅取得等資金の贈与の特例を受ける贈与税の申告と

住宅借入金等特別控除の適用を受ける所得税の申告をした。

この申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

住宅借入金等の年末残高と家屋等の取得対価の額のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行った。

 

正しい取扱い

住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合における

住宅借入金等特別控除額の計算については、住宅借入金等の金額が

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を

受ける金額を控除した金額を超える場合には

この控除後の家屋等の取得対価の額が限度となる(措令26⑥㉕、措通41-23)。

よって、申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受ける金額を控除した金額と

住宅借入金等の年末残高のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行うこととなる。

2023.02.25

贈与税における誤りやすい事例/贈与資金で土地を先行取得した場合

 贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等のための金銭の贈与の特例についてです。

 

誤った取扱い

令和3年10月に父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し

令和4年2月に自己資金で家屋を建てた。

今回の土地購入契約は、「家屋の新築請負契約と同時になされたもの」ではなく

また、「家屋の新築請負契約を締結することを条件とするもの」でもなかったため

「住宅用家屋の新築若しくは取得とともに取得する土地等」に当たらず

特例の適用は受けられないとした。

 

正しい取扱い

 土地の購入に充てた2,000万円の贈与について

特例の適用を受けることができる。

 特例の適用対象となる住宅取得等資金の範囲には

住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の

翌年3月15日までに行われたものに限る。)

先行してするその敷地の用に供される

土地等の取得のための資金が含まれる(措法70の2①一、70の3①一)。

 また、贈与により取得した金銭が、土地等の取得の対価に充てられ

住宅用家屋の新築の対価に充てられた金銭がない場合であっても

当該土地等の取得の対価に充てられた金銭は住宅取得等資金に該当することとなる。

 ただし、当該贈与があった日の属する年の翌年3月15日までに

住宅用家屋の新築(新築に準ずる場合を含む。)をしていない場合には

当該贈与により取得した金銭については特例の適用はない

(措通70の2-3、70の3-2(注)1)。

2023.02.18

相続税の対象となる生前贈与を期間が改正に

[相談]

巷で騒がれていた相続税の計算上、相続財産に加算することとなる生前贈与の期間は

令和5年度税制改正でどのようになるのでしょうか?

[回答]

令和4年(2022年)12月16日に政府与党から公表された「令和5年度税制改正大綱」には

現行の「3年以内」から、「7年以内」へ延長される旨が記載されていました。

ただし、その延びた期間の贈与すべてが対象となるわけではなく

一定額は加算しないことが予定されています。

[詳細]

1.生前贈与の加算

相続または遺贈により財産を取得した人が

その相続開始前一定期間内に暦年課税に係る贈与によって
被相続人から取得した財産があるときは、その人の相続税の計算上
相続財産に当該財産の価額を加算します。

この場合の加算対象となる“一定期間内”とは、現行は

3年以内(その相続に係る被相続人の死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)
とされています。

また、“暦年課税”とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間のうちに

もらった(贈与を受けた)財産の合計額から基礎控除額(110万円)を
差し引いた残額に対して贈与税を計算する方式です。

2.令和5年度税制改正大綱

令和4年12月16日に政府与党から公表された「令和5年度税制改正大綱」には

この加算期間を含めた改正について、以下のように述べられています。


相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について

次の見直しを行う。

  1. ①相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内
  2. (現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には
  3. 当該贈与により取得した財産の価額
  4. (当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については
  5. 当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
    (注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
  6. ②その他所要の整備を行う。

3.まとめ

上記2.のとおり、

  1. 相続財産に加算される生前贈与の期間は、相続開始前7年以内へと4年間延長
  2. 加算額は、現行から延長する4年間分の生前贈与の価額の合計額から100万円
  3. を控除した残額と現行の3年以内分の贈与額の合計額となる
  4. 適用は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税

となる予定であることが明らかとなりました。

死亡日からさかのぼる期間が4年間延長されたものの

令和5年中の生前贈与は現行の範囲内です。
2023.02.11

高齢者が加入する一時払終身保険と相続税対策

[相談]

父(78歳)が銀行から相続税対策として生命保険を勧められ

よく理解しないまま契約手続きの約束をしてしまいました。

現在、父は既往症があり生命保険に加入していません。

今回、高齢者でも健康状態の告知なく加入できるといわれ契約することにしたようです。

父の理解が乏しいため、契約手続きに長男である私も同席する予定です。

相続が発生したときに相続税が非課税になると説明を受けたようですが

私もよくわかりません。

一般的に相続税対策としてどのような効果が期待できるのか

また、契約前に確認しておくことなどを教えてください。

想定する父の法定相続人は、母(配偶者)、私(長男)、弟(次男)の3人です。

【銀行からの提案プラン】

  1. 保険種類:一時払終身保険(円建て)
  2. 契約者:父
  3. 被保険者:父
  4. 死亡保険金受取人:私(長男)、弟(次男)
  5. 保険金額:1,500万円
  6. 一時払保険料:1,495万円

[回答]

預金を一時払終身保険の保険料に一括して充当することで資産が生命保険に変わり

上手く設計すれば相続税の非課税枠が適用できます。

お父様の資産が多く、他に加入する生命保険がない場合

非課税枠の確保は相続税対策として有効と考えられます。

また、契約前に確認しておくことについては、詳細解説をご参照ください。

 

[詳細]

1.相続税対策としてどのような効果があるのか

  亡くなった人が契約者、被保険者となっている生命保険で

相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の計算上

みなし相続財産として相続税の対象となりますが

受け取る金額が「500万円×法定相続人の数」までは非課税(非課税枠)として扱われます。

  今回の提案プランは、お父様が他に生命保険に加入していないことを前提に

想定されるお父様の法定相続人の数にあわせて非課税枠分の1,500万円で設定されたものと考えられます。

 一般的に、下記の背景が明確なケースであれば

生命保険の非課税枠確保は相続税対策として有効と考えられます。

  1. お父様の資産が多く、保有状況から相続税の対象となることが見込まれる
  2. 他に非課税枠が適用できる生命保険に加入していない

2.契約前に確認しておくこと

 契約にあたっては、主に次の点に注意、確認しておきましょう。

  1. ①生命保険は預金と比べて流動性が低く、途中解約時の返戻金は
  2.  払い込んだ保険料より少ないことが多いため、経過ごとに返戻金がどれくらいになるか確認しておく
  3. ②契約手続き時に渡される「注意喚起情報」の内容をしっかり確認する
  4. ③預金を保険料に充当することでお父様の手元資金が減るため
  5.  生活設計に支障がないか十分に検討しておく
  6. ④保険会社の健全性を示す指標を確認しておく
  7. ⑤契約手続き後にお父様の意思が急に変わったときに備え
  8.  クーリングオフの流れを確認しておく
  9. ⑥法改正により期待した税対策効果が得られない可能性や、経済情勢や金利変動によって
  10.  相対的に生命保険の資産価値が下がる可能性についても理解しておく

 

また、おそらく今回のプランでは考慮済かと思われますが、次の点にも留意しましょう。

  1. ①非課税枠を適用したい場合には、保険金受取人は相続人となる人
  2.  (=非課税枠を適用できる人)になっているか確認すること
  3. ②民法上、保険金は相続時の遺産分割の対象とならないため
  4.  誰を受取人とするか慎重に検討すること

 高齢者の生命保険契約においては、理解不十分なまま手続きを済ませ

後日、取り消したい等のトラブルが多いといわれています。

トラブルを避けるためにも、お父様の意思を確認し

同席するご家族の方も契約内容を一緒に確認していただくことをお勧めします。

2023.02.04

贈与税における誤りやすい事例/贈与の翌年3月15日までに居住しない場合の適用可否

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

 

誤った取扱い

令和3年中に親から住宅取得等資金の贈与を受け、翌年3月15日までに

贈与を受けた住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の取得のための対価に充てたが

令和4年3月15日までに居住しない予定であるため、特例の適用はないとした。

 

正しい取扱い

贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても

取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが

確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により

特例の適用が可能である(措法70の2①、70の3①)。

ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」という。)

までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため

修正申告書の提出が必要となる(措法70の2④、70の3④)。

※ 新型コロナウイルス感染症に関し、感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し

資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工期が延長されるなど

自己の責めに帰さない事由により居住期限までに居住できなかった場合は

「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものとして

居住期限の1年の延長が認められる(措法70の2⑩、70の3⑩)。

 

 

2023.01.28

贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否

 贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より

ピックアップしてご紹介します。今回は、相続時精算課税についてです。

 

誤った取扱い

平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。

その後、平成12年に二男が生まれた。

令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け

それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。

 

正しい取扱い

相続時精算課税の適用に当たっては

受贈者は、贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある

(相法21の9①、措法70の2の6①)。

また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである(民法727)。

したがって、養子縁組前に生まれた長男については

伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく

また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。

なお、二男については、養子縁組後に生まれているため

伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。

2023.01.20

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/元妻への財産分与と特例の判定時期

元妻への財産分与と特例の判定時期

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法41条の5

(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)についてです。

 

誤った取扱い

令和3年中に妻と離婚し、それまで居住していたマンションを元妻へ財産分与した。

この分与により譲渡損失が生じたが、居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算

及び繰越控除の特例(措法41の5)を適用できないとした。

正しい取扱い

譲渡人の配偶者及び直系血族などの特殊関係者に対する譲渡による損失については

この特例の適用はないこととされているが

その判定時期は、譲渡の時の状況によることとされている

(措通41の5-18で重用する31の3-20)。

この場合、分与時には、分与を受けた者は分与をした者の配偶者ではないので

措法41条の5の適用要件を満たすものであれば適用することができる。

2023.01.14

遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限

[相談]

遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが

これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?

[回答]

 ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。

[詳細]

1.遺産分割に関する民法改正

これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から

何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから
早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。

しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され

多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり
そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが
所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。
 そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして
遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ

相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく
法定相続分によることになりました
(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。
この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

(※)具体的相続分とは、

民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を
事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを
踏まえて算定されるものをいいます。

2.相続税の申告納税期限

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日

(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。

たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります

(この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。

この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。
なお、相続税の納税期限は、上記申告期限と同一です。

3.未分割の場合の相続税の申告納税期限

相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」)

であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。

未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものと

みなして申告納税を行うことを指します。

その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や

「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。

その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ

これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが
一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。

その点も良く考えて、遺産分割をお考えいただければ幸いです。

2023.01.07

相続人が海外に居住する場合の小規模宅地等の特例の適用可否

[相談]

  1. 下記案件で、小規模宅地の特例が適用できるかどうか
  2. ご教示ください
  3. ・被相続人は国内居住で、被相続人に配偶者はいない(本件相続発生前に死別)
  4. ・本件相続財産は、被相続人の居住の用に供されていた国内の土地、建物、現金など
  5. ・相続人は1名のみ(被相続人の子)で、その相続人に配偶者はいない
  6. ・相続人は15年以上海外に居住し、海外の企業(相続人と特別の関係はない)が
  7.  所有する賃貸不動産に居住している
  8.  (相続人の国籍は日本。また、相続人は過去に居住用家屋を一度も所有したことはない)
  9. ・本件相続開始時から相続税申告期限まで、継続して上記の土地建物を所有する(見込み)
  10. [回答]

  11. ご相談の場合、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の
  12. 適用を受けられるものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

相続税法上の小規模宅地等の特例とは

個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続の開始の直前において

その相続若しくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた

その被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で

一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもので

一定のものがある場合には、その相続又は遺贈により

財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち

その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部で

この規定の適用を受けるものとして一定の方法により選択をしたもの

に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は

その小規模宅地等の価額にその小規模宅地等の区分に応じた一定の割合

(※2)を乗じて計算した金額とする、という制度です。

 ※1 特定居住用宅地等である選択特例対象宅地等については、330㎡
 ※2 特定居住用宅地等である小規模宅地等については、20%

2.特例対象宅地等の要件

 上記1.の特例対象宅地等とは、相続開始の直前において

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の区分に応じ

それぞれ一定の要件に該当する被相続人の親族が相続または

遺贈により取得したものをいいます。

 その具体的な要件は、その宅地等が被相続人の居住の用に供されていたものであり

かつ、その宅地等の取得者がその被相続人の配偶者又は相続開始の直前において

その被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でない場合には

次のとおりとなります。

  1. ①居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
  2. ②被相続人に配偶者がいないこと
  3. ③相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた
  4.  家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと
  5. ④相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者
  6.  取得者の3親等内の親族または取得者と特別の関係がある
  7.  一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
  8. ⑤相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前の
  9.  いずれの時においても所有していたことがないこと
  10. ⑥その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること

 したがって、今回のご相談の場合、本件土地は上記要件を満たすことから特例対象宅地等に該当し

 相続人は小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けられるものと考えられます。

 

2023.01.03

相続で取得した不動産の減価償却方法

[相談]

私はこのたび、相続により父から賃貸用不動産(建物や構築物など)を取得しました。

このため、私は今年分から不動産所得の確定申告を行うこととなったのですが

その不動産所得の必要経費における賃貸借不動産の減価償却費について

どのような考え方・方法で計算すればよいのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却費の計算の基礎となる取得価額等

(取得価額・未償却残高・耐用年数・経過年数)については

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額等を引き継ぐこととなります。

なお、減価償却方法(定額法、定率法など)については、原則として

ご自身で選定された償却方法により行っていただくこととなります。

[解説]

1.相続等により取得した資産の取得費等の考え方

 所得税法上、納税者が贈与・相続・遺贈等により取得した減価償却資産

(不動産所得の基因となる建物など)の取得価額は、原則的には

その減価償却資産を取得した人(今回の場合は、賃貸用不動産を相続されたご相談者)

が引き続き所有していたものとみなした場合における

その減価償却資産の取得価額に相当する金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、ご相談者が相続により取得した賃貸用不動産の取得価額は

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額をそのまま引き継ぐこととなります

(あわせて、その賃貸用不動産の未償却残高・耐用年数・経過年数も引き継ぐこととなります)。

2.相続等により取得した資産の減価償却方法

 所得税法上、納税者がその年12月31日において所有する減価償却資産につき

その償却費としてその人の不動産所得の金額、事業所得の金額等の金額の計算上

必要経費に算入する金額は、

その取得をした日及びその種類の区分に応じ償却費が毎年同一となる償却の方法(定額法)

償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法(定率法)等

の一定の方法の中から、その人がその資産について選定した償却方法

(償却方法を選定しなかった場合には、法定償却方法)

により計算した金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却方法については

亡くなられたお父様(被相続人)の減価償却方法をそのまま引き継ぐことはできず

あくまでも、ご相談者自身が選定された償却方法(選定をされなかった場合には

法定償却方法:今回のご相談の場合は定額法)により、その減価償却費を計算することとなります。

2022.12.25

未分割による相続税の申告後に分割が確定した場合の更正の請求書の提出期限

[相談]

遺産分割協議が調わなかったため未分割による相続税の申告書を提出して

いましたが、先日その分割が確定しました。

遺産分割の成立に伴って

未分割による相続税の申告では適用を受けられなかった

配偶者に対する相続税額の軽減等の規定の適用を受けるため

更正の請求手続を行う予定です

この更正の請求書はいつまでに提出しなければならないのでしょうか。

[回答]

ご相談の場合、更正の請求書は

分割確定後4ヶ月以内に提出しなければならないこととなります。

[解説]

1.遺産が未分割の場合に適用を受けられない相続税法上の規定

 相続税法上、相続税の申告書の提出期限までに

その相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が

共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合に

適用することができないと定められている規定は、次のとおりです。

  1. ①配偶者に対する相続税額の軽減
  2. ②小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
  3. ③物納
  4. ④農地等についての相続税の納税猶予及び免除等
  5. ⑤非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除

 

ただし、上記のうち①と②については

相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出することで

この分割されていない財産が申告期限から3年以内に分割された場合には

更正の請求を行うことで適用を受けることができます。

なお、3年を経過しても分割できないことについてやむを得ない事由がある場合には

一定期間内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」

を提出することで、3年経過後でも適用することができます。

2.相続税の更正の請求書の提出期限

相続税法上、相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は

民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って

課税価格が計算されていた場合において、その後その財産の分割が行われ

共同相続人又は包括受遺者がその分割により取得した財産に係る課税価格が

その相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと等の事由により

その申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときは

それらの事由が生じたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に限り

納税地の所轄税務署長に対し

その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求をすることができると定められています。

したがって、今回のご相談の場合、更正の請求書は

分割確定後4ヶ月以内に提出しなければならないこととなります。

 

2022.12.16

相続等した土地の譲渡と、特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/相続等した土地の譲渡と、特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法35条の2(特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除)についてです

誤った取扱い

父が平成21年に4,000万円で購入した土地を、平成25年に相続により取得した。

令和3年に当該土地を5,000万円で売却したので、措法35条の2を適用して申告をした。

正しい取扱い

取得期間内に土地等を取得した個人(父)から相続、遺贈、及び贈与により取得した

土地等を譲渡した場合は、特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の

長期譲渡所得の特別控除の対象とはならない(措法35の2①、措通35の2-1)。

なお、父が土地を取得した価額及び取得した時期は引き継ぐこととなる(所法60)。

2022.12.09

死亡後に相続人が受けるがん診断給付金等

[相談]

先月がんで亡くなった母の書類を整理したところ、がんと診断されたときや

がんの治療で入院した際の“給付金”と、死亡保険金が受け取れる保険(以下、がん保険)

に加入していたことがわかりました。

保険会社に連絡をいれたところ契約は有効に続いており

生前は何も手続きをしていなかったようで

給付金の請求手続きをするように言われました。

父はすでに亡くなっており、このたびの相続人は私(長女)と妹の合計2人です。

私が手続きを行いますが、受け取る給付金は相続においてどのように扱われるのでしょうか?

  【契約内容】

  1. 保険種類:がん保険
  2. 契約者:母
  3. 被保険者:母
  4. 給付金受取人:被保険者(母)
  5. 死亡保険金受取人:私(相談者)

[回答]

ご相談のケースのように、被保険者の生前に請求手続きが行われず

死亡後に請求をする場合、給付金受取人が誰になっているかにより税金の扱いが異なります。

具体的な取扱いについては、詳細解説をご参照ください。

[詳細]

がん保険を含む医療保障の給付金は、被保険者が亡くなった後も保険契約が有効で

所定の要件を満たしていれば請求することができます。

被保険者の容態や事情により生前に請求手続きを行えず、死亡後に請求するケースは少なくありません。

この場合、誰が給付金受取人になっているかによって税金の扱いが異なります。

なお、同時に請求する死亡保険金は他の生命保険金と同様に

民法上は受取人固有の財産になりますが、相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象となります。

1.給付金受取人

(1)被保険者本人の場合

 本来、被保険者(被相続人)が受け取るものであるため

死亡後に受け取る給付金は相続財産として、相続税の課税対象となります。

この場合、相続手続き上は相続人の誰が受け取ったとしても相続人共有の財産であり

未収金として遺産分割協議の対象になります。

(2)被保険者の配偶者等(直系血族・生計を一にする親族)の場合

 配偶者や子など被保険者以外が受取人に指定されている場合

被保険者が生前か死亡後かに関係なく指定された受取人の財産となります。

死亡後に給付金を受け取っても受取人の財産であるため

相続税の課税対象にはなりません

また、この場合、保険契約に基づいて病気やケガによる身体の傷害に

基因して支払いを受けるものは、所得税法上、非課税とされています。

したがって、相続税、所得税ともに課税されません。

2.ご相談のケース

 ご相談のケースにおける給付金受取人は、上記1.(1)に該当します。

死亡保険金の受取人であるご相談者が給付金と死亡保険金の請求手続きを行うため

保険会社からまとめて支払われるものと想定されます。

 給付金と死亡保険金は相続税の課税対象となる点では同じですが

給付金は相続人共有の財産として遺産分割協議の対象になる点で

死亡保険金とは異なります。

支払明細等によって整理する必要がありますので、ご留意ください。

 

2022.12.02

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/被相続人が老人ホーム等に入居していた場合

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例

(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法35条3項(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除)についてです

誤った取扱い

老人ホームに入居していた父が令和2年1月に亡くなり

老人ホームに入居する直前まで父が居住していた家屋とその敷地を相続した。

その後、家屋を取り壊して令和3年10月に敷地を売却したが

相続開始の直前において被相続人が居住していなかったので

被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)

適用できないとした。

正しい取扱い

平成31年4月1日以後の譲渡については

要介護認定等を受けていた被相続人が老人ホーム等に入居していた

などの一定の事由があり、一定の要件を満たす場合には

その入居により居住の用に供されていた家屋及びその敷地についても

被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)

適用することができる(措法35④括弧書)。

2022.11.19

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/居住用家屋とその敷地を別の者が相続した場合

事例

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法35条3項(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除)についてです。

誤った取扱い

令和3年1月に父が亡くなるまで居住していた実家の建物

(昭和54年築、耐震リフォーム済)を兄が相続し、その敷地を弟が相続した。

兄も弟も実家に居住する予定がないため令和3年11月に4,000万円で売却した。

弟の譲渡所得の申告にあたって、被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例

(措法35③)を適用して計算した。

正しい取扱い

被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(措法35③)は

相続又は遺贈により、被相続人居住用家屋とその敷地等の両方を取得した個人が

平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に一定の譲渡をした場合に

適用することができる(措法35③、措通35-9)。

したがって、弟は被相続人が居住していた家屋を相続していないので

特例の適用はない。

なお、兄についても、被相続人居住用家屋の敷地を相続していないので

弟と同様に特例の適用はない。

(※)被相続人居住用家屋とは、次の要件を満たす家屋である(措法35④)。

  1. ①昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
  2. ②マンション等、区分所有建物でないこと。
  3. ③相続開始直前において、その被相続人以外に居住していた者がいなかったこと。
  4. ④相続開始直前において、被相続人の居住の用に供されていたこと。
  5. (※)平成31年4月1日以後の譲渡については、相続開始直前において
  6. 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合であっても
  7. 一定の要件に該当すれば特例の適用がある。
2022.11.10

相続における土地・家屋名寄帳の使用用途

[相談]

先日、父が亡くなりました。

父は生前、実家の土地建物を祖父から相続したと話していました。

父名義になっているのであれば名義を変更しなければならないと思うのですが

本当に父が相続していたのかも分かりません。調べるにはどうしたらよいですか。

[回答]

不動産を所有している可能性のある市町村が分かっているのであれば

名寄帳の写しを取得されるとよいでしょう。

[解説]

 名寄帳とは、固定資産の状況や価格を明らかにするために

市町村が作成している固定資産課税台帳(地方税法(以下、法)第380条)

を所有者別にまとめたものです。

 固定資産課税台帳には、所有者の氏名・住所、所在地(地番・家屋番号)

や面積、固定資産税の評価額・課税標準額・税額等が記載されていますので

名寄帳を取得すれば、亡くなられた方が所有している不動産の詳細が分からなくても

同じ市町村内の所有不動産の情報を一覧として確認することができます。

〈依頼するときのポイント〉

 名寄帳を発行してもらう際には、共有名義(①)のものや免税点未満(②)

のものについても記載してもらうよう依頼しましょう。

  1. ①共有名義の場合、納税通知書は代表者のみに送付されます。
  2. 代表者が亡くなった本人ではなく他の共有者になっていると
  3. その共有不動産については亡くなった本人宛に納税通知書が届きません。
  4. ②同一名義人が所有する不動産の課税標準額の合計が
  5. 土地であれば30万円・家屋であれば20万円・償却資産であれば
  6. 150万円未満であるものについては、課税されません
  7. (今回は免税点未満と表現します。)(法第351条)。
  8. 相続登記の漏れを防ぐため、共有名義のものや免税点未満のもの
  9. についても記載してもらいましょう。

 市町村は名寄帳を備えなければならないと決められています

(法第387条)が、市町村によっては納税通知書と一緒に課税明細書を

同封している等の理由のため、名寄帳の写しを交付していないところもあります。

その場合は、どのようにすれば亡くなった本人が所有するすべての

不動産を確認できるかを役所の方に確認し、その際も

上記の共有名義のものや免税点未満のものについて確認してもらうよう依頼しましょう。

 近年、相続登記がされない等の理由で所有者不明土地

(所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても所在が不明で連絡がつかない土地)

が増えており、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まない等の事態になっています。

 このような問題を減らし、予防するため、令和6年4月から相続登記が義務化されます

(不動産登記法第76条の2)。

もし、亡くなられた方が複数の市町村で不動産を所有している可能性があれば

相続登記に抜け漏れがないよう、

可能性のあるすべての市町村に名寄せ請求して確認することをお勧めします

2022.11.04

いつまでに支給が確定した退職手当金等が相続税の課税対象になるのか

[相談]

1年前に社長が亡くなったのですが、社長の死亡退職金については

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により会社の財政事情が悪化している等の理由から

金額の確定及び支給ができていません。

相続税法上、いつまでに支給が確定した役員退職金であれば

相続税の課税対象に含まれるのでしょうか。

[回答]

ご相談の場合、社長(被相続人)の死亡後3年以内に支給が確定したものであれば

相続税の課税対象となります。

[解説]

1.退職手当金等のうち、相続または遺贈により取得したものとみなされるもの

 相続税法上、被相続人の死亡により相続人その他の者がその被相続人に

支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与

(一定の年金または一時金に関する権利を含みます)で

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては

その給与の支給を受けた者について

その給与を相続または遺贈により取得したものとみなすと定められています。

2.「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」の意義

 上記1.の「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」とは

被相続人に支給されるべきであった退職手当金等の額が被相続人の死亡後3年以内に

確定したものをいい、実際に支給される時期が被相続人の死亡後3年以内

であるかどうかを問わないものとして取り扱われています。

 また、上記の場合において、退職手当金等が支給されること自体は

確定していてもその金額が確定しないものについては

上記の「支給が確定したもの」には該当しないものとされています。

 なお、被相続人の生前退職による退職手当金等であっても

その支給されるべき額が、被相続人の死亡前に確定しなかったもので

被相続人の死亡後3年以内に確定したものについては

上記1.の退職手当金等に該当することとされていますので

念のためご留意ください。

2022.10.29

実家の相続と売却に係る税の特例

[相談]

親が亡くなり、親と同居していた実家を相続することになりました。

実家以外の財産も相続するため、相続税の負担が生じる予定です。

実家については、一人で生活するには広いため売却を予定しています。

ところで、実家を相続した場合に小規模宅地等の特例を適用することで

相続税が減額すると聞きました。

この小規模宅地等の特例の内容と実家を売却する際の注意点について

教えてください。なお、相続人は私のみです

[回答]

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす場合に

評価額の最大80%を減額できる制度です。

この特例を適用する場合には諸要件を満たす必要がありますが

その1つにご相談のケースであれば相続税の申告期限までその建物を所有し

居住し続けている必要があります。

少なくとも、ご実家の売却等は申告期限まで待っていただいた方が

よいと思われます。

[詳細]

1.小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例(以下、本特例)とは

個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち

その相続開始の直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた

親族の事業の用あるいは、居住の用に供されていた宅地等

(土地又は土地の上に存する権利)が一定の要件を満たす場合

その宅地等の一定の面積までの部分について

相続税の課税価格に算入すべき価額の最大80%を減額できる制度です。

2.ご相談のケースの場合
ご実家は、本特例の「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」

に該当するため、特定居住用宅地等の要件を満たす場合には

相続するご実家の敷地面積のうち330㎡までは

土地の価額の80%を減額することができます。

例えば、ご実家の土地の価額が5,000万円

(面積 250㎡)の場合、本特例の適用ができる場合には

価額は4,000万円(5,000万円×80%)減額されます。

上記のとおり、本特例を利用することが可能であれば

大幅に相続税の課税価格に算入すべき価額を抑えることができ

相続税が軽減されます。

3.注意点

(1)本特例を適用する場合
ご相談のケースの場合は、同居されていたとのことですから

特定居住用宅地等の要件を満たすには

相続開始の直前から相続税の申告期限まで(被相続人の死亡を「知った日」の翌日から10ヶ月間)

ご実家に居住し、かつその宅地等を所有している必要があります。

よって、ご実家の売却仲介等を不動産会社に依頼される場合は

申告期限が到来するまで売却を待っていただいた方がよいでしょう。

(2)居住用財産(マイホーム)を売却した場合
ご実家を売却すると、その譲渡益(譲渡所得)に対して

所得税と住民税が課されます。

この譲渡所得の計算においては、次のような特例が用意されています。

これらは併用して適用することが可能です。

  1. ①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
    (譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度)
  2. ②相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
    (相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる制度)
  3. ただし、今回のご実家の売却に伴い
  4. 上記すべての特例を適用するためには
  5. 一定の期間内に譲渡する必要があるなど
  6. 一定の要件を満たす必要があります。

また、税額を計算する場合に、売却した土地や建物の所有期間が長い場合には

税率が軽減される特例がありますが

この所有期間は被相続人の所有期間を引き継ぎますので

この特例が適用できるケースが多くあります。

各種特例を適用するには様々な要件を満たす必要がありますので、ご留意ください。

2022.10.22

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/居住用家屋に該当するかの判断

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例

(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法35条1項(居住用財産の譲渡所得の特別控除)

についてです。

誤った取扱い

父から使用貸借により土地を借り受けて居住用家屋の敷地としていたが

その敷地を父から相続した後、直ちに当該家屋とともに譲渡した。

この場合、所有者となった後の居住期間が短いため

居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(措法35①)の適用はないとした。

 

正しい取扱い

居住用家屋に該当するか否かは、居住期間で判断するのではなく

生活の拠点として利用していたかどうかで判断する。

つまり、日常生活の状況、家屋への入居目的、

家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判断する

(措通31の3-2、35-6)。

したがって、この事例では、特例を適用できる。

2022.10.15

成年年齢引下げに伴う贈与税率の改正~結婚・子育て資金の一括贈与

[相談]

今年(2022年)4月に高校3年生になった孫は、高校卒業とほぼ同時に結婚することになりました。

結婚相手は20代前半で二人とも経済的な余裕がないため

将来のことも考えてある程度まとまったお金を渡したいのですが

多額のお金が手元にあるのも問題であることから

『結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度』を利用して

信託受益権を付与するかたちで支援しようと思います。

この場合、孫は『結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度』

を適用することはできるのでしょうか。

孫は2004年7月生まれで、当該契約は今年11月に行う予定です。

[回答]

2022年4月1日以後の『結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度』

における受贈者の年齢要件は、結婚・子育て資金管理契約締結の日において

“18歳以上50歳未満”となります。予定通り11月に契約された場合には

契約締結日においてお孫さんは18歳に該当することから

その他の要件を満たす場合には、当該制度の適用を受けることができます。

[詳細]

1.結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度とは

結婚や子育て資金に充てるために父母あるいは祖父母から

一定の方法で資金の贈与を受けた場合に

1,000万円を限度として贈与税がかからない制度です。

 その特徴としては、主に以下のとおりです。

  1. 金融機関等との一定の契約に基づく贈与であること
    (具体的には、結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で
  2. 結婚・子育て資金非課税申告書をその口座の開設等を行った
  3. 金融機関等の営業所等を経由して
  4. 受贈者の納税地の所轄税務署長に提出等するなど所定の手続が必要となります)
  5. 非課税として認められるには
  6. 支払いに充てた領収書等を金融機関等に提出する必要があること
  7. 非課税として認められる支払使途は、挙式費用、家賃、転居費用
  8. 妊娠、出産、育児に関する一定のものに限られていること
  9. 年齢が50歳に達したなど、契約期間が終了した時点で残額がある場合には
  10. その残額は贈与税の対象となること
  11. 契約期間中に贈与者が死亡した場合で残額がある場合には
  12. 相続税の対象となること

2.成年年齢引下げに伴う改正

 受贈者の年齢要件は、今般の改正があるまで

結婚・子育て資金管理契約締結(以下、契約締結)の日現在において

「20歳以上50歳未満」に該当するか否かで判定をしてきました。

 これが民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い

年齢要件の下限が「18歳」へと改正されて

「18歳以上50歳未満」であるか否かで判定することとなりました。

 この改正は2022年4月1日以後の贈与から適用となるため

2022年中の贈与はこれまでの判定要素に加え

契約締結日における受贈者の年齢要件が4月以降と3月以前とで異なるため

注意する必要があります。

3.ご相談のケース

 ご相談のケースは、契約締結を11月に行う予定とのことでした。

お孫さんは2004年7月生まれ、とのことですから、予定通りに行った場合には

契約締結日現在の年齢は「18歳」となります。

受贈者の年齢要件を満たすこととなるため、

その他の要件をすべて満たす場合には、

結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を適用することができるものと考えます。

 なお、民法の成年年齢の引下げにあわせて、経過措置を除き、女性の婚姻年齢が

「16歳以上」から「18歳以上」に引き上げられています。

その点もあわせてご確認ください。

<参考>
 国税庁HP「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

民法の改正(成年年齢引下げ)に伴う贈与税・相続税の改正のあらまし」など

2022.10.07

相続で契約者変更をした保険の税金

[相談]

 亡くなった父の相続手続きにあたり、父が管理していた書類を整理したところ

契約者が父、被保険者が私(A)になっている生命保険が見つかりました。

2年後満期になったときに満期保険金がおりる契約です。

保険会社に確認したところ、契約者を父から私に変更して引き継ぐよう案内され

この手続きは完了しました。

 引き継いだ生命保険は、父の相続に係る相続税においてどのように扱われるのでしょうか。

また、引き継いだ後、私が受け取る満期保険金の税金についても教えてください。

 

【契約内容】

  1. 保険種類:養老保険
  2. 保険期間:10年満期(残2年)
  3. 保険金額(死亡・満期):500万円
  4. 保険料払込方法:全期前納払い(全額父負担)
  5. 契約者:父(契約引継ぎ後:A)
  6. 被保険者:A
  7. 死亡保険金受取人:父(契約引継ぎ後:Aの配偶者)
  8. 満期保険金受取人:父(契約引継ぎ後:A)

[回答]

 ご相談のケースでは、相続により引き継いだ生命保険は
「生命保険に関する権利」として
お父様がお亡くなりになった時点の解約返戻金相当額に未経過保険料等を加算等した額が相続税の課税対象となります。また、質問者(A)様が受け取ることとなる満期保険金は、所得税(一時所得)の対象となります。

[詳細]

1.被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合

被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合は、契約者の変更を行います。
変更後の新しい契約者は、その契約の権利を引き継ぐことになります。

2.相続時の税務上の取扱い

引き継いだ生命保険は、「生命保険に関する権利」として相続税の課税対象となります。

(1)評価額

評価額は、原則、契約者が死亡した時点の解約返戻金の額となります。

ただし、ご相談のケースのように、保険料が前納されており解約返戻金とは別に受け取ることができる未経過保険料がある場合や、配当金等がある場合は、解約返戻金に未経過保険料や配当金の額を加えた額が評価額になります。

なお、解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合は、当該金額を控除することができます。

(2)相続財産の評価

“生命保険”となると、死亡保険金の非課税枠を思い浮かべるかと思います。

しかし、ご相談のケースは保険事故が発生していない生命保険であり、本来の財産として取扱われます。死亡保険金の非課税枠(※)の適用ができる被相続人の死亡を保険事故として受け取る生命保険とは異なるため、死亡保険金の非課税枠を適用することはできません。

  1. ※(500万円×法定相続人の数)を限度として、相続税の計算上非課税とすることができる制度です。

3.満期保険金に係る税務上の取扱い

将来質問者(A)様が受け取る満期保険金は、契約者と満期保険金受取人が同一であるため、所得税(一時所得)の対象となります。一時所得の計算においては、相続により権利を引き継いだ生命保険は、引き継いだ契約者自らが当初から保険料を負担したものとして取扱います。

なお、契約者が被保険者より先に亡くなって引き継がれる生命保険は、相続財産の確認において漏れやすいため、税制改正により保険会社から税務署へ発行される調書の見直しがされており、現状では死亡により契約者が変更された一定の契約については、一定事項を記載した支払調書が所轄税務署長へ提出されることとなっています。

税務署にとっては死亡による契約者変更の事実を把握しやすくなりましたが、ご遺族としてはどのように扱えばよいか分かりづらい契約形態であることには変わりありません。

2022.09.30

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、取引相場のない株式の評価における株主区分の判定についてです。

誤った取扱い

未分割の取引相場のない株式を評価する場合

各相続人に適用されるべき評価方式を判定するに当たって

基礎となる「株式取得後の議決権の数」について

当該未分割の株式を法定相続分により取得したものとして計算した議決権の数とした。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式10,000株のうち2,500株(10,000株×1/4)を

取得したものとして判定した。

正しい取扱い

相続人ごとに、その所有する株式数にその未分割の株式数の全部を加算した数に

応じた議決権数とする

(評基通188、評価明細書通達第1表の1【3(5)イ】

     国税庁HP質疑応答事例「遺産が未分割である場合の議決権割合の判定」)。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式の全部(10,000株)を取得したものとして

それぞれ判定する。

コメント

株主区分の判定について

このような事例は間違いやすいです

ご注意ください

2022.09.21

親が自分で購入した墓石等の未払い代金の相続税債務控除適用可否

[相談]

私の家には先祖代々のお墓があるのですが、遠方にあり

また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって

お墓参りが年々困難になってきています。

このため、今後の家族の負担も考えて、近くでの墓石・墓地の買い替えを検討しています。

そこでお聞きしたいのですが、私が新たな墓石・墓地等の購入契約を結び

かつ、私の死亡時にその代金が未払いとなった場合、私の相続税の計算上

それらの購入費用は私の遺産総額から差し引くことができるのでしょうか。

教えてください。

[回答]

ご相談の墓石・墓地購入についての未払い代金は

遺産総額から差し引くこと(相続税法上の債務控除の規定を適用すること)はできません。

[解説]

1.相続税法上の債務控除とは

 相続税の計算上、亡くなった方(被相続人)が残した借入金などの債務は

その遺産総額から差し引くことができます(※1)。

この制度のことを、「債務控除」といいます。

 このとき、遺産総額から差し引くことができる債務は

被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。

  1. ※1 債務を遺産総額から差し引くことができる人は
  2. 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所があることなどの
  3. 一定の要件を満たす人で、実際にその債務を負担することになる相続人等です。

2.相続税法上の非課税財産

 相続税法上、墓所、霊びょう(※2)、祭具など(※3)の価額は

遺産総額に含めない(相続税非課税財産)と定められています。

  1. ※2 「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石、おたまや
  2. (先祖の霊や貴人の霊をまつる殿堂のことで、みたまやともいわれます)
  3. のようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件も
  4. 含むものとして取り扱われています。
  5. ※3 上記のほか、庭内神し(ていないしんし:民家などの庭の中に祠や社(やしろ)
  6. を建て神仏を祀る小規模な施設のこと)、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具
  7. 古墳等で日常礼拝の用に供しているものも相続税非課税財産に含まれますが
  8. 商品、骨とう品または投資の対象として所有するものは対象外とされています。

3.被相続人が生前に購入した墓石等の未払い代金の取扱い

 上記2.のとおり、墓石・墓地等は相続税非課税と定められています。

このことから、相続税法上、被相続人の生存中に墓石・墓地等を買い入れ

その代金が未払いであるような場合には、その未払い代金については

上記1.の債務控除の適用がないものとして取扱われています。

したがって、今回のご相談の墓石・墓地購入費用がご相談者の死亡時に

未払いとなった場合であっても、その未払い代金については

ご相談者の遺産総額から差し引くことはできないこととなります。

2022.09.16

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/配偶者居住権を設定した建物の譲渡

配偶者居住権を設定した建物の譲渡

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、配偶者居住権を設定した建物の譲渡についてです。

誤った取扱い

令和3年4月に夫が死亡し、夫が10年前に購入した自宅について

配偶者居住権を設定した。

令和3年11月、配偶者居住権の目的となっている建物及び当該建物の敷地を

譲渡したので分離短期譲渡所得として計算を行った。

正しい取扱い

配偶者居住権及び配偶者敷地利用権は

分離課税の対象となる土地等・建物等には該当しないため総合課税の対象となる。

また、被相続人の取得日以後5年を経過する日以後に生じる配偶者居住権の消滅は

短期譲渡所得の対象から除き、長期譲渡所得として課税される

(所法60②、③ 所令82②、③)。

したがって、当該所得は総合長期譲渡所得となる。

 

出典:大阪国税局「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)

2022.09.10

親が自分で購入した墓石等の未払い代金の相続税債務控除適用可否

[相談]

  私の家には先祖代々のお墓があるのですが、遠方にあり

また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって

お墓参りが年々困難になってきています。

このため、今後の家族の負担も考えて、近くでの墓石・墓地の買い替えを検討しています。

  そこでお聞きしたいのですが、私が新たな墓石・墓地等の購入契約を結び

かつ、私の死亡時にその代金が未払いとなった場合、私の相続税の計算上

それらの購入費用は私の遺産総額から差し引くことができるのでしょうか。

教えてください。

[回答]

 ご相談の墓石・墓地購入についての未払い代金は、遺産総額から差し引くこと

(相続税法上の債務控除の規定を適用すること)はできません。

[解説]

1.相続税法上の債務控除とは

 相続税の計算上、亡くなった方(被相続人)が残した借入金などの債務は

その遺産総額から差し引くことができます(※1)。この制度のことを

「債務控除」といいます。

 このとき、遺産総額から差し引くことができる債務は

被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。

  1. ※1 債務を遺産総額から差し引くことができる人は
  2. 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所があることなどの
  3. 一定の要件を満たす人で、実際にその債務を負担することになる相続人等です。

2.相続税法上の非課税財産

 相続税法上、墓所、霊びょう(※2)、祭具など(※3)の価額は

遺産総額に含めない(相続税非課税財産)と定められています。

  1. ※2 「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石、おたまや
  2. (先祖の霊や貴人の霊をまつる殿堂のことで、みたまやともいわれます)
  3. のようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地
  4. その他の物件も含むものとして取り扱われています。
  5. ※3 上記のほか、庭内神し(ていないしんし:民家などの庭の中に祠や
  6. 社(やしろ)を建て神仏を祀る小規模な施設のこと)
  7. 神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で
  8. 日常礼拝の用に供しているものも相続税非課税財産に含まれますが
  9. 商品、骨とう品または投資の対象として所有するものは対象外とされています。

3.被相続人が生前に購入した墓石等の未払い代金の取扱い

 上記2.のとおり、墓石・墓地等は相続税非課税と定められています。

このことから、相続税法上、被相続人の生存中に墓石・墓地等を買い入れ

その代金が未払いであるような場合には、その未払い代金については

上記1.の債務控除の適用がないものとして取扱われています。

 したがって、今回のご相談の墓石・墓地購入費用が

ご相談者の死亡時に未払いとなった場合であっても

その未払い代金については

ご相談者の遺産総額から差し引くことはできないこととなります。

2022.09.03

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度/共有の場合の床面積判定

[相談]

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について

その制度の対象となる住宅用家屋を共有で取得した場合の床面積の判定は

その共有持分に応じた床面積で行うこととなるのでしょうか。

[回答]

ご相談の制度においては、共有の場合であっても

床面積の判定はその家屋全体の床面積で行うこととなります。

[解説]

1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の概要

 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税とは

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属からの贈与により

住宅取得等資金の取得をした特定受贈者(※1)が一定の要件(※2)に該当するときは

原則として、その贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額

(最大1,000万円(※3))までの金額については

贈与税の課税価格に算入しないという制度です。

 

  1. ※1 特定受贈者とは、直系尊属から贈与により財産を取得した個人のうち
  2.        住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日において18歳以上であって
  3.       その年分の所得税法上の合計所得金額が2,000万円
  4.     (住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合には、1,000万円)
  5.       以下である人をいいます。
  6. ※2 特定受贈者が、贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年3月15日までに
  7.        その住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築等のための対価に充ててその住宅用家屋の新築等を
  8.        した場合等において、同日までに新築等をした住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に
  9.        供すること等が要件となります。
  10. ※3 住宅資金非課税限度額は、特定受贈者ごとに、その住宅用家屋が省エネ等住宅である場合には
  11.        1,000万円、それ以外の住宅用家屋である場合には500万円と定められています。

2.共有の場合の床面積の判定方法

 上記1.の住宅用家屋の床面積については

   その登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であることのほか 

   その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専らその特定受贈者の

   居住の用に供されるものであることも要件とされています。

 上記の床面積の判定については

   その住宅用家屋が2人以上の者で共有されている家屋である場合には

   その家屋全体の床面積により行うこととされています。

 したがって、今回のご相談の場合、共有で取得した住宅用家屋の床面積の判定は

  共有持分に応じた登記簿床面積ではなく

  その家屋全体の登記簿床面積により行うこととなります。

2022.08.26

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度と暦年課税の基礎控除との併用可否

[相談]

私はこのたび、住宅を新築することとなりました。

それにあたって、両親からその新築費用の一部の贈与を受ける予定です。

そこでお聞きしたいのですが、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の

贈与税の非課税制度と、贈与税の暦年課税の基礎控除(110万円)の規定は

併用できるのでしょうか。

[回答]

ご相談の非課税制度は、暦年課税の基礎控除と併用可能です。

[解説]

1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の概要

 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税とは

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属(自分の両親、祖父母など)

からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者(※1)が

一定の要件(※2)に該当するときは、原則として

その贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額

(最大1,000万円(※3))までの金額については、贈与税の課税価格に算入しない

(=贈与税が非課税になる)という制度です。

 

  1. ※1 特定受贈者とは、直系尊属から贈与により財産を取得した個人のうち
  2. 住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日において18歳以上であって
  3. その年分の所得税法上の合計所得金額が2,000万円
  4. (住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合には、1,000万円)
  5. 以下である人をいいます。
  6. ※2 特定受贈者が、贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の
  7. 翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築等のための対価に
  8. 充ててその住宅用家屋の新築等をした場合等において、同日までに新築等をした
  9. 住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供すること等が要件となります。
  10. ※3 住宅資金非課税限度額は、特定受贈者ごとに
  11. その住宅用家屋が省エネ等住宅である場合には1,000万円
  12. それ以外の住宅用家屋である場合には500万円と定められています。

2.贈与税の基礎控除額との併用可否

 贈与税額は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の価額を合計して

「課税価格」を計算し、さらに、その課税価格の合計額から110万円(贈与税の暦年課税の基礎控除額)

を差し引いた金額に対して一定の贈与税率を乗じて計算した金額の合計額となります。

 上記の贈与税の基礎控除額(110万円)の規定と

上記1.の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の規定は

併用可能ですので、例えば、上記1.の住宅取得資金非課税限度額が500万円である場合には

基礎控除額110万円とあわせた610万円まで贈与税非課税となります。

[参考]
 相法21の5、措法70の2、70の2の4、70の2の5、措令40の4の2など

2022.08.19

遺留分侵害額の請求に基づく資産の移転の際の所得税

事例紹介

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例

(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」より、ピックアップしてご紹介します。

誤った取扱い

令和3年8月に死亡した父からの相続に当たり

遺留分侵害額の請求を受けたが、金銭の支払に代え

相続した財産のうち自己が保有していた土地及び建物を遺留分権利者に引き渡した。

この場合は、相続手続の一環なので譲渡所得の申告は不要とした。

正しい取扱い

遺留分侵害額の支払請求があった場合において

金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産の移転があったときは

その履行をした者は、原則として

その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により

その資産を譲渡したことになります(所基通33-1の6)。

なお、この取扱いは

令和元年7月1日以後に開始した相続に係る遺留分侵害額の請求があった場合について適用される。

※遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて

移転を受けた資産の取得費については、所基通38-7の2を参照のこと。

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2022.08.06

保険金受取人がすでに亡くなっている場合

[相談]

先日、夫が亡くなり、夫が加入していた生命保険契約を確認したところ

受取人が離婚した前妻Aに指定されたままになっている契約が見つかりました。

確認したところ、前妻はすでに亡くなっていました。

前妻には再婚した配偶者がいますが、両親、子どもはいません。

また、夫と前妻の間にも子どもはいません。

この契約の死亡保険金は誰が受け取るのでしょうか?

また、今からでも受取人を変更することは可能ですか?

 【契約内容】

  1. 保険種類:終身保険
  2. 契約者(保険料負担者)、被保険者:夫
  3. 受取人:前妻A(すでに死亡。Aには再婚した配偶者がいる)
  4. 保険料:Aとの婚姻期間中に払込完了

 

[回答]

死亡保険金の受取人は、Aの配偶者になります。

また、すでに被保険者が亡くなっているため、受取人を変更することはできません。

[詳細]

1.今回のケースにおける死亡保険金の受取人

 死亡保険金請求権は、被保険者(=ご主人様)が

亡くなった時点で受取人に指定されているAの権利になります。

そのため、受け取る死亡保険金はAの固有の財産として扱われます。

Aがすでに亡くなっている場合、固有の財産である死亡保険金は

Aの相続人が受取人となります。今回の受取人は、Aの配偶者です。

2.死亡保険金の受取人の変更

 生命保険契約において、受取人の指定は保険期間中に契約者が

被保険者の同意を得て行う権利です。

今回、ご主人様が亡くなっているため、受取人の変更はできません。

3.死亡保険金の受取人の課税関係

 Aの配偶者が受け取った死亡保険金は、「遺贈」により取得したものとされ

「みなし相続財産」として相続税の対象になります。

 税負担が発生するか否かは、ご主人様の相続財産総額によりますが

Aの配偶者はご主人様の法定相続人ではないため

相続税の計算においては、生命保険の非課税枠(※1)は適用できず

税額は2割加算(※1)の対象となります。

  1. ※1 (500万円×法定相続人)を限度として
  2.         相続税の計算上非課税とすることができる。
  3. ※2 相続、遺贈によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族
  4.      (代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む。)及び配偶者以外の人である場合には
  5.       その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される。

 単純な手続きの失念か意図的かは分かりませんが

立場によっては不本意な遺産分割や揉め事を招くおそれがありますので

結婚、離婚など環境が大きく変わるときには目に見える財産に関する協議は勿論のこと

保険金受取人についてもきちんと確認・協議しておくことが大切です。

2022.07.29

遺産未分割と更正の請求

相続開始後、遺産分割協議が調わないままに申告期限を迎えることがあります

こうした場合、一旦は法定相続分で申告した後、分割確定時に更正の請求

(税金の還付手続き)をすることができます

ただし、その分割確定に伴って二次相続の申告税額が変動する

ような場合には、同特則を適用することができない点に留意する必要があります

 

相続財産の全部又は一部が未分割のまま相続税の申告期限を迎える場合

未分割財産は法定相続分等に従って遺産を取得したものとして課税価格を計算し

申告します

例えば、被相続人である父に係る未分割財産が2億円で、相続人が母・子2人の場合

法定相続分に従い、母が1億円、子2人がそれぞれ5,000万円ずつ取得したとして

相続税を計算して申告します。

その後、遺産分割が確定し、実際の取得額は母が8,000万円

子2人がそれぞれ6,000万円となり、母の税額が減少した場合

母は更正の請求(税金の還付手続き)の特則を適用できます

この場合、税額が増加する子2人は修正申告を行う必要があります

このとき、父に係る相続(一次相続)の後、遺産分割の確定前に母が亡くなり(二次相続)

二次相続についても申告期限を迎え、母の一次相続に係る取得財産を法定相続分で申告していた場合

一次相続の遺産分割確定に伴い、二次相続の税額が減少する可能性があります。

しかし、相続税法の更正の請求の特則は、あくまで未分割の遺産が生じた相続にのみ適用できるものです。

一次相続の分割確定に伴い二次相続の税額に変動があったからといって

二次相続について特則による更正の請求は適用できませんので注意が必要です

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2022.07.22

成年年齢引下げに伴う贈与税率の改正~特例税率の適用~

[相談]

今年(2022年)3月に高校を卒業した孫(18歳)が大学へ進学したため

お祝いとして2022年3月に400万円贈与しました。

成年年齢の引下げにより4月に成人となったため

8月の19歳の誕生日に成年祝いを兼ねて500万円贈与するつもりです。

この場合、適用される贈与税率はどのようになりますか。

なお、贈与税は暦年課税により計算します。

[回答]

贈与税について暦年課税により計算するものとした場合、

お孫さんは2022年1月1日現在18歳となるため

3月の贈与400万円は一般税率の適用となり

8月の贈与500万円は特例税率を適用します。

[詳細]

1.贈与税とは

 贈与税とは、原則、個人から財産をもらったときに課税される税金のことをいいます。

 個人から財産を直接もらう他、

 例えば個人から借りていたお金の返済を免除してもらった場合のいわゆる

 「経済的利益」に対しても、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。

 一方で、例えば生活費や教育費に充てるために通常必要と認められる親からの仕送りなど

 財産をもらったとしても贈与税がかからない場合もあります。

2.贈与税の計算

 贈与税は

(1)暦年課税
(2)相続時精算課税

 の2つの計算方法があり、(2)は一定の要件に該当する場合に自ら選択することで適用することができます。

 今回のケースは(1)により計算する前提ですので、以下では暦年課税について説明します。

3.暦年課税

 暦年課税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間のうちにもらった

 (贈与を受けた)財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた

 残額に対して贈与税を計算する方式です。

【計算式】
(財産の合計額-110万円)×贈与税率

 この場合の贈与税率については、贈与者(あげた人)と受贈者(もらった人)

 との続柄や受贈者の年齢に応じて、適用する税率が「一般税率」と「特例税率」に分かれます。

(1)一般税率

 次の(2)の特例税率の適用を受けられない場合

(例えば、父母や祖父母などの直系尊属以外の贈与者から財産をもらった場合や

 贈与の年の1月1日現在において受贈者が未成年者である場合)には、「一般税率」を適用します。

 この「一般税率」の適用がある財産を「一般贈与財産」といいます。

(2)特例税率

 次のいずれにも該当する場合には、「特例税率」を適用します。

 この「特例税率」の適用がある財産を「特例贈与財産」といいます。

  ① 受贈者から見て贈与者が直系尊属であること
  ② 受贈者の年齢が贈与の年の1月1日現在において成年年齢に達していること

4.成年年齢引下げに伴う改正

 これまで成年年齢が「20歳」であったため

 上記3.(2)②の年齢について、贈与の年の1月1日現在において「20歳以上」か否かで判定をしてきました。

 法律上も「20歳以上」と規定されていました。

 これが民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い

 法律上の年齢要件も「18歳以上」と改正されて、「18歳以上」か否かで判定することとなりました。

 この改正は2022年4月1日以後の贈与から適用となるため、2022年中の贈与はこれまでの判定要素に加え

 「何月の贈与」なのかも確認しないと計算ができないこととなります。

5.ご相談のケース

 ご相談のケースは、お孫さんは2022年1月1日現在、18歳です。

 改正前の3月の贈与は「20歳以上」か否かで判定するため

 「一般税率」の適用となります。

 他方、改正後の8月の贈与は「18歳以上」か否かで判定するため

 「特例税率」を適用します。

 このように適用する税率が異なることとなりますので、ご注意ください。

 なお、同一の年に「一般税率」と「特例税率」の両方がある場合の贈与税の計算は少し特殊です。

 また、「特例税率」を適用する場合に一定の要件に該当するときは

 申告の際に一定の書類の添付が必要となります。

 

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2022.07.15

預金の相続手続きと遺産の未分割申告

[相談]

被相続人は父親、相続人は長男と長女の2名です。

相続財産は預貯金と土地(宅地)です。

相続開始後、長女の承諾のもと、長男は預貯金のすべてについて

相続による名義替えを行い、自身の口座に入金しました。

現在、相続財産目録を作成して分割協議の途中ですが、納税額が多額になること

今後の土地の管理(売却等)について考えがまとまらず

未分割のままで相続税の申告を行うことを検討しています。

この場合、既に長男の口座に入金した預貯金について

「代償金の振替額が未定の預り金」として未分割財産として

取り扱うことはできますか。

[回答]

  金融機関が被相続人口座からの預貯金の払戻し手続きに際し

どのようなケースで認めるのかやどのような書類を要求するのかは

各金融機関で異なります。

  ご相談のケースでは、金融機関は、遺産分割協議はまだ済んではないものの

特定の相続人が他の相続人全員の委任を受けて払戻すことを許容しており

その結果、遺産分割協議は未了だが、他の相続人全員からの委任を受けた払戻

であることが確認できたことから、長男口座にすべて入金されているという

状態となっているのではないかと推測されます。

(少額の預金であれば、例外的に相続人の代表者だけの手続きで処理できる

 ことがありますが、相応の金額の場合、相続人全員の署名押印(印鑑証明)は必要と思います。)

  この場合、長男口座への入金は、あくまで相続人全員の共有財産としての預貯金

の管理としての意味しかなく、法律上預り金にすぎないため

その後に遺産分割協議をして、預貯金について誰が相続するか決めることが

予定されていると考えられます。

  したがって、長男口座に入金されている被相続人の預貯金を、未分割の遺産として扱うことは可能であり

遺産分割は未了として相続税申告を行うということで問題ないと思われます。

なお、相続人が上記の意図で払戻(長男口座で管理)を選択したのであれば

特に残すべき書類もないと思いますが、この点が明確でないのであれば

被相続人名義の口座を解約して払い戻した金額は、未分割の遺産として

長男名義の口座で管理する、という覚書のようなものを相続人で残しておいた方が良いかもしれません。

(この書面が調印できるのであれば、そもそも未分割という認識があるので

  問題になることもないと思いますが。)

2022.07.08

相続等により取得した土地所有権の国庫帰属制度

[相談]

先日父親が亡くなり、土地を相続しました。私は別の場所で生活しているので

処分を考えています。

いらない土地を国にもらってもらえると聞いたのですが、可能でしょうか。

[回答]

令和5年4月27日から相続又は遺贈により土地の所有権を取得した者は

その土地を国庫に帰属させることができるようになります。

国庫に帰属させるためには、まず、法務大臣に対して承認申請手数料を支払い

承認申請します。

承認申請は、その土地が次のいずれかに該当するものであるときは

申請をすることができません。

  1. 1.建物の存する土地
  2. 2.担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 3.通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. 4.土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
  5. 5.境界が明らかではない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

法務大臣は承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは

 その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければなりません。

  1. 1.崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  2. 2.土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  3. 3.除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  4. 4.隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることが
  5.   できない土地として政令で定めるもの
  6. 5.1から4に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり
  7.   過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 

申請の内容によっては、法務局職員による当該土地の実地調査を受けることがあり

その際は、調査に協力する必要があります。

なお、承認申請が認められた後、10年分の管理に要する費用としての負担金を申請者が納付したとき

土地の所有権が国庫に帰属します。

土地の処分方法としては、売却する方法もあるので

十分検討の上で処分されたほうが良いでしょう。

その際はお近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。

2022.07.01

相続財産の寄附と相続税の取扱い

[相談]

父の相続財産の一部を寄附しようと思います。

寄附先は、父が生前お世話になっていた有料老人ホームを経営している社会福祉法人です

実は生前、父から「自分が亡くなった後にA銀行の定期預金を寄附してほしい」

と口頭で伝えられていました。

ただし、遺言書などはありません。

実際に寄附を行った場合、相続税は軽減されるのでしょうか?

[回答]

ご相談のケースで寄附を行う場合、一定の条件を満たせば

寄附の対象となるA銀行の定期預金について相続税の計算から外すことができ

相続税が軽減されます。

[詳細]

1.相続人の意思による寄附

自分が亡くなったら財産を寄附する、という場合には

「どこ(誰)へ、何を(いくら)寄附する」という意思表示を

正式な遺言書という形で遺す必要があります。

今回のご相談のケースでは、お父様の遺言書はないとのことですから

お父様の遺志で寄附することはできません。

このような場合には、一度相続の手続を行って相続した後

相続人から寄附をする、という手続になります。

例えご本人が生前に「寄附したい」と周囲の方に伝えていても

相続人にその意思がなければ寄附は実行されません。

2.相続税の取扱い

相続財産を寄附した場合に以下の要件をすべて満たすと

寄附した財産について相続税の対象としない特例があります。

  1. ①寄附した財産が、相続や遺贈によって取得した財産であること
    (相続財産を換金した後の現金を寄附した場合などは、対象となりません。)
  2. ②相続税の申告期限までに、相続した財産を寄附すること
    (相続日から10ヶ月後の応答日までに寄附をしなければなりません。)
  3. ③寄附先が、国、地方公共団体、その他教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益法人であること
    (特定の公益法人の範囲は、独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており
  4.   寄附時点ですでに設立されている必要があります。
  5.   該当するか否かは事前に寄附予定先へお問合せください。)

 ご相談のケースにおいて、上記要件をすべて満たすと

  寄附をした相続財産(A銀行の定期預金)を相続税の対象から外すことができます。

3.その他の留意点

ご相談のケースの場合は、相続人からの寄附となるため

寄附をした相続人の所得税の計算上

寄附金控除または税額控除の適用を受けられるかどうか検討しましょう。

適用については、寄附先である社会福祉法人が適用できる対象先でなければなりません。

この点についても、事前に寄附先の社会福祉法人へお問合せいただくとよいでしょう。

なお、上記2.や3.の適用をする場合には、申告時の手続が必要となります。

2022.06.25

成年年齢引き下げに伴う相続税の改正~未成年者控除の改正~

[相談]

相続人が未成年者の場合、「未成年者控除」として満20歳に達するまでの年数に応じた

一定の金額を相続税額から控除してもらえると聞いています。

2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられましたが

この「未成年者控除」はどうなるのでしょうか?

[回答]

成年年齢の引き下げにあわせて、「未成年者控除」が適用できる

年齢や控除額の計算が改正されました。

[詳細]

1.未成年者控除とは

相続人が未成年者である場合には、相続税の額から一定の金額を控除します。

この控除を「未成年者控除」といいます。

未成年者控除を適用できるのは、次のすべての要件を満たす人です。

  1. (1)相続又は遺贈により財産を取得した法定相続人
  2.   (日本国籍を有していない人など、一定の人は対象外です。)であること
  3. (2)上記(1)の法定相続人とは、相続の放棄があった場合には
  4.    その放棄がなかったものとした場合における相続人であること
  5. (3)上記(1)の法定相続人は、その相続又は遺贈により財産を取得したときに未成年者であること

上記(3)の「未成年者」の年齢が2022年3月までは「20歳未満」でした。

これが、民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い

未成年者控除における「未成年者」の年齢も2022年4月から「18歳未満」に引き下げられました。

2.未成年者控除額

未成年者控除額は、以下の算式により計算します。

【控除額】
10万円×成年に達するまでの年数(1年未満切上)

「成年」とは、2022年3月までは「満20歳」でした。

これが、2022年4月からは民法の成年年齢にあわせて「満18歳」に改正されました。

 

つまり、2022年4月からの控除額の計算は、以下の通りとなります。

【控除額】
10万円×満18歳に達するまでの年数(1年未満切上)

3.適用開始時期

 この改正は、2022年4月1日以後の相続又は遺贈から適用されます。

4.留意点

未成年者控除については、未成年者本人の相続税額より

控除額が大きくなり引ききれない場合があります。

この場合には、その引ききれない部分をその未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

今回の改正により、単純計算で控除額が最大20万円(2年×10万円)

減少することとなりますので

このような引き切れない部分を差し引ける金額も当然少なくなることが予想されます。

孫養子などで未成年者を相続人とした場合に有効活用してきたこの未成年者控除について

今般の改正点を改めてご確認ください。

なお、すでに未成年者控除の適用を受けたことがある場合には

一定の控除限度額の計算があります。その点もご留意ください。

過去に税額計算をシミュレーションされた方は見直されるとよいでしょう。

 

2022.06.18

財産評価における誤りやすい事例/相当の地代を支払っている場合の借地権の価額

財産評価の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」より

ピックアップしてご紹介します。

 

今回は、「取引相場のない株式(純資産価額方式)」における

相当の地代を支払っている場合の借地権の価額についてです。

 

誤った取扱い

被相続人は、所有するA土地を甲社(被相続人が同族関係者となっている同族会社)

に相当の地代を収受して貸し付けていた。

甲社株式の評価において、A土地に係る借地権について

資産の部への計上は不要とした。

 

正しい取扱い

株式の評価をする場合において

被相続人が同族関係者となっている同族会社に相当の地代を収受して

土地を貸し付けている場合

自用地としての価額の20%に相当する額を借地権の価額として

資産の部に計上する

(昭43直資3-22「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」、地代相当通達6(注))

 

出典:大阪国税局「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」

2022.06.11

住民票と戸籍の附票の違い

[質問]

先日、役所に戸籍抄本を取りに行ったのですが

申請書記入の際に【戸籍の附票】という欄がありました。

私は戸籍の附票を知らなかったので役所の方に聞いたところ

「住所を証明するものです。」と教えていただきました。

住所を証明するのは住民票ではないのでしょうか。

[回答]

戸籍の附票と住民票は似ていますが、違いがあります。

戸籍の附票は名の通り、戸籍に付随しているものです

(住民基本台帳法(以下「法」という)第16条)。

 

その戸籍が作られてから、現在もしくはその戸籍から除籍されるまでのすべての住所が記載されています。

本籍地の市町村と特別区に戸籍の原本と一緒に保管されているため

本籍地での請求が必要となります。

 

住民票は居住を記録するものです(法第5条・第6条)。

現在の住所地を管理するため住民登録をするので、現住所の市町村で取得する必要があります。

現住所の前に住民登録をしていた住所があるときは、従前の住所が記載されます。

住民票と戸籍の附票の違いについて下記表にまとめました

(法第7条・第12条・第17条・第20条)。

自治体によって記載内容が異なる場合があります。

省略されているものについては、申し出があれば記載されます。

 

基本的に住民票は現在の住所を証明するものであり

戸籍の附票はその戸籍が作られてから除籍されるまでのすべての住所を証明するものといえます。

戸籍の附票が必要になるのは相続の際や

自動車の名義変更で住民票では足らない事由があった場合などです。

いざ必要となったときに請求先を間違えないように気を付けてください。

2022.06.05

成年年齢引き下げによる結婚・子育て資金の贈与税非課税制度の年齢要件の改正

[相談]

このたび、私の子(19歳)が令和4年末に結婚することとなりました。

その結婚資金(挙式費用など)について、6月に私から子への贈与を検討しているのですが

この贈与について、結婚・子育て資金の贈与税非課税制度は適用できるのでしょうか。

[回答]

ご相談の贈与については、

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度を適用できるものと考えられます。

[解説]

1.民法改正による成年年齢の引き下げと婚姻適齢
平成30年に明治9年以来約140年ぶりに成年年齢の見直しが行われ

同年6月13日に、成年年齢を20歳から18歳に引き下げるという改正民法が成立しました。

その改正民法は、令和4年(2022年)4月1日から施行され、婚姻適齢については

男女ともに「婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。」と定められています。

2.結婚・子育て資金の贈与税非課税制度の概要
贈与により財産を取得した場合には、原則、贈与税がかかります。

ただし、贈与があっても贈与税が課されない、一定の非課税制度が用意されています。

その非課税制度の中に、「結婚・子育て資金の贈与税非課税制度」があります。

結婚・子育て資金の贈与税非課税制度とは、令和5年3月31日までの間に

個人が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき

受贈者の直系尊属(父母・祖父母など)から

①信託受益権を付与された場合

②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合

③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等において有価証券を購入した場合には、

それらの信託受益権や金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分については

金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税申告書を提出することにより

原則として、贈与税が非課税となる制度です。

上記の制度における「個人」については年齢要件が設けられており

従前は「20歳以上50歳未満」と定められていましたが

上記1.の改正に伴い

令和4年(2022年)4月1日以後の信託受益権または金銭等の取得からは

18歳以上50歳未満」と改正されました。

このため、今回のご相談における令和4年末に結婚する

子への結婚資金の贈与については、原則として

上記の贈与税非課税制度が適用できることとなります。

  1. (注)結婚・子育て資金の贈与税非課税制度における年齢の判定日は
  2. 「結婚・子育て資金管理契約締結の日」と定められています。
2022.05.28

保険証券の紛失と“終活”への備え

[相談]

60代の半ばとなり、そろそろ“終活”に向けた準備をしていきたいと思い

資産内容を把握しはじめたところ、生命保険で躓いてしまいました。

毎年、生命保険料控除証明書は届くので、何となくどこの保険会社かはわかるのですが

控除証明書以外の書類は毎年破棄して残っていませんし

保険証券はどこにあるのか分かりません。このような場合どうしたらよいのでしょうか。

また、“終活”に向けた準備をしていく中でのポイントなど、アドバイスもお願いします。

[回答]

保険証券がどこにあるのか分からない、ということであれば

まず再発行の手続きをとるとよいでしょう。

また、“終活”に向けた準備をされるのであれば、資産の棚卸をするとともに

相続人は誰になる予定か、相続税はどのくらいかかるのかも

あわせて把握されるとよいでしょう。

[詳細]

1.生命保険の内容の把握

生命保険を契約すると、保険証券を受け取ります。

この保険証券は、保険金を受け取るとき、中途解約時に解約返戻金を受け取るとき

また契約内容を変更するときなどに必要となります。

仮に保険証券を紛失していても保障は継続しており

保険契約者の本人確認ができれば諸手続きをすることが可能です。

ただし、保険証券には契約内容が記載されていますので

紛失されたのであれば再発行の手続きをとることをお勧めします。

なお、再発行の手続きは

年に1回届く契約内容のお知らせや控除証明書に記載のある連絡先へ連絡し

指示を受けるとよいでしょう。

2.“終活”に向けた準備

“終活”に向けた準備をされるのであれば、資産の把握(=棚卸)をするとともに

相続人となる方は誰か、相続税はどのくらいかかるのかの把握もされるとよいでしょう。

どのような書類があればこれらの把握ができるのか、参考までに記載しました。

(1)財産を把握するための資料(例)

 

(2)相続人となる予定の人を把握するための資料(例)

 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本

(3)相続税の試算

相続税は、上記の資料などによって資産の一覧を作成し

相続人を把握した上で、資産評価を行うなどをして計算することとなります。

一部相続税が課税されない財産などもありますので

国税庁サイトの情報を参考に試算してみるとよいでしょう。

2022.05.21

預金の相続手続きと遺産の未分割申告

[相談]

被相続人は父親、相続人は長男と長女の2名です。

相続財産は預貯金と土地(宅地)です。

相続開始後、長女の承諾のもと、長男は預貯金のすべてについて

相続による名義替えを行い、自身の口座に入金しました。

現在、相続財産目録を作成して分割協議の途中ですが

納税額が多額になること、今後の土地の管理(売却等)について考えがまとまら

未分割のままで相続税の申告を行うことを検討しています。

この場合、既に長男の口座に入金した預貯金について

「代償金の振替額が未定の預り金」として未分割財産として取り扱うことはできますか。

[回答]

金融機関が被相続人口座からの預貯金の払戻し手続きに際し

どのようなケースで認めるのかやどのような書類を要求するのかは

各金融機関で異なります。

ご相談のケースでは、金融機関は、遺産分割協議はまだ済んではないものの

特定の相続人が他の相続人全員の委任を受けて払戻すことを許容しており

その結果、遺産分割協議は未了だが、他の相続人全員からの委任を受けた

払戻であることが確認できたことから、長男口座にすべて入金されている

という状態となっているのではないかと推測されます。

(少額の預金であれば、例外的に相続人の代表者だけの手続きで

 処理できることがありますが、相応の金額の場合、相続人全員の署名押印

 (印鑑証明)は必要と思います。)

この場合、長男口座への入金は、あくまで相続人全員の共有財産としての

預貯金の管理としての意味しかなく、法律上預り金にすぎないため

その後に遺産分割協議をして、預貯金について誰が相続するか

決めることが予定されていると考えられます。

したがって、長男口座に入金されている被相続人の預貯金を

未分割の遺産として扱うことは可能であり

遺産分割は未了として相続税申告を行うということで問題ないと思われます。

なお、相続人が上記の意図で払戻(長男口座で管理)を選択したのであれば

特に残すべき書類もないと思いますが、この点が明確でないのであれば

被相続人名義の口座を解約して払い戻した金額は、未分割の遺産として

長男名義の口座で管理する、という覚書のようなものを相続人で残しておいた方が良いかもしれません。

(この書面が調印できるのであれば、そもそも未分割という認識があるので

 問題になることもないと思いますが。)

2022.05.14

遺言による保険金の受取人の変更

[相談]

下記の生命保険について

仮に妻が先に亡くなった場合には、世話になっている姪に受け取って欲しいと思っています。

妻が先に亡くなった時点で、私が死亡保険金の受取人を変更できればよいのですが

そうでない状況を想定して、遺言で受取人を姪に変更しておきたいと思っています。

これは、可能でしょうか?

【生命保険の契約内容】

  1. 契約者(保険料負担者):私
  2. 被保険者:私
  3. 死亡保険金受取人:妻

[回答]

遺言で生命保険金の受取人を変更することは可能ですが

諸条件を満たしている必要があります。

[詳細]

1.保険法改正により可能となった遺言による保険金受取人の変更

2010年4月1日に施行された「保険法」で、遺言による保険金受取人の変更が可能となりました。

原則、保険法施行後の契約が対象となりますが、保険会社によってその取扱いは異なります。

2.留意点

遺言によって保険金受取人を変更するときの、主な留意点は以下の通りです。

(1)変更の可否を確認
 多くの保険会社は「法律上有効な遺言であれば

受取人に指定できる方の範囲に定めはない」としているようですが

変更可能な受取人の範囲を約款で決めている保険会社もあります。

遺言書を作成する前に、必ず受取人として指定できるかどうか、確認するようにしましょう。

(2)遺言書の記載内容
 遺言によって保険金受取人を変更するときは

どの保険契約か特定できるような情報を遺言書に記載します。

この場合の「情報」とは、保険会社、証券番号、契約者、被保険者

保険種類、契約日などが該当しますが、特定できれば複数の情報の記載は必要ありません。

遺言書の例文

第〇条 私は、私が契約者となっている次の生命保険契約における

死亡保険金受取人として、姪◇◇を指定する。

(保険契約の表示)
①〇〇生命:証券番号00000000000
②■■生命:証券番号11111111111
③▼▼生命:証券番号22222222222

(3)遺言による保険金受取人の変更手続き
 遺言による保険金受取人の変更手続きを行うには

保険契約者の相続人が遺言による保険金受取人変更について

保険会社に申し出なければなりません。

その際に、一定の書類の提出が必要な場合があります。

必要となる主な書類は以下のとおりですが、保険会社によって異なるため

予め約款などで確認したり、保険会社へ問い合わせをしたりするとよいでしょう。

  1. 申し出をするための書類
  2. 遺言書の写し
  3. 検認済証明書の写し(遺言が公正証書遺言でない場合)
  4. 保険契約者の戸籍謄本
  5. 相続人もしくは遺言執行人の印鑑証明書
  6. これらの他にも、被保険者の同意が必要であること、保険会社の取扱要件を満たすことや
  7. 遺言書自体が法律上有効でなければならないなど、遺言による保険金受取人の変更には留意点があります。
2022.05.07

大学へ入学する孫に対する住宅取得等資金の贈与

[相談]

2022年4月に孫が大学へ入学するために、上京することになりそうです。

一人暮らしを希望していることから、マンション一室を孫が購入する予定です

通学中は孫自身が利用し、卒業して他に引っ越す場合は賃貸用へ

転用できる立地の良い物件を検討しています。

購入資金は私から孫に贈与して、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を

適用したいと考えていますが、適用は可能でしょうか。

気になっている点は、孫の年齢が2022年1月1日時点で18歳6ヶ月であることと

購入予定であるマンションはリノベーション済みですが築25年を超えている点です。

なお、その他の要件はすべて満たすと仮定してください。

[回答]

懸念されている2点のうち、少なくとも受贈者であるお孫さんの年齢については

令和4年度税制改正により改正されることで要件を満たすことができます。

ただし、適用開始日が2022年4月1日以後の贈与となる点にご留意ください。

詳細は以下、解説をご参照ください。

[詳細]

1.住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは

父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築

取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下、住宅取得等資金)を取得した場合において

一定の要件を満たすときは、一定の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

これを「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置(以下、非課税措置)」といいます。

この非課税措置については適用期間が定められており

これまでは令和3年(2021年)12月31日が適用期限でしたが

これが令和4年度税制改正により2年延長され、令和5年(2023年)12月31日となります。

2.懸念されている2点について

(1)受贈者の年齢要件
これまで受贈者の年齢要件は、「贈与を受けた年の1月1日において

20歳以上であること」でした。

これが令和4年度税制改正により、令和4年(2022年)4月1日以後の贈与から

“20歳以上”が“18歳以上”に引き下げられました。

そのため、住宅取得等資金の贈与が令和4年(2022年)4月1日以後であれば

お孫さんの年齢が18歳でも問題ありませんが、それより前ですと適用することはできません。

(2)築年数の要件
建築後使用されたことのある住宅用の家屋については

これまで「その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの」

という、築年数の要件がありました。

これが令和4年度税制改正により、令和4年(2022年)1月1日以後の贈与から

築年数要件の廃止とともに、新耐震基準に適合している住宅用家屋

(登記簿上の建築日付が昭和57年(1982年)1月1日以後の家屋は

新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であることの要件が加わります。

そのため、令和4年(2022年)1月1日以後の贈与であれば、たとえ築25年を超えていたとしても

新耐震基準に適合している住宅用家屋であれば、適用することは可能です。

なお、これまで上記築年数を超えていても、一定の書類により証明されたもの等があれば

これまでも適用することは可能でした。この点は今後も変更はないため

一定の書類により証明がされれば、これまでと同様、要件を満たすことができます。

懸念されている点については、以上のようになります。

非課税措置の適用を希望される場合には少なくとも年齢要件を満たせるように

住宅取得等資金の贈与が令和4年(2022年)4月1日以後である必要があります。

上記以外にも令和4年度税制改正により、非課税措置の内容が改正される点があります。

2022.05.03

遺産分割前における預貯金の払戻し制度

[相談]

父が先日亡くなり、私が喪主として葬儀を執り行い、葬儀費用も負担しましたが

相続人間での遺産分割協議は時間がかかりそうです。

父の預金で葬儀費用の負担分を賄いたいと考えていますが

「相続人全員で遺産分割協議が成立しなければ、故人の預貯金は凍結され、引き出すことはできない」

と聞きました。

遺産分割協議が成立するまで預貯金の引き出しは全くできないのでしょうか?

[回答]

 ご相談の通り、金融機関が預貯金の名義人の死亡を知ることにより

故人の預貯金の口座の入出金は停止、凍結され、故人の預貯金は

相続の手続きが終わるまで基本的に動かすことができなくなります。

 しかし、このことにより、相続人が過大な負担を強いられたり

迅速な被相続人の債務の弁済に支障を生じたりすることがあるため

令和元年7月1日施行の改正民法で仮払い制度が創設されました。

当面の費用を必要とする各相続人への簡易迅速な払戻しのため、遺産分割が確定する前でも

他の相続人の同意を得ることなく被相続人の預貯金を引き出すことができようになりました(民法909条の2)。

 これにより各相続人は、相続預貯金のうち口座ごとに以下の計算式で求められる額については

家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から他の相続人の同意なしで払戻しを受けることができます。

ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)

からの払戻しは150万円が上限になります。

 

(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

  <計算例>
    普通預金720万円の場合、法定相続分2分の1の相続人(配偶者)への払戻額
    720万円×1/3×1/2=120万円 < 150万円
    払戻限度額 120万円

 

なお、これらの制度により払い戻された預貯金は、後日の遺産分割において
調整が図られることになります。
この制度の利用を考えられた場合は、金融機関へのご相談又は
お近くの弁護士などの専門家へご相談をお願いいたします。

 

 

2022.04.22

成年年齢引き下げによる暦年贈与の特例税率への影響

[相談]

民法改正により、令和4年(2022年)4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが

贈与税(暦年課税)の特例税率の適用については、どのような影響が生じるのでしょうか。

[回答]

令和4年(2022年)4月1日から、暦年贈与の特例税率の適用を受けられる受贈者の年齢要件が

成年年齢の引き下げに合わせて、18歳以上に改正されました。

[解説]

1. 贈与税額の基本的な計算方法

相続税法上、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については

課税価格から110万円(基礎控除額)を控除すると定められています。

また、贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を、次の表

(一般贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

2. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

上記1.にかかわらず、相続税法上、平成27年1月1日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した者の

の年中のその財産に係る贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を次の表

(特例贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

上記の特例における「贈与により財産を取得した者」については年齢要件が設けられており

今般の成年年齢引き下げ前は「20歳以上」と定められていましたが

令和4年(2022年)4月1日からは「18歳以上」と改正されました。

 なお、上記の年齢の判定日は、贈与年の1月1日と定められていますので、ご留意ください。

2022.04.16

納税のための相続不動産売却

[相談]

父親の財産のほとんどが不動産であるため、相続が発生したら相続税は

相続する不動産を売却して納める予定です。

不動産を売却して相続税を納める際の注意事項を教えてください。

[回答]

相続税は、相続開始後10ヶ月以内に納付することが原則となっていますので

その期間内に納税に充てるための不動産の決定や分割協議を行い

不動産の売買契約から決済までを終え、納税まで完了する必要があります。

相続人が1人である場合やあらかじめ買い手が決まっている場合でない限り

非常に厳しいスケジュールになるとお考えください。

[詳細解説]

1.基本的な流れ

遺産分割協議から不動産の引渡しまでの基本的な流れは、以下の通りです。

(1) 遺産分割協議を経て相続財産から売却する不動産を決める

(2) 不動産業者へ売却を依頼し、不動産の売り出しを開始する

(3) 買い手が見つかれば、買い手と不動産売買契約を締結する

(4) 不動産の引渡しをするための準備をする

  1.   売り手:相続登記、土地の境界確定、古家の解体工事など
  2.   買い手:融資の契約など

(5) 不動産の引渡し(代金最終決済)

 

2.注意点

上記1.の基本的な流れに沿ったスケジュール感や、主な注意点は以下のとおりです。

(1) 遺産分割協議
相続発生後、遺産分割協議を経て売却する不動産を決めることになりますが

遺産を分割するためには相続人の確定や、相続財産の調査などがあるため

遺産分割協議を開始するまでに数ヶ月必要になることもあります。

(2) 売り出し
相続人間での意見が一致しなければ

不動産の売り出し開始時期は大幅に遅れることになります。

(3) 契約締結
不動産の売り出しが始まれば、1~3ヶ月程度で買い手が見つかるケースもありますが

買い手がなかなか見つからないケースもあります。

(4) 引渡しの準備
買い手が見つかっても、すぐには不動産の引渡しはできません。

売り手は境界確定などの準備が必要になります。

境界を確定するためには、1~2ヶ月程度必要です。

他方、買い手が売買代金について金融機関へ融資を依頼する場合

手続きに1ヶ月程度かかります。

 

上記のとおり、不動産を売却するためには、不動産の売り出しから

2~6ヶ月程度は必要になります。相続税がどの程度課税されるのかを調べ

相続税を納めるために、どの不動産を売却するか決めておくなど

あらかじめ準備をしておく必要があります。

あわてて不動産を売却すると、市場価格を下回るなど

不本意な結果になりかねませんので注意しましょう。

2022.04.08

遺産分割に関する民法改正の内容について

民法改正前は・・・

 これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から

何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから

早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき

インセンティブが働きにくい状態でした。

 しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され

多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり

そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが、所有者不明土地が生じる

原因の一つとなっていました。

 そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして

遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

改正のポイント①

 改正の最も重要なポイントは、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ

相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく

法定相続分によることになったことです。

 すなわち、具体的相続分によれば、法定相続分による場合よりも

多くの財産を取得することができると考える相続人は

他の相続人が得た贈与が特別受益に該当する

あるいは自分が被相続人に行った労務等の提供が寄与分にあたると主張することになりますが

遺産分割の合意ができず、そのような具体的相続分に沿った遺産分割の審判を求める場合には

相続開始時から10年以内に、家庭裁判所に遺産分割請求を行うことが必要となります

(具体的相続分による遺産分割の合意は、相続開始時から10年を経過した後でも可能です)。

改正のポイント②

 なお、上記改正部分の施行日は、令和5年(2023年)4月1日となっていますが

施行日前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても

改正法の適用がある点に留意する必要があります

 但し、経過措置により、相続開始時から10年経過時または改正法施行時から

5年経過時のいずれか遅い時までに、遺産分割請求がされた場合には

具体的相続分による分割は可能とされていますので、少なくとも5年の猶予期間があります。

改正のポイント③

 他にも、現行法では、遺産共有と通常共有が併存する場合において

共有関係を裁判で解消するには、地方裁判所等での共有物分割訴訟と

家庭裁判所での遺産分割請求を別個に実施する必要がありましたが

 改正法では、相続開始時から10年を経過したときは

遺産共有関係の解消も共有物分割訴訟において実施することができるようになります。

 また、相続により不動産が遺産共有状態となったものの

相続人の中に所在等の不明なものがいて、共有関係を解消できないようなケースについて

相続開始時から10年を経過したときは、裁判所の決定を得て

相当額の金銭を供託することにより

所在等不明共有者の不動産の持分を取得することができるようになります。

 

このように、改正法では遺産共有関係の解消の促進

円滑化、合理化が図られていますので、有効に活用されることが期待されます。

 

2022.04.03

[相談]

ここのところ、雑誌等で贈与税の生前贈与分が相続時に取り込まれる

いわゆる“相続税と贈与税が一体化”されるような情報を目にするようになりました。

令和4年度の税制改正大綱が発表され、税制改正関連の法律が成立しましたが

改正項目として含まれたのでしょうか?

[回答]

 令和4年度税制改正では、具体的な改正項目はありませんでした。

ただし、今後の税制改正にあたっての基本的な考え方の中で

「相続税・贈与税のあり方」としての方向性が示されました。

[詳細]

1.政府与党が公表した令和4年度税制改正大綱
2021年12月10日付で、政府与党が令和4年度税制改正大綱を公表しました。

この中で、今後の税制改正にあたっての基本的な考え方として

以下のとおり述べています。

相続税・贈与税のあり方:
 高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに

相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており

結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

 高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば

その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。

 一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。

高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば

格差の固定化につながりかねない。

 このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ

資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。

 わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、

贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。

このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては

生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で

相当に高額な相続財産を有する層にとっては

財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら

多額の財産を移転することが可能となっている。

今後、諸外国の制度も参考にしつつ

相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から

現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど

格差の固定化防止等の観点も踏まえながら

資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて

本格的な検討を進める。

 あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置

限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して

何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について

格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

2.資産移転時期の選択に中立的な税制

 『資産移転時期の選択に中立的な税制』とは、どのような税制でしょうか。

この点については、2020年11月13日開催の第4回税制調査会内で

財務省が作成した説明資料が参考になります。

この資料の中で財務省は、「資産移転の時期の選択に中立的」とは

“資産の移転の時期(回数・金額含む)にかかわらず、納税義務者にとって

生前贈与と相続を通じた資産の総額に係る税負担が一定となることをいう”と記しています。

具体的なイメージは、下図のとおりです。

出典:内閣府HP「説明資料〔資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築等について〕

これによって、いつ贈与しても税負担は変わらない、というのが財務省の意見です。

特に暦年課税は、相続時に持ち戻されて相続税が課されるのは

死亡前3年以内の贈与分のみであって、それよりも前の暦年課税による贈与分は

持ち戻されず相続税は課税されません。この点について財務省は

資産移転の時期に中立的でないと示しています。

3.経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置

 現状、経済対策として講じられている主な贈与税の非課税措置は、以下のとおりです。

  1. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
    [平成25年(2013年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの措置]
  2. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
    [平成27年(2015年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの措置]
  3. 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
    [平成27年(2015年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日までの措置]

 これらの措置について、今後どういった見直しがされていくのか注視していきましょう。

 

2022.03.26

45万人が活用する贈与税の暦年課税

【1】暦年課税の申告者は45万人弱

相続対策として生前贈与を活用することがあります。

ここでは2021年6月に国税庁が発表した資料(※)から

暦年課税による贈与税の申告状況をみていきます。

 

(※)国税庁「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
 2021年(令和3年)6月に発表された資料です。

申告人員は2019年分と2020年分が翌年4月末まで

それ以前の年は翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。

 

直近5年分の暦年課税(1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から基礎控除額

(110万円)を控除した残額(基礎控除後の課税価格)について

贈与者と受贈者との続柄及び受贈者の年齢に応じて贈与税額を計算するもの)

の申告状況をまとめると、下表のとおりです。

 

2020年分の申告人員は44.6万人で前年と同程度となりました。

うち申告納税額有が35.1万人、申告納税額無が9.5万人です。

2018年分以降は申告納税額有が35万人台で推移しています。

申告納税額がある割合は78.7%で2年連続の低下となりました。

 

【2】申告納税額は2,000億円台で推移

2020年分の申告納税額は2,177億円で前年より増加し

3年連続で2,000億円を超えました。1人当たり申告納税額は62万円で申告納税額と同様

前年に比べ増加しました。

2018年分以降の申告納税額は、2017年分以前より高い水準で推移しています。

暦年課税を実行するにあたっては注意点等がございます。

また、贈与税の改正の動きにも注目が集まっています。ご留意ください。

 

 

2022.03.19

相続登記の義務化等の施行日が決まりました

[質問]

相続登記の義務化がスタートすると聞きましたが

具体的に、いつから何が変わりますか?

[回答]

長年相続登記がされていないことにより

現在の所有者が不明となっている土地の問題を解消するために

不動産に関するルールの見直しがされ、今般、施行日が定められました。

相続登記に関連する改正については、以下のとおり施行(スタート)されます。

1.相続登記の義務化(令和6年4月1日施行)

相続や遺贈により不動産を取得した相続人は

自己のために相続の開始があったことを知り
かつ、その所有権を取得したことを知った日から
3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

施行日(令和6年4月1日)よりも前の相続開始の場合についても

適用されます。

令和6年4月1日よりも前に相続人として所有権を取得したことを

知っていた場合には、令和6年4月1日から3年以内に
相続登記の申請をしなければなりません。

また、遺産分割が3年以内に整わない場合は

3年以内に相続人申告登記の申出(法定相続分での相続登記の申請でも可)
を行った上で、遺産分割が成立した日から3年以内に
その内容を踏まえた相続登記の申請をしなければなりません。

2.相続人申告登記(令和6年4月1日施行)

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と

②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)
  に登記官に対して申し出ることで、相続登記申請義務を履行したものと
   みなされます(登記簿に氏名・住所が記録された相続人の申請義務のみ
  履行したことになります)。

この手続きは、所有権を取得したことを登記するものではありませんので

遺産分割が整った場合には、相続登記の申請が必要となります。

3.遺産分割に関する民法のルール変更(令和5年4月1日施行)

相続開始から10年を経過した後にする遺産分割は

原則、具体的相続分(特別受益や寄与分を考慮した相続分)ではなく
法定相続分(又は指定相続分)によることとなります。

10年を経過した後であっても、相続人全員の合意があれば

具体的相続分による遺産分割(寄与分等を考慮して法定相続分と異なる分割をすること)
を行うことは可能です。

4.その他

その他、主な改正の施行日は以下のとおりです。

  1. 相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)
  2. 所有不動産記録証明制度(未定ですが令和8年4月までに施行)
  3. 住所等変更登記の義務化(未定ですが令和8年4月までに施行)
  4. 職権による住所等の変更登記(未定ですが令和8年4月までに施行)
2022.03.06

住宅取得資金の贈与 贈与者との関係

[相談]

マイホームを取得するために親族から受けた資金援助については

一定の金額まで贈与税がかからない特例があると聞いています。

私は年内にマイホームの取得を予定しており

その取得資金の一部について義父から援助を受ける予定です。

この場合、この特例は使えますか?

なお、義父と養子縁組はしていません。

[回答]

ご相談のケースにおける義父からの贈与は、マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例

「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」は適用できません。

[詳細]

1.住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例

 マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例

(住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例、以下、特例)は

様々な要件があります。そのうちの1つに贈与者と受贈者との間柄があります。


贈与者と受贈者との間柄(要件):

受贈者は、贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること
→言い換えると、
贈与者は、贈与をしたときに受贈者の直系尊属であること」

2.直系尊属、直系卑属

直系尊属(卑属)の“直系”とは、自分を中心に縦の関係にある者をいいます。

(1)直系尊属

 “尊属”は、自分を中心に上の者、つまり前の世代を指します。

よって直系尊属とは、自分からみて父・母・祖父・祖母などを指します。

(2)直系卑属

“卑属”は、自分を中心に下の者、つまり次の世代を指します。

よって直系卑属とは、自分からみて子・孫などを指します。

3.義父は直系尊属?

ご相談のケースは、“義父”からの贈与でした。

“義父”は、受贈者と養子縁組をしている場合を除き

受贈者からみて直系尊属には該当しません。

そのため特例の要件に該当せず、適用を受けることはできないことになります。

この“義父”との間の贈与については

暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率にも影響があります。

暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率は

『一般税率』と『特例税率』があり、特例税率の方が

『一般税率』に比べて税率が低い傾向にあるのが特徴ですが

“義父”との間の贈与は『一般税率』を適用することとなります。

なお、この特例を適用するための要件は、上記以外にもたくさんあります。

マイホームを取得するための資金贈与をお考えの場合には、ご留意ください。

 

 

2022.02.25

障碍のあるご家族のためのサポート体制

 今回は、障碍への法律におけるサポート体制として、「成年後見制度」や「任意後見契約」

「家族信託」について、会話形式でご紹介します。

 

Q1.

私たち夫婦の長男は知的障碍を持っています。私たち夫婦が元気なうちは私たちが

長男をサポートすることができますが、私たちが病気などでサポートを受ける立場に

なってしまったときに、長男のことをどのようにサポートをしていけば良いかわかりません。

何か良い方法はないのでしょうか。

A1.

いわゆる「親亡き後問題」ですね。とても悩ましい課題です。

ご両親の他にご長男様のサポートをお願いできる方がいらっしゃらない場合には

「成年後見制度」を活用することをご提案いたします。

家庭裁判所が選任した司法書士や弁護士が後見人として

お子様がお持ちの財産の管理や入院や介護施設入所時の手続きをすることで

ご長男様が今後生活で困ることがないようにサポートする制度です。

 

Q2.

そうなんですね。実は私たち夫婦には子供がもう一人おります。

5歳ほど年の離れた二男がいますので、私たちがサポートできなくなった場合には

二男に長男をサポートしてもらいたいと思っています。

成年後見制度だと、専門家が後見人になってしまい

後見人への報酬がかかると聞いていますので

できれば成年後見制度は避けたいです。

A2.

二男様がいらっしゃるのですね。成年後見制度でも

ご長男様のご資産の内容やご家族との関係性次第では二男様が後見人になる場合もあり得ますが

あくまで家庭裁判所の専権事項なので確実ではないですね。

その場合は、「任意後見契約」も検討してはいかがでしょうか。

ご長男様と二男様との間で財産の管理をお願いする契約を結ぶのです。

そうしておくと、いざご長男様の財産管理が必要になったときに

二男様が財産を管理することができます。

Q3.

なるほど。ただ、長男は重度の知的障碍のためコミュニケーションをとることができません。

そうなると任意後見契約は難しそうですね。他に良い方法はありますか。

A3.

はい、「家族信託」が方法として考えられると思います。

ご両親がお持ちのご資産のうち、ご長男様の生活のために残したいと思う財産について

二男様へ信託をするのです。そうすることで、最終的には二男様がご長男様のために

財産管理をする体制を構築することができます。

ご事情によって適切な手段は異なりますので、じっくりご検討ください。

 

2022.02.19

遺言書のススメ

[相談]

私は先日夫を亡くしました。私には子がおらず、父母・祖父母はすでに他界しており

兄弟姉妹・甥姪もいないため、身寄りがありません。

私が亡くなったら、面倒を見てくれている亡夫の姪に財産を渡したいと思っていますが

どうすれば良いでしょうか。

[回答]

亡ご主人の姪御さんはあなたの法定相続人ではありません。

あなたには法定相続人がいないため、遺言書がない限りあなたの遺産は原則国庫に帰属します。

姪御さんにお世話になっていたり、今後お世話になったりなどの事情から

あなたが亡くなったあとに残った財産を姪御さんに渡したいときは

遺言書を作成されることを強くお勧めします。

[詳細解説]

法定相続人がいない(相続人不存在)場合、相続開始時から相続財産は法人となり

家庭裁判所によって選任された相続財産管理人が相続財産を管理し

相続人を捜索し、相続財産を精算する手続きを行うことになります。

あなたが亡くなったあと遺言がない場合でも、上記の一連の手続きで

姪御さんが療養看護に努めたことなどを以って、特別縁故者として相続財産の分与を家庭裁判所に請求し

認められれば相続財産の全部または一部を姪御さんが受け取ることができます。

 

ただし、姪御さんが確実に財産を受け取れる方法ではありません。

また、家庭裁判所の手続きが煩雑であり、時間もかかります。

姪御さんに遺贈する旨の遺言書を作っておくことが確実です。

遺言は、作成の方式を満たし、遺言の要旨が明らかであれば自筆証書であっても

公正証書であっても効力は同じですが、自筆証書による遺言は

法務局で遺言書の保管をしない限り家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。

 

一方、公正証書による遺言は、検認の手続きが不要であることと

公証人が遺言者本人の遺言意思を確認して作ってくれることから遺言の要旨も明らかであるため

紛争が生じる恐れも少なくなります。

したがって、遺言をされる場合は、公正証書で作成されることをお勧めします。

その他ご参考までに、近年高齢の方たちが相続人になるケースで散見される相続の課題として

推定相続人に行方不明者や認知症の方がいる場合があります。

遺産分割協議は、全員が参加し、相続人のうち誰が

何を、どれだけ相続するかを話し合わなければ成立しません。

当事者の行方が分からない場合であっても、認知症で相続の意思を表明できない場合であっても

そのような相続人を含め、全員が参加する必要があります。

行方が分からない相続人がいるときは相続財産管理人に

認知症などで判断能力の不十分な相続人がいるときは

後見制度を利用し後見人にそれぞれ相続人の代理人になってもらい

遺産分割協議に参加してもらうことになります。

これらの制度は状況や事情によっては使えず、遺産分割が進められないこともあります。

このような相続関係が予想されるときは

遺言を作成して遺産分割協議の余地をなくすことが必要です。

2022.02.15

個人間取引で住宅を購入した場合の住宅ローン控除限度額

[相談]

私は昨年(令和3年)、築10年の中古マンションを個人(個人事業者でない個人)から

4,000万円で購入し、居住を開始しました(なお、同額の住宅ローンを利用しています)。

その購入したマンションについて、令和3年分の所得税確定申告で

住宅ローン控除の適用を受けようと考えているのですが

私の住宅ローン控除限度額はいくらになるのでしょうか。教えてください。

[回答]

ご相談の場合、住宅ローン控除限度額は20万円であると考えられます。

[解説]

1.住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)制度の概要

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が、国内において住宅の取得等をして

これらの家屋を令和3年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合において

その人がその住宅の取得等に係る住宅ローンの金額を有するときは

原則として、その居住の用に供した日の属する年以後10年間の各年のうち

その人のその年分の合計所得金額が3,000万円以下である年について

その年分の所得税の額から、一定の住宅ローン控除額(住宅借入金等特別税額控除額)

を控除するという所得税法上の制度です。

2.住宅ローン控除額の計算方法の概要

上記1.の住宅ローン控除額は、原則として

その年の12月31日における住宅ローンの残高(年末残高)に一定の控除率を乗じて計算されます。

なお、住宅ローンの年末残高には上限が設けられており、具体的には、居住年が令和3年で

かつ、その居住に係る住宅の取得等が「特定取得」に該当するものであるときは

4,000万円と定められています。

上記の「特定取得」とは、購入した住宅の対価の額等に

8%または10%の税率で計算された消費税額等が含まれているものを指します。

今回のご相談の場合、個人事業者でない個人から中古マンションを購入されたとのことですが

そのような個人事業者でない個人同士での建物の売買については

消費税はかからないことと定められています。

このため、ご相談の中古マンションの購入は

上記の「特定取得」には該当しないこととなります。

「特定取得」でないマンションの購入について利用した住宅ローンの

上限額は2,000万円と定められており、その場合の控除率は1%と定められています。

したがって今回のご相談の場合、住宅ローン控除限度額は2,000万円の1%

すなわち20万円になるものと考えられます。

2022.02.06

借金をしてアパート建築。これは相続税対策になるの?

[相談]

昔は家庭菜園として利用していたものの、現在は放置している土地があります。

先日、とある業者から、その土地の上にアパートを建てることを提案されました。

そのような資金は手元にないと断ったところ、ローンを組めば相続税対策にもなる

と言われたのですが、本当でしょうか?

[回答]

恐らく、資産となるアパートの相続税評価額と債務となる借入金の相続税評価を比べて

資産の方が評価額が下がること、また、現在更地となっている土地をアパートの敷地と

することで相続税評価額が下がることからそのような話があったのかと推測されます。

ただし、相続発生時期により、アパートの相続税評価額と借入金の残額とのバランスは

変動するため相続税対策になるとは一概に言い切れないことと

仮に相続税が下がったとしてもそのアパートの収益性に問題があるような場合には

「負」の財産になりかねません。よく検討されることをお勧めします。

[詳細]

1.アパート(貸家)の相続税評価額
   アパート等の貸家の用に供されている家屋の相続税評価額は

   原則、以下の算式により計算します。

貸家の固定資産税評価額ー(貸家の固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)

2.債務
   アパート建築をするために借り入れた金額は

   相続開始日現在の借入金残額を債務として相続財産から控除します。

3.敷地の評価額

 敷地の相続税評価について、アパート用の敷地である場合の宅地の評価額は

   貸家建付地として、原則、以下の算式により計算します。

自用地評価額ー(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

4.事例検証

アパート(貸家)の固定資産税評価額5,000万円、借家権割合30%、賃貸割合100%(満室)

相続開始日現在の借入金残高8,000万円

  1. アパート用の敷地の自用地評価額1億円、借地権割合80%、借家権割合30%

 上記の場合の相続税評価額は、

  1. 財産(貸家):5,000万円ー(5,000万円×30%×100%)=3,500万円
  2. 財産(宅地):1億円ー(1億円×80%×30%×100%)=7,600万円
  3. 債務(借入金残高):8,000万円

となり、

(3,500万円+7,600万円-8,000万円)=3,100万円が相続財産の額となります。

また、アパート用の敷地が仮に小規模宅地等の特例を適用できる

貸付事業用宅地等に該当してすべて適用できた場合には

3,800万円(7,600万円×50%)をさらに減額することができます。

他方、何もしなければ、宅地の自用地評価額1億円が相続税評価額となるため

その差は歴然です。

相続税額の軽減という視点では得ですが、借金8,000万円を相続人が今後

返済していかなければならない、という点に着目をした場合

この借金を完済できる収益性がそのアパートにあるのか

をよく考えなければなりません。

アパートは、建築年数や立地等によっては入居人が立ち退いた後の

次の入居人が即時に決まらないケースがあるなど、収益性の検討とともに

経年劣化等による修繕費の発生なども考慮する必要があります。

今回は分かりやすく相続税額が軽減する事例をご紹介しましたが、目先の相続税対策だけにとらわれることなく

総合的に考えることが肝要です。借金をしてまでアパート建築をすべきかどうか、慎重に検討されるとよいでしょう。

2022.01.30

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制見直しの概要

経緯

従前より、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、あるいは判明しても

その所在が不明で連絡がつかない「所有者不明土地」について

管理がされず放置される、あるいは民間取引が阻害されるなどの問題が発生しており

高齢化による死亡者数の増加により、今後ますます深刻化するおそれが指摘されていました。

趣旨

このような所有者不明土地が生じる主な原因が、相続登記の申請が義務ではなく

相続登記や所有者の住所変更登記がされないことにあったことから

所有者不明土地の発生予防とすでに発生している所有者不明土地の利用円滑化の観点から

総合的に民事基本法制が見直されることとなり、2021年4月28日、民法等の一部を改正する法律

及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律

(相続土地国庫帰属法)が公布されました。

改正のポイント

両法律による改正のポイントは、

 ①不動産登記制度の見直し
 ②相続土地国庫帰属制度の創設
 ③土地利用に関連する民法の規律の見直し

の三点にあります。

一つ目の不動産登記制度の見直しの主な内容は、相続登記・住所変更登記申請を義務化すると同時に

義務履行の負担を軽減する観点から、相続人申告登記という従前より簡易な登記手続が新設されたことです。

相続人申告登記では、登記名義人たる被相続人(亡くなられた方)の出生から

死亡に至るまでの戸除籍謄本等の提出は不要となり、申出をする相続人自身が被相続人の相続人

であることがわかる戸籍謄本を提出することで足りるようになります。

令和6年4月1日より施行されます。

住所変更登記申請の義務化の施行日は現時点では未定です

(公布後5年を超えない範囲で政令で定めるとされています)。

また、二つ目の相続土地国庫帰属制度とは、相続等により土地所有権を取得した相続人が

一定の要件のもと法務大臣の承認を受け、当該土地所有権を国庫に帰属させることができる制度です。

ただし、建物が存する土地等、通常の管理又は処分をするにあたり過分の費用又は労力

を要する土地に該当する場合には、却下・不承認となることや、土地管理費相当額の負担金を

納付する必要があることに注意が必要です

(参考として、原野で20万円、市街地の宅地(200㎡)で80万円程度とされています)。

令和5年4月27日に施行されます。

三つ目の土地利用に関連する民法の規律の見直しの主な内容は

所有者不明土地・建物管理制度が創設されたことや、遺産分割に時的限界が設けられたことです。

前者について、現行法上の不在者財産管理人、相続財産管理人等が

対象者の財産全般を管理する人単位の仕組みだったのに対し

特定の土地・建物に特化して管理を行う管理人を選任してもらうことができるのが

所有者不明土地・建物管理制度です。

また、後者について、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割は

原則として法定相続分によることになります。令和5年4月1日に施行されます。

以上のとおり、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しの内容は多岐にわたり

実務に与える影響も小さくないものと思われますので

不動産や相続手続に関与する専門家は十分に理解しておく必要がありそうです。

2022.01.22

相続登記の義務化等の施行日が決まりました

[質問]

相続登記の義務化がスタートすると聞きましたが、具体的に、いつから何が変わりますか?

[回答]

長年相続登記がされていないことにより、現在の所有者が不明となっている土地の問題を解消するために

不動産に関するルールの見直しがされ、今般、施行日が定められました。

相続登記に関連する改正については、以下のとおり施行(スタート)されます。

 

1.相続登記の義務化(令和6年4月1日施行)

相続や遺贈により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り

かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

施行日(令和6年4月1日)よりも前の相続開始の場合についても、適用されます。

令和6年4月1日よりも前に相続人として所有権を取得したことを知っていた場合には

令和6年4月1日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

 

また、遺産分割が3年以内に整わない場合は、3年以内に相続人申告登記の申出

(法定相続分での相続登記の申請でも可)を行った上で、遺産分割が成立した日から3年以内に

その内容を踏まえた相続登記の申請をしなければなりません。

2.相続人申告登記(令和6年4月1日施行)

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と

②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで

相続登記申請義務を履行したものとみなされます

(登記簿に氏名・住所が記録された相続人の申請義務のみ履行したことになります)。

この手続きは、所有権を取得したことを登記するものではありませんので

遺産分割が整った場合には、相続登記の申請が必要となります。

3.遺産分割に関する民法のルール変更(令和5年4月1日施行)

相続開始から10年を経過した後にする遺産分割は

原則、具体的相続分(特別受益や寄与分を考慮した相続分)ではなく

法定相続分(又は指定相続分)によることとなります。

10年を経過した後であっても、相続人全員の合意があれば

具体的相続分による遺産分割(寄与分等を考慮して法定相続分と異なる分割をすること)

を行うことは可能です。

4.その他

その他、主な改正の施行日は以下のとおりです。

  1. 相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)
  2. 所有不動産記録証明制度(未定ですが令和8年4月までに施行)
  3. 住所等変更登記の義務化(未定ですが令和8年4月までに施行)
  4. 職権による住所等の変更登記(未定ですが令和8年4月までに施行)
2022.01.14

姪を保険金受取人に指定できますか

[相談]

近所に住んでいる姪(以下、Aさん)に、日頃から私の生活の介助をしてもらっています。

私が死んだ後にお礼の意味も込めて、私が自らを被保険者として掛けている生命保険の

受取人になってもらおうと思うのですが、可能でしょうか。

可能であれば、この生命保険の受取人を子から変更をしようと思います。

何か問題があれば教えてください。

【生命保険の契約内容】

  1. 契約者(保険料負担者):私
  2. 被保険者:私
  3. 死亡保険金受取人:子
  4. [回答]

  5. ご相談者の“姪”であるAさんを、受取人とすることは可能ですので
  6. 変更できるかと思いますが、念のため契約されている生命保険会社へ
  7. 事前に問い合わせていただくといいと考えます。
  8. なお、ご相談者の相続時には、この生命保険金は相続財産とみなされて
  9. 相続税の課税対象となります。
  10. その際に、仮にお子さん等が存命であれば、Aさんはご相談者の養子でなければ
  11. 相続人にはなれませんので、この生命保険金に係る非課税の適用を受けることができません。
  12. また、受取人変更に伴うトラブルにもご注意ください。

[詳細解説]

1.保険金の受取人

保険金の受取人となることができるのは、保険会社によって異なりますが

「被保険者の戸籍上の配偶者および二親等内の血族」の範囲内と定められていることが一般的です。

具体的には、被保険者からみて、祖父母、父母、子、兄弟姉妹、孫が該当します。

ご相談のケースでは、受取人としたいAさんが被保険者であるご相談者からみて

姪の立場であることから、受取人となることは可能だと考えます。

この受取人の指定は、加入時に契約者が行いますが

契約後も被保険者の同意を得て途中で変更することが可能です。

したがって、ご相談のケースでは受取人の変更も可能かと思われますが

念のため、契約された保険会社へ事前にお問合わせいただくといいと考えます。

なお、保険会社によっては、個別事情の詳細を報告することで

内縁関係にある者、婚約者、共同経営者等の指定を認める場合もあります。

上述の範囲外の人を指定したい場合は、個別に保険会社や取扱代理店などに確認が必要です。

2.税務上の取扱い

受取人を指定・変更する際は、受取人を誰にするかで

税務上の取扱いが変わることもあるため、注意が必要です。

例えば、契約者=保険料負担者=被保険者=被相続人の契約において

死亡保険金受取人が相続人の場合、受け取った死亡保険金は、相続税の計算上

死亡保険金の非課税(500万円×法定相続人の数)を適用できます。

他方、受取人が相続人以外の場合は、死亡保険金の非課税を適用することができません。

ご相談のケースでは、お子さんがいらっしゃるようですので

仮にお子さんが存命である中で相続が発生した場合には

Aさんがご相談者の養子にならなければ相続人となることはできません。

仮にAさんが相続人とならなければ、上記の非課税は適用できないことにご注意ください。

なお、受取人を変更されるのであれば、変更後の受取人となるAさんへの事前説明や

今回の生命保険についてお子さんが受取人だと知っている場合には

お子さんへの説明も同時にご検討ください。

特に、死亡保険金は相続税の課税財産となるため、相続税を計算する上で加算しなければならず

他の相続人にも当然知られます。

そうなることによって、親族間でのトラブルに発展する可能性も考えられるため

受取人の変更は慎重に検討されることをお勧めします。

2022.01.09

賃貸人からの解約~賃貸借契約書がない場合

[相談]

築40年の貸家を相続しました。

当初から賃借人との間で賃貸借契約書は作成されておらず、一定の賃料が支払われているだけで

契約期間も定まっていません。また、賃料と保証金以外は把握しておらず

賃貸人に賃貸借契約を解約する権利があるか否かも分かりません。

私は、貸家から離れた場所にある持家に住んでおり、今後、自ら使用する予定はなく

建物の維持管理にも手間がかかるため、この貸家を売却したいと考えています。

貸家の立地は、交通利便性や住環境がよいため、売却額が高く見込める更地として売却したいのですが

そのためには、賃借人との間で賃貸借契約を解約し退去してもらう必要があります。

賃貸借契約書を作成していない場合でも、賃貸人が契約を解除することは可能でしょうか。

[回答]

建物の賃貸借においては、原則として借地借家法が適用され

下記詳細解説にある“正当事由”に該当しないため、賃貸人からの一方的な解約手続だけでは

解約合意の意思表示をしていない賃借人の退去は難しいと思われます。

仮に賃借人の退去を希望される場合は

立退交渉等について弁護士等にご相談をされることをお勧めします。

[詳細解説]

1.賃貸借契約とは
賃貸借は、民法第601条において、「当事者の一方がある物の使用及び収益を

相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び

引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって

その効力を生ずる」と規定されています。

つまり賃貸借契約は、この賃貸借について法的効果を生じさせる行為をいいます。

2.賃貸借契約書の有無による解約
民法では、売買契約は当事者の口頭による合意だけで成立するとされており

必ずしも書面(契約書)の作成は必要ではありません(民法第555条)。

これは賃貸借契約も同様で、賃貸借契約書がなく

口頭で取決めされた内容であっても、賃貸借契約の効力は有効です。

賃貸借契約書がある場合は、通常、契約期間が定められており

賃貸人が期間内に解約することができる旨の期間内解約条項がなければ解約はできません。

他方、賃貸借契約書がなく、口頭でも賃貸借の期間の定めがない場合に

民法では、当事者はいつでも3ヶ月の予告をもって

賃貸借契約を解約できるものと定められています(民法第617条)。

3.ご相談のケースの場合
今回は、上記2.の民法に従えば、賃貸借契約書がないため

当事者はいつでも3ヶ月の予告をもって、賃貸借契約を解約できるようにみえます。

しかし、賃貸借の期間内解約に関する

上記2.の民法の規定は、借地権者や建物の賃借人を保護する目的の借地借家法が

適用される場合には、特別法である借地借家法の規定が優先的に適用されることになります。

今回の賃貸借契約の場合は、借地借家法が適用されますので

民法の期間内解約の内容が、下記の通り修正されることになります。

  1. ①賃貸人による期間内解約の申入れは、6ヶ月の予告が必要であること(借地借家法第27条)。

    なお、賃借人による期間内解約の申入れは、民法の規定に則り3ヶ月の予告で期間内解約ができます。

  2. ②建物賃貸借の解約申入れには、借地借家法第28条に定める正当事由が必要であること。

    賃貸人側の正当事由としては、「賃貸人が居住する等の建物使用の必要があること」

  3. や「建物の老朽化による大規模修繕等の必要があること」等があげられます。
    更地での売却を希望する等といった理由で、賃借人に退去を求めるという場合は
  4. ただちに借地借家法に定める正当事由が認められるとは限りませんので
  5. 財産上の給付(立退料の支払い等)をすることで
  6. 正当事由の具備が認められるか否かが論点となってきます。
  7. つまり今回のご相談のケースで賃借人の退去を希望される場合は
  8. 立退交渉等について弁護士等にご相談をされた上で慎重に進めていかれることをお勧めします
  9. なお、弁護士法第72条に抵触するため、宅建業者が立退交渉を代理することはできませんが
  10. 請求の価格(立退料)が140万円以内であれば
  11. 法務大臣の認定を受けた司法書士が立退交渉を代理することは可能です。

このように、長年保有している財産を相続した場合

後から問題となるケースは少なくありません。相続は生前からの対策が重要です。

2021.12.25

配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合

[相談]

30年前、父が建売住宅を購入して、そこに家族で住んでいました。

弟はすでに独立し、長男である私は結婚後に、この家をリフォームして現在二世帯で暮らしています。

先月、父が死亡し、これから遺産分割協議をするのですが、母が死亡した後の相続を考えると

この家は母が存命の間に私が相続しておきたいと考えています。

とはいえ、母としても何かあったときにこの家から追い出されるのではないか

との懸念もあるようなので、配偶者居住権を設定しておきつつ

建物と土地は私が相続することでどうか、と提案したところ

母から了承を得ました。

弟には弟の相続分も考えて伝えたところ、母がいる手前か

概ね了承してくれています。

この相続によって相続税がいくらかかるのか試算したいのですが

仮に私がこの土地建物を相続した場合、相続税評価額はどうやって計算するのでしょうか?

[回答]

まず、建物部分については、建物全体の相続税評価額から

配偶者居住権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。

土地部分も同じく、土地全体の相続税評価額から敷地利用権の価額を

控除した金額が相続税評価額となります。

なお、土地部分については一定の要件を満たした場合

小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

[詳細]

1.配偶者居住権・敷地利用権とは

配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に

相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。

この配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合

その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して

配偶者が相続等により取得したものと考えられています。

この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。

2.配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合

ご相談のケースで、お父様(以下、被相続人)が所有していた

居住用の土地建物について、配偶者居住権・敷地利用権(以下、配偶者居住権等)

を設定した上で相続した場合の相続税評価額は

それぞれ次の算式により計算します。

建物の相続税評価額:建物全体の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額
土地の相続税評価額:土地全体の相続税評価額 - 敷地利用権の価額

いずれも

まずは配偶者居住権等の価額を計算した上で控除することとなる点にご留意ください。

なお、土地については、小規模宅地等の特例の要件を満たした場合には

小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。その点もあわせてご注意ください。

2021.12.18

賃貸住宅と電気自動車用の充電設備

[相談]

賃貸住宅の大家業を営んでいます。今回、新たに賃貸住宅を建築することになったのですが

付加価値を高めるためEV(電気自動車)用の充電設備を設置することを業者から勧められています。

しかし、EVの普及はそれほど進んでいないようにも思われ、

なによりも設置費用がかかるのでどうしようか迷っています。

賃貸住宅に電気自動車用の充電設備を設置することのメリットとデメリットを教えてください。

[回答]

「EV」というと純粋にバッテリーの電気だけで走る車をイメージしがちですが

広い意味では「ハイブリッド自動車(HV)」、「プラグインハイブリッド自動車(PHV)」

「燃料電池自動車(FCV)」も「EV」に含まれます。

このため、純粋にバッテリーの電気だけで走る自動車を「BEV(Battery Electric Vehicle)

」ということもあります。これらのうち、外部の充電設備を必要とするものが「BEV」と「PHV」です。

この「BEV」と「PHV」ですが、現時点での普及率は両者を合わせても1%強に過ぎず

我が国でエコカーといえば「HV」が代名詞という状況が続いています。

これは「BEV」と「PHV」の車種が国産車ではコンパクトカーやセダンタイプ

外国車では高級車に限られるため消費者が選択できる車種が少ない一方

「HV」はコンパクトカーから売れ筋のミニバンやSUVまで幅広い車種が揃っているという

商品選択上の理由という側面もありますが

なによりも住宅事情が大きいものと思われます。

 

一戸建て住宅であれば、最近では大手ハウスメーカーを中心に

EV用の200Vのコンセントが標準装備となるなどEVと親和性が高いのですが

既存の分譲マンションの場合は、管理組合の同意が必要となり充電器を設置するハードルが高く

新築でも充電設備を設置している分譲マンションはまだまだ少数です。

賃貸住宅の場合も、借主が設置を希望しても結局は家主次第ということになります。

したがって、人口が多く共同住宅の比率が高い大都市部では

住宅事情により「BEV」や「PHV」に乗りたくても乗れないという人も多く

結果的に普及の足かせとなっています。

現状のように「BEV」や「PHV」の普及が進んでいないなかで

ご質問にある新たな賃貸住宅に充電設備を導入するメリットとデメリットは以下のように考えられます。

(メリット)

  1. ①現時点でEV用の充電設備を導入している賃貸住宅は少ないので
  2.  BEVやPHVを所有する入居希望者に対してはアピールポイントとなる。
  3. ②設置の際、国などの補助金を活用できる可能性がある。

(デメリット)

  1. ①現在の「BEV」や「PHV」の普及率では、充電設備を設置したとしても
  2.  使用を希望する入居者がなかなか現れず、費用倒れになる可能性がある。
  3. ②誰がどれだけ電力を使用したかの把握に工夫が必要となるとともに
  4.  使用料を徴収するための手間とコストがかかる。

 国も共同住宅における充電設備の増加が「BEV」や「PHV」の普及の鍵と考えているようですし

 電力事業者なども設置者の負担にならない形での導入を促進する施策を講じるようになっています。

 賃貸住宅は今後20年、30年と稼働を続けるものですし

 なによりも大切なことは長期間に渡って入居率を維持し、物件の価値を保っていくことです。
 そのなかでEV用の充電設備の導入がそれにどう資するのか。

 それは、立地や入居者のターゲットにより異なってきます。

 したがって、自身が建てられる物件の特性をよく分析された上で導入の是非を判断されるのがよいのではないでしょうか。

2021.12.11

未登記の建物を相続した場合

[相談]

相続した実家の建物が登記されていないことが分かりました。

建物が登記されていない理由は何が考えられるのでしょうか。

また、そのまま登記しない場合、何か問題はありますか?

[回答]

建物の未登記の要因としては、

“登記は任意である”と誤った認識をお持ちであった

という可能性が考えられます。

また、未登記の状態であると、法律上の問題の他、第三者への対抗などで

デメリットが生じると考えます。

[詳細解説]

1.建物の未登記

 建物を建築等した場合には、主に以下①→②の順に登記を行います。

  1. ①建物表題登記:建物の構造・床面積等の物理的状況を明らかにする登記
  2. ②所有権保存登記:所有権の登記のない不動産について、最初に行う所有権の登記
  3. ①は、不動産登記法により、その建物の所有権を取得してから1ヶ月以内に
  4. 登記を行わなければならないと定められており、登記を行う必要があります。
  5. 他方、②は、①のように義務ではなく任意となりますが、
  6. 住宅ローンを利用する場合は、金融機関が当該建物に抵当権を設定するため
  7. ②の登記が必須となります。

したがって、建物が未登記の理由の一つとしては、住宅ローンを利用せず建物を建築したため

②の登記が任意となり、①の登記も行う必要がないといった誤った認識のもと

未登記の状態になっていることが考えられます。実際、未登記建物は数多く存在します。

なお、登記されていない建物は、「未登記建物」といわれています。

2.未登記建物であることでの問題点

(1)法律上の問題
未登記建物であることの問題については、法律上の義務である上記1.

①の建物表題登記がなされていない

厳密にいえば罰則が科せられる可能性がある状態であることとなります。

また、相続による所有権の移転登記や住所変更登記に関しては

法律で義務付けられる改正がなされています。その点もあわせてご注意ください。

(2)第三者への対抗
未登記建物であると、その建物の所有について第三者へ主張することが困難です。

(3)税務上の問題
建物が未登記であるということは、その建物が建っている敷地部分に

建物がない状態で固定資産税が課税されている可能性が考えられます。

通常、土地の上に住宅が建っている場合の当該土地に係る固定資産税は

更地である状態よりも軽減措置が設けられています。

3.未登記建物の登記手続き

相続した未登記建物を第三者へ売却する際、上記1.①及び②の登記が必須となります。

将来の売却を予定されている場合は、予め登記しておくとよいでしょう。

なお、上記1.①には、登録免許税は課税されませんが

上記1.②の登記には課税(固定資産税評価額の4%)されますので、ご注意ください。

また、この登記手続きは、通常、土地家屋調査士もしくは司法書士

(以下、専門家)に依頼しますが、ご自身で行うことも可能です。

なお、専門家に依頼される場合は、建築当時の設計図面などがあれば

費用を軽減できる可能性がありますので

設計図面の有無について、事前に確認されるとよいでしょう。

建物全体が未登記であることの他、増築や改築部分が登記されていないこともあります。

建物が登記されている場合でも、建築当時の設計図面があれば

現状と比較し、増築や改築による未登記部分が生じていないか確認されるとよいでしょう。

未登記建物を相続された場合は、専門家に相談の上、適切に対処されることをお勧めします。

2021.12.04

相続した実家を売却したい

[相談]

親が亡くなり、実家を相続することになりました。私には持ち家があり

住む予定もないため、売却する予定です。実家は築後50年を経過し定期的な修繕も行っていないため

現状のまま利用することは困難です。

こうした場合、家屋を取り壊してから売却した方がよいのでしょうか?

[回答]

利用困難な建物が土地上に建っている場合でも、基本的には「建物解体更地渡し」の条件付きで

古家付きのまま販売を開始することが多いです。

[詳細解説]

1.固定資産税の軽減措置

古家付きのまま販売を開始する理由の一つは

固定資産税(都市計画税含む。以下同じ)の住宅用地(住宅の敷地)に対する軽減措置です。

固定資産税は、毎年1月1日現在の所有者に課税されますが、住宅用地の場合

固定資産税の計算の基礎となる課税標準額は、たとえば面積200㎡以下の小規模住宅用地であれば

固定資産税評価額(価格)の6分の1(都市計画税は3分の1)に軽減されます。

そのため建物を取り壊し更地の状態で1月1日を迎えた場合

住宅用地の軽減措置の対象外となり、固定資産税は大幅に増加します。

実務的には、不動産取引の現場では、古家付きの土地の場合は

「建物解体更地渡し」の条件付きで販売し、売買契約締結後に

建物を取り壊して更地の状態で買主へ引き渡すことが通例になっています。

ただし、早い段階で更地にした方が売りやすくなる場合もありますので

販売状況や1月1日までの期間を見計らいながら

更地の状態で販売するために、前倒しで建物の解体を行うこともあります。

2.空き家の3,000万円特別控除

建物が昭和56年5月31日以前に建築されているなど一定の要件を充たすことで

“空き家の3,000万円特別控除”といわれる税制措置が利用できる可能性があります。

この制度の利用により税負担を軽減することができますので

譲渡所得が発生する場合は、税制措置の利用可否について

事前に確認されることをお勧めします。

2021.11.27

生命保険を活用した相続対策

[相談]

私が亡くなると相続人は成人した子ども2人です。

私の財産は、自宅マンションと預金を合わせて大体5,000万円程度となります。

生命保険には入っていないのですが、先日子どもから、相続対策に生命保険に入ったらどうか

といわれました。本当に対策になるのでしょうか?

[回答]

生命保険は、相続対策によく使われる金融商品の一つですが

それには相続を迎える前に考えておきたい「相続財産の評価」「遺産分割」「流動性資金の準備」

の3つの面でメリットがあるからです。

[詳細]

1.現行の相続税の計算

現行の相続税法による相続税の計算は、

まず相続または遺贈などにより財産を取得した各人の課税価格を計算します。

この課税価格には、預金などの他にも、いわゆる“みなし相続財産”といわれる生命保険金や

退職手当金等も含まれ、相続により引き継いだ債務や負担した葬式費用などを控除した後の金額をいいます。

この課税価格を合計し、そこから基礎控除額を差し引いた金額に対して相続税が課税されます。

この場合の基礎控除額とは、次の算式により計算した額です。

3,000万円+600万円×法定相続人の数(※)
(※)法定相続人の数は、相続を放棄したとしても

その放棄がなかったものとした場合の相続人の数です。

ご相談の場合、法定相続人が2人であるときの基礎控除額は、4,200万円(3,000万円+600万円×2人)です。

仮に課税価格の合計額が5,000万円だったとすると

基礎控除額を差し引いた800万円に対して相続税が課税されることとなります。

2.預金を生命保険に変えたことによるメリット

同じ相続財産として課税されるとしても、それが預金であるか死亡保険金であるかによって

主に以下の違いがあります。

(1)相続財産の評価

現預金は100%相続税の課税対象になりますが

死亡保険金には以下の非課税枠があります。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
※ただし、契約者と被保険者が同一で死亡保険金受取人が法定相続人の場合に限ります。
例)法定相続人が子2人の場合、非課税枠は500万円×2人=1,000万円となります。

(2)遺産分割

生命保険の場合、受取人をあらかじめ指定するため

大切な人に確実に資産を遺すことができます。法定相続人以外にも財産を遺せます。

ただし、原則、死亡保険金受取人は、被保険者の配偶者または2親等内の血族の範囲内で指定することになります。

保険会社によっては配偶者や2親等内の血族以外の人を受取人として認める場合もありますので

事前に保険会社へ確認されるとよいでしょう。

なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には

上記(1)の非課税枠の適用はありませんので、ご注意ください。

(3)流動性資金の準備

相続が発生して銀行口座が凍結された場合、預金は容易に引き出せなくなります。

しかし、死亡保険金は受取人からの請求により速やかに支払われますので

葬儀費用や入院費用、当面の生活費といった費用に充てることができます。

どういった資産の種類をどのような割合で保有しておくことが最適なのかについては

その方のライフスタイルに応じて

また、一度決めたとしてもその後の年齢や住環境の変化により変わる場合もあります。

 

2021.11.20

生前贈与で節税ができなくなるかもしれません

相続税対策としてポピュラーな生前贈与。

現金や自社株を毎年少しずつ移している方もいらっしゃる

かと思います。この生前贈与で相続税対策ができなくなると

巷で噂されていますが、一体どういうことでしょうか。

Ⅰ 相続税対策としての生前贈与とは?

そもそも、なぜ生前贈与が相続税対策となるのでしょうか。

例えば5,000万円財産をお持ちの方がいたとします。

相続人は子供2人のみ、毎年子供それぞれに110万円ずつ贈与する前提です。

(もらう人1人あたり、年間110万円まで贈与税がかからないため)

上図のように、生前にまったく贈与をしない場合

基礎控除(3,000万円+600万円×相続人の人数)を引いた後の

課税遺産額が800万円となり、相続税額は80万円かかります。

対して、220万円の贈与を4年間行ったのちに3年が経過すると

遺産の総額が基礎控除以下となるため、相続税の申告は不要

相続税額は0円となります。

Ⅱ なぜ改正されるのか

贈与税は、生前に財産を減らして相続税を免れることを防止するために

同じ財産額であれば、相続税より高い税率が設定されています。

しかし、少額の贈与から課税すると徴税事務が煩雑なため

年間110万円まで贈与税がかからないとされているわけです

そのため、複数年にわたり贈与することで相続税を節税することが

可能になってしまっています。政府の税制調査会では

相続税の最高税率は55%だが、贈与税の申告をする方の90%以上が

贈与税率10%~20%の少額の贈与となっており

贈与税が相続税逃れの抑制になっていないと問題視しています。

そのため、以下のような改正を検討しているのではないかと考えられます。

早ければ来年度予算の開始時期の令和4年4月以降、改正・適用される可能性があり

生前贈与は今年がラストチャンスかもしれません。

Ⅲ 暦年贈与を行う際の注意点とは?

改正前の現在はまだ相続税対策として有効な生前贈与ですが

行う上で注意すべき点があります。

1. 贈与はあげた人、貰った人の認識(意思表示)が重要です。

贈与は法律上の契約とされており、あげた人の意思表示

もらう人の意思表示が必要です。

そのため

・認知症の親が贈与をする親が保管する

・子名義の銀行口座に振り込んだだけ

などは贈与と認められません。

2. 贈与額が年間110万円を超える場合、贈与税の申告が必要となります。

贈与された額が年間110万円を超える場合、贈与した年の翌年3月15日までに

贈与税の申告と納税が必要になります。ただし、生活費や学費など扶養義務の

範囲内で金銭等を贈与する場合、贈与税は非課税です。

2021.11.13

小規模宅地の特例の適用に関する裁判で国が勝訴しました(但し東京高裁です)

相続人の事業により被相続人の生計の維持が必要

東京高等裁判所は、被相続人が所有する土地上で事業を営んでいた控訴人(被相続人の親族)が

相続で取得した土地に「小規模宅地特例」が適用されるか否かを巡り争われた事件について

控訴人の控訴を棄却しました

東京高裁は、控訴人が営んでいた事業により被相続人の生計が支えられていたとはいえないことなどから

本件土地は、同特例の適用対象となる「被相続人と 生計を一 にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等

には該当しないと判断しました

生計一か否かが問題になります

被相続人の甥であり養子である相続人Aは、被相続人が所有する本件土地上で大工業を営んでいました。

相続人Aは、被相続人と同居していなかったものの、生前から日常の世話をしており

被相続人が老年期認知症にり患したことに伴って被相続人の成年後見人として

財産管理を行うことになりました。

平成26年8月に被相続人が死亡したことにより、相続人Aが本件土地を相続しました。

相続人Aが,本件土地に小規模宅地の特例の適用があることを前提に相続税の申告を行いましたが

国が更正処分等を行ったことで裁判となりました。

争点は、本件土地が「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等(特定事業用宅地等)

に該当するか否かが問題となりました。

東京高裁の判断・・・国の更正処分等は適法

東京高裁は、まず,小規模宅地特例の趣旨について

「被相続人の事業の用に供されていた宅地等」は、被相続人の生前から

一般にそれが事業の維持のために欠くことのできないものであって

その処分について相当の制約を受けることが通常であることを踏まえて

相続財産としての担税力の有無に着目し、相続税の負担の軽減を図ることとしたものであるとし

被相続人から「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」を相続した場合も

その宅地等には担税力がないため、相続税の負担の軽減を図る必要があるとした。

そして、「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」は

相続人の生計だけでなく, 被相続人の生計 をも支えていた相続人の事業の用に供されていた宅地等を指しており

被相続人の生計が支えられていない場合には、相続人の営む事業は被相続人の生計とは関係がないため

被相続人が生前、同宅地等を処分することに制限がなく、同宅地等に担税力の減少は生じていないことから

相続人の相続税の負担を軽減するという同特例の趣旨には当たらないとの解釈を示しました

その上で相続人Aが本件土地上で営んでいた大工業により、被相続人の生計が支えられていたとはいえないため

本件土地は「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」には該当しないと指摘したうえで

国の更正処分等は,適法と判断しました

2021.11.05

敷地利用権の相続税評価

[相談]

2020年4月1日より、主人が亡くなってもマイホームに住み続ける権利

(いわゆる「配偶者居住権」)を相続できると聞いています。

この配偶者居住権に付随する敷地利用権は、配偶者居住権と同様に

相続税が課税されると聞きました。

この敷地利用権は、具体的にどのように評価するのでしょうか?

[回答]

相続税を計算する上での敷地利用権は、敷地利用権の対象となる土地等の

相続税評価額からその価額に一定の複利現価率を乗じて計算した価額を控除した

金額により評価します。

[詳細解説]

1.敷地利用権とは

 配偶者居住権は建物に住む権利ですが、その配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合

その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して

配偶者が相続等により取得したものと考えられています。

この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。

2.敷地利用権の評価の考え方

 国税庁から公表されている「「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)」

によれば、敷地利用権の評価の考え方として、以下の記述があります。

・・・以下国税庁の情報から引用・・・

居住建物の敷地の所有者は、配偶者居住権存続期間終了時に居住建物の敷地を自由に

使用収益することができる状態に復帰することとなります。

この点に着目し、敷地利用権の価額は、居住建物の敷地について

所有権部分の「配偶者居住権存続期間終了時の価額(将来価値)」を求め

それを現在価値に割り戻し、居住建物の敷地の時価からその割り戻した

所有権部分の価額を控除した金額により評価します。

具体的には、

  1. ①配偶者居住権存続期間終了時の居住建物の敷地の時価を法定利率による複利現価率を
  2.  用いて現在価値に割り戻す(所有権部分の将来価値を現在価値に割り戻した価額を求める)
  3. ②居住建物の敷地の時価から①で求めた価額を控除して敷地利用権の価額を求めようとするものです。

なお、将来時点における土地等の時価を評価するのは不確実性を伴い困難な場合が多い

と考えられること等から、時価変動を捨象し、相続開始時の価額をそのまま配偶者居住権存続期間終了時の

時価として用いて計算します。

2021.10.30

離婚によって元夫が元妻に自宅マンションを財産分与した場合の税金

[相談]

夫妻の離婚が成立し、元夫は元妻へマイホームを財産分与しました。

この件に関し、その財産分与を行った元夫には経済的利益がないことから

所得税の課税は行われないとの認識でよろしいでしょうか。

[回答]

ご相談の財産分与については、譲渡所得課税が行われることとなります。

詳細は下記解説をご参照ください

[解説]

1.離婚による財産分与として不動産の移転があった場合の課税関係

民法では、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して

財産の分与を請求することができる。」と定められています。

所得税法上、民法の規定による財産分与による資産の移転については

財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であることから

その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により

その資産を譲渡したこととなるものとして取り扱われています。

したがって、今回のご相談の場合、離婚による財産分与により元夫から

元妻への不動産(マイホーム)の移転が行われたことから

財産分与をした元夫に対して譲渡所得課税が行われることとなります。

2.その他留意すべき事項

離婚時の財産分与による資産の移転は贈与ではないため

所得税法上のみなし譲渡課税の規定は適用されません。

また、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例については

その適用対象となる譲渡から、その個人の配偶者その他のその個人と

一定の特別の関係(※)がある者に対してする譲渡が除かれることと定められていますが

離婚による財産分与は配偶者への譲渡には該当しないことから

他の要件を満たしていればその特例を適用することが可能となります。

  1. ※特別な関係には、生計を一にする親族、家屋の譲渡後その譲渡した家屋で
  2. 同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人などが該当します。
2021.10.23

遺産分割における不動産の評価額

[相談]

亡夫の財産について遺産分割をしたいと考えています。

私たちには子がおらず、夫の両親もすでに亡くなっているため

相続人は私と夫の姉の2人です。

主な財産は自宅不動産と預貯金で、不動産は現在居住している

私が相続したいと考えていますが、遺産分割の際

不動産はどのような評価額を基に話し合いをすればよいでしょうか。

[回答]

不動産には固定資産税評価額、相続税評価額、時価など

様々な価格の捉え方がありますが、遺産分割の際には

基本的に相続人全員の合意があればどのような評価額を

基にしても問題ありません。
各相続人が取得する遺産の割合についても

法定相続分は定められていますが(民法900条)

相続人全員の合意があれば法定相続分に関わらず

分割の内容や取得割合を自由に定めることができます(民法907条)。

2021.10.09

住宅ローン控除とマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例は併用できますか?

[相談]

私は現在、住宅ローン控除の適用を受けています。

諸般の事情により、住宅ローン控除の適用を受けているその住宅(自宅)を

今年(2021年)中に売却し、同じく今年中に新しく住宅(自宅)を

購入することを検討しています。

現在の自宅の売却については売却益が出る見込みのため

マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例の適用を

受けたいと考えています。

同時に、新たに購入する自宅について住宅ローン控除の適用も受けたいと

考えているのですが、その併用は可能でしょうか。教えてください。

[回答]

ご相談の場合、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例と

住宅ローン控除の併用はできません。

[解説]

1.マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例の概要

マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例とは

正式名称を「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。

具体的には、個人が所有する居住用財産(マイホーム)を売却した場合において

その売却による利益(譲渡所得)から最高で3,000万円を控除できるという所得税法上の制度です。

なお、上記の「最高で3,000万円を控除できる」という部分について

売却したマイホームの所有期間の長短は影響を及ぼしません。

2.マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例の適用を受けるための要件

上記1.のマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例の適用を受けるための主な要件は

下記のとおりです。

  1. ①自分が住んでいる住宅等の売却であること
  2. ②過去に自分が住んでいた住宅等を売却した場合には
  3.  その住宅等に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却すること
  4. ③その年の前年又は前々年においてマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例等の適用を受けていないこと

3.住宅ローン控除制度の概要

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの取得等をし

令和3年12月31日までにそのマイホームに実際に住んだ場合で一定の要件を満たすときにおいて

その住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を

マイホームに実際に住んだ年分以後の一定の各年分の所得税額から控除するという所得税法上の制度です。

ただし、この制度は、そのマイホームに実際に住んだ年とその前年、前々年に

上記1.のマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例等の規定の適用を受けている場合には

適用しないことと定められています。

また、そのマイホームに実際に住んだ年の翌年以後3年以内の各年において

住んでいた住宅等を売却し、上記1.のマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例等の

適用を受ける場合にも適用しないと定められています。

つまり、マイホームに実際に住んだ年とその前2年・後3年の計6年間については

住宅ローン控除とマイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例は併用できないということです。

したがって、今回のご相談の場合についても、同じ年(2021年)において住宅ローン控除と

マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例の併用はできないこととなります。

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2021.10.01

配偶者居住権の相続税評価

[相談]

2020年4月1日より、主人が亡くなってもマイホームに住み続ける権利

(いわゆる「配偶者居住権」)を相続できると聞いています。

この配偶者居住権は相続税が課税されると聞きました。

具体的にどのように評価するのでしょうか?

[回答]

相続税を計算する上での配偶者居住権は、居住建物の所有権部分の

「配偶者居住権存続期間終了時の価額(将来価値)」を算出し

それを現在価値に割り戻し計算します。

その後、居住建物の時価からその割り戻した所有権部分の価額を

控除した金額により評価します。

[詳細解説]

1.配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に

相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。

配偶者は、遺産分割協議や遺言(相続又は遺贈、以下、相続等)によって

配偶者居住権を取得することができます。

2.配偶者居住権の評価の考え方

国税庁から公表されている「「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」

について(情報)」によれば、配偶者居住権の評価の考え方として

以下の記述があります。

 

居住建物の所有者は、配偶者居住権存続期間終了時に居住建物を自由に使用収益することが
できる状態に復帰することとなります。この点に着目し、配偶者居住権の価額は、居住建物の所有
権部分の「配偶者居住権存続期間終了時の価額(将来価値)」を求め、それを現在価値に割り
戻し、居住建物の時価からその割り戻した所有権部分の価額を控除した金額により評価します。
具体的には、
① 配偶者居住権存続期間終了時の居住建物の時価を減価償却に類する方法を用いて計算する
② ①で計算した配偶者居住権存続期間終了時の居住建物の時価を法定利率による複利現
価率を用いて現在価値に割り戻す(所有権部分の将来価値を現在価値に割り戻した価額を求める)
③ 居住建物の時価から②で求めた価額を控除して配偶者居住権の価額を求めようとするものです。

 

また、イメージ図は以下のとおりです。

 

 

2021.09.25

住宅取得等資金贈与の非課税の期限に留意してください

現行税制は本年末までの贈与・契約締結が必要です

令和3年度改正で住宅取得等資金贈与の非課税措置について

床面積要件の緩和や非課税限度額引上げ等の見直しは行われましたが

同制度の延長は行われませんでした。

適用期限は令和3年末とされていますが、令和3年8月末公表の令和4年度税制改正要望では

国土交通省から同制度について所要の措置を講じる要望が行われています

R3改正では床面積要件の緩和等

この制度は、平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に

合計所得金額が2,000万円以下の20歳以上の受贈者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に

一定額までが非課税となるという内容です。

令和3年度改正で、令和3年1月1日以後の贈与について合計所得金額1,000万円以下

の場合に床面積要件の下限が50㎡から40㎡に緩和され

同年4月以降の非課税限度額の引上げ等の見直しが行われました。

現行では、令和3年12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受け

かつ、その資金の全額を充てて住宅の新築・取得又は増改築等に係る契約を

締結していることが要件の一つとなります。

なお、贈与と契約締結の順番は問いません。

新築等は贈与の翌年3月15日までに

贈与及び契約締結時期に係る要件のほか、住宅の新築等は贈与年の翌年3月15日までに

行わなければなりません。

住宅の新築の場合は、同日において新築工事が完了している(いわゆる棟上げまで完了している場合を含む)こと

取得の場合には同日までにその引渡しを受けていることが必要となります

原則贈与の翌年3月15日までに入居

住宅への入居期限は原則として贈与年の翌年3月15日までとされていますが

同日後遅滞なく居住することが確実であると見込まれる場合には

居住の予定時期等を記載した書類等を申告時に添付することで同制度の適用が認められます。

ただし、贈与年の翌年12月31日までに居住していない場合は

適用を受けられなくなるため修正申告が必要となります。

これら期限の要件等を満たし同制度の適用を受ける場合は

贈与税の申告期限内(贈与年の翌年2月1日から3月15日まで)に

住宅の新築に係る工事の請負契約書や

取得に係る売買契約書の写しなど一定の書類を添付して申告を行うこととなります

 

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近江清秀公認会計士税理士事務所

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2021.09.18

建物の固定資産税評価額が下がらない?

(質問)評価替えの年なのに、建物の固定資産税評価額が下がらないのはなぜでしょうか?

令和3 年度は、固定資産税評価額の評価替えの年度ですが

建物(鉄筋コンクリート造の賃貸マンション)の固定資産税評価額が下がっていません。

建物は経年により価値が減少していくのに

なぜ固定資産税評価額が同額なのでしょうか︖

(回答)

通常であれば、経年劣化等により固定資産税評価額が減少すべき建物ですが

令和3 年度については、物価上昇を背景に建物の固定資産税評価額が

据置きとなったものと考えられます。

建物の固定資産税評価額の算定方法

建物の固定資産税評価額は、屋根・外壁・内壁・天井・床・基礎・建具・設備などにつき

それぞれに使用されている材料の種類や数量を把握し

国が定めた固定資産評価基準に基づいて算出されています

 

算式(従来分の家屋に係る固定資産税評価額)
基準年度の前年度の再建築価格 × 再建築費評点補正率 × 経年減点補正率

⇒再建築価格
再度その場所にその建物を建てるとした場合に必要とされる建築費

⇒再建築費評点補正率
基準年度と前回の基準年度との間に発⽣した物価変動の補正率

⇒経年減点補正率
建築後の年数の経過によって⽣ずる建物の傷み具合による価値の減少を
率で表したもの(初年度は1 年間経過したものとします)

据置きとなるケース

算定の結果、固定資産税評価額が前年度の額を下回った時は

建物の固定資産税評価額は引下げとなります(ケース①)。

一方、固定資産税評価額が前年度の額を上回った場合

算式では建物の固定資産税評価額は引上げとなりますが

措置が講じられて据置きとなります(ケース②)。

建築資材の高騰及び人手不足等による人件費の高騰により

近年、同等建物の建築物価は上昇しています。

おそらく令和3 年度は、措置により据置きになっているものと推測されます。

なお、令和2 年1 月2 日から令和3 年1 月1 日までの間に

増改築や一部取壊し、そのほか特別な事情があった場合は

新たに評価をし直している点にもご留意ください。

今後も現在の状況が続きますと

令和6 年度の建物の価格も据置きとなる可能性があります。

建物の収益力を高め、建物の実質的な価値を高めることを常に心掛けることが必要でしょう。

2021.09.10

配偶者居住権と相続税

[相談]

 2020年4月1日より、主人が亡くなってもマイホームに住み続ける権利

(いわゆる「配偶者居住権」)を相続できると聞いています。

この配偶者居住権は相続税が課税されるのでしょうか?

[回答]

配偶者居住権は、その配偶者居住権に付随する敷地利用権とともに

相続税の課税対象です。

[詳細解説]

1.配偶者居住権とは

 配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に

相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。

配偶者は、遺産分割協議や遺言(相続又は遺贈、以下、相続等)によって

配偶者居住権を取得することができます。

2.配偶者居住権と相続税

(1)配偶者居住権と敷地利用権

 配偶者居住権は建物に住む権利ですが、その配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合

その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して

配偶者が相続等により取得したものと考えられています。

この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。

(2)税務上の取扱い

 配偶者居住権も敷地利用権も相続税の課税対象となります。

それぞれ定められた一定の評価方法により算定をして、相続財産として加算します。

なお、敷地利用権については、他の宅地と同様、「小規模宅地等の特例」の適用が可能です。

 配偶者居住権は、民法改正により創設され、2020年4月1日に施行されたものです。

開始してまだ1年半も経っていませんが

遺産分割における選択肢の一つとして必ず検討すべき権利といえるでしょう。

<参考>
 国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例(令和2年7月)」

2021.09.03

貸付事業用宅地等の範囲から除かれる相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等

質問

被相続人甲は,10年前から2棟のアパート(各棟10室)を所有し不動産貸付業を営んでいた。

同人は,相続税対策の一環として,当該アパートを次のとおり譲渡したが,

その1年後に事故で亡くなった。なお,その譲渡後も各アパートは,

引き続き賃借人に貸し付けられている。

(1) 被相続人甲の相続人である長男にアパート1棟を譲渡し,当該アパートの敷地の用に供されていた宅地等は,

使用貸借により長男に貸し付けていた。なお,長男は,被相続人と生計を一にしていた者であるが,

当該アパートを譲り受けるまで不動産の貸付けは営んでいなかった。

(2) 同族会社Xにアパート1棟を譲渡し,当該アパートの敷地の用に供されていた宅地等は,

相当の地代によりX社に貸し付けていた。

小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等の範囲からは,

被相続人等の不動産貸付の用に供されていた宅地等で,相続開始前3年以内に新たに貸し付けられた宅地等は

除かれていますが,このアパートの敷地の用に供されていた宅地等について

小規模宅地等の特例の適用は認められるでしょうか。

質問(1)の回答

(1) 長男に譲渡されたアパートの敷地の用に供されていた宅地等

貸付事業用宅地等の範囲からは 措置法69条の4 第3項4号に規定する

「新たに貸付事業の用に供された」宅地等は除かれており,

その判定は,貸付事業用宅地等の要件が貸付事業の主体

(被相続人又は被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(以下「生計を一にしていた親族」といいます。)

ごとに定められていることからすると,

被相続人又は生計を一にしていた親族のそれぞれの利用状況により行うことが相当と考えます。

したがって,アパートの譲渡により貸付事業の主体が被相続人甲から長男に変更されていますから,

この場合は「新たに貸付事業の用に供された」場合に該当し,

当該アパートの敷地の用に供されていた宅地等は貸付事業用宅地等に該当しないと考えます。

質問(2)の回答

(2) X社に譲渡されたアパートの敷地の用に供されていた宅地等

被相続人の貸付事業は,譲渡前は建物の貸付けであったものが,

譲渡後は土地の貸付けに変更されていますが,

引き続き同人の貸付事業であることに変わりはありません。

したがって,この場合は「新たに貸付事業の用に供された」場合に該当しないことから,

当該アパートの敷地の用に供されていた宅地等については

一定の要件を満たす限り貸付事業用宅地等に該当し,

小規模宅地等の特例の適用が認められると考えます。

2021.08.28

相続で不動産を取得したときに生ずる税金

[相談]

不動産を取得すると、不動産取得税や登録免許税がかかりますが

相続が原因の取得であってもこれらの税金はかかるのでしょうか。

[回答]

相続により不動産を取得した場合、不動産取得税はかかりませんが

登録免許税はかかります。

[詳細解説]

1.不動産取得税

不動産取得税は、不動産の取得に対して課されるものです

しかし、たとえば次の原因によって不動産を取得した場合には

不動産取得税は課されません。

  1. ・相続によるもの
  2. ・包括遺贈(民法964条)によるもの
  3. ・被相続人から相続人に対してなされた遺贈によるもの
  4. したがって、相続が原因の不動産取得である場合に、不動産取得税はかからない、という判断になります。

 

2.登録免許税

 登録免許税は、不動産の登記に対して課されるものです。

相続で不動産を取得した場合には、相続によりその不動産の所有権が移転されたことになるため

登記されている名義人を変える登記(所有権移転の登記、通称「相続登記」といわれています)

を行います。この相続登記時に、登録免許税を納めます。

登録免許税は、課税標準に税率を乗じて計算します。

(1)課税標準
課税標準は、相続により取得した不動産に固定資産税評価額がある場合にはその評価額

ない場合には登記所が認定した価額となりますが

いずれの価額についても1,000円未満の端数は切捨てます。

(2)税率
相続登記の場合の税率は、売買などの登記に比べて税率が優遇されています。

 土地の代表的な登記理由による登録免許税の税率を、以下にまとめました。

・売買 ⇒ 2%(令和5年(2023年)3月31日までは1.5%)

・相続 ⇒ 0.4%

例.固定資産税評価額が2,000万円の土地を相続で取得し、その相続登記を行う場合

2,000万円 × 0.4% = 8万円

 

なお、相続登記が未了のまま放置されるケースが社会問題として表面化しており

相続登記の義務化が令和3年(2021年)4月21日に成立し

同月28日に公布(3年以内の施行)された他、相続登記を促進する措置として

以下の免税措置があります。

この適用期限は、令和3年度税制改正により1年延長され

令和4年(2022年)3月31日までとなっています。

  1. ・相続により土地を取得した個人が登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置
  2. ・少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置
2021.08.21

相続人に配偶者と障害者がいる場合

[相談]

我が家には、身体に重度の障害(身体障害者1級)を持った長女(52歳)がいます。

先日、夫が亡くなったのですが、長女の将来を考え、長女には夫の遺産の大部分を

相続させてやりたいと考えています。それについては、他の兄弟も納得してくれています。

しかし、相続税の負担もなるべく減らしたいと考えています。

そのためには、配偶者である私が法定相続分又は1億6,000万円までを相続し

配偶者の税額軽減の特例を最大限受けるのが一番よい選択なのでしょうか?

[回答]

配偶者の税額軽減の特例だけにこだわらなくても

障害者控除により全体の納付税額のご負担が軽減される可能性もあります。

ご長女様の将来もよく考えながら、様々なご検討をなさることをお勧めします。

[詳細解説]

配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者について一定の金額まで

相続税が発生しないという特例制度です。これは残された配偶者の生活保障のため

という背景がありますが、相続税の計算においては各相続人の個別事情等に配慮して

この配偶者の税額軽減の特例以外にも

算出相続税額から控除できる税額控除がいくつか設けられています

その税額控除の中の1つに、「障害者控除」という制度があります。

これは、社会的弱者である障害者が相続により財産を取得した場合には

算出相続税額から一定額を差し引くという制度です。

では、障害者控除の適用要件や控除金額などを、具体的にみてみましょう。

1.障害者控除を受けられる相続人

次の要件すべてに当てはまる人は、障害者控除の適用を受けることができます。

  1. 相続等で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一定の人を除く)
  2. 相続等で財産を取得したときに障害者である人
  3. 相続等で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、なかったものとした場合の相続人)であること
  4. 2.控除額

    1. 一般障害者  10万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
    2. 特別障害者  20万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
    1. * 85歳に達するまでの年数で、1年未満の期間があるときは、1年切り上げて1年として計算
    2. * 過去に他者からの相続において、障害者控除の適用を受けている場合には、控除額が制限されます。

3.障害者の区分

  1. 一般障害者
    身体障害者手帳の等級:3級~6級
    精神障害者福祉健康手帳の等級:2級、3級
  2. 特別障害者
    身体障害者手帳の等級:1級、2級
    精神障害者福祉健康手帳の等級:1級

4.留意点

(1)障害者控除額が引ききれない場合
障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が

引ききれない場合には、その引ききれない部分の金額を

その障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

この場合の扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母や子、孫)及び兄弟姉妹などをいいます。

なお、この扶養義務者は「同居」や「生計一」である必要はありません。

扶養義務者が2人以上ある場合の、それぞれの控除額は扶養義務者間での

協議により自由に配分することができます。

(2)その他
障害者控除は、その障害者が何も財産を相続していない場合には

控除することができません。また、この場合には他の扶養義務者

である相続人からも控除することはできません。

 

2021.08.12

家族信託の基本的なお問い合わせ

家族信託について基本的なお問い合わせが増えています

今回は、その中からよくある質問のいくつかをご紹介します

[質問1]

最近「家族信託」という言葉をよく聞きます。「家族信託」とは何のための制度でしょうか。

[回答]

 一言でいうと、ご高齢の方が認知症や脳卒中を発症した際に生じる

「財産の凍結」を防止する制度です。

[質問2]

 認知症や脳卒中になると「財産の凍結」が起こるとのことですが

イメージが湧きません。具体的な事例も含めて教えてください。

[回答]

例えば、ご高齢のA様がご自宅で一人暮らしをしているとします。

A様は介護でお子様に迷惑をかけたくないという想いがあり

タイミングを見て自宅を売却して

そのお金で介護施設に入所したいと考えていらっしゃいます。

仮に自宅を売却して介護施設に入所するタイミングが来たときに

A様が認知症や脳卒中を発症してしまい

自分の意思を伝えることができない状態になってしまうと

A様の希望のとおりご自宅を売却することは難しくなってしまいます。

認知症や脳卒中の発症により自分の意思を伝えることができなくなったときは

法律上その方に契約能力は認められなくなるからです。(民法第3条の2)

[質問3]

なるほど。「財産の凍結」が起こり親御さんの財産が動かせなくなってしまうと

介護費用を親御さんの財産から捻出できなくなり、子供に経済的な負担がかかってしまって

大変そうですね。

家族信託で、その「財産の凍結」が防止できるということですが、どういうことですか?

[回答]

はい、「財産の凍結」が起こると困るので、親御さんがお元気な間に

ご家族と信託契約という契約を結びます。信託契約を一言でいうと

「財産の管理をお願いする契約」です。この信託契約により

管理をお願いしたい財産が、親御さんからご家族へ移ります。

親御さんが財産をお持ちのまま、認知症や脳卒中を発症してしまうと

「財産の凍結」が起こるので、事前に家族に財産を移してしまおうという発想です。

信託契約により財産がご家族に移るので、その後親御さんが認知症を発症してしまったとしても

財産の管理を託されたご家族の元で財産を動かすことができるため

「財産の凍結」が起こらないという制度です。

2021.08.08

相続開始後に必要な手続き

[相談]

先日、主人が亡くなりました。葬儀は終えましたが

他にどのような手続きが必要になるのでしょうか。

私たちは年金生活をしており、子は2人いますが

独立しています。住まいは持ち家で、その他若干の預金があります。

[回答]

 一般的に以下のような手続きが必要になります。

① 住所地の市区町村役場での手続
死亡届の提出(死亡の事実を知った日から7日以内/戸籍法第86条1項)

健康保険被保険者証・障がい者手帳・印鑑登録手帳等の返納、葬祭費の請求

健康保険料や介護保険料等の精算を行います

(但し、その場で現金を収めたり、受け取ることはありません)。

② 年金事務所での手続
受給していた年金の種類によっても異なりますが

基本的にはご主人が受給していた年金を止める手続と

未支給の年金をもらう手続などを行います。

あなたが遺族年金をもらう手続きも行った方が良い場合があるため

併せて確認するとよいでしょう。

③ 公共料金の引き落とし口座の変更
ご主人の銀行口座は今後相続手続きを行って解約していく必要があるため

現在ご主人名義の銀行口座から公共料金(電話、水道、電気、ガスなど)

を引き落としている場合は、口座を変更する必要があります。

変更には数ヶ月かかる場合もありますが、その前に口座が凍結されてしまった場合は

ご自宅に払込用紙が届くと思いますので、そちらで支払いが可能です。

④ 生命保険会社への保険金請求
ご主人や受取人の方の戸籍・住民票などの原本の提出が

必要な場合があります。

請求する生命保険会社に確認の上、役所手続の際に戸籍を

必要通数分取得されることをお勧めします。

上記の他

⑤火災保険・地震保険の名義変更、⑥自動車の名義変更

⑦自動車保険の名義変更、⑧携帯電話の解約、⑨クレジットカードの解約

⑩土地建物の名義変更、⑪農地法・森林法の届出、⑫預貯金の解約又は名義変更

⑬準確定申告、⑭相続税申告 などが必要な場合もあります。

上記は一般的に必要な手続であり、ご家族の状況・財産の内容・遺言の有無などによって

必要な手続は異なります。「相続手続」というと

遺産分割などを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが

遺産分割を行う前の事務手続もさまざまです。

ご不安があれば、遠慮なくお問い合わせください

2021.07.30

満期を過ぎた外貨建て保険と相続

[相談]

外貨建て養老保険に加入していた夫が、今年1月に満期を迎えた保険金の

請求手続きを行うことなく、4月に亡くなりました。

保険証券を確認したところ、死亡保険金の受取人は配偶者である私と長男

5割ずつ指定されています。外貨で受け取ることができる旨の記載もあるので

私も長男も外貨受け取りを希望しています。

満期が過ぎている契約ですが、死亡保険金として請求をするのでしょうか。
 また、税金はかかりますか?
 なお、相続人は、私(配偶者)、長男、次男の3人です。

  【外貨建て養老保険の契約内容】

  1. 保険種類:米ドル建て養老保険
  2. 契約期間:10年
  3. 契約者(保険料負担者):夫
  4. 被保険者:夫
  5. 満期保険金受取人:夫
  6. 死亡保険金受取人:配偶者・長男 各5割
  7. 死亡、満期保険金:200,000米ドル
  8. 全期前納保険料:175,000米ドル

[回答]

ご相談の契約は、ご主人がお亡くなりになる前に満期が到来しているため

保険会社への請求手続きは死亡保険金ではなく、未請求であった満期保険金となります。

この満期保険金は、ご主人の所得として所得税の課税対象となる他、ご主人の相続財産に加算します。

また、所得税が課税されることにより納付すべき所得税が発生した場合は

相続税の計算上、ご主人の債務として遺産総額から控除できます。

なお、申告上、外貨建ての財産は円建てに換算する必要があります。

換算する際の為替レートは決められており

各々適用される為替レートは詳細解説にてご確認ください。

 

1.死後に行う満期保険金の請求手続き

保険金の請求手続きが被保険者の死亡後であっても

被保険者が死亡する前に満期を迎えていれば、死亡保険金としては扱われず

満期保険金としての請求手続きとなります。

この満期保険金の課税の取扱いは、以下のとおりです。

(1)所得税
ご相談の満期保険金は、満期が到来した年分のご主人の一時所得として

所得税の課税対象となります。実務上は、ご主人に代わり相続人が準確定申告を行い

納付すべき所得税が生じた場合には納付することとなります。

(2)相続税
相続税の計算上、ご相談の満期保険金は、相続人共有の財産(未収入金)として

相続財産に加算します。死亡保険金ではないため、保険金の非課税制度

(500万円×法定相続人の数)を適用することはできません。

また、(1)により所得税を納付することとなった場合には

その所得税は相続税の計算上、債務として遺産総額から控除できます。

 

2.外貨で受け取るときの為替レート

外貨建て保険を外貨で受け取る場合、税金を計算する上では

円換算する必要があります。この際に適用される為替レートは、次のとおりです。

【所得税の評価】

  1. 全期前納保険料:原則として払込日(保険会社受領日)のTTM(※)
  2. 満期保険金:原則として支払事由発生日(満期日)のTTM(※)

【相続税の評価】

  1. 未請求であった満期保険金相当額:原則として支払事由発生日(死亡日)のTTB(※)
  1. (※)TTS…対顧客直物電信売相場、TTB…対顧客直物電信買相場、TTM…TTSとTTMの仲値

請求すべき手続きの放置期間が長くなるほど

証拠書類が探し出せずに手続きが煩雑になりがちです。

他に手続きが放置されているものがないか、確認をしましょう。

 

 

 

2021.07.22

配偶者の税額軽減と留意点

[相談]

 父が他界しました。相続人は母と私たち兄弟2人の合計3人です。

 配偶者が相続した財産については相続税がかからない、と聞いたことがあります。

 父の遺産は約1億円ですが、1億円すべてを母が相続する場合には

 相続税は払わなくてもよいですか?

 また、今回母がすべて相続し相続税を払わなくてもよいのなら

 とても有利に思えるのですが、問題はありませんか?

[回答]

 「配偶者の税額軽減」を適用することで、お父様の相続に関してお母様に相続税はかかりません。

 主な留意点として、適用するには相続税の申告を行うこと

 遺産分割していないと適用できないこと、

 次のお母様の相続時の相続税負担を考慮に入れることが考えられます。

1.配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者は相続しても、一定の金額まで相続税がかかりません。

このことを「配偶者の税額軽減」といいます。

【配偶者の税額軽減】
配偶者が相続や遺贈により取得した財産のうち、次のうちいずれか多い金額まで、配偶者に相続税はかかりません。
1. 1億6,000万円
2. 配偶者の法定相続分相当額

 

2.留意点

この「配偶者の税額軽減」を適用する場合に留意すべき点は、主に次の3つが挙げられます。

(1)適用するには相続税の申告を行うこと
(2)遺産分割をしていないと適用できないこと
(3)次のお母様の相続時の相続税負担を考慮に入れること

(1)適用するには相続税の申告を行うこと

 「配偶者の税額軽減」を適用するには、相続税の申告書を提出しなければなりません。

 仮に最終的な相続税の納付額が「0」円になっても、申告書の提出は必要です。

 また、申告書の提出時には一定の書類の添付が必要となりますので、ご注意ください。

(2)遺産分割をしていないと適用できないこと

 「配偶者の税額軽減」は、実際に取得した財産を基に計算することとなっているため

 (1)の申告を行う際に未分割の部分については、「配偶者の税額軽減」の適用はできません。

 この場合に、相続税の申告書等に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で

 その申告期限から3年以内に遺産分割をしたときは、更正の請求の手続きを経ることで

 その遺産分割により配偶者が取得した財産について「配偶者の税額軽減」を適用することができます。

(3)次のお母様の相続時の相続税負担を考慮に入れること

 配偶者の税額軽減は、残された配偶者の生活保障のため

 配偶者が相続した財産のうち一定額まで相続税を課税しない

 という趣旨の制度です。また一方で、同一世代間での財産の移転であるため

 近いうちにもう一度相続税を課税する機会がある、という側面もあります。

 そのため、次のお母様の相続(いわゆる「二次相続」)時の相続税まで考えて

 お父様の相続(いわゆる「一次相続」)を考える必要があります。

 一次相続での配偶者の相続割合を決定する場合には

 目の前にある税負担を軽減させることにとらわれがちですが

 将来の二次相続を見据えた税負担まで考えることで

 財産の承継にかかる税負担を最小限に抑えることが可能です。

 配偶者の年齢、健康状態、今後の生活基盤、相続対策に対する考え方など

 様々な角度からの検討が重要でしょう。

2021.07.15

コロナ禍における相続税の実地調査の状況

コロナ禍における相続税の実地調査の状況

2020 年12 月に国税庁と各国税局(沖縄は国税事務所、以下、局)から

令和元事務年度(2019 年7 月~2021 年6 月、以下、元年度)の相続税調査等

の状況に関する資料が発表されました。

局別の相続税の実地調査件数などを紹介します

非違割合は80%以上に

元年度の実地調査件数は全国で10,635 件と

前年度から14.7%減少しました。他方、実地調査件数

に占める申告漏れ等の非違があった件数の割合(以下、非違割合)

は、全国で85.3%と、前年度から0.4 ポイントの減少です。

局別の実地調査件数と非違割合は下記グラフのとおりです。

実地調査件数は、すべての局で前年度より減少し、特に仙台と

名古屋、大阪では20%以上の減少です。新型コロナウイルスの

影響があるものと思われます。

また、非違割合は沖縄と高松が高く、ともに90%を超えました。

特に沖縄は30 年度の85.3%から10 ポイント以上増えています。

実地調査件数自体は減少しましたが、非違割合は全国的に大きな

減少はありません。相続税の申告等で心配ごとがある方は

お気軽に当事務所にご相談ください。

2021.07.09

事業用資産の買換特例(面積制限5倍)

事例

甲市の自社ビル(土地40㎡と建物)を売却して、乙市で土地を800㎡取得しました

800㎡の土地の内訳は

X氏から取得した600㎡(10万円/㎡)

Y氏から取得した200㎡(20万円/㎡)

です。この場合、買換特例の適用対象となる土地とその価額はいくらですか

結論

X氏から取得した土地のうち150㎡(1500万円)

Y氏から取得した土地50㎡(1000万円)が買換資産となります

解説

買換え特例の適用に当たって、買換えにより取得した土地の面積が

譲渡した土地の面積の5倍を超える場合には、5倍を超える面積については

適用対象外となります

また、買換資産に該当する土地等を2以上取得してその合計面積が

制限面積を超える場合には以下の通りとなる

 

甲市の土地・・・40㎡

X氏から取得した土地・・・600㎡×10万円=6000万円・・・A

Y氏から取得した土地・・・200㎡×20万円=4000万円・・・B

以上のような場合の買換資産の取得価額の合計金額は

(A+B)×40㎡×5倍/(X氏600㎡+Y氏200㎡)=2500万円

その場合、X氏から取得した土地のうち特例適用対象は

40㎡×5倍×X氏600㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=150㎡

150㎡×10万円=1500万円

さらに、Y氏から取得した土地のうち特例適用対象は

40㎡×5倍×Y氏200㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=50㎡

50㎡×20万円=1000万円

2021.07.02

事業用資産の買換特例の手続き(翌年買換えと先行取得)

質問

特定の事業用資産の買換えの特例を受ける場合の手続きについて教えてください

回答

・所得税確定申告書の「特例適用条文」欄に「措置法第37条」と記入する

・確定申告書に次の書類を添付する

  •  ①譲渡所得計算明細書
  •  ②登記事項証明書など買換資産の取得を証する書類
  •  ③譲渡資産や買換資産が特定の地域内にある旨等の市町村等の証明書

(この証明書は必要が無い場合もある)

翌年買換の場合

資産を譲渡した譲渡した日の属する年の翌年中に買換資産を取得する見込みであり

かつ、 その取得の日から1年以内に事業の用に供する見込みの場合は

確定申告書に買換え予定資産の取得価額の見積額等を記載した書類を添付しなければならない

なお、このような場合は、上記②の書類は買換資産の取得後4カ月以内に提出しなければならない

先行取得の場合

譲渡した年の前年以前に取得した資産を買換資産としてこの特例の適用を受けるためには

取得した年の翌年3月15日までに『先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書』

を提出しなければりません

2021.06.27

事業用資産の買換特例の事例紹介2(面積制限300㎡)

設例

親世代が、相続税対策で収益物件を所有しているケースがある場合

相続した子世代は、収益物件を相続したとしても

その収益物件をそのまま所有し続けるよりも

買換える事例が多くあります

この度、買換取得を検討している物件の中に、1棟建てビルの2階部分

(及びその部分に対応する敷地)があります。

このビル全体の敷地は1000㎡ほどあります。

このビルは買替資産としての土地の面積要件は満たしていますか?

結論

共有の土地を買換取得資産とする場合は、

土地の総面積に共有持分を乗じた後の面積で300㎡以上

となるか否かを判定することになる

解説

この事例の場合、ビルの敷地の総面積が1000㎡であるため

共有持分割合が30%以上であれば面積要件である

300㎡以上を満たすこととなる。

その他の要件を満たしていれば、事業用資産の買換特例

を適用することができる。

 

なお、買換資産とする土地等については

上記300㎡以上という要件の他に

譲渡した土地等の面積の5倍以内といった

面積制限も規定されている

2021.06.20

事業用資産の買換特例の事例紹介1(使用貸借中の土地建物の買換え)

事例紹介1

ABから無償で借りた土地の貸店舗用建物を建築して賃貸しています

この度、このA所有の貸店舗とB所有の底地を一括して譲渡しました。

譲渡代金でA,Bそれぞれが事業用の土地建物を取得する予定です。

この場合、A,Bそれぞれが事業用sh試案の買換え特例を適用できますか?

結論

A,Bが生計を一にする親族であれば、A,Bともに事業用資産の買換え特例を適用できます。

ただしAが買換資産とできるのは新たに取得した土地建物のうち建物部分だけとなります。

また、Bは新たに取得する土地建物のいずれも買換資産と扱うことができますが

取得した土地について5倍の面積制限が適用されます

論点整理

論点整理①使用貸借している土地が、事業用資産に該当するのか

論点整理②A,Bそれぞれが取得する土地建物は買換資産に該当するのか

論点1

Aの所有する建物が、譲渡する日の属する年の11日において

所有期間が10年を超えていれば建物については問題は無い。

しかし、Bが所有する敷地について使用貸借で貸し付けられているので

それが事業用といえるかどうかについて疑問が残る。

その点について、譲渡資産が所有者と生計を一にする親族の事業の用に供されている場合

については、譲渡資産は所有者にとっても事業の用に供されているものと取り扱うこととされている。

論点2

論買換資産として土地を取得する場合、譲渡資産の土地の面積の5倍を超える場合

その超える部分の面積に対応する部分は買換資産に該当しないとされています

そのため

Aの取得した土地はすべて特例適用の対象外。

B取得の土地は面積制限の範囲内で特例が適用できます

 

 

2021.06.13

賃貸マンションの相続税評価額を巡る裁判

東京高等裁判所で、評価額を巡る裁判で国が勝訴

相続税の申告書に計上していた賃貸マンションの評価額を巡って

相続人と国が争っていた裁判で、東京高等裁判所は国税庁長官の指示による

評価を認め、控訴人である相続人の控訴を棄却しました(2021年4月27日)

事実の概要

被相続人(父)は生前に相続税の圧縮効果を検討していて、平成25年6月に

銀行から15億円を借入て高級賃貸マンションを取得した。

父親の相続開始後に、相続人(長男)はこの賃貸マンションを財産評価基本通達に

基づき4億8000万円で評価したうえで相続税の申告を行った

 

しかし、国はこの申告に関して本件不動産の評価額は10億4000万円(鑑定評価額)

であるとして、相続税の更正処分を行ったところ争いとなった

相続人の主張

〈相続人の主張①〉
本件更正処分は,国民の租税に対する予測可能性を著しく失わせる不当なもの。

租税法律主義の趣旨に反し行政庁の裁量の範囲を著しく逸脱するものである。

〈相続人の主張②〉
評価通達の定めによる評価額と実際の取引価格との間に乖離がある例は多数存在し

乖離の存在は一般的な現象である

〈相続人の主張③〉
相続に際し、節税対策をとることは当然であり被相続人が節税目的で本件不動産を購入したとしても

そのことが「特別の事情」を基礎づけるものではない。

被相続人が本件不動産を購入したのは不動産賃貸業の一環であり相続税対策のためではない。

東京高等裁判所の判断

上記①②③の主張に対して東京高等裁判所は以下のように判断しました

〈東京高裁の判断①〉
租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかな場合についてまで

評価通達の定めにより評価すべきものではない、そのような場合について評価通達の定めによらないで

個別に財産を評価したとしても租税法律主義に違反するということはできない。

被相続人は,相続税を減少させる目的で本件不動産を相続開始時の直前に15億円で購入しているのであるから

評価通達の定めによる評価額と現実の取引価格との間に著しい乖離があることは十分認識していたというべきであり

現実の取引価格によって課税されることについて予測可能性がなかったということはできない。

〈東京高裁の判断②〉
本件不動産の通達評価額は、鑑定評価額の2分の1にも達しておらず、金額にして5億円以上も少ないから

その乖離の程度は著しいといわざるを得ない。

このような著しい乖離の存在が一般的であると認めることはできない。

〈東京高裁の判断③〉
被相続人が相続税の圧縮を認識し、これを期待して15億円を借り入れ本件不動産を購入したことは

租税負担の実質的な公平という観点から見た場合、通達評価額によらないことが相当と認められる

「特別の事情」を基礎づける事実に当たるというべきである。

被相続人らは,銀行の担当者と相続税の負担軽減の方法について相談し

その方策として、本件不動産を購入することになった経緯を踏まえると

本件不動産の購入が相続税対策のためであったことは明らかである。

まとめ

本件では

①通達評価額と鑑定評価額との間に著しいかい離が生じていること

②相続税の負担減少を認識・期待して本件不動産が購入されたことから

評価通達の定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができないなど

租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかであるといえるような「特別の事情」がある

と判断したようです

その結果本件不動産の時価は、鑑定評価額に基づく10億4,000万円となると判断しました

 

本件は現在、敗訴した相続人から最高裁に上告及び上告受理の申立てが行われています。

最高裁の判決が楽しみです

 

 

2021.06.05

低解約返戻保険契約に関する税制改正(予定)

低解約返戻保険契約・・・って?

低解約返戻保険契約とは、契約者法人・被保険者役員という保険契約で

一定の期間経過後に、契約者を法人から役員に名義変更するタイプの

生命保険です。

このタイプの生命保険の多くは、解約返戻金評価額の低いタイミングで

名義変更を行うことによって、法人税と所得税のダブルでメリットがあります

今回の改正(予定)

法人が役員に生命保険契約等に関する権利を支給(法人から役員に契約の名義を変更)した場合

『一定の低解約返戻金型保険等』  はその権利の評価方法が見直される予定です。

保険契約の権利の評価額が、現在は名義変更時の「解約返戻金の額」ですが

今回の改正では、名義変更時の「資産計上額」に変更される予定です

これによって、法人税・所得税ともに節税メリットがなくなることになります

この改正案は、令和元年7月8日以後に締結した契約で,令和3年7月1日以後に

名義変更したものに適用される予定です。

今回の改正(予定)の相続税に与える影響

低解約返戻金型保険等の契約の権利の評価は

所得税では名義変更時の「解約返戻金の額」から「資産計上額」に見直される予定です。

一方、相続税では,生命保険契約に関する権利の評価は相続時の「解約返戻金の額」

のまま見直しはされない見込みです。

非上場株式の評価に与える影響

生命保険契約に関する権利が相続された場合だけでなく

非上場会社の株式を純資産価額方式等で評価する際に

その会社が同権利を有している場合も「解約返戻金の額」で評価し

それが非上場株式の評価額を構成することになります。

贈与税は・・・

なお,生命保険契約の権利を“贈与”(贈与者から受贈者に名義変更)した場合

それだけでは贈与税は課されません。

受贈者が保険契約を解約し解約返戻金を取得した際に

その解約返戻金相当額を贈与で取得したものとみなして

贈与税が課されます。

ですから、今回の改正は贈与税には影響しません

2021.05.27

国税庁の全国の富裕層への対応と『出国税』

全国の国税局等には,いわゆる超富裕層を対象に特別な管理体制を敷く重点管理富裕層プロジェクトチーム(PT)

が置かれています。

さらに,東京,大阪,名古屋,関東信越国税局管内では,特定の税務署で「上位富裕層」

を対象に特別な管理体制が敷かれています。

上位富裕層への管理体制を整備しています

国税当局では昨今,富裕層PTを全国税局等に置くなど,調査必要度の高い富裕層への取組に力が

入れられています。富裕層PTでは,「重点管理富裕層」という富裕層の中でも特に高位にいる者を

管理対象としていますが,重点管理富裕層とまではいかないクラスの富裕層についても

富裕層PTと同様に特別な管理体制を敷くべきと考えられています。

そこで試行的に,富裕層PTの対象となる重点管理富裕層を除き

一定の基準で抽出した者を「上位富裕層」と位置付け,特定の税務署において上位富裕層に対する

「専担者(税務署の所得税等担当の特別国税調査官のうち国税局が指定した者)」が配置されています

上位富裕層は,“9つある抽出基準”のいずれかに該当する者から重点管理富裕層を除いた者をいいます

詳細は不明ですが,一定の保有見込資産額などがその基準として想定されています

専任担当者の役割

上位富裕層に対する専担者は,上位富裕層,その関係個人や関係法人(上位富裕層グループ)の抽出を担います

そして,上位富裕層グループに係る資料情報の集積と分析,調査企画及び情報提供

調査企画事案の調査実施担当部署への引継ぎを行っています

また,決定した上位富裕層グループに係る上位富裕層名簿を作成し,国税局に提出します

収集した資料情報などを基に課税上の問題点を分析検討し,区分をして

その区分に応じた対応を図ることになります。

集積すべき資料情報として例えば,所得税申告書等,国外送金等調書,国外財産調書

財産債務調書,自動的情報交換資料(CRS情報含む),国外証券移管等調書

資産の所有等に関する資料,その他部内資料,マスコミ情報,インターネット情報などが挙げられます

体制のイメージ

富裕層の分類と富裕層への対応のイメージ図は下記のとおりです

出国税

このような税務当局の動きに対応して

海外への移住を考える方もいらっしゃいますが

いわゆる『出国税』への対応も事前に検討する必要が

あります

出国税に関するFAQは国税庁の下記URLをご覧ください

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/pdf/02.pdf

 

2021.05.19

結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置について国税庁がFAQを改訂しました

制度の概要

この制度は、父母・祖父母等の直系尊属が結婚・子育て資金を信託等の方法によって

一括して拠出した場合に、子・孫等の受贈者ごとに1,000万円までの贈与について

贈与税が非課税となる制度です

令和3年度改正により改正が行われたうえで、適用期限が令和5年3月31日まで延長されました。

令和3年改正

令和3年の主な改正内容は以下の通りです

① 贈与者死亡時の孫等への贈与に係る管理残額の一定部分について相続税額の2割加算を適用

② 受贈者の年齢要件を「20歳以上50歳未満」から「18歳以上50歳未満」に改正

③ 非課税申告書等の電子提出が可能に改正

④ 結婚・子育て資金の範囲に一定の認可外保育施設へ支払う保育料を追加

2割加算の設例を追加しています

今回公表されたFAQによりますと、上記①の贈与者死亡時の管理残額

(死亡日における非課税拠出額から結婚・子育てに支出した額を控除した一定の残高)

について、拠出時期に応じた課税関係を比較した表や

拠出時期により相続税額の2割加算の対象とならない部分の金額の計算方法を示した設例が追加されました

 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201504/pdf/04.pdf

上記URLの設例4-4を参照してください

認可外保育施設への支払いについて

④の認可外保育施設への支払いについては、

内閣府HPで公開されているFAQに記載があります

https://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/qa.pdf

上記URLの設例4-9-2を参照してください

 

 

 

2021.05.13

固定資産税精算金がある場合の、空き家に係る3,000万円特別控除適用への留意点

ご相談

 私は昨年(令和2年)1月に父を亡くし、その父から家屋とその敷地(亡くなった父の居住用家屋とその敷地)

を同年中に相続しています。諸般の事情により、今年(令和3年)の12月頃をめどにその家屋と敷地を売却する予定なのですが

その家屋と敷地の売却(譲渡)に関して、所得税法上の被相続人の居住用財産(空き家)に係る

譲渡所得の特別控除の特例(空き家に係る3,000万円の特別控除)の適用を受けることは可能でしょうか。

なお、その家屋と敷地の売却予定額は計9,950万円で、別途、固定資産税精算金60万円を買主から受け取る予定です。

回答

ご相談の場合、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることはできません。

解説1.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の概要

所得税法上、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋(※1)及び被相続人居住用家屋の敷地等(※2)

の取得をした相続人が、令和5年12月31日までの間に、その相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋

の譲渡など一定の譲渡をした場合には、原則として、その譲渡所得の金額から最高で3,000万円を控除することが

できると定められています。この制度を、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

(空き家に係る3,000万円の特別控除)といいます。

  1. ※1 昭和56年5月31日以前に建築されたことなどの一定の要件を満たすものに限ります。
  2. ※2 相続の開始の直前において、被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。

解説2.固定資産税精算金がある場合の注意点

 所得税法上、家屋や敷地の売却(譲渡)代金とは別に固定資産税精算金の支払を受ける場合には

その金額は譲渡所得の収入金額に算入することとされています。また、上記1.の被相続人の居住用財産

(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、その売却(譲渡)代金の合計額が1億円を超える

こととなるときは、適用しないと定められています。

このため、今回のご相談の場合、家屋と敷地の売却代金と固定資産税精算金との合計額が1億円を超える

(1億10万円)ことから、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

(空き家に係る3,000万円の特別控除)の適用は受けられないこととなります。

 

2021.05.08

課税時期に近い直後期末に退職金の支給が予定されていた場合の株価算定

事例

被相続人Aが100%株式を所有するX社は業績が悪化したため

2021年3月末までに希望退職者を募り、退職金1億円を

支払う予定にしていました。しかし、その直前の2021年2月に

A氏の相続が開始しました。この場合、X社の株価の算定に当たって

予定されていた退職金を計上することはできるのでしょうか?

解説

純資産価額方式により株価を算定する場合課税時期における仮決算を行い

各資産及び各負債の相続税評価額及び帳簿価額を基として評価するのが

原則です

 

しかし、一般的には課税時期に仮決算を行っていません

その場合は、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について

著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときに限り

課税時期における各資産及び各負債の金額は、直前期末の

各資産及び各負債の金額を対象として評価しても差支えない

とされています

 

また、課税時期が直後期末に近く、課税時期から直後期末までの間に

資産及び負債の金額について著しく増減がないと認められる場合には

資産及び負債について経理操作を行っているなど課税上弊害がある場合を

除き、直後期末の各資産及び負債の金額を課税時期における各資産及び

各負債の金額とみて評価額を計算して差し支えありません

回答

今回の事例の場合、課税時期と直後期末が非常に近いので

以下の要件が満たされる必要があります

・課税時期から直後期末までに資産負債について著しく変動がないこと

・経理操作を行うなど課税上弊害がある場合ではないこと

・仮決算を行っていないこと

 

そのうえで、早期退職の退職金の取扱いですが

課税時期ではあくまでも見込金額にとどまります

そのため、退職金の見込み額を計上したうえで

直後期末の資産負債の金額から純資産価額方式で

株価を算定することはできません

2021.05.02

国税庁が預貯金等の紹介業務のデジタル化を全国展開します

2021年10月から実施するようです

国税庁は本年10月より,金融機関等と連携し,調査対象者に係る「預貯金等の照会・回答業務」

のデジタル化を全国展開する予定です。

現在,紙ベースで行われている同業務について,国税当局は昨秋,

一部の国税局・税務署と金融機関との間で,オンラインを活用した実証実験を実施しました。

実証実験の結果,金融機関からの回答受領期間が,

書面照会と比べて短縮されるなどの効果があり

同業務の“デジタル化”を加速させることにきまりました。

600万件の預貯金情報を書面で照会

「預貯金等の照会・回答業務」は,税務調査等の際に

行政機関と金融機関との間で行われており,内閣官房の集計によると

年間の照会件数は約6,000万件にも及びます。

このうち国税関係が約600万件と,国の行政機関としては最も多く

全体の約1割を占めている状況です

同業務は,全て紙ベースの人手作業で行われているため

金融機関側では,照会文書に基づく契約者の特定のほか

回答書類の作成・発送などといった業務負担が生じているのが現状です

国税当局側でも,照会文書の作成・発送や回答書類の開封

保管等の事務に時間を要しているようです

オンライン照会で回答日数が短縮

国税当局は,同業務の“デジタル化”に向け,昨年10月19日から12月18日までの2か月間

実証実験として,金融機関4行と一部の国税局・税務署との間でオンライン照会・回答を実施しました

①デジタル化による業務効率化効果及び費用対効果

②デジタル化に対応した事務フローの環境テスト等を検証した。

実証実験期間中,金融機関に対して2,601件(延べ10,097人)のオンライン照会を実施し

金融機関から4営業日以内に90%以上の回答が得られたようです。

また,同期間中の書面照会の平均回答日数11.3日に比べ

オンライン照会の平均回答日数は2.5日に短縮される結果となるなど

国税当局と金融機関の双方にとって業務の効率化に繋がったようです

入力作業等の業務効率化が期待

国税庁は,実証実験の結果,書面照会に比べて回答受領期間が短縮されたとともに

書面で受領したデータの入力作業がなくなったことによる業務効率化の効果が期待されることを踏まえ

本年10月より,全国でオンライン照会(対象金融機関は順次拡大)を導入することを予定しているようです

なお,オンラインによる照会・回答は,株式会社NTTデータが提供する

預貯金等照会業務のデジタル化サービス「pipitLINQ」を介して実施する予定のようです(令和3年度)。

デジタル化に取り組む金融機関側の早期の投資決定を促進する観点から

全ての国税局・税務署での導入を想定しており,今後,所要の準備に着手するようです

2021.04.23

相続分割がまとまらない場合、相続税の申告や納税への影響はありますか? 教えてください

相談内容

 父が亡くなって3ヶ月が経ちました。父の遺産について相続人間で意見が分かれ

すぐの分割は見込めそうにありません。このまま分割をしなかったとき

相続税の申告や納税にどのような影響がありますか?

回答

 相続税の申告及び納税には期限が定められており、遺産分割がまとまらなくても

それを理由に期限を延長することはできません。

また、遺産分割協議により取得者が決まっていなければ

相続税の軽減の特例や納税の特例を適用することはできません。

この点にもご注意ください。

[詳細解説]

1.相続税の申告・納付期限

 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)から10ヶ月以内です

また、申告期限=納期限ですので、相続税の納付も10ヶ月以内にしなければなりません。

災害その他やむを得ない事情があり、10ヶ月以内に申告及び納税ができない場合で

税務署長が許可したときは、その期限を延長することができますが

「遺産分割協議が調わない」という理由は、災害その他やむを得ない事情に該当せず

申告期限は延長できません。

 したがって、いくら遺産分割協議が調っていなくても、10ヶ月の期限内に

相続税の申告書の提出及び相続税の納税を行わなければなりません。

 この場合、遺産分割協議が調っていないことにより、

各相続人が民法に規定する法定相続分で財産を相続したものとして

相続税の申告及び納税を行うこととなります。

 申告期限においてお父様の遺産を一銭も相続していなくても

ご自分の法定相続分に相当する財産に対する相続税は納めなければなりません。

そして、その相続税を期限までに納められない場合には、国から「延滞税」という利息を請求されます。

2.遺産分割協議が調わないと受けられない特例

相続税法においては、税の軽減の特例や納税の特例がいくつか設けられています。

いずれの特例も遺産分割協議においてその取得者が決まっていない場合には

適用を受けることができません。

 つまり、遺産分割協議の不調は、納期限までの納税資金準備を困難にするだけでなく

特例を受けることができないため、納付税額も多額になります。まさに悪循環です。

 遺産分割協議には法的な期限はありませんが、相続税が課税される可能性のある方は

10ヶ月という期限を意識して手続きを進めましょう。

 将来の相続時に遺産分割協議が調わないと予想される場合には

遺言書を作成しておくことにより、このような事態を避けることができます。

遺されるご家族のために、生前からできる対策を講じておくことも大切でしょう。

参考:取得者が決まっている場合のみ適用を受けることができる特例の一部

① 配偶者の税額軽減
 配偶者が相続した財産のうち、配偶者の法定相続分又は1億6千万円とのいずれか

 多い金額まで相続税が減額されます。

② 小規模宅地の評価減
 被相続人の事業用及び居住用の宅地等を、一定の要件を満たした相続人が相続した場合には

 一定の面積を限度としてその宅地等の評価額が50%又は80%減額されます。

③ 物納
 相続税の納付につき金銭で納付することが困難で、延納でも困難である場合

 不動産等の財産で納付することができます。

 ただし遺産分割が調っていない財産については、管理処分が適当でない財産となり、認められません。

2021.04.17

登録免許税の免税措置

令和3年度の税制改正によって

次の2つの登録免許税の免税措置について、その適用対象に

一定の所有権の保存登記が追加されるとともに、次の1及び2の

登録免許税の免税措置について、その適用期限が令和4年3月31日

まで1年延長されました

1.相続により土地を取得した個人が登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置

相続により土地の所有権を取得した個人が、その相続によるその土地の所有権の移転登記を

受ける前に死亡した場合には、平成30年4月1日~令和4年3月31日までの間に

その死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記

については、登録免許税を課さないこととされています

2.少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置

個人が、平成30年11月15日~令和4年3月31日までの間に、土地について①所有権の保存登記

又は②相続による所有権の移転登記を受ける場合において(a)その土地が相続登記の促進を特に

図る必要がある一定の土地であり、かつ(b)その土地の登録免許税の課税標準となる

不動産の価額が10万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の

相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととされています

2021.04.11

相続時精算課税の申告状況

相続税対策のひとつとして利用される相続時精算課税。

年間にどのくらいの人が申告しているか、ご存じですか。

ここでは国税庁発表の資料(※1)から、

相続時精算課税の申告状況をみていきます。

【1】相続時精算課税の概要

相続時精算課税は、贈与時に、贈与財産に対する贈与税を納め、

その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを

合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより、

贈与税・相続税を通じた納税を行う制度です(※2)。

 

原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、

財産を贈与した場合において選択でき、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に、

一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。(※3)。

相続時精算課税は、2,500万円までの贈与について贈与税が非課税となり

それを超える金額には一律で20%の税率で課税されます。

暦年贈与に比べて一度にたくさんの贈与ができるメリットがあります。

【2】年間の申告人員は減少傾向に

上記資料から、直近10年間の相続時精算課税の申告状況をまとめると、下グラフのとおりです。
申告人員は2013年の5.2万人をピークに減少傾向にあります。

申告納税額がある方は毎年3~4千人で推移していますが、申告納税額がない方の減少が顕著です。
申告納税額は年によってばらつきがありますが、2016年以降は280億円以上の年が続いており、

それ以前に比べて高い状態にあります。

  1. (※1)国税庁「令和元年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」PDF
    2020年(令和2年)6月に発表された資料です。
  2. 申告人員は2019年(令和元年)分が2020年4月末まで、
  3. それ以前は各年分、翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。
  4. (※2)国税庁タックスアンサー
    相続税「No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務
  5. (※3)国税庁タックスアンサー
    相続税「No.4103 相続時精算課税の選択
2021.03.27

借地権の設定範囲が不明瞭な土地の相続

[相談]

一筆の土地の一部に借地権が設定されている土地を相続しました。

引継いだ借地権設定契約書には借地面積の記載はありましたが、

具体的な範囲等は特定されていませんでした。

この借地権設定契約書は平成元年に締結されたものです。
今後、どのように対処すればよいのでしょうか?

[回答]

 借地人との間で、一筆の土地のどの部分に借地権が設定されているか

確認及び特定する必要があります。

また、土地の図面等に借地権設定の範囲を具体的に明示した上で

覚書等の書面を取り交わすことをお勧めします。

1.土地の一部を賃貸した場合

  「一筆の土地」とは「土地登記簿上の一個の土地」をいい、

「借地権」とは「建物を建てるために地代を払って他人から土地を借りる権利」をいいます。

 一筆の土地全部を賃貸してそこに借地人の建物が建てられる場合は、

当該土地そのものが借地権設定の範囲となるため、

特段の問題は生じません。

しかし、ご相談のような一筆の土地の一部を賃貸した場合は、

当該土地のどの部分に借地権が設定されているのかを特定する必要があります。

2.借地権設定範囲の特定

借地権設定範囲の特定は、建築当時の建物図面や設計図書等の資料で確認したり、

客観的に建物の利用に必要な範囲を考慮したりした上で現況の利用状況も鑑みて

判断することになります。

 その他に、建物と一体と考えられるような庭や附属建物等の敷地も

借地権設定の範囲として考慮する必要があります。

また、上記の内容に加え、建ぺい率等の建築基準法の規制を考慮して算出した面積と

当該契約書上の借地面積とで相違があれば、それらも勘案し判断する必要があります。

 借地面積の相違が生じた場合には、借地人が支払う地代等にも影響しかねないため、

借地人との間で諸条件を明確にし、かつ、借地権設定範囲を具体的に明示した

土地の図面等を添付の上で、覚書等の書面を取り交わすことをお勧めします。

3.借地権設定範囲が特定できた後の注意点

借地権設定範囲が特定できた後に注意すべき項目としては、

借地権設定契約が平成4年8月1日より前に締結された契約か否かを確認する必要があります。

なぜなら、平成4年8月1日より前に締結された契約か否かで、

借地契約の当初の存続期間・更新後の存続期間について適用される法律が異なり

ルールに違いが生じるためです。

4.ご相談のケース

ご相談の案件は、借地権設定契約日が平成元年とのことですので、

借地法(旧借地法)が適用されることになります。

 旧借地法では、堅固建物(鉄筋・鉄骨コンクリート造、石造等)か

非堅固建物(木造等)かによって借地契約の当初存続期間及び更新後の存続期間が異なります。

仮に借地期間を定めなかった場合、堅固建物の当初の存続期間が60年であるのに対し、

非堅固建物は30年となります。

また、更新後の存続期間についても堅固建物の存続期間が30年であるのに対し、

非堅固建物は20年となります。

 建物が堅固な建物か非堅固な建物かは、借地権設定契約書に定められていますが、

建物の種類・構造等の定めがないときは、一般的に非堅固な建物所有の借地契約と

みなされます。

 一方、現行の借地借家法は、旧借地法と異なり借地上の建物が堅固な建物か否か

によって区別したルールは定められていません。

同様に借地期間を定めなかった場合、借地契約の当初の存続期間は30年で、

更新後の存続期間は20年となります(次以降の更新後の存続期間は10年)。

 上記以外の他に、建物が朽廃・滅失した場合や更新の拒絶に関して

対応が異なるため注意が必要となります。

 旧借地法及び借地借家法ともに借主を保護するための法律であることは共通しますが、

旧借地法の方が借主側に有利な内容項目が多いため、今回の見直しを機に借地人に対して、

借地借家法に則った契約への変更を打診されるのもよいと考えられます。

また、将来、借地権が設定されている土地(底地)を第三者へ売却することが想定される場合には、

土地家屋調査士等の専門家に相談の上、借地権の範囲に符合するよう境界標等を設け分筆し、

別個独立した土地に分けておくことも有用な対処法となります。

 

2021.03.19

相続した収益物件の立退料

相続した収益物件を譲渡する場合の立退料の取扱い

この度、収益物件を相続しましたが

老朽化が進んでいる為、更地にして譲渡することにしました

その為、収益物件の入居者に立退料を支払った後で

建物を取り壊します。

この場合の立退料は、譲渡所得の計算上どのように扱われますか

その取扱いは以下のように場合によって異なります

建物を賃貸している場合に、借家人に立ち退いてもらうため、立退料を支払うことがあります。

このような立退料の取扱いは次のようになります。

  1. 1 賃貸している建物やその敷地を譲渡するために支払う立退料は、
  2.   譲渡に要した費用として譲渡所得の金額の計算上控除されます。
  3. 2 上記1に該当しない立退料で、不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、
  4.   不動産所得の金額の計算上必要経費になります。
  5. 3 土地、建物等を取得する際に、その土地、建物等を使用していた者に支払う立退料は
  6.   土地、建物等の取得費又は取得価額になります。
  7. 4 敷地のみを賃貸し、建物の所有者が借地人である場合に、借地人に立ち退いてもらうための立退料は
  8.   通常、借地権の買い戻しの対価となりますので土地の取得費になります。

(所基通33-7、37-23、38-11)

 

立退料のすべてが一律に必要経費になるとは限りません

確定申告の際には、ご注意ください

2021.03.13

自筆証書遺言の法務局の保管制度について

相談

新しく自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度があると聞きました。

どのように利用するのでしょうか。

回答

 令和2年7月10日施行予定の「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により

自筆証書遺言の保管を法務局へ申請をできる制度が始まりました。

 こちらの制度を利用することにより、自宅で保管しているときに起こるかもしれない

紛失、改ざんや隠ぺいのリスクをなくすことができます。

 また、遺言者の死亡後、自筆証書遺言を相続人が発見すると家庭裁判所で

検認の手続きをしなければなりませんが、今回の保管制度を利用しますと

検認の手続きは不要となります(11条)。

遺言書保管の流れ

 今回の制度で、保管の対象となる遺言は自筆証書遺言(民法968条)です。

従来は封をして保管しておくことが必要でしたが、法務局で保管される遺言は

封がしていないものになります(4条)。

 保管の申請の流れは

  1. 自筆証書遺言の作成。
  2. 保管をする法務局へ出向き、申請をする(4条、5条)です。
  3. (保管申請の手数料は1件3,900円)

 保管申請をするときは、どこの法務局でもよいというわけではありません。

申請者(遺言者)の住所地か本籍地か所有する不動産の所在地のいずれかを

管轄する法務局へのみ申請が可能となります。

また、申請をする際には必ずご予約の上

出向いていただく必要がございますのでご注意ください。

申請に当たっての注意点

申請の際に注意していただきたいことは

自筆証書遺言の内容について法務局は相談にのることはできないという点です。

内容に不備があるとせっかくの遺言が使用できず

意味の無いものとなってしまいます。

内容に不安のある場合にはお近くの専門家へご相談ください。

また、保管申請や閲覧等には手数料がかかります。

詳しくは法務省のホームページをご覧ください。

法務省
法務局における自筆証書遺言書保管制度について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

2021.03.06

立替えた葬儀費用と相続税

Question

父が亡くなった際に、子である私が喪主を務めました。

参列者から香典も頂きましたが、葬儀社やお寺への支払い

香典返しなどに結構お金がかかり、私が立て替えています。

これらの支払った費用は、父の相続財産から返してもらえるのでしょうか?

また、相続税を計算するとき、相続財産から控除してもらうことはできますか?
なお、私は日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所があります。

Answer

喪主が立て替えた葬儀費用については、遺産分割協議を通じて香典や相続財産から精算する
のが一般的です。
また相続税の計算上、一定の相続人等については、一定の範囲内で相続財産から控除するこ
とができます。

解説:葬儀費用の立替えと精算

葬儀には、「前もって準備万端」ということは、まずありません。

段取りや費用のことなど、悲しむ間もなくどんどん進めなくてはならないのが通例です。

そのような中にあっては、多額の支払いが発生し、喪主の方がそれを立て替え払いする

というのは、よくあることといえます。
実際には、その後の遺産分割協議において、香典の精算などを行うことになるでしょう。

相続人全員で相続財産の配分を決めるとともに、葬儀費用の負担割合を決定し、精算を行います。

香典で精算できなかった部分は、遺産分割協議が調い、相続財産を配分する段階で精算し

返してもらうという手続きが一般的です。

相続税を計算するうえでの取り扱い

相続税を計算する上での取扱いとしては、葬儀費用を負担した一定の相続人

(包括受遺者を含む)は、その人の取得した相続財産から控除することが認められています。
ただし、控除できる費用と控除できない費用がありますのでご注意ください。

具体的にみていきましょう。

葬儀は、宗教や地域の慣習により、その様式や所要期間など、実にさまざまです。

また、故人の生前の社会的地位によっても、必要となる費用は異なってくると想定されます。
あくまでも上記の表は、どこまでを葬儀費用と認めるかという範囲を示したものに過ぎません。

葬儀費用の控除にあたっては、支払いの名称だけでなく、地域や故人の地位などを
勘案した上で、葬儀に必要な費用といえるかどうかを、支払い内容にも着目しながらのご
判断いただくことが必要となります。

 

葬儀費用の負担者すべてが控除できるわけではなく、前述のとおり、『一定の相続人(包
括受遺者を含む)』に限定されています。
今回のご相談のケースでは、ご相談者が葬儀費用の負担者となった場合に、相続により
財産を取得している『日本国籍を有しており、かつ、日本国内に住所がある』相続人として、
上記の表の「控除できる費用」に該当する部分について、控除することができます。
葬儀費用の取扱いや『一定の相続人(包括受遺者を含む)』の範囲等について、詳細をお
知りになりたい方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

2021.02.27

老朽化した賃貸マンションは相続しても大丈夫???

ケーススタディー

私が所有している賃貸マンションは、私の親が相続対策として建築し

私が引き継いだものです。
最寄りの駅から徒歩5 分と⽴地は良いのですが、築45 年が経過しており

周辺の賃貸マンションに⽐べ⾒劣りします。そのため近年は

周辺の賃貸マンションに⽐べ賃料を低くすることで、貸室の稼働率を上げてきました。
⼦供からは「管理ができないので相続発⽣前に売却してほしい」といわれていますが

売却すると⼦供が負担する相続税が増えるのではないかと悩んでいます。

賃貸マンションの相続税評価額

賃貸マンションのおおよその相続税評価額は、路線価(又は評価倍率)

と固定資産税評価額で算出できます。路線価や評価倍率は、毎年、国税庁から公表されています。また、固定資産税評
価額は、毎年、固定資産税の納税者に届く納税書類に記載されています。
ここでは路線価が付されている土地を前提に、計算式や計算例を確認していきましょう。

なお、分かりやすくするため、土地の価額を計算するにあたり補正率等は一切考慮していません。

≪計算式≫

⼟地の価額︓(路線価×⼟地の⾯積)×(1-借地権割合×借家権割合)
建物の価額︓建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合)
※ 借家権割合は30%
※ 路線価及び借地権割合については、国税庁のホームページでご確認ください。

≪計算例≫
前提条件 ⼟地の⾯積︓500 ㎡
接道する道路の路線価︓300,000 円/㎡
建物の固定資産税評価額︓50,000,000 円
借地権割合︓50%
借家権割合︓30%

① ⼟地の価額
(300,000 円×500 ㎡)×(1-50%×30%)=127,500,000 円
② 建物の価額
50,000,000 円×(1-30%)=35,000,000 円
賃貸マンションの相続税評価額︓①+②=162,500,000 円

賃貸マンションの市場価格

相続税評価額に対し、賃貸マンションのような収益不動産の市場価格は、

収益還元法で計算することがベースになります。

収益還元法とは、対象不動産が将来生み出すと期待される収益(収入)

をベースとして収益不動産の市場価格を求める手法のことですが

今回は、表面利回り(収入÷投資家の期待利回り)を利用して計算します。

≪計算式≫
賃貸マンションの年収÷投資家の期待利回り
※ 投資家の期待利回りは、物件の所在や築年数等に影響されます。

不動産の専門家にご相談ください。

≪計算例≫
前提条件 賃貸マンションの年収︓12,000,000 円
投資家の期待利回り︓10%
賃貸マンションの市場価格︓12,000,000 円÷10%=120,000,000 円

結論

上記例では、賃貸マンションの市場価格(120,000,000 円)より、賃貸マンションの相続税評
価額(162,500,000 円)の方が高くなります。そのため、相続発生前に賃貸マンションを売却し
た方が、支払う相続税の負担は少なくて済みます。
ただし、実際に比較検討する際は、譲渡所得に関する税金やその他諸費用についても考慮する
必要があります。ご注意ください。

新築時には相続対策として効果のあった賃貸マンションも、築年数の経
過とともに、賃料収入が減少していくことが原因で、相続税評価額が市場
価格を上回ることがあります。特に、駐車場の敷地を広くとっているな
ど、土地の面積に比べ建物を小さくした場合などは、このような現象が起
きやすいと思います。
所有されている賃貸マンションについて、将来の相続に不安のある方
は、当事務所までお気軽にご相談くださ

2020.10.13

法務局における自筆証書遺言の保管制度

法務局における自筆証書遺言の保管制度

民法改正により、遺言書を法務局にて保管してもらえるようになりました。今回は、法務局における自筆証書遺言の保管制度についてご紹介します。

どんな制度?

2020 年(令和2 年)7 月10 日施行の「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により、自筆証書遺言の保管を法務局へ申請できる制度が始まりました。
こちらの制度を利用することにより、自宅で遺言を保管しているときに起こるかもしれない、紛失、改ざんや隠ぺいのリスクをなくすことができます。また、遺言者の死亡後、自筆証書遺言
を相続人が発見すると家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりませんが、今回の保管制度を利用すると、検認の手続きは不要となります(11 条)。

申請の流れ

今回の制度で、保管の対象となる遺言は自筆証書遺言(民法968 条)です。 従来は封をして保管しておくことが必要でしたが、法務局で保管される遺言は封をしていないものになります(4 条)。

保管申請をするときは、どこの法務局でもよいというわけではありません。申請者(遺言者)の住所地か本籍地か所有する不動産の所在地、のいずれかを管轄する法務局へのみ申請が可能となります。また、申請をする際には必ず予約の上、出向く必要があります。 申請の際に注意していただきたいことは、自筆証書遺言の内容について法務局は相談にのることはできないという点です。内容に不備があるとせっかくの遺言が使用できず、意味の無いもの となってしまいます。内容に不安のある場合にはお近くの専門家へご相談ください。 保管申請の他、閲覧等には手数料がかかります。詳しくは、法務省ホームページでご確認ください。 法務省ホームページ「法務局における自筆証書遺言書保管制度について」 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

ところで、自筆証書遺言って何?

さて、今回の制度で保管の対象となるのは自筆証書遺言ですが、そもそもこの「自筆証書遺言」とはどのようなものなのでしょうか。最後に、遺言の形式について少しご紹介します。 遺言の形式には、普通方式によるものと特別方式によるものがあります。自筆証書遺言は、普通方式による遺言になります。普通方式による遺言には、次の3 種類があります。それぞれのメリット・デメリットを見てみましょう。

遺言書の種類別メリット・デメリット

遺言を作成することは、遺されたご家族の方の手続きが楽になるだけでなく、ご自身の最期の気持ちを表現することにもなります。内容や状況に応じて、どの書式の遺言がご自身に適しているか検討し、作成されることをお勧めします。

2019.01.20

【事業承継税制の特例措置~経営者から後継者(子)への贈与】

[相談]
私は創業40年の小さな会社を経営して
おります。そろそろ後継者(子)に事業を
承継したいと考えていたところ、

事業承継税制というものがあると知りました。
特に平成30年度税制改正で創設された

特例措置が気になっています。例えば
私が保有する会社の株式を子供達に贈与

する場合の当該特例措置の適用について
教えてください。

[回答]
平成30年度税制改正で創設された事業承継税制
の特例措置は、10年間の期間限定措置として

設けられた制度です。従来からの事業承継税制
よりも優遇されているため

事業承継対策の1つの手法として考慮すべきですが
将来のリスクも踏まえ慎重な検討が求められます。

[詳細解説]
平成30年度税制改正で新しく創設された
事業承継税制の特例措置について
贈与のケースを中心にご説明いたします。

1.概要
事業承継税制とは、中小企業の先代経営者等
から後継者へ株式を承継する際の相続税や

贈与税の負担を軽減させる制度です。
これまでの事業承継税制(以下、一般措置)

に加え、平成30年1月1日から平成39年(2027年)
12月31日までの10年間の措置として

納税猶予の対象となる非上場株式等の制限
(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や

納税猶予割合の引き上げ(80%から100%)
等がされた特例措置(以下、特例措置)が
創設されました。

2.贈与の場合の主な要件

贈与について特例措置の適用を受けるためには
一定の要件を満たす必要があります。

主な要件は、次の通りです。

○先代経営者である贈与者の主な要件

1.会社の代表権を有していたこと
 (贈与までに代表権を返上する必要がある)

2.贈与の直前において、贈与者及び同族関係者で
 総議決権数の50%超の議決権数を保有し、
 かつ、後継者を除いて最も多くの議決権数を保有していたこと

○後継者である受贈者の主な要件(贈与時)

1.会社の代表権を有していること
 (代表者はその者以外にいてもよい)

2.20歳以上であり、かつ、役員の就任から
 3年以上経過していること

3.後継者と同族関係者で総議決件数の50%超を有し
 かつ、同族内で筆頭株主となること

4.3名まで適用可能

○事業継続要件

1.5年間の事業継続(後継者が引き続き代表者となり
 納税猶予対象株式を継続保有すること)

2.5年間の雇用確保要件(雇用の8割以上を5年間維持
 できない場合でも、一定の書類を都道府県に提出すれば継続可)

○認定対象会社の要件

1.以下のような会社に該当しないこと
 上場会社
 中小企業に該当しない会社
 風俗営業会社
 資産保有型会社または資産運用型会社(一定の要件を満たすものを除く)
 直近の事業年度における総収入金額が1円未満の会社
 常時使用する従業員数が1人未満の会社 等

○担保要件

 納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に
 見合う担保を税務署に提出する必要あり

3.贈与税が免除されるケース

納税猶予されている贈与税が免除されるケースとしては
例えば次のようなものが考えられます。

1.先代経営者等(贈与者)が死亡した場合

2.後継者(受贈者)が死亡した場合

上記の通り、贈与について特例措置の適用を受ける場合には
様々な要件を満たす必要があります。

これまで業績が伸びて純資産が増加している会社は
株価が高くなることにより多額の税負担が生じ

事業承継が困難でしたが、特例措置の適用を受けることが
できる一定の要件を満たしている場合は

税金の負担を生じさせずに後継者へ事業を承継することができます。
なお、適用を受けるためには、上記の要件以外の細かな要件を

満たす必要や、一定の事務手続きが生じます。
また、将来におけるリスクも踏まえ慎重な検討が求められます。

2019.01.14

【平成31年の資産税関連税制改正】

平成31年度税制改正大綱に記載
されている資産税関連の内容を
簡単にまとめてみました。

今後の相続税対策に影響します
是非一度ご確認ください

[1] 個人版事業承継税制 

資産課税関係の改正の目玉となるのが
個人版事業承継税制です。

不動産貸付業等を除いて、個人事業主が多い
医師や税理士等の士業・農業など・幅広く

対象となり、事業用の土地や建物・機械等
の一定の減価償却資産に係る相続税及び

贈与税の納税を全額猶予できる制度が
創設されました。

この制度は、事業用の小規模宅地特例との
選択適用となります

また、猶予税額の全額の“免除”を受ける
ためには原則として、後継者が死亡する

まで事業を継続することなどが必要と
なります。

そのため承継後の事業継続の見通し等
も考慮する必要があります。

[2] 事業用小宅特例 

個人版事業承継税制と選択適用となる特定事業用
宅地等の小規模宅地特例については、

相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が
除外されます。30年度改正で相続開始前3年以内の

貸付けを貸付事業用宅地の対象から除外しており
事業用宅地についても相続開始前の駆け込み的な

事業供用による適用を防ぐ見直しがされます。
ただ、当該宅地で事業供用されている減価償却資産

の価額がその宅地等の相続時の価額の15%以上
である場合は、相続開始前3年以内に事業の用に

供しても適用対象となります。また、本改正は
31年4月1日以後の相続等に適用されますが

同日前から事業の用に供されている宅地等には
適用されません。

[3] 配偶者居住権の評価額を建物
 ・敷地所有権の評価額から控除

民法改正に伴い2020年4月から施行される
配偶者居住権(配偶者が相続開始時に居住

していた被相続人の所有建物を対象に終身
又は一定期間配偶者にその使用収益を認める

権利)等の評価方法を定めます。
配偶者居住権が設定された建物やその敷地の

所有権の評価額については、その配偶者居住権
に係る部分を控除して算出することになります。

相続税法で配偶者居住権の評価方法を法定化し
財産評価基本通達で詳細な取扱いを示すことになります

[4] 相続時精算課税等の年齢要件が18歳になります

民法改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる
ため、税制上の年齢要件も20歳から18歳に引き下がります。

改正民法の施行に併せ34年(2022年)4月1日以後の相続等
贈与に適用されます。

⇒これに関連して年齢要件を現行の20歳から
 18歳に引き下げる制度をまとめました

①相続税の未成年者控除
②相続時精算課税制度
③直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
④相続時精算課税適用者の特例
⑤非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度も同様)

[5] 教育資金等の非課税贈与に1,000万円の所得制限

教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置
についてはそれぞれ,平成33年(2021年)3月31日まで
適用期限を2年延長する。

一方,受贈者の合計所得金額が1,000万円超の場合は
適用できないといった縮減措置がとられます。

2019.01.12

【相続税の脱税は、金額によっては懲役刑です!!!】

1月から相続税が改正され課税が強化されたことが改めて
マスコミ各社で報道されています。

また、相続税改正によって相続税のご相談も増えています
しかし、その相談の中には安易に『節税対策』という
脱税行為を考えている方もいらっしゃいます

一番多いのが、亡くなるまでに預貯金を子・孫の口座に
振替えておく、あるいは現金で引き出しして隠しておく
という安易な行動です

ほとんどの方が、相続税の申告に当たって過去の預金口座の
資金移動もチェックすることをご存じありません。

単純に亡くなった日の預金残高だけを申告すれば
それで足りるとお考えのようです。

上記のような脱税まがいの節税対策も、やりすぎると
懲役刑になりますので、認識を改めていただく必要があります
下記は、最近の中日新聞からの抜粋です。

(中日新聞の記事より)
愛知県武豊町ですし店を営んでいた父親の遺産を隠して
相続税9500万円を免れたとして、相続税法違反の罪に
問われた長女と長男の両被告に対し、

名古屋地裁は7日、それぞれ懲役1年6月、執行猶予3年、
罰金1500万円(求刑懲役1年6月、罰金1500万円)
の判決を言い渡した。

裁判官は判決理由で「父親の死亡直前に貯金を解約し、
多額の現金を隠した。税理士にも虚偽の説明をするなど、
強固な犯意に基づく悪質な犯行」と指摘。

一方で「修正申告し、反省の態度を示している」とも述べた。
判決によると、2人は父親が2010年8月に死亡した後、
相続した遺産の一部をすし店を兼ねた住宅に隠すなどし、
2億8300万円を除外して税務申告した。
(以上、中日新聞記事より抜粋)

相続税の節税対策は、相続税の申告実務に
精通した相続税専門の税理士に、早い時期からご相談ください
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ご提案させていただきます

2019.01.05

【遡って受給した公的年金の所得の帰属年度】

【遡って受給した公的年金の所得の帰属年度】

[相談]
 私は、ある会社の役員をしております
(60歳のときに役員に就任しました)。

役員就任以降、毎月50万円の役員給与を受給し
厚生年金に加入していたことから公的年金は

一切受給できない(在職老齢年金)ものと思い
これまで公的年金を受給するための手続き
(裁定請求)をしていませんでした。

ところが、70歳になる今年
役員を退任することとなったため

管轄の年金事務所に裁定請求をしたところ
「老齢基礎年金(国民年金)」は役員給与

を受給していても支給停止されないので
65歳になってからの過去5年分の老齢基礎
年金を支給する、との説明を受けました。

この場合、私は一度に5年分の老齢基礎
年金を受給することになりますが

この5年分の年金収入は
受給した年の所得となるのでしょうか。

[回答]
ご相談の場合、一度に支給された老齢基礎年金は
それぞれ本来の支給期日の属する年分の収入金額

となるため、過去それぞれの年分の課税所得が
再計算されることになります。

[解説]
1.在職老齢年金とは
 我が国の公的年金制度は、基本的には、国内に
住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する

「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務してい
る人が加入する「厚生年金」の2階建ての構造になっています。

一定の年齢に達したことを支給自由とする公的年金
(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給開始年齢は

原則的には65歳からですが、今回のご相談の場合のように
公的年金を受給できる70歳未満の人が会社に勤務し

厚生年金保険に加入している場合など一定の場合には
「老齢厚生年金の額+給与やボーナスの額」に応じて

老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となることがあります。
この年金の仕組みのことを、「在職老齢年金」といいます。

ただし、この在職老齢年金によって支給停止となるのは
「厚生年金(2階)」部分だけで、「国民年金(1階)」
部分はその対象とはされていません。

このため、給与を受給すると公的年金すべてが
支給停止になると勘違いをしてしまっていた場合

後になって、過年度において受給できた年金
(国民年金)をまとめて支給されることがあるのです。

2.公的年金収入による所得の帰属する年度
 公的年金給付の受給権は、法律の定める受給要件
(年齢など)を満たした時点で年金を受給する

基本的な権利(権利)が発生し、その後
法律に定める各支給期日が到来することによって

実際に年金を受け取る権利(支分権)が発生します。
公的年金の受給権者は、裁定請求をすればいつでも

年金の支給を受けることができることから
税務上は、その支給期日が到来した時点の所得

として計上することを原則としています。
また、裁定請求の遅延によって過去にさかのぼって

支払われる公的年金については、法律で定められた
公的年金の各支給日の所得として計上することと

されています。
したがって、今回のご相談の場合のように

過年度に受給すべきであった公的年金を一時に
受給した場合には、それぞれ本来の支給期日の属

する年分の収入金額とされ
それぞれの年分の課税所得を再計算することになります。

2019.01.03

相続税額から障害者控除額が引ききれないとき

[相談]

 先日、私の父が他界しました。
 相続人は父の子である私と弟(30歳)の2人ですが
弟は身体障害者手帳(1級)の交付を受けています。

 この場合、弟は相続税額の計算にあたって、
何らかの控除を受けられるのでしょうか。
なお、父も弟も国外に居住していたことはありません。

[回答]

 ご相談の場合、弟が相続により財産を取得していれば
障害者控除として相続税額から一定額を控除すること
が可能です。

[解説]

1.相続税法上の障害者控除とは

 相続又は遺贈により財産を取得した人が、被相続人
(亡くなった人)の法定相続人に該当し、かつ、障害者
である場合には、その障害者である法定相続人については

相続税法の規定により算出した相続税額から、10万円(※)
にその人が85歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額
を控除することができます。

※その人が特別障害者(精神障害者保健福祉手帳に記載
されている障害等級が1級の人や、身体障害者手帳に記載
されている障害等級が1級・2級の人など)である場合には
20万円となります。

このため、ご相談の場合、ご相談者の弟は被相続人の
法定相続人に該当しますので、今回の相続で財産を取得
していれば、相続税法上の障害者控除の規定の適用を
受けることができます。

今回の場合の障害者控除額は
20万円×(85歳-30歳)=1,100万円となります。

2.障害者控除額が本人の税額から引ききれない場合

上記1.の障害者控除を受けることができる金額が
障害者控除の適用を受ける人について算出した相続税額
を超える場合

(障害者控除額が相続税額よりも多い場合)には
障害者控除額のうち相続税額から引ききれなかった金額は
障害者控除の適用を受ける人の扶養義務者(※)
の相続税額から控除することができます。

※扶養義務者とは、配偶者及び民法877条に規定する親族
(直系血族・兄弟姉妹・生計を一にする三親等内の親族)
をいいます。

このため、ご相談の場合において、弟の相続税額から
引ききれなかった障害者控除額がある場合には
扶養義務者であるご相談者(兄)の相続税額から
その引ききれなかった障害者控除額を差し引くことができます。

なお、今回の相続以前の相続において、障害者控除の適用
を受けたことがある場合には、障害者控除額が制限される
ことがありますので

今回の相続で実際に障害者控除の規定の適用を受けること
ができるのかどうかについては
税理士にご確認いただくことをおすすめいたします。

2018.07.30

【平成30年度 税制改正に対応した通達が公表されました】

国税庁から平成30年度税制改正に対応した通達が
公表されました。今年の税制改正は企業オーナーに関連する

相続税関係の改正が多かったため今回の通達の公表が
待たれていました。その中から企業オーナーに関連する
相続税関連の通達の一部をご紹介します

≪事業承継税制の特例措置関係≫
30年度税制改正で事業承継税制に特例措置が設けられました
最大3人の後継者への贈与に対象を広げる等の手当がされた

特例措置について、特例贈与者(適用対象となる贈与者)
の範囲から「既に…適用に係る贈与をしているもの」
は除かれます。

特例経営承継受贈者(適用対象となる受贈者)が複数いる
場合に同一年中に行う贈与については

「既に…適用に係る贈与をしているもの」に含まれない
ものとして、いずれも特例措置の対象になる旨が示されました

≪相続時精算課税適用者の特例関係≫
相続時精算課税制度の適用対象者は、20歳以上の
「推定相続人」とされています。

ただし、平成30年度改正による事業承継税制の特例措置の
適用を促すため、この特例措置の適用を受ける場合は

「推定相続人以外の者」も相続時精算課税を適用
(特例措置と併用)できることとされました。

この点、特例措置に係る特例贈与者から非上場株式等の
贈与を受ける前に、当該特例贈与者から既に他の財産の

贈与を受けたため相続時精算課税が適用されない
贈与がある場合、その贈与で取得した財産に係る

贈与税額は暦年課税(基礎控除110万円)で計算する
こととしました。

≪一般社団法人等への相続税の課税関係≫
平成30年度改正で、特定一般社団法人等の理事が死亡した
場合には、特定一般社団法人等の「純資産額」を

その同族理事の数に1を加えた数で除した金額を
遺贈で取得したものとみなし

その特定一般社団法人等に相続税を課税することとされました。

「純資産額」について被相続人の相続開始時に
特定一般社団法人が有する財産及び債務に基づき
算定するなどとしました

平成30年税制改正で『事業承継税制』は大きく改正され
従来よりも適用できる幅が広がりました。

株式が分散している
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など、企業オーナー様の悩みを解決しやすい改正です

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2018.07.16

【小宅特例 3月までの駆込需要もアパートの建築中等では適用不可】

 

平成30年度改正で小規模宅地特例の貸付事業用宅地等において
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は対象外
とされました

30年4月1日以後の相続等から適用されますが、経過措置として
30年3月31日までに貸し付けた宅地等については、
その3年以内に相続があっても適用対象となります

このため、昨年末の30年度税制改正大綱が公表されてから
3月31日にかけて賃貸アパート等の駆込需要が見込まれていましたが

同日までに賃貸アパート等を取得するだけでは足りず
実際に貸付事業の用に供されたといえる状態でないと
経過措置の適用は認められません。

30年4月1日以後の相続等から「相続開始前3年以内」に
「新たに貸付事業の用に供された宅地等」は貸付事業用宅地等
の対象から除外されます。

ただし、30年4月1日から33年3月31日までに生じた相続等については
経過措置によって上記の「相続開始前3年以内」を「30年4月1日以後」

と読み替えることで、30年4月1日より前に貸付事業の用に供された
宅地等は相続開始前3年以内の貸付けであっても
従来どおり貸付事業用宅地等として特例の対象となります

30年4月1日より前に貸付事業の用に供された宅地等は
経過措置の対象となりますが、あくまでも貸付事業の用に
“供された”宅地等であることがポイントです。

賃貸アパート等の建築等をしている段階で、貸付事業を行う意思が
あると言えますが、その敷地が貸付事業の用に供されたというためには
その賃貸アパート等を他者に貸し付けている状態であることが
原則となります。

アパート等の貸付事業を行う際に不動産管理会社等と結ぶ
サブリース契約については、オーナーが不動産管理会社等に建物を貸し付け

その不動産管理会社等が各入居者に貸し付ける、要は建物の“又貸し”
といった形と考えられる。

そのため、オーナーが不動産管理会社等に建物を貸し付けていれば
その敷地はオーナーである被相続人の貸付事業の用に供されたといえます。

ただ、この場合も建物が建築中だとその敷地が貸付事業の用に
供されたとは言えません

経過措置を適用するに当たり、30年3月31日までに貸付事業の用に供されていた
ことを証する書類の提出義務はありません。ただし、制度変更の過渡期であり

同日までに貸付けが行われたのか税務調査で指摘されることも考えられます
その場合、所得税の確定申告に係る不動産所得用の「収支内訳書」や
不動産の賃貸借契約書などによって事業実態を確認できます。

上記のとおり今回の改正で、相続開始前3年以内の貸付け
(30年4月1日から33年3月31日までの相続等の場合は,30年4月1日以後の貸付け)
は貸付事業用宅地等の対象から除外されました。

ただ、相続開始まで3年を超えて事業的規模で貸付けを行っている者が行う
貸付けについては、相続開始前3年又は30年4月1日以後の貸付けでも対象となります。

例えば、Aアパートを平成25年から事業的規模で貸し付けており
30年1月にBアパートを貸し付け30年12月にCアパートをそれぞれ貸付事業の用に供した。

そして31年2月に相続が生じたとする。30年4月1日から33年3月31日までに相続が生じているため
30年4月1日以後の貸付けであるCアパートの敷地は対象外となると考えられます。

しかし、相続開始まで3年を超えて事業的規模で貸付けを行っている者の貸付けであるため
Aアパートはもちろん、BアパートだけでなくCアパートの敷地を含め全て特例の適用対象となります

なお、相続開始まで3年を超えて事業的規模で貸付けを行う者の相続開始前3年以内の
貸付けに特例の適用をする場合

3年を超えて事業的規模であったことを明らかにする書類
(例えば,相続までの4年分の不動産所得用の収支内訳書など)を
相続税の申告の際に提出する必要があります( 措規23の2 ⑧五ロ)。

2018.06.30

別居中の配偶者への贈与に係る配偶者控除の特例の適用

[相談]

 

婚姻期間45年ですが、諸事情により別居(約30年)をしております。

夫・妻がそれぞれ生活をしている不動産は、いずれも夫名義ですが

 

この度、妻が居住している夫名義の不動産について、夫から妻に贈与をしたいと考えております。

夫婦が別居中であっても、贈与税の配偶者控除の適用を受けることは可能でしょうか。

 

贈与税の配偶者控除について、以下の適用要件は全て満たしております。

①婚姻期間が20年以上であること。
②贈与される不動産が、居住用不動産であり国内にあるものであること。
③贈与を受けた居住用不動産に居住しており、贈与後も引き続き居住すること。

 

[回答]

 

相続税法第21条の6の贈与税の配偶者控除を適用するにあたり

夫婦同居の有無や、贈与者による贈与対象不動産の居住の有無は

要件に含まれていません。

 

したがって

ご質問の前提条件であれば、贈与税の配偶者控除の適用は可能であると考えます。

 

関係法令通達等
 相続税法第21条の6

2018.02.11

【借地権の転貸に対する借地権の認定課税】

[相談]

母親が地主(他人)から土地を借り受け、そこに母親所有の建物が立っています。
この建物を同族会社である法人に贈与しました。

母親の借地人の地位に変更はありません。
この場合、法人が母親から建物の贈与を受けた時に権利金の
支払いがなかったとしても、「土地の無償返還に関する届出書」

を提出していれば、法人に権利金の課税は認定されませんか。

[回答]

個人(母)から法人への贈与した場合、借地権は建物に付随して法人に
移っていると考えられるため、個人(母)には譲渡の課税、

法人には借地権の認定課税等がされるものと考えます。
個人間であれば「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」

により課税をさけることが可能であると考えられますが
取引の一方が法人である場合には適用されないと考えます。

なお、法人が個人から敷地を利用する時に提出する
「土地の無償返還に関する届出書」の記載要領等に

2.この届出書は、土地所有者(借地権の転貸の場合における借地権者を含みます。…)
 
と記載されていますが、一般的に、建物を所有するためには
その敷地利用権(借地権)が不可欠とされるため、建物を贈与した場合

その時に権利金の支払いがなかった場合には
通常は借地権の認定課税の問題が生じると考えます。

しかし、地主の了解を得て、借地権に転借権を設定し建物を
移転する方法をとった場合には無償返還の届出を提出して

認定課税をさけることが可能であると考えます。
したがって、届出を提出するのみでは足りず

転借権の設定等が必要になると考えます。

2018.02.04

【生命保険の権利評価額の申告漏れを税務署が把握しやすくなります】

平成30年1月1日から保険契約の変更に関する情報が
税務署に把握されるようになります。

平成27年度改正で行われた保険に関する調書の見直しによるもので
保険会社は、保険契約者の死亡により契約者の変更が行われた場合や

保険契約の一時金の支払いが行われた際に、契約変更等の
情報を記載した調書を作成し税務署に提出することになります。

これらの調書の提出により、税務署側は契約者変更等の
事実を的確に把握し申告漏れの問題に対応することになります。

国税庁が公表した「平成28事務年度における相続税の調査の状況」
によると、生命保険関係の申告漏れが相変わらず散見されるようです。

そのなかには、保険契約者の変更に伴い相続税又は贈与税の納税義務が
生じるにもかかわらず申告から漏れていたケースも多いようです。

保険料の調書の見直しは、30年1月1日以後に変更の効力が
生じるものから対象となります。

新たに創設された「保険契約者等の異動に関する調書」は
契約者の死亡により契約者の変更の手続きが行われた場合に

その変更の効力が生じた日の属する年の翌年1月31日までに
保険会社等が税務署へ提出するものです
(解約返戻金相当額が100万円以下である生命保険契約及び損害保険契約等を除きます)

同調書は、新保険契約者等・死亡した保険契約者等・被保険者等の住所や氏名のほか
解約返戻金相当額や死亡した保険契約者等の払込保険料等の金額などを記載します

他方で保険金等の支払いが行われた際に保険会社が作成する
「生命保険契約等の一時金の支払調書」は、改正により
直前の保険契約者等・その契約に係る現契約者が払い込んだ保険料の額
契約者変更の回数を記載する欄が追加されています

生命保険契約の権利の評価額は
相続税の申告漏れが多かったようです

平成30年1月以降は、今まで以上に
要注意です

2018.01.28

【民法改正で配偶者優遇か?!】

配偶者居住権等を創設へ

法制審議会民法(相続関係)部会は平成28年6月に
「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」
をとりまとめました

その後,民法(相続関係)等の改正に関する要綱案の
たたき台が検討されてきました。

今回、要綱案がとりまとめらましたが 
たたき台から内容を修正した項目もあります

例えば要綱案のたたき台では“配偶者居住権”について
建物所有者の承諾があればその譲渡を認めていましたが
要綱案では配偶者居住権の譲渡を禁止しています。

以下で、民法改正の要綱案の一部を抜粋して
ご紹介します

配偶者の居住権を保護するための方策

〇配偶者の居住権を長期的に保護するための方策
(配偶者居住権の創設)

配偶者は、被相続人の財産に属した建物に
相続開始時に居住していた場合において

配偶者居住権が遺贈の目的とされたときなどは
その居住していた建物の全部を無償で使用収益
する権利(配偶者居住権)を取得する。

遺産分割に関する見直し等

〇配偶者保護のための方策
(持戻し免除の意思表示の推定規定)

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が
他の一方に対してその居住の用に供する建物又は敷地を

遺贈又は贈与したときは、民法第903条第3項の持戻し
免除の意思表示があったものと推定し

遺産分割において原則として当該居住用不動産の価額
を特別受益として扱わずに計算できるものとする。

〇家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策

共同相続された預貯金債権の権利行使について
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち

相続開始時の債権額の3分の1に共同相続人の
法定相続分を乗じた額

(預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする)
については単独でその権利を行使できる。

その権利行使した預貯金債権は、共同相続人が
遺産の一部分割により取得したものとみなす。

遺留分制度に関する見直し

〇遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し
遺留分権利者及びその承継人は受遺者又は受贈者に対し
遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

〇遺留分の算定方法の見直し
相続人に対する贈与は相続開始前の10年間にされたものに限り
その価額を,遺留分を算定するための財産の価額に算入する。

2018.01.21

【死亡保険金で代償分割金を支払った場合の相続税の取扱あつかい】

[相談]

父が亡くなりました。遺産は、父名義の不動産(1億5000万円)
その他の財産(2億円)、相続人である三男が保険金受取人と
なっている生命保険(1億円)です。

相続人は長男(=今回の相談者)、次男、三男の3人です。
相続人3人で分割協議したところ、
次のようにまとまりそうです。

①父名義の不動産は三男が全て相続する。
②その他の財産は長男と次男が1億円ずつ相続する。
③三男が受け取った生命保険金を代償分割として
 長男と次男へ5000万円ずつ分ける。

この場合、長男と次男が受け取った5000万円は
生命保険金を受け取ったものとして相続税を
計算するのでしょうか?

[回答]

長男と次男は生命保険ではなく代償債権を相続により取得したため
みなし相続財産ではなく本来の財産として相続税が課税されます。

[詳細解説]

相続に際して予め指定された保険金受取人が
被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金
を受け取った場合、

みなし相続財産として相続税の対象となります。
ただし非課税枠(500万円×法定相続人数)があります。

つまり、生命保険金請求権は、予め指定された保険金受取人の
固有の財産であり、例外を除き遺産分割の対象となりません。
 
したがって、三男が代償金を払うために使用することも
自由です。

ここにいう、保険金受取人とは、保険契約に係る保険約款等
の規定に基づいて保険金を受け取る権利を有する人をいいます

ただし、このような保険金受取人以外の人が現実に保険金を
取得している場合において、保険金受取人の変更手続きが

なされていなかったことについてやむを得ない事情がある
と認められる場合等、現実に保険金を取得したものが

その保険金を取得することについて相当な理由があると
認められるときは、その現実に保険金を取得した人が
保険金受取人であるとされます

今回の場合、三男以外の相続人2人が生命保険金を
受け取ることについて相当の理由があるとは認められず

あくまでも保険金受取人は三男ということになります。
したがって、三男が受け取った生命保険金の中から

相続人2人に各々5000万円を代償財産として交付したことになり
長男と次男は代償債権の5000万円を相続により取得したもの

として相続税が課税されます。

2018.01.06

【相次相続控除適用時の留意点】

[相談]

母がこの度亡くなりました。3年前に父が亡くなった際に
母は相続放棄の手続きをしましたが、父を被保険者とする
生命保険金は受取っています

この場合の相次相続控除適用時の留意点について
ご教示ください

[回答]

相次相続控除とは、祖父から父への“一次相続”から10年以内に
父から子への“二次相続”が生じた場合、父に課された一次相続
に係る相続税の一定額を子の相続税から控除できる制度を言います。

二次相続で子本人が相続放棄した場合はもちろん、
一次相続において父が相続放棄していた際も
その子は本制度を適用できないことになります。

この制度は「二次相続に係る被相続人が当該相続開始前10年以内に
“相続”で財産を取得している場合」等の要件を満たせば適用できます。

ここで言う“相続”には,「被相続人からの相続人に対する遺贈」
も含まれます。

しかし見落としがちなのが“相続人に対する”遺贈という点です。

例えば、父と母、子1人で,父が亡くなった一次相続において
母が相続放棄し子が父の財産を相続で取得して10年以内に今度は
母が亡くなり二次相続が生じた場合。

一次相続で母は相続放棄していますが、父が契約者の生命保険金
の受取人は母になっていたものとします。

相続放棄をした者は“相続人”には当たらないため
父の死亡に伴う生命保険金は父から母への遺贈により取得した
ものとみなされます。

しかし、“相続人に対する”遺贈ではないため一次相続に係る
生命保険金の受取りは「被相続人(一次相続の父)からの相続人
(一次相続の母)に対する遺贈」には該当しないことになります。

従いまして、本制度の適用要件である「二次相続に係る被相続人
(母)が当該相続開始前10年以内に“相続”で財産を取得している場合」
には該当せず,母から子への二次相続に本制度を適用できません。

なお、「相続放棄をした者」とは家庭裁判所への申述により相続の放棄
をした者のことを言います。

事実上相続で財産を取得しなかっただけの者は、“相続人”に含まれるため
本ケースで母が相続放棄をせず、単に父の財産を相続しなかっただけ
という場合は二次相続で子は本制度を適用できます。

2018.01.01

【贈与なのに譲渡所得税が発生?】

[相談]

私はマンション1室を所有しています
(購入したのは10年ほど前です)。
そのマンションを子に贈与することで私の相続財産を減少させ、
子の相続税負担を軽減したいと考えています。

その贈与について贈与者である私に関して
税務上留意すべき点はあるでしょうか?

なお、贈与しようとしている土地に関する特記事項は
下記の通りです。

・マンションの購入時の価格は3,000万円
現在の帳簿価額(未償却残高)は2,200万円です。
・マンション購入についてのローンの残債は2,400万円で
全額を子に引き継がせるつもりです。

[回答]

ご相談の贈与は「負担付贈与」に該当します。
この場合、ローン残債相当額の2,400万円で
マンションをお子様に売却したことになります。

このためご相談の内容でお子様への贈与を実行されますと
ローン残債相当額2,400万円から帳簿価額2,200万円を控除した
残額の200万円に対して、

譲渡に対する所得税・復興特別所得税・住民税
が課されることとなります。

このように、資産を「贈与」する場合であっても
「所得税」などが課税されることがあります。

思わぬ税負担が発生しないようにするためにも、
資産の贈与を検討される場合には、
事前に顧問税理士にご相談ください。

2017.12.23

【小規模宅地の特例の改正の続き・・・】

先週のブログで小規模宅地の特例の改正について
ご案内しました。しかし、改正内容について若干解説が
不足していたようなので今週はその説明を追加します

先週ご紹介した小規模宅地の特例の改正は
いわゆる『家なき子』の場合の特例適用要件の改正でした

『家なき子』とは、
自己あるいは配偶者名義の居住用不動産を直近3年以内は
所有していない相続人を言います。

実はこの『家なき子』の特例を悪用する事例が多かったようです
例えば

一人暮らしの父と持ち家がある子のケースで、子は特例を適用するために
兄弟に持ち家を売却したが、子自身はその家に賃貸として住み続けた。
4年後に父が他界し、“家なき子”の条件を満たす子は
軽い税負担で父の家を相続する、というケースです

このように、相続人が持ち家を売却すること等によって
特例が適用可能な状態を意図的に作り出す例があったようです。

こうした動きは制度の本来の趣旨に沿わないとして、
平成30年度税制改正大綱には、

1.相続開始時に居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
2.相続開始前3年以内に3親等内の親族等が所有する国内にある家屋に居住
  したことがある者は,

特例の適用を認めないとの見直しが盛り込まれました。

以上の改正は、平成30年4月1日以後の相続又は遺贈に適用します。
ただし、貸付事業用宅地等の見直しについては,
同日前から貸付事業の用に供されている宅地等には適用しません。

2017.12.17

【小規模宅地の特例の範囲が縮小されます】

平成30年度税制改正大綱が自民党HPで公表されました

https://www.jimin.jp/news/policy/136400.html

そのなかから相続税に関連する内容を紹介します

 

『小規模宅地特例』について,貸付事業用宅地等の範囲から,
相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等
(相続開始前3年を超えて事業的規模で行う貸付けを除く)
を除外します。

 

また,持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の
対象者の範囲から,下記イ・ロに掲げる者を除外します。

イ 相続開始前3年以内に,その者の3親等内の親族又は
 その者と特別の関係のある法人が所有する国内にある
 家屋に居住したことがある者

ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を
 過去に所有していたことがある者

 

以上の改正は、平成30年4月1日以後の相続又は遺贈に適用します。
ただし、貸付事業用宅地等の見直しについては,
同日前から貸付事業の用に供されている宅地等には適用しません。

2017.12.10

地積規模の大きな宅地の評価にあたっての留意点

広大地の評価は平成29年で廃止され平成30年1月からは

『地積規模の大きな宅地の評価』の適用が始まります

 

広大地の評価では、マンションが既に建っている土地には

適用されませんでしたが、地積規模の大きな宅地の評価は

一定の要件を満たせば適用することができますので留意が

必要です

 

地積規模の大きな宅地の評価では、その敷地の上にどんな

建物が建っていても適用の可否に影響しません。

地積要件・地区要件・容積率要件について一定の要件を

満たすかどうかで適用の可否を判断することになります。

 

例えば、マンションやオフィスビルの1室を区分所有する場合

その敷地が地積要件等の一定の要件を満たせば、そのマンションや

オフィスビルの敷地に関して地積規模の大きな宅地の評価を

適用することができることになります。

 

したがって具体的な適用に当たっては

地積要件・地区要件・容積率要件等の一定の要件に該当するかどうか

を慎重に検討する必要があるようです。

 

地積規模の大きな宅地の評価に当たっては

相続税を専門にしている税理士に相談することを

お勧めします

2016.07.18

【空き家対策税制と小規模宅地の特例の併用で節税できます】

平成28年度の税制改正で創設されたいわゆる空き家対策税制は
適用要件がまだ周知されていないために、間違って不動産の売却を
決定している事例が多く発生しているようです

空き家対策税制を適用する初めての確定申告が29年1月から
始まりますが、確定申告で所得税額を計算して初めて
間違いに気づく事例も多いと思います

そこで今回は、空き家対策税制を適用して最大限節税できる
方法を確認しておきたいと思います。

まず最初に確認すべき点は、
『空き家に係る譲渡所得の3000万円控除の特例』の趣旨ですが
昭和56年3月31日以前に建てられた住宅を中古住宅市場で
流通させないという趣旨です

昭和56年3月31日以前に建てられた住宅というのは
旧耐震基準で建てられた住宅ということです

旧耐震基準で建てられた住宅を中古市場で流通させないために
この特例では、相続で取得した住宅を売却するにあたって

①耐震改修して売却するか
②解体し更地にして売却する

場合に限り、譲渡所得から3000万円を控除できるという
特例を適用できます

そのため、相続により旧耐震基準で建てられた住宅を
取得した場合には、①②に要する費用と特例を適用しない場合の
税額とを比較したうえで、特例を適用するかどうかを
売却前に判断する必要があります

実際にはこの3000万円特例が適用できるからという
だけで解体して更地にしてから売却している事例が多いようです

しかし、それらの事例には特例を適用しない場合の
所得税額の方が、①②に要した費用よりも金額が少ない
場合が散見されます。

くれぐれも、売却前に①②の費用と特例を適用する前の
所得税額の比較検討を行ってください

更に、この空き家対策税制と小規模宅地の特例は
併用して適用できます。

そのため、遺産分割に当たっては小規模宅地の特例の適用
要件をみたす相続人が、空き家対策税制の要件を満たす
住宅を取得すると、ダブルで節税できます。

これらの税務上の判断は、相続税と不動産の譲渡所得税に
詳しい税理士に是非事前に相談することをおすすめします。

2016.01.09

老朽化した工場を移転する場合の立退料と借地権の問題

<質問>

今回移転予定の老朽化した工場は、当社の会長所有の土地に建っています。

契約当初は会長に対して相当の地代を支払っていましたが、

10年以上は地代の改訂を行っていません。

工場周辺の土地の時価はこの10年で倍以上に上昇しています。

現在の会長所有の当該土地の路線価評価額は2億円で借地権割合は60%です。

なお会長と当社の土地賃貸借契約の締結に当たって無償返還の取り決めが

明記されていましたが、所轄税務署に対して届出は行っていませんでした。

今回の工場移転に伴って、立退き料の必要はないと考えていますが

いかがでしょうか。

また、相当地代よりも低い地代を支払っていることについて、

借地人である当社及び地主である会長に課税上問題はありますか。

さらに前期より会長の健康状態が悪化していて工場移転までに

相続が開始する可能性も考えられます。

その場合、当社の決算書に借地権を計上する必要はあるでしょうかご教示ください。

<回答>

借地権の設定時にその対価として通常権利金その他の一時金を支払う取引上の

慣行のある地域において、当該権利金の支払に代え、当該土地の自用地として

の評価額に対しておおむね年6%程度の地代[1]を支払っている場合は、

当該借地権の設定による利益はないものとして取り扱います。

しかし、会長との不動産賃貸借契約後に土地の時価が倍以上に上昇している

にもかかわらず地代の改訂を行っていないのであれば、

自然発生借地権が借地人に帰属することになります。

このような状況で借地の返還に当たって借地権の価額に相当する立退料を

授受する取引上の慣行があるにもかかわらず、その額の全部又は一部に

相当する金額を収受しなかった場合には、原則として通常収受すべき借地権の

対価の額又は立退料等の額と実際に収受した借地権の対価の額又は

立退料等の額との差額に相当する金額について課税の問題が発生します。[2]

つまり地主は本来立退料を支払うべきですが、支払わずに済んだ場合は

その経済的利益を借地人である会社から無償で受けたことになります。

今回のような同族会社とその会長という特別な関係の場合には会長に

対して認定賞与の問題が発生します。

さらに借地人である法人には役人賞与の損金不算入の課税関係[3]

が発生することになります。

そもそも借地権を無償で返還するのは、一般的な取引とは言えないため、

支払うべき立退料があったものとして上記のような課税関係が

発生することになります。

しかし立退料の授受がない場合でも以下のような合理的な理由がある場合には、

上記のような課税関係が発生しないとされています[4]。

①借地権の設定等に係る契約書において将来借地を無償で返還することが

定められていること又はその土地の使用が使用貸借契約によるものであること[5]。

②土地の使用の目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、

又は仮営業所、仮店舗等の簡易な建物の敷地として使用するものであること。

③借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、

借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められる事情が生じたこと。

上記の合理的理由を今回の事例に当てはめると、借地権の設定時に借地を無償で

返還する旨を不動産賃貸借契約書に明記していますが、所轄税務署に届出を行っていないため、

①は該当しないと考えます。今回の事例のように老朽化した工場を移転する場合

③の理由が該当すると考えられます。

建物の朽廃により借地権が消滅することを認めた国税不服審判所の裁決事例[6]もあります。

以上より、今回の事例では相当の地代の改訂を行っていなかったために、

自然発生借地権が借地人に帰属するため立退料の授受が本来は必要ですが、

老朽化した工場の移転という合理的な理由のために、

立退料の授受がなくても課税上も問題は発生しないと考えます。

次に地代の改訂を行っていないことについて借地人である法人と地主である会長に

関する課税上の問題ですが、何ら問題ないと考えます。

借地人である法人については、相当の地代を下回る地代を支払うことによる

経済的利益については、既に毎期の決算で法人税が課税されているので問題ありません。

一方で、地主である会長は、相当の地代と実際の地代との差額を不動産所得に

加算すべきとも考えられますが、個人については使用貸借も認められるので、

課税上問題ありません。

さらに、このような状態で会長の相続が開始した場合、

借地権が設定されている土地について、支払っている地代の額が相当の地代の額に

満たない場合の当該土地に係る借地権の価額は個別通達[7]に定める方法に

従って計算した借地権の価額を控除した評価額とします。

一方で、借地人の借地権の評価は地主の底地の評価額と表裏の関係ですが、

借地人である法人の決算書に借地権を計上する必要はありません。

相続開始時に地主名義の土地を評価するにあたって、借地権相当額を控除するのは

相続税の評価上の問題です。借地人である法人は、地主である会長の相続開始が

あったとしても、借地権という資産を計上する根拠にならないからです。

仮に相続開始の事業年度で借地権を資産計上した場合でも、

借地権相当額の評価益は益金不算入の処理をします。

[1]「以下(相当の地代)」個別通達『相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて』1
[2]基本通達13-1-14前段
[3]会長と同族会社という特別な関係でない場合には、地主に対しては一時所得課税、借地人である法人には寄付金課税の問題が発生します。
[4]基本通達13-1-14後段
[5]いずれも基本通達13-1-7に定めるところによりその旨が所轄税務署長に届け出られている場合に限ります
[6]裁決年月日昭和48年 8月8日『借地権の期間の定めのない工場建物について、工場移設後に旧工場は全く保守されなかったことから老朽化がすすみ、廃屋同様の状態になったことが認められ借地権は消滅したものと認めることができる。』
[7]個別通達『相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて』4及び2

2015.07.14

【相続税対策で悲しい改正と嬉しい改正】

相続税対策で悲しい改正が7月1日から施行される
一方で嬉しい改正が実現するかもしれませんので
ご紹介します

(悲しい改正)
日本の相続税の課税が強化されたため、海外に居住地を
移転させる富裕層も増えつつあります

そんな富裕層が海外に出国する前に保有する有価証券の
含み益に課税する税制が7月1日から施行されています

この税制は以前から欧米諸国で導入されていて
わが国でも遅ればせながら導入されることになりました

制度の概要は、金融財産1億円以上の方が出国する際に
株式・投資信託・デリバティブ取引などの金融財産の
含み益に対して15%の所得税を課税するという制度です

通常は、有価証券の売却益に所得税は課税されるため
含み益に対する所得税の課税は特例となります。

租税条約上、有価証券の売却益に対する課税権は
居住地にあるため、有価証券売却益に対して非課税の
国に居住地を移転するという課税逃れを防止するためです。

所得税も相続税も27年からは最高税率が高くなりました
また、マイナンバー制度も28年から導入されます
金融資産を多額に保有する富裕層の節税対策のニーズが
ますます増えそうです

(嬉しい改正?)
その一方で、政府は嬉しい税制改正も検討しているようです。
政府は、相続税の減額措置として「遺言控除」という
制度の創設を検討しているようです

この制度の概要は、遺言書を作成すると相続税の基礎控除
(3000万円+600万円×法定相続人)に控除金額を
上乗せするという内容です

基礎控除に上乗せする金額については、現時点では
未定ですが、確実に節税できることは間違いありません

現在、相続税の申告案件で遺言書の作成割合は20%~30%
程度のようです。このために遺産分割がまとまらず
無駄なコストが発生したり、空き家が増加する原因と
なっているようです

政府は、遺産相続をめぐるトラブルを抑え、若い世帯
へのスムーズな資産移転を図ることを目指しているようです。

早ければ2017年度税制改正での実施を目指している
ようです。

相続税の節税対策は、実績豊富な相続税専門税理士に
是非、ご相談ください

2015.06.28

【平成26年の贈与税の申告状況・・・過去最高額でした】

国税庁が平成26年の贈与税の申告状況を公表しましたので
その概要をご紹介します

<平成26年の贈与税の申告状況>

平成27年1月からの相続税改正(増税)の対策として
平成26年中の贈与税の申告が増加することは予想されて
いましたが。。。結果は、以下の通りでした

・贈与税の申告書を提出した人は51万9千人で、平成25年分
(49万1千人)から2万8千人増加(+5.6%)しました。

 そのうち、申告納税額のある人は36万6千人で、平成25年分
(33万人)から3万7千人増加(+11.1%)、

 申告納税額は2,803億円で、平成25年分(1,718億円)
 から1,084億円増加(+63.1%)しました。

 この結果は、贈与税の基礎控除額が110万円となった
 2001年以降では最高額となりました。

 平成27年1月からの相続税改正前の駈込みで贈与する
 人が増えた結果と考えられます

<暦年課税・相続時精算課税等の申告実績>

贈与税には、暦年課税(110万円基礎控除)と相続時精算課税
と住宅取得資金非課税の概ね3種類あります。それぞれの
26年中の申告及び納税の状況は以下の通りでした

・贈与税の申告書を提出した人のうち、暦年課税を適用した
 人は47万人で、平成25年分(43万9千人)から3万人増加
(+6.9%)しました。

 そのうち、納税した人は36万3千人で、平成25年分
(32万6千人)から3万7千人増加(+11.2%)、

 申告納税額は2,584億円で、平成25年分(1,513億円)
 から1,071億円増加(+70.8%)しました。

・相続時精算課税を適用した人は5万人で、平成25年分
(5万2千人)から3千人減少(-5.0%)しました。

 そのうち、納税した人は3千4百人で、平成25年分(3千5百人)
 から百人減少(-3.0%)、申告納税額は218億円で、
 平成25年分(205億円)から13億円増加(+6.5%)しました。

・住宅取得等資金の非課税を適用した申告人員は6万5千人で、
 平成25年分(7万5千人)から1万人減少(-13.7%)、

 住宅取得等資金の金額は5,023億円で、平成25年分(6, 587億円)
 から1,564億円減少(-23.7%)、住宅取得等資金のうち非課税
 の適用を受けた金額は4,318億円で、平成25年分(5,767億円)
 から1,449億円減少(-25.1%)しました。

相続財産の概要を把握したうえで、相続税額の概算計算を行うと
予想される相続税の実効税率が把握できます

その実効税率未満の贈与税率であれば、先に暦年贈与で
贈与するほうが、ご家族全体で相続税の節税ができますので
贈与を積極的に活用することで、相続税を節税することが
できます。

相続税の節税対策は、実績豊富な相続税専門税理士に
是非、ご相談ください

2015.06.21

【結婚・子育て資金の一括贈与資金の非課税制度についてQ&Aの更新】

内閣府が結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の
非課税措置についてQ&Aを更新しましたのでご紹介します

<今回更新されたQ&Aの概要>
今回更新されたQ&Aの一覧は下記URLで確認できます

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/rireki.pdf

主な更新は以下の通りです

Q3-2:金融機関に提出する書類は原本を提出する
必要がありますか。

A3-2:原本を提出する必要があります。ただし、原本を他の申告で
必要とする場合(例:医療費控除の申告で必要とする場合)等は、
金融機関が原本を確認し、本特例の適用を受けた旨の表示をした上で
コピーをとり、原本をお返しする場合もあります。
詳しくは金融機関へお問い合わせください。
なお、領収書等以外に金融機関に提出する必要のある戸籍謄本や
賃貸借契約書の写しなどの書類は、既に金融機関に提出している場合、
改めての提出は不要です。

Q4-2-1:非課税の対象となる費目はどのようなものですか。

A4-2-1:結婚を機に受贈者が新たに物件を賃借する際に要した
費用で、賃料(契約更新後は更新後の賃料)、敷金、共益費、
礼金(保証金などこれに類する費用を含みます。)
仲介手数料、契約更新料が対象になります。

ただし、賃貸借契約書の締結の日が入籍日の前後各1年の期間内で、
受贈者名義で締結した賃貸借契約に基づくもののみが対象となります。
また、当該契約締結日から3年を経過する日までの間に支払われた
ものが対象となります。

社宅(いわゆる借上げ社宅を含みます。)に住む場合でも、
受贈者名義で賃貸借契約が締結されている場合は、
非課税の対象となります。

Q4―9―2:育児に係る費用の支払い先として認められるのは
どこですか。

A4-9-2:具体的には、学校教育法や児童福祉法等に基づく
施設が対象となります。
なお、海外の施設は学校教育法や児童福祉法等に基づく施設ではない
ため、対象になりません。

詳細は本文でご確認ください。今回の更新で追記された内容は
以下の通りです

・届出を行っている認可外保育施設であって、文部科学大臣及び
厚生労働大臣が定める事項に該当するものへの支払いは認められます。

(具体的には、認可外保育施設のうち、都道府県知
事、指定都市市長又は中核市市長から認可外保育施設指導監督基準を
満たす旨の証明書の交付を受けている施設が該当します。
なお、この施設は、利用料に係る消費税が非課税とされている
認可外保育施設と同じ範囲を指すものです。)

今回の更新内容を含めてすべてのQ&Aは
下記URLでご確認ください

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/qa.pdf

2015.06.13

【2世帯住宅に小規模宅地の特例を適用する場合の留意点】

小規模宅地の特例を適用できると、相続税が確実に節税できます
しかし、小規模宅地の特例に関しては適用要件が複雑で
改正が多いために、相続税の申告時に適用誤りが多いようです

今回は、2世帯住宅に小規模宅地の特例を適用する場合の
留意点をご紹介します

<事例>
Aさんは、1人暮らしをしていましたが将来の介護の不安が
あるので、Aさん名義の土地に2世帯住宅を建てて長女Bさん
家族と同居することにしました。

Aさん名義の土地は、路線価の高い地域で面積も330㎡
だったために、小規模宅地の特例による節税効果も狙って
2世帯住宅を建てたつもりでした。。。

しかし、Aさんが顧問税理士に確認したところ今のままでは
せっかく建てたAさんの自宅に小規模宅地の特例は適用
できないと、指摘されました。

<解説>
今回のAさんの2世帯住宅に小規模宅地の特例が適用できない
原因は、2世帯住宅の所有権が1階部分をAさん2階部分をBさんで
区分所有していたためです。

そもそもBさんの夫Cさんは、2世帯住宅に反対だったために
自分たちの生活空間である2階部分についてまで、Aさんの資金で
建てることに反対だったようです。

小規模宅地の特例は、被相続人(Aさん)の居住の用に
供していた1棟の建物に居住していた生計別親族(Bさん)
が、その建物を相続で取得する場合、その親族(Bさん)が
被相続人の居住部分に居住している事が適用要件となっています。

今回の事例では、1階と2階が区分所有になっていたために
1階のAさんと2階のBさんは別居扱いとなり、小規模宅地の
適用要件に該当しませんでした

<解決策>
このように、2世帯住宅が区分所有になってしまっている場合
で小規模宅地の特例を適用できない場合、

解決策としては、Aさんが2階部分のBさん家族の居住部分を
買取るしかありません。

しかし、そもそも区分所有にした理由が上記のCさんのような
理由のような場合には、簡単にAさんが買取ることもできない
かもしれません。

小規模宅地の特例を適用して節税するという税務上のメリット
をとるか、円満な家族関係をとるか。。。

相続税対策は、それぞれのご家庭の事情を考慮して
検討する必要があります。

なお、小規模宅地の特例の解説は以下のURLでご確認ください

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm

2015.05.16

【改正後の住宅取得資金贈与は、再適用できる場合があります】

<事例>

平成27年税制改正で住宅取得資金贈与の制度が一部改正されました

改正後の住宅取得資金贈与の制度をうまく活用すると、一人で
2回この制度を利用することができます

例えば、平成27年5月に1500万円の住宅取得資金贈与を受けて
良質な住宅用家屋を取得したAさんが、

平成30年8月にこの自宅を売却したうえで、再度住宅取得資金贈与
1500万円を受けて良質な住宅用家屋を取得することができます。

<解説>

詳細は、以下の通りです

改正後の住宅取得資金贈与の年度別の非課税枠は以下の通ように
消費税が10%であるか否かによって、2種類設けられています。

イ 住宅用家屋の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる
  消費税等の税率が10%である場合

住宅用家屋の取得等に係る  良質な     左記以外の
契約の締結期間       住宅用家屋   住宅用家屋
              
平成28年10月~平成29年9月  3,000万円    2,500万円
平成29年10月~平成30年9月  1,500万円    1,000万円
平成30年10月~平成31年6月  1,200万円     700万円

ロ 上記イ以外の場合

住宅用家屋の取得等に係る    良質な     左記以外の
契約の締結期間           住宅用家屋   住宅用家屋

    ~平成27年12月         1,500万円    1,000万円
平成28年1月~平成29年9月    1,200万円     700万円
平成29年10月~平成30年9月  1,000万円     500万円
平成30年10月~平成31年6月   800万円     300万円

さらに、平成27年1月1日から平成28年9月末までに契約を締結した
住宅用家屋について上記1ロに掲げる非課税限度額の適用を受けた
者であっても、上記1イに掲げる非課税限度額を適用できることとする。

と、定めています。

ですから、平成27年1月以降に上記制度を利用して住宅を取得した
人が、平成28年10月以降に再度この制度を利用して住宅を取得
することができます。

<リフォーム>

また、今回の改正によって適用対象となる増改築等の範囲に、
一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事及び給排水管又
は雨水の浸入を防止する部分に係る工事が加えられましたので
この制度の活用範囲が広くなりました。

27年税制改正で、贈与税の非課税枠をうまく利用して、
住宅取得やリフォームがしやすくなっているようです。 

2015.05.10

【教育資金贈与の特例に関するQ&Aが更新されました】

平成27年の税制改正で、教育資金贈与の制度についても
一部改正があったことをご存知でしょうか。

その改正に伴いまして、文部科学省から教育資金贈与制度
に関するQ&Aの改訂版がHPで公表されました

Q&Aの原文は、下記URLでご確認ください

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2015/04/01/1337560_1_2.pdf

<平成27年税制改正>
教育資金贈与の特例の改正点については、平成27年税制改正大綱
46ページに記述があります

『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の
 非課税措置について、次の見直しを行った上、
 その適用期限を平成 31 年3月 31 日まで延長する。
 
 ①  特例の対象となる教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、
 留学渡航費等を加える。

 ②  金融機関への領収書等の提出について、領収書等に記載された
 支払金額が1万円以下で、かつ、その年中における合計支払金額が
  24 万円に達するまでのものについては、当該領収書等に代えて
 支払先、支払金額等の明細を記載した書類を提出することができる
 こととする。

 (注)上記②の改正は、平成 28 年1月1日以後に提出する
 書類について適用する。

<文部科学省のQ&A改訂版のポイント>
上記の税制改正の内容を反映した、文部科学省のQ&Aの
改訂版のポイントは以下の通りです

Q3-4:通勤定期代には自転車通学の際の駐輪場代や
交通系電子マネーのチャージ料金は対象外となります

Q3-5:留学の場合、1留学につき1回分の渡航費だけが
特例対象となります。また、空港までの交通費は特例対象外
となります。

Q3-6:大学等への進学時で転居を伴う場合の、移動交通費は
特例対象外となります

その他の、詳細については上記文部科学省のURLで
ご確認ください

2015.04.26

【保険の解約返戻金の支払請求権で相続税が課税される場合】

保険契約に係る相続税の課税関係には、様々な論点があります
今回は、保険会社が新しい保険商品を企画するにあたって
東京国税局に、相続税の課税関係を文章で問い合わせた内容が
東京国税局のHPで公開されましたので、ご紹介します

保険会社が東京国税局に問い合わせた内容は下記URLで
確認できます

http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/bunshokaito/souzoku/150302/index.htm

その内容を簡単に紹介すると以下の通りです

保険の内容:医療保険
保険契約者:Aさん
被保険者 :Aさん
受取人  :Aさん

この保険は、約款によると『被保険者が入院した場合、
手術を受けた場合又は放射線治療を受けた場合を所定の
給付金の給付事由』としています。

また約款では、保険契約の被保険者が死亡した場合には、
本件契約は消滅し、解約返戻金があるとき本件契約の保険契約者
に解約返戻金相当額の返戻金を支払う旨を定めています。

しかし、事例のように保険契約者と被保険者が同一人物である
場合の課税上の取扱について保険会社が、国税局に問い合わせ
しました。

国税局の回答は以下の通りです

結論:この保険の解約返戻金の支払請求権はAさんの相続財産
として相続税の課税対象となる。

結論の背景:通常の生命保険であればAさんの死亡によって
相続人が取得する生命保険金は、みなし相続財産として
相続税の課税対象となります

しかし、今回はAさんの死亡は保険金の給付事由に該当する
しません。そればかりかAさんの死亡によって保険契約は
消滅し、解約返戻金があるときは保険契約者に支払うという
内容です。

そのため、Aさんは死亡と同時に上記保険の解約返戻金
請求権を取得すると考えるからです。

保険に関する税務は、相続税・所得税・贈与税が複雑に
関係しますので、契約内容と税務との関係は事前に
確認しておかれることをおすすめします

2015.04.18

【結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度Q&Aが公表されました】

平成27年度税制改正で創設された
「結婚子育て資金一括贈与非課税制度」について内閣府HPで
Q&Aが公表されましたので、ご紹介します

この制度は、将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇
させる大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、

両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の
結婚・出産・子育てを支援することを目的としています。

祖父母や両親(贈与者)は、20歳以上50歳未満の子・孫(受贈者)
名義の金融機関の口座等に、結婚・子育て資金を一括して拠出した
場合、子・孫ごとに1,000万円までを非課税とします。

しかし、この制度は教育資金一括贈与の非課税制度と比べると
分かりにくく利用しづらいという声が多いようです

そこで、内閣府がHPでQ&Aを公表しましたので
関心のある方は是非一度ご確認ください

Q&Aの詳細は下記URLです

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/qa.pdf

婚礼費用・出産費用の具体例を明示した別表は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b1.pdf

一括贈与した場合に非課税となる支払先一覧を明示した別表は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b2-1.pdf

非課税となる育児費用の支払先一覧を明示した別表は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b2-2.pdf

結婚費用の領収書の確認事項は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b3-1.pdf

子育て費用の領収書の確認事項は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b3-2.pdf

領収書等以外の必要な資料は下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/b4.pdf

領主書等のチェックのルールは下記URL

http://www8.cao.go.jp/shoushi/budget/pdf/zouyozei/check.pdf

2015.04.16

【あまりにもずさんな相続税対策すると大失敗しますよ!!】

先日マスコミで、Y社の創業者一族の相続税の税務調査結果が
報道されました。申告漏れ金額3億1000万円だそうです。
私が記事を読んで驚いたのは、あまりにもずさんな
『相続税対策』の手口です。。。

今回の報道によると国税局の税務調査で否認されたのは
2009年10月にお亡くなりになった母親の相続税の申告内容です

Y社創業者の相続税対策で、国税庁から否認された方法は
以下の2つです

1.2009年に母親が、親族が経営する法人に6000万円を贈与し
 同時に同額の6000万円を同じ法人から借りた

2.2009年10月に、別の親族が経営する法人から3億7000万円を
 借りて3億7000万円の賃貸マンションを買った

このやり方があまりにもずさんな相続税対策でした。
長男は、国税庁の否認に対して国税不服審判所に訴えていましたが
全面敗訴だったようです

判決の概要は以下のとおりです(報道記事より)
1.法人に6000万円を贈与し、同法人から同額の借入を行ったと
ありますが、帳簿操作だけで実際の資金移動はなかったようです。
つまり、架空伝票だったということです。

実際に資金を動かして上記方法を実行すると、母親の預金残高は
まったく変わらないので、架空伝票にすることによって母親の
預金残高はそのままで、母親が同族会社から6000万円借金して
いるように見せかけたということです。これによって財産が
6000万円減ったことになります

2.母親が亡くなる直前に同族会社から3億7000万円借りて
賃貸マンションを買いました。 報道によると、この賃貸
マンションは時価は3億7000万円ですが、相続税評価額が
1億2000万円だったそうです。つまり、マンション評価額と
借入金の差額2億5000万円財産を圧縮できたことになります。

これだけであれば何の問題もありませんが、この取引ついて
国税局は2つの指摘をしているようです

①.母親の病状がかなり進行していた時期の取引であること
 つまり本人の意思能力がすでに無い状態だったということ

②.母親の死後、直ちにこのマンションを売却していること

この①②の指摘は、高層マンションによる節税対策でも
よく議論になるところです。 ①は、本人の意思能力がない
ことが医学的に明らかであれば、節税対策としては認められ
ません。

②は、亡くなる直前に購入して、死後直ちに売却すると
過去の事例ではすべて税務調査で否認されています。

高層マンションの節税対策でも税務調査で否認される事例は
②のパターンです

いずれにしましても、Y社創業者一族の節税対策は
あまりにもずさんすぎます。

相続税の節税対策は、時間をかけてじっくりと
専門家に相談して慎重に取組むことをおすすめします。

2015.02.28

【民法改正で相続は配偶者有利になりそうです】

改正相続税法が施行されて、急遽その対策に追われている
方も多くいらっしゃると思いますが、
2016年には相続に関する民法が改正されるようです

民法改正の内容のポイントは、「配偶者に手厚く」
という内容のようです

主な改正点は以下のような項目です
1.自宅は誰が相続したのかに係らず、配偶者であれば
 一定期間の居住権を保証するという内容です
 現在の民法では、自宅は配偶者が相続して所有権を
 得るか、あるいは相続した人との賃貸借契約を締結する
 必要があります。

 しかし、高齢の配偶者の居住権を保証する必要があること
 から今回の改正案となったようです

2.夫婦がともに築き上げた財産については、実質的には
 夫婦共有財産として遺産分割の対象から切り分けることを
 検討しているようです。 その代わり、切り分けた他の
 財産については、配偶者の法定相続割合を減らす方向で
 検討されているようです

2013年中に家庭裁判所の遺産分割事件は12000件で
10年前と比較すると3000件増加しているそうです

今後高齢化が進み、遺産分割事件の増加が予想されることを
背景に今回の民法改正が検討されているようです

2016年の民法改正に注目する必要があるようです

2015.02.15

【生命保険を活用した相続税の節税対策にも注意が必要かもしれません】

平成27年から相続税の課税が強化されて、様々な節税対策への取組が
話題となっています

しかし、この節税対策も正しい知識に基づいて実行しなければ
相続税の申告後に税務調査があった場合に、申告内容の誤りを
してきされることとなり、追加で納税が必要な場合もあります

生命保険の契約は、保険の対象となる人・保険料を負担する人
保険金を受取る人の関係によって課税される税金が異なります


保険の対象となる人:父
保険料を負担する人:父
保険金を受け取る人:子
の場合には、受取る保険金は一定の限度額以上であれば
相続税の課税対象となります


保険の対象となる人:父
保険料を負担する人:子
保険金を受け取る人:子
の場合には、受取る保険金は子の所得税の課税対象と
なります。保険金を一時金として受取る場合と年金で受取る
場合で、同じ所得税でも税額計算が若干異なります


保険の対象となる人:父
保険料を負担する人:母
保険金を受け取る人:子
の場合には、保険金を受取る子は保険料を負担していませんので
保険金を受取った時点で子に対して贈与税が課税されます

①の契約パターンは、相続税の計算上の非課税枠を活用した
相続税の節税方法として活用されます

②の契約パターンでは、子の保険料自体を親から子へ資金贈与
し、最終的には受取保険金を相続税の納税資金として準備する
方法として活用されます

③の契約パターンは、家族全体の相続税の実効税率が
かなり高くなることが明らかな場合に、相続税の実効税率
よりも低い贈与税の実効税率で、相続税の納税資金を
準備する方法として活用されます

どのパターンを検討する場合でも
ただしい税務の知識に基づいて正しい税務申告が必要です
実際の相続税の申告実務では、間違った対策と間違った申告
が散見されるようです

相続税の節税対策は、正しい知識に基づいて実行する必要が
あります。

今週の他のブログの更新は以下の通りです
ご覧ください

◎不動産賃貸専門税理士のブログ
【女性向け賃貸住宅が増えているようです】
 http://www.不動産賃貸税理士.com/57f4ea47/

◎信頼できる神戸経営支援Naviのブログ
【クラウド会計ソフトfreeで確定申告ができます】
 http://www.oumi-tax.jp/blog/2015/02/free-1091123.html
***************************
確定申告のご相談は、お気軽にお尋ねください

http://確定申告.biz/

2015.02.01

【世界40か国以上の海外預金情報を国税庁は監視しています】

平成27年1月からいよいよ相続税の課税が強化されました。
WEB検索をすると、相続税対策に関連するコンテンツが
盛りだくさんです。 その中には、正しくない情報もあるようです
情報の真偽については、各自自己責任で判断する必要が
あるようです。

特に、海外の預金口座を利用した節税対策については
古い情報に基づくコンテンツが多いようです

政府は、日本人の海外の預金情報を漏れなく補足するために
海外40ヶ国以上の税務当局との情報交換に関する連携を
2018年をめどに行います。

この情報交換の連携によっては、G20と先進国を中心とした
OECDの加盟34カ国に加え、英領バージン諸島、
ケイマン諸島、バミューダ、マン島など英領のいわゆる
「タックスヘイブン」からも日本人の海外口座の情報
を得られることになります。

国税庁は、海外財産が5000万円を超えている場合に
海外財産調書制度に基づいて、申告しているかどうかを
確認します。

次に、海外の口座で得た利子や配当などを正しく
確定申告しているかどうかを確認します。

さらに、口座の保有者が亡くなったときに相続人が
正しく相続財産として申告し相続税を納めているかも
調査の対象とします。

近い将来は、日本国内の預金残高はマイナンバーで捕捉され
海外財産の預金残高も、海外の税務当局から国税庁に
情報提供されることになります。

ますます、相続税対策は長期的に慎重に検討する必要が
あるようです。

2015.01.18

【特例資産の買換え特例が延長される見込みです】

昨年末に27年税制改正大綱が公表されて
27年の税制改正の概要が明らかになりました

その中で、注目されるのが
「特定資産の買換え特例の延長」です
そもそもこの特例は、平成26年12月末で期限切れとなる予定でした

しかし、国土交通省からの延長要望があり
税制改正大綱に織り込まれました

この特例の概要は、国税庁の下記URLをご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3405.htm

簡単に申し上げると
個人・法人が事業で使っている土地などの資産を売却して、
資産を買換えた場合に、一定の要件を満たせば、
本来は支払うべき税金の80%を繰延べることができるという
特例ですを繰り延べるという特例です。

この特例を活用して
相続税対策のために不動産を買換えたり
法人の事業展開のために不動産を買換えるという
取引が27年以降も行われることを狙って
適用期限が延長される見込みです

ただし、今回の改正案では買換え資産から
機械装置及びコンテナ用の貨物が除外される見込みです

税制改正をうまく活用して
不動産の買換えを検討するチャンスが増えました。

ただし、27年3月末にこの特例の適用期限の延長が
可決することを確認するまでは慎重に行動する必要が
あります。

2015.01.04

【相続税の申告が必要か否かの簡易判定シートです】

改正後の相続税法に基づいて、我が家は相続税が課税
されるのかどうか? そういうご相談が増えています。

国税庁では、そのようなご相談に簡易に対応するために
簡易判定シートをHPで公開しました

https://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzok-kanihanteih27.pdf

この「相続税の申告要否の簡易判定シート」は、
法定相続人の数及びおおよその財産価額を入力する
ことにより、相続税の申告の要否を確認するものです。

ご利用の際は、国税庁HPの
「相続税のあらまし(平成27年分用」と併せてご利用ください。

https://www.nta.go.jp/souzoku-tokushu/souzoku-aramashih27.pdf

なお、入力したおおよその財産価額を基に申告の要否を
確認しますので、確認結果は、あくまでも目安(概算)
となることにご留意ください

2014.12.30

【日本一早い27年度相続税改正の解説<ただし税制改正大綱ベースです>】

衆議院選挙が12月に行われた影響で、税制改正大綱の発表が遅れて
いましたが、12月30日午後に発表されました

その中から、相続税・贈与税に関連する部分のみを抽出して
税制改正のポイントをご案内します

①高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化

・直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
 について、適用期限を31年6月30日まで延長する

 非課税限度額については、消費税の税率が10%になる平成
 28年10月からの1年については、最高で3000万円まで
 非課税となります

②結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設

・教育資金の一括贈与とまったく同じパターンで、結婚・子育て資金の
 一括贈与制度が創設されます。

 個人(20 歳以上 50 歳未満の者に限る。以下「受贈者」という。)
 の結婚・子育て資金の支払に充てるためにその直系尊属が金銭等を拠出し、
 金融機関(信託会社(信託銀行を含む。)、銀行等及び金融商品取引業者
(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)をいう。)に信託等をした場合には、

 信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者 1 人につき
 1,000 万円(結婚に際して支出する費用については 300 万円を限度とする。)
 までの金額に相当する部分の価額については、平成 27 年4月1日から平成
 31 年3月 31 日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。

今回の税制改正大綱は、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにするための
改正内容が中心になっています。

相続税・贈与税についてインパクトのある改正点は無いようです。

2014.12.19

【9号買換特例が存続するかどうか注目されています】

衆議院選挙が12月中旬にあったおかげで今年は税制改正大綱の
公表が遅れています。 例年では12月20日前後には公表され
ましたが、今年は年内に間に合わない可能性があります

そのため、『9号買換特例』が継続するかどうか
注目されています

『9号買換』というのは、長期保有(10年超)の土地等
を譲渡し、新たに事業用資産(買換資産)を取得した場合
において、譲渡した事業用資産の譲渡益について課税の繰延べ
(繰延率80%)を認めている制度です

この制度は、平成26年12月31日までを期限としていますが
国土交通省は、3年3ヶ月間延長する旨の税制改正要望を
財務省に提出しています。

資料の原文は下記URLでご確認ください

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2015/request/milt/27y_mlit_k_24.pdf

この『9号買換特例』をうまく活用すると
法人・個人ともに不動産の買換えで多額の節税が実現可能
となります。

そのため、この制度の存続が注目されています。
なお、この制度が12月31日の期限で廃止になる場合
不動産の譲渡契約書が12月31日までに締結されていれば
9号買換えが適用されます。

特例の適用要件は、不動産の引渡日基準ではありませんので
ご注意ください。

今週のblogは下記の通りです。是非ご覧ください。
神戸経営支援naviより
http://www.oumi-tax.jp/blog/blog_01/

・【神戸市のセーフティーネット融資の対象者が拡充されました】
・【近畿で初めて姫路で青年等就農資金融資が実行されました】
・【合同会社を設立する理由は???】

2014.12.13

【<最高裁判決>遺産分割協議が成立する前に投資信託を分割引出できません】

明日はいよいよ衆議院選挙ですが
昨日の最高裁判決で故人の未分割の投資信託の満期償還金の引出
について興味深い判決がありましたのでご紹介いたします

最高裁の判決文の原文は以下のURLでご確認ください
短い文章なので、興味のある方は是非原文でご確認ください
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/688/084688_hanrei.pdf 
今回の事件は、
故人の相続人3名のうち1名が故人が証券会社に預けていた投資信託の
満期償還金を未分割の状態のままで法定分割割合である1/3だけ
分割して引出すことを証券会社に請求するという内容です

この点につきまして、最高裁判所は相続人の訴えを棄却しました。

そもそも、「共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,
相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」
との過去の最高裁判例があるようです

(最高裁平成23年(受)第2250号同26年
 2月25日第三小法廷判決・民集68巻2号173頁参照)

この考え方を本件について当てはめてみると

共同相続された投信受益権について故人の相続開始後に
元本償還金及び収益分配金が発生して預り金として本件

投信受益権の販売会社であるB証券の故人名義の口座に
入金されましたが

共同相続人の1人である上告人は,B証券会社にに対し,
自己の相続分に相当する投資信託の解約金の支払を請求する
ことができない、という判決となりました。

相続税が多額になる場合は、相続税の納税資金の準備が
必要となります

遺産の金融財産を円滑に遺産分割できれば問題ありませんが
遺産に占める不動産の比率が高い場合や
遺産分割が全く成立しない場合には、
相続人の全員あるいは一部の方が納税資金の準備で困ることになります

納税資金の確保のために、納税資金相当額の金融財産だけを
先に遺産分割するという方法もあります

平成27年から相続税の課税が強化されますので
納税資金の準備も視野に入れた遺産分割を早期に成立しなければ
ならない事例が増えそうです。

2014.12.10

【資産管理会社の株主は誰がいいですか?】

資産管理会社の株主は誰がいいですか?
という質問は、税務相談でよく尋ねられます

検討すべきポイントは以下の2点です
1.資産を保有するオーナー様は持ち株比率をできるだけ
  少なくすること

2.資産管理会社の保有する資産を承継させたい相続人の
  持ち株比率を高くすること

この2点はどなたでも該当する回答だと思います

1.は、相続税対策のための資産管理会社である以上は
オーナー様の資産を減らすために、オーナー様の持ち株比率
は当然に引下げる必要があります

2.は、資産管理会社を通じて間接的に相続人が
資産を保有することになるわけですから、誰がどの資産を
どれだけの比率で引き継ぐのかという点が不明確なタイミング

では、資産管理会社を設立するのは早すぎる場合もあるという
ことです。

また、1,2に共通する論点ですが、オーナー様の持ち株比率
が低くなり相続人の持ち株比率が高くなることによって
資産管理会社の経営も相続人に支配されるという心配が
あります

しかし、その論点につきましては種類株で対応することが
できますのでご安心ください

資産管理会社を設立するに当たっては
事前に検討すべき課題が多くありますので、
充分にご検討ください

不動産管理会社(資産管理会社)の設立に当たっては
不動産専門税理士に、是非一度ご相談ください

2014.12.08

【所有不動産の時価を知らない経営者が36%】

国土交通省が9月に発表した「平成26年都道府県地価調査」
によると、地価の全国平均は、依然として下落しているものの、
下落率の縮小傾向が継続している。

三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では
住宅地・商業地ともに上昇している

なかでも、中古マンション価格も堅調に推移している
ようです。

2014年10月の首都圏の中古マンション市場は、
前月比0,9%増となったようです。

地域によって格差はあるものの、
不動産価格は総じて上昇傾向にあるようです。

不動産価格の上昇は、不動産を所有する企業にとって、
企業価値を上昇させる機会となります。

しかし、そのことを十分認識していない経営陣が
実は多いようです。

ある調査によると
管理・所有している企業不動産の有無については
「ある」は70.3%
「ない」は26.3%
「わからない」3.3%

次に、物件の所在地を把握しているかを聞いたところ、
「ほぼ全部の物件について知っている」は78.2%
「半分程度の物件について知っている」は15.6%、
「ほとんど知らない」は6.2%

また、物件の時価や簿価にいたっては、
「ほぼ全部の物件について知っている」は35.1%
「半分程度の物件について知っている」は28.4%
「ほとんど知らない」は36.5%

企業の保有する不動産の時価を正しく知ることで
時価と税務上の評価額の乖離を正しく認識できます

それによって、自社株に関する事業承継対策も
幅広い選択肢を考えることができます

全体として不動産の価格が上昇する局面では
自社の所有不動産の時価については
正しく認識することが重要です

2014.12.05

【タワーマンション購入による相続税の節税対策にご注意ください】

おはようございます
マラソンを走る神戸の不動産賃貸税理士の近江です

いよいよ平成27年1月から改正相続税法が施行されます
それに向けてタワーマンションを購入するという
節税対策が一部では流行っているようです

しかし、この方法にも留意事項が必要ですので
今回はそのポイントについて、ご案内いたします

確かに、タワーマンションの高額なお部屋を
購入すると購入時の時価に対して、相続税申告時の
評価額が大幅に乖離するために、一定の節税効果が
得られることは事実です

しかし、そこだけを『悪用』して過度の節税対策は
後日の調査で否認されるリスクがあるのでご注意ください

たとえば、以下の様な事例では否認されるようです

1.父親が亡くなる4ヶ月前にタワーマンションの1室を
  3億円で購入

2.所有権移転登記後に父親は無くなりました

3.翌年にこのマンションを財産評価基本通達に基づき
  6000万円で評価し、父親の相続税を申告

4.このマンションを相続により取得した長男が
  相続税申告直後に2億9000万円でマンションを売却

このような事例が実際にあって
長男は、マンションの評価額として6000万円を主張しましたが
最終的には、父親の購入価格3億円で相続税の申告をするべき
という結論になったようです

その趣旨は以下のとおりです
相続税の申告に当たって不動産は財産評価基本通達に
従って評価すべきです

今回は、それによると6000万円の評価額となりました
しかし、特別な事情がある場合には他の特別な方法による
評価額の算定も許されます

ではなぜ、父親の購入価格3億円で相続税を申告しなければ
ならないか。。。

1.父親の購入時期と亡くなった日が極めて近いこと
2.長男がマンションを売却するに当たっての価格も
  それほど下落していなかったこと
3.当該マンションの周辺の基準地価もほぼ横ばいであること

簡単にまとめると以上のような理由で
財産評価基本通達による評価額が否認されました

過度な節税対策は、上記のように否認されるリスクがありますので
くれぐれもご注意ください

2014.11.24

【法定相続割合を主張すると『もらいすぎ』って???】

相続財産の遺産分割では、まず第一に法定相続割合を
イメージする場合が多いと思いますが

意外と、法定相続割合を主張すると『もらいすぎ』と
他の相続人から指摘する場合があります。

 
その一つが『特別受益』です
例えば、3人兄弟のうち長男だけが自宅を購入する際に
父親から資金援助を受けていた場合、

あるいは、父親が開業医ではないにもかかわらず
長男だけが私立大学医学部を卒業するまでの学費を
すべて父親が負担したような場合

などです。これらのように特定の相続人だけが特別に
生前に多額の贈与を受けていた場合、それらを遺産分割
において考慮すべきという考え方です

このほか「寄与分」という考え方もあります。
例えば、長女だけが生親を看病した場合
次男だけが事業を手伝った場合など

親の財産の維持・増加に特に貢献した場合に
その度合いに応じて遺産分割時に考慮されます。

参考資料として、民法903条の解説を
リンクでご紹介します
http://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC903%E6%9D%A1

2014.11.22

【民法改正で敷金の返還義務が明文化されそうです】

おはようございます
マラソンを走る神戸の不動産賃貸税理士の近江です

不動産賃貸契約では、敷金を巡って様々なトラブルがありました
そこで、民法が改正されて敷金に関する定義及び返還義務
について明文化される見通しとなりましたので
ご紹介いたします。

これについては現在政府で民法の改正案を検討中で
その中に記載されている内容を簡単にまとめると

1.敷金を「家賃の担保」と定義しています

2.契約が終了し、物件を引き渡した時に貸主から借主へ
  返還義務が生じます

3.通常の使用による室内の傷みや経年変化などについて
  借り主は原状回復の義務を負うことはありません。

詳細つきましては
法務省の下記HPをご覧ください

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900227.html

2014.11.20

保険料を贈与する相続税対策にはご注意ください

生命保険を利用した相続税対策に、保険料の贈与プランがあります

相続税の生命保険料控除は、500万円×法定相続人の人数という
上限があります。

しかし、生命保険を利用した相続税の節税プランはまだほかにも
あります

以下のような方法です
例えば、父親が長男に保険料110万円を贈与します
長男は、その110万円で

契約者:長男
被保険者:父親
受取人:長男

という生命保険契約を締結します

父親が死亡した場合に、長男は上記生命保険契約に基づいて
保険金を受取ります

この保険金には、相続税は課税されませんが
長男に所得税が課税されます

この場合の所得税は一時所得として課税されます
例えば、保険料の支払いが1500万円で受取保険金が
3000万円の場合

(3000万円-1500万円-50万円)÷2=1450万円が
所得税の課税対象となります

ですから、このプランを実行せずに保険料相当額の
1500万円を父親の財産として課税される相続税額と

一時所得として1450万円に課税される所得税額とを
比較して、所得税額のほうが少なければ
家族全体としての節税対策になります

しかし、長男が高額所得者で所得税が最高税率の
場合、所得税+住民税の税額を考慮すると
このプランは実行しないほうが有利となります

くれぐれもこのプランを実行する際には
トータルの税額を慎重に計算して
ご検討ください

2014.11.19

相続税申告漏れ、海外関連が最多に 13事務年度

国税庁から、海外の相続財産の申告漏れについて2013年事務年度のデータが公表されました

2013事務年度の相続税の税務調査で、海外関連の申告漏れは
124件(前年度比9.7%増)でした。

海外関連の税務調査件数は753件、でそのうち申告漏れ総額は
163億円でした。 海外関連の税務調査件数及び申告漏れ財産の総額
いずれも過去最多の件数及び金額となりました

国税庁は背景として「納税者の資産運用が国際化している」と指摘しています

国税庁によると、
1.相続財産から海外の財産を除外した申告のうち約1億5千万円が租税条約に
  基づく情報交換で発覚し、約6600万円を追徴課税された調査事例があったようです。

2.遺族が海外預金約600万円の存在を知りながら申告から除外していたとして、
  約240万円を追徴課税されたケースもあったようです

今後、相続税の税務調査に関しては海外財産に関しても重点的に
調査が行われるようです。

相続税の申告にあたっては十分にご注意ください
≪以上の「文章は日本経済新聞から一部引用しています≫

2014.11.15

【歯科医師会の死亡共済金は、相続税???所得税??? 】

今回は、○○県歯科医師会の福祉共済制度に係る死亡共済金は
相続税が課税されるのか? 所得税が課税されるのか?
間違いやすい論点についてご紹介します

【事例】
歯科医師Aは本年死亡し、社団法人○○県歯科医師会から福祉共済金
(死亡共済金)400万円が、妻Bに支給された。
福祉共済制度の概要は次のとおりである。

○ 負担金(月額)    9,000円
○ 支給原因  会員の死亡、火災等の災害及び重度障害
○ 中途脱会でも負担金の返還はない(掛け捨て)
○ 死亡共済金の支給は会員の指定した受給権者又は法定相続人
○ 当制度の負担金は、「○○県歯科医師会福祉共済基金」として別会計とする

【回答】
この死亡共済金は、受取った妻Bの一時所得に該当し
妻Bは、所得税の確定申告の必要があります。
なお、妻Bの一時所得の計算にあたって、Aの支払った負担金は
控除できません

【解説】
今回の歯科医師会の死亡共済金は、受給権は会員の指定した者
(指定した者がいない場合は法定相続人)にあり、死亡した会員に
帰属した後に相続されるものではありませんので、
本来の相続財産ではありません。

また、相続又は遺贈により取得したと見なされる生命保険金
については、相続税法に規定するものに限定されていますが、
本件死亡共済金はいずれにも該当しないため、みなし相続財産
にも該当しません。

⇒つまり、相続税の課税対象財産ではないという事です
そこで、受取人である相続人Bの所得税の課税対象となります

1.相続人Bの所得区分について
この共済一時金は、会員の死亡という偶発的な事由により
会員ではなく受給権者に支給されるものであり、労務や役務の対価性
もなく資産の譲渡の対価としての性質も有していないことから、
受給者の一時所得に該当するものと考えられます(所法34条)。

2 一時所得の収入金額から共済掛金を控除することの可否について
一時所得は、その発生原因が単発で個別性が強いので、
一般的な必要経費の概念はありません。そこで、当該共済掛金の性質は、
中途返戻金のないいわゆる掛け捨てであり、
火災や重度の障害に対しても共済金が支払われることになっています。

そうしますと、この掛金の内、死亡共済金の原資として積み立てられて
いる部分の金額とそれ以外の部分の金額(災害や重度障害の給付積立金)
とに明確に区分できるかどうかが判断基準になろうかと思われます。

一般の生命保険金等の場合は、積立金部分を掛金として一時所得の収入
金額から控除するのですが、掛け捨てという性質上、この掛金(負担金)
を積立金と見なすことはできず、火災等の災害等にも支払われることから
個別対応(死亡共済金と掛け金)は無理となります。

また、所基通34-4において、支払を受ける者以外の者が負担した
保険料等であっても、一時所得の収入金額から控除できる取扱いになって
いますが、これは所令183条3項に規定される生命保険契約等について
の取扱いですので、本件の共済金は該当しません。

したがって、本件共済金の掛金は所法34条2項の「収入を得るために
支出した金額」には該当せず、本件の死亡共済金に係る一時所得の収入金額
から控除することはできないものと考えます。
 
<参考文献:TKC税研データベース>
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2014.09.12

【老人ホームに入居した場合の相続税の節税にご注意!!】

相続税を計算するに当たって、自宅の土地の評価については一定の条件を
満たす場合に限り、80%評価減できるという特例があります
この特例を、『小規模宅地の特例』といいます。

平成25年度税制改正で、この小規模宅地の特例についても
改正がありました。

ただし、小規模宅地の特例に関する税制改正はいずれも税額が
引下げられる内容です。

そのひとつに、老人ホームに入居して居住しなくなった家屋の
敷地についても一定の条件を満たす場合に限り、小規模宅地の
特例が適用できるという改正があります。

改正前は、有料老人ホームに入居している場合はたとえ戸籍住民票が
自宅にあったとしても、相続税の計算上は生活の拠点は有料老人ホーム
に移っているため、自宅の土地に対する小規模宅地の特例は
適用できませんでした。

そこで、25年の税制改正では
・要介護又は要支援の認定を受けている方が
・老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホームに入居し
・自宅土地を貸付していない場合

には、自宅土地についても小規模宅地の特例が適用できるように
改正されました

この改正は平成26年1月1日から適用されています。

ここで注意すべき点は、あくまでも老人福祉法に規定する有料老人ホーム
ですから、都道府県知事に届出がされていなければなりません

しかし、全国の約1割の有料老人ホームが届出を提出していない
違法な施設だそうです

この結果を受けて、厚生労働省では有料老人ホームの運営に関して
指導の強化が必要と考えているようです
(厚生労働省が公表している資料は以下のURLで確認できます)

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304250-Roukenkyoku-Koureishashienka/0000050188.pdf

例えば、私の地元兵庫県の場合は届け出済みの有料老人ホームは
兵庫県庁の下記URLで確認できます。

https://web.pref.hyogo.lg.jp/hw18/documents/ichiran260401.pdf

今後、有料老人ホームへの入居及び相続税の申告に当たっては
都道府県知事への届出の有無を確認する必要がありそうです。
ご注意ください。

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2014.08.23

【個人の国外財産は、2兆5000億円???】

国外財産調書制度が、平成26年1月から施行されてました。
今年の確定申告の提出と同じ申告期限で
初めての国外財産調書が、各税務署に提出されました。

国外財産調書制度の概要は、以下のURLでご確認ください
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/kokugai_zaisan/pdf/01.pdf

ポイントは、海外に5000万円以上の財産を所有する方は、
毎年確定申告時期に、国外財産の概要を申告しなければならない制度です

施行後初めての今年の提出状況は以下のとおりでした

○ 総提出件数は、全国で 5,539 件
局別の件数は、東京局、大阪局、名古屋局の順に多く、この3局で全体の
約9割(88%)を占めています。

○   国外財産の価額の総合計額は、約2兆5千億円
局別の総財産額に占める割合についても、東京局、大阪局、名古屋局の3
局で約9割(94%)となっています。

財産の種類別については、

有価証券   1兆5,603億円
預貯金     3,770億円
建 物         1,852億円
土 地            821億円
貸付金      699億円
その他の財産   2,396億円
合 計     2兆5,142億円

となっています。

国外財産調書制度に関する国税庁のFAQは以下のURLで
ご確認ください

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hotei/kokugai_zaisan/pdf/kokugai_faq.pdf

平成27年1月以降に、国外財産調書に偽りの記載をした場合
あるいは、正当な理由なしに故意に国外財産調書を期限内に提出しない場合
1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金に処することとされています
(国外送金等調書法 10①②本文)

ただし、国外財産調書の自主的な提出を促進するために
以下のようなインセンティブ措置を設けています

・申告期限内に調書を提出した場合には、調書に記載の国外財産に係る
 所得税あるいは相続税に申告漏れがあった場合でも過少申告加算税
 が5%減額されます

・一方で、調書に記載の無い国外財産に係る所得税あるいは相続税に
 申告漏れがあった場合には過少申告加算税が5%増額となります。

近年、国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税や相続
税の課税の適正化が喫緊の課題となっていることから、この制度が
創設されました。

国外に財産を保有する場合にはご注意ください

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2014.07.24

【平成27年1月からの事業承継税制の適用要件が簡素化されます】

非上場企業の株式に関する事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予
及び免除の制度)について、平成25年の税制改正で適用要件が
緩和されました。 適用要件緩和後の新税制は、平成27年1月1日以後
適用されます。

来年に向けて新税制が適用できるかどうか、あるいは適用するためには
どのような対策が必要なのかを、新税制でご確認ください

適用要件がどのように緩和されたのかについて、詳細は
以下のURL(国税庁HP)でご確認ください

http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/aramashi/pdf/04.pdf

主な改正点について簡単に説明します

1.旧税制では、最もハードルが高いと言われていた継続雇用確保の要件ですが
 経営承継期間(5年間)の雇用割合が8割以上でなければならないという要件が
 「5年間毎年」から「5年間平均」に緩和されました。

2.後継者の要件については、被相続人等の親族であることの要件が廃止
 されます。そのため、親族以外への事業承継も対象になります。

3.先代の代表者は、贈与時に代表権を有していなければ役員として
 残っていても贈与税の特例を適用することができます。

4.利子税の免除:経営承継期間の経過後に、納税猶予額の一部または
 全部を納税する場合には、経営承継期間中の利子税が免税となります

5.延納・物納:雇用確保要件を満たさなくなった場合には、相続税
 については延納・物納、贈与税については、延納を選択できます。

6.資産管理会社に対する要件は、厳しくなりました。
  ⇒後継者と生計を一にする親族以外の常時雇用従業員が5人以上いること
  ⇒同族関係者以外への貸付を3年以上行っていること

7.納税猶予制度の打ち切りの判定
  ⇒納税猶予制度の打ち切りの判定は、本業での売上高のみで判定する
 ことになりました。

上記改正は27年1月からの相続に適用されます。新しい適用要件で
事業承継税制が適用できるかどうか、一度ご確認ください

2014.07.20

【2世帯住宅を建てる場合の節税方法】

【2世帯住宅を建てる場合の節税方法】

25年度税制改正で、2世帯住宅に関する小規模宅地の特例について
改正がありました。

最大のポイントとしては、構造上内部で行き来ができないタイプの
2世帯住宅にも小規模宅地の特例の適用範囲が広がったことです

しかし、従来から適用されていた構造上内部で行き来ができる
タイプの2世帯住宅について小規模宅地の特例の適用範囲が
限定的となったので注意が必要です

25年度税制改正以前は

▽内部で行き来ができる2世帯住宅は、区分所有登記の有無にかかわらず
同居親族の要件を満たしているとして、敷地の全体が特定居住用宅地
に該当し、80%評価減の対象としていました

▽内部で行き来できない2世帯住宅は、独立した住居として考える
ため、同居親族の要件を満たさないとされていました。
そのため、被相続人の居住用部分以外は小規模宅地の適用対象外と
されていました

25年度税制改正以後は(26年1月以降の相続から適用)

▽2世帯住宅への小規模宅地の適用要件を、内部で行き来が可能かどうか
という構造で判定するのではなく、区分登記の有無で1棟の建物か
どうかを判定する考え方となりました

▽内部で行き来できる2世帯住宅でも、区分所有登記されている
場合には、被相続人の居住用の部分のみに小規模宅地の特例の
適用対象面積が縮小されました

▽内部で行き来できない2世帯住宅でも、区分所有登記されていなければ
1棟の建物全体に小規模宅地の特例の適用対象が拡大されました

これから2世帯住宅を建てる場合には、相続税の節税対策として
区分所有登記をしないことをおすすめします。

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2014.04.27

【7月1日以降税務調査の手続きが改正されます】

税務調査といえば誰でも嫌なものですが。。。
その手続きの一部が7月1日以降改正されます

実は、平成23年税制改正で税務調査手続きが
大幅に改正されました。

その際に、税務調査の事前通知を納税者と税務代理人の双方に
連絡するという旨が定められました。

しかし、実務において様々な問題があったようです。
そこで26年度改正で、「税務代理権限証書」に
納税者の同意が記載されている場合には

納税者ではなく、税務代理人(税理士)に通知すれば
足りると改正されます。

つまり、税務署が税務調査を行う旨を税務代理人である税理士に
連絡し、税理士から納税者に連絡するという流れに一本化するという
ことです。

現在は、税務署が納税者と税理士の双方に連絡をしなければならないため
その連絡の順序によってはトラブルが発生する場合があります

今回の改正は7月1日以降に提出する税務代理権限証書から
適用されます

しかし、7月1日以前に提出している税務代理権限証書であっても
7月1日以降に「納税者の同意がある場合」に新しい書式で
再提出すれば、改正後の税務調査手続きが適用されます。

なお、税務調査手続きに関する一般納税者向けFAQが
国税庁のHPで公開されています

全部で30問のQ&Aとなっています
詳細は下記URLでご確認ください

https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/pdf/02.pdf

2013.10.16

【相続税質疑応答編-39 平成27年からの贈与税は税率が2種類あるんですか?】

平成25年度の税制改正で、平成27年から贈与税率の変更が明らかになりました
従来、贈与税率は1種類しかありませんでしたが、平成27年1月1日以降の
贈与からは、2種類の税率が適用されます

具体的には、一般贈与財産と特例贈与財産によって税率が異なります
ここで、一般贈与財産に適用される税率は従来の贈与税の税率です

次に、「特例贈与財産」というのが平成25年税制改正で明らかになった
平成27年1月から適用される新しい税率です。

この税率は、直系尊属から20歳以上の子・孫へ贈与した場合に適用
される税率です。

日本国内のすべての財産の世代別保有割合では、60歳代以上が
日本国民の全財産の50%以上を保有しているという統計データがあります

このデータにより、資産保有額の世代間格差が明らかになったため
世代間ギャップを少しでも是正するため、特例贈与財産に対する
贈与税率は、従来の一般贈与財産と比べて低い税率が適用されます

では、贈与財産に一般贈与財産と特例贈与財産が含まれている場合の
贈与税の計算は、どうなるのでしょうか?

〈事例〉
25歳のA君は、平成27年中に父親から600万円の預貯金を贈与してもらい
また、27年中に叔母さんから400万円の預貯金を贈与してもらいました。
その結果A君は、平成27年中に1000万円の財産を贈与してもらいました。

計算は以下のとおりです
1.まず1000万円から110万円を控除します(基礎控除)
2.次に特例贈与財産の税額を計算します
 (890万円×30%―90万円)×600万円÷1000万円=106万円
3.最後に一般贈与財産の税額を計算します
 (890万円×40%―125万円)×400万円÷1000万円=92万円
4.2と3の計算結果を合算して198万円が、A君の贈与税となります

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2013.09.29

【相続税質疑応答編-43 今週の国税庁からの情報です 】

今週は、国税庁からの情報を2項目ご案内いたします
第1は、最近の最高裁判決に基づく情報です

既にマスコミで報道されていますが、非嫡出子の法定相続分の
民法規定が違憲と判断されました。

最高裁の見解としては、遺産分割協議が確定した事案にまで
今回の違憲判決は影響しない旨を示しています

そこで、実務上問題になるのは以下の論点です

1.申告済みの相続税の事案で、今回の違憲判決に基づき
相続税額の再計算を行うと税額が過大となる場合に
更正の請求が認められるのかどうか

2.民法の改正が未だ行われていない現状において
相続税の申告期限を迎えるケースでは、現行の民法に基づく
法定相続分で相続税の計算を行うのか、あるいは最高裁判決に
基づいて相続税の計算を行うのか。

これらの論点について、国税庁の見解が明らかになり次第
国税庁のHPで情報が公表されることになりますので今後の動向に
ご注意ください

国税庁からの第2の情報は、国税庁のHPで
「NISAの手続きに関するQ&A」が公表されました。

詳細につきましては、下記URLの国税庁HPをご確認ください
http://www.nta.go.jp/gensen/nisa/pdf/toshikaqa.pdf

内容は、Q&A形式で全24問です。目次も含めて10ページ以内に
コンパクトにまとめられていますのでNISAに関心のある方は
是非一度ご確認ください。

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2013.08.11

【相続税質疑応答編-42 直系尊属からの贈与財産が国外財産で有る場合】

平成27年1月から贈与税の税率が、2種類になることは以前のメルマガで
ご紹介しました。

詳細は、下記URLでご確認ください
https://www.kobesouzoku.com//menu16/#__qa_21__

前回のメルマガでは、一般の贈与と直系尊属からの贈与がある場合の
基礎控除の調整計算の方法をご紹介しました。

そこで、今回は直系尊属からの贈与財産の中に国外財産があるの取扱
をご紹介します。

そもそも、国外財産を贈与に取得した場合でその財産について外国の
法令で『贈与税』相当の税金が課税されている場合には、贈与税について
外国税額控除がで適用されます

具体的事例は、国税庁の下記URLでご確認ください
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/16b/01.htm

この制度は、外国税額控除の限度額を
『受贈者の贈与税額×国外財産の額/その年分の贈与税の課税価格』
と定めています

〈事例〉
25歳のA君は、平成27年中に父親から600万円の預貯金を贈与してもらい
また、27年中に叔母さんから400万円の預貯金を贈与してもらいました。

その結果A君は、平成27年中に1000万円の財産を贈与してもらいました。
ただし、父親からの贈与財産600万円のうち300万円は国外の預貯金で
この300万円については、その外国で60万円の贈与税を納税済みです

計算は以下のとおりです

1.まず1000万円から110万円を控除します(基礎控除)

2.次に特例贈与財産の税額を計算します
 (890万円×30%―90万円)×600万円÷1000万円=106万円

3.次に一般贈与財産の税額を計算します
 (890万円×40%―125万円)×400万円÷1000万円=92万円

4.次に贈与税の外国税額控除限度額を計算します
  106万円×300万円/600万円=53万円

5.最後に贈与税額を計算します
 106万円+92万円-53万円=145万円

27年以降の直系尊属からの贈与に当たっては上記のような
事例もありうるのでご注意ください。

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2013.07.28

【相続税質疑応答編-41 教育資金一括贈与特例に関する新しい通達が公表されました】

今年の4月から始まった教育資金一括贈与の特例は、話題性もあって
贈与資金の残高が全国でかなりの金額に膨らんでいるようです

実際に実務が始まると、立法時点では想定しえなかった実務上の問題点が
あきらかになります。 それらの問題点に対応するために国税庁が
通達を公表しその取扱いについても明らかにしています

国税庁のHPで以下のURLで確認できますので
関心のある方は、ご確認ください。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/130709/pdf/01.pdf

そのなかからいくつかを抜粋してご案内いたします

・受贈者あるいは贈与者が外国籍を有する場合であっても一定の要件を
 満たせば特例を適用できることが明示されています

・教育費を外貨で支払った場合の換算ですが、領収書記載日の
 最終対顧客直物電信売相場で邦貨換算することになります

・管理契約終了後に教育費として利用していない残高について
 贈与者が生存中であれば、相続時精算課税の対象となるが贈与者が
 死亡していれば暦年課税の対象となる

・この特例を適用した金額は、贈与者が死亡した場合でも
 3年以内の生前贈与加算の対象外となるが、契約終了後に
 教育資金としての未了残高がある場合には、3年以内の
 生前贈与加算の対象となる

また、同じ書面に「特定障がい者の贈与税の非課税措置」に関する
新しい通達について取り扱いが記載されています

25年度改正で、障がい者に係る信託受益権について一般障害者の場合
でも3000万円までは非課税枠が定められました。

今回新たに通達で定められたのは、一般障害者としてこの特例の
適用を受けた後に特別障がい者に該当することになった場合

既に、一般障がい者として特例適用を受けた金額と6000万円との
差額を新たに特例障がい者の非課税枠として特例を適用できる
旨を明示しています。

現政権ではアベノミクスの経済政策だけでなく、相続税・贈与税についても
きめ細かな改正が迅速に行われているようです。

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2013.07.21

【相続税質疑応答編-40 国外財産調書制度について教えてください】

平成24年税制改正で平成25年12月31日以降毎年12月31日の国外財産
について国外財産調書を税務署に提出する制度が始まります。

(提出しなければならない方)
居住者(「非永住者」の方を除きます。)の方で、その年の12月31日
において、その価額の合計額が 5 千万円を超える国外財産を有する方は、
その財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、
その年の翌年の3月15日までに提出しなければならないこととされました。

(注 1)「非永住者」とは、日本の国籍を有しておらず、かつ、
過去 10 年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が
5年以下である方をいいます。

(注 2)「国外財産」とは、「国外にある財産をいう」こととされています。
ここでいう「国外にある」かどうかの判定については、財産の種類ごとに
行うこととされ、

例えば次のように、その財産の所在、その財産の受入れをした営業所
又は事業所の所在などによることとされています。

なお、平成 25 年度の税制改正において、国外財産調書に記載すべき
国外財産の所在の判定について、その取扱いが一部変更されました。

(国外財産の価額)
国外財産の「価額」は、その年の 12 月 31 日における「時価」又は
時価に準ずるものとして「見積価額」によることとされています。

また、「邦貨換算」は、同日における「外国為替の売買相場」による
こととされています。

(国外財産調書の記載事項)
国外財産調書には、提出者の氏名、住所(又は居所)に加え、国外財産の種類、
数量、価額、所在等を記載することとされています

(国外財産に関する事項については、「種類別」、「用途別」
(一般用及び事業用)、「所在別」に記載する必要があります。)

詳細につきましては、国税庁の下記HPでご確認ください
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hotei/130329/pdf/01.pdf

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2013.07.07

【相続税質疑応答編-38 国税不服審判所の事例から財産評価のポイントは?】

国税不服審判所が平成24年下半期分の再掲津事例を
下記URLで公表しました

http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/89.html

その中から10月9日の採決の中から「取引相場の無い株式の評価」に
関連して借地権評価の問題点を解説します

<事例>
簡単に解説するために、事例を簡略化して紹介します
地主:同族会社オーナー
借主:同族会社
契約:不動産賃貸借契約
権利金:収受無し
地代:相当地代の収受無し
このような契約状態で無償返還の届け出を提出しています

この場合、土地の評価は自用地の評価額の80%となります
その根拠は、いわゆる「相当地代通達」の8です。

以下で本文を引用します

(「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価)
借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合
の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80
に相当する金額によって評価する。

なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けて
いる場合には、43年直資3-22通達の適用があることに留意する。

この場合において、同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは
「「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」と読み替えるものとする。

さらに、ここで上記の43年直資3-22通達によると
「相当の地代を収受している貸宅地の評価について課税時期における被相続人
所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額
(借地権の価額)を控除した金額により、評価されたい。」

と記載されています。ここで注意すべきポイントは
上記で『相当の地代を収受している』とあるのは『無償返還の届出
を提出している』と読み替える点です。

これらの通達から、
上記契約形態であれば、土地は自用地評価の80%で評価し
借主である法人には借地権として自用地評価の20%が計上される
ことになります。

ここで、論点となったのが借主である法人に計上される20%は
「土地等の評価」に該当するのか否かという点です。

この点について、借地借家法の制約賃貸借契約にもとづく利用の制約等
を勘案すれば、現在借地慣行のない地区についても20%の借地権を認容
していることとの権衡上、本件における土地の評価についても借地権割合
を20%とすることが適当である。

と通達に記述がありますので、法人の資産として計上する
借地権の20%は、「土地等の価額」に含まれることになります。

この記事以外にも、下記URLのAll ABOUT JAPANの私のコラムの
書込みをしていますのでご覧ください

http://profile.ne.jp/pf/oumi/c/

2013.06.27

【相続税質疑応答編-37 小規模宅地の特例の改正<2世帯住宅>】

平成25年の税制改正で小規模宅地の特例に関する改正が
あったことは既にご存知のことと思います

しかし、その詳細な内容・要件等については改正政令が発表されるまで
明らかにはされていませんでした。

平成25年5月31日に財務省HPで租税特別措置法施行令の改正
新旧対照表が公表されたことによって、小規模宅地の特例の
改正点について詳細な内容が明らかにされました

詳細な内容を確認したい方は、下記URLの財務省HPを
ご確認ください

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2013/seirei/shinkyu/sotoku211-225_2.pdf

以下で改正政令のポイントをご案内します
1.小規模宅地の特例の適用対象に、被相続人の親族の居住の用に
 供していた部分も含めることになりました
 (租税特別措置法施行令40条の2)

⇒この部分について、従来は被相続人の居住の用に供していた
1棟の建物である場合、建物の敷地のうち被相続人の居住部分に
対応する部分だけが特例の適用対象でした。

ただし、区分所有の建物の場合は小規模宅地の特例の
適用対象外であることにご注意ください
(租税特別措置法施行令40条の2但し書)

例えば、2世帯住宅で完全に内部で分離しているような構造で
1階と2階を区分所有で登記してしまうと、被相続人の
居住の用に供していた部分のみが特例適用対象になってしまいます
充分にご注意ください

2.被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物が区分所有建物
以外の場合には、被相続人の親族の居住の用に供されていた部分も
小規模宅地の特例の適用対象となることが明記されました
(租税特別措置法施行令40条の2)

これによって、内部で相互に行き来できない完全分離型の
2世帯住宅であっても区分所有でなければ、被相続人の
親族の居住の用に供されていた部分まで小規模宅地の特例の
適用対象となります

いずれも適用は、平成26年1月からの適用となりますので
ご注意ください

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http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2013.06.16

【バリアフリー改修工事投資減税の税制改正でミスがありました。】

バリアフリー改修工事投資減税の税制改正でミスがあり、財務省のHPで
謝罪文が公表されました。珍しいことですので関心のある方は下記URLで
内容をご確認ください。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/250530shotoku_teisei.htm

簡単に内容を解説すると、
平成25年度税制改正大綱では、25年1月から26年3月末まで間に入居した場合の
工事限度額を平成24年分と同様の150万円(減税枠は最大15万円)とし、
消費税増税後の26年4月以降入居は原則200万円(同20万円)となることが記載
されていました。

しかし、財務省が政令改定作業において、25年1月から26年3月末まで入居分は
150万円とすることの経過措置規定をもらしてしまいました。

その結果条文上では、25年1月入居から200万円が工事限度額(減税枠は最大20万円)
として読めてしまうことになってしまいました。

財務省の判断は以下のとおりです
・法律が既に公布されている以上、現行の条文を前提に、既に経済取引の判断が
 なされている可能性があること、
・現行の条文により、当初想定していた措置より納税者が不利になるものではない
 こと、などを勘案し、平成25年1月1日から平成26年3月31日までの間の入居
 について、自己資金でバリアフリー改修工事をした場合の改修工事の限度額を
 「200万円」とする現行の条文の通りに実施することと致しました。

この財務省の発表に基づいて追って国税庁からも資料の修正が公表されました。

○「平成25年分 所得税の改正のあらまし」の修正について
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shotoku/kaisei_aramashi/index.htm

 納税者にとっては不利ではない状況にありますが、大綱その他これまでに
 公表されてきた情報とは違う点に注意が必要です。

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2013.06.02

【相続税質疑応答編-36 遺留分の減殺請求と相続税】

<事例>
被相続人A(相続開始の日:平成18年10月)の相続人は配偶者Bと
長男Cでした。当初の申告ですべての財産をBが相続しました。
Bは、小規模宅地の特例と配偶者の税額軽減の特例を適用したため
納税額は発生しませんでした。

平成25年1月になってからBCの話し合いにより遺留分の減殺請求
による価格弁償としてBからCに5000万円支払うことになりました

この場合Cは相続税の納税義務はありますか?

<解説>
まず大前提として、遺留分の減殺請求権は相続の開始を知った日から
1年間行使しない場合には時効により消滅します

従って、今回BからCへ支払う5000万円が遺留分の減殺請求による
価格弁償として認められない場合には、贈与税の課税対象となります

今回の事例で贈与税の課税対象とならないためには、
価格弁償の額の確定に、18年10月に相続が開始してから平成25年1月
まで長引いた事情を明らかにする資料を整えておく必要があります。

次に、遺留分の減殺請求により相続税の納税義務者になるCについて
は当初申告の期限後の申告になりますが、正当な事由があるので
無申告加算税の対象とはなりません。

また、今回のBは納税すべき税額が発生していませんでしたが
仮に、当初申告でBが相続税を納税している場合で今回の価格弁償に
より納税額が減少する場合には、価格弁償の確定から4ヵ月以内に
相続税の更正の請求を行うことができます(相続税法32条)

更に、上記の場合で新たに納税義務者となったCが相続税の
申告をしない場合に税務署は、Cの相続税額を決定することが
できます。

つまり、Bに税額が発生している場合にB+Cの全体の税額は
一定の金額のはずなのでBが更正の請求を行い還付する税額は、
Cが申告納税しなければならないということです。

上記のような事情が無い場合に、相続税の申告期限から
5年を経過すると、税務署は相続税について決定することが
できません。

ですから、今回の事例ではもともとBに納税額が発生していなかった
ことと、当初申告期限から5年を経過しているので新たに納税
義務者となったCが相続税の申告納税をしなくても
税務署がCの相続税額を決定できないという結論です。

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2013.05.19

【相続税質疑応答編-35 外国に住む外国籍の孫への遺贈って節税?】

【相続税質疑応答編-35 外国に住む外国籍の孫への遺贈って節税?】

平成25年の税制改正では、基礎控除の引下げと教育資金贈与が大きな
改正点でしたが、それ以外にも影響の大きな改正があります

そのひとつが、「外国に住む外国籍の相続人への課税」です。

そもそも、先進諸国の多くは自国の国籍を持たずに国外に住む相続人
であっても、国内外の財産を相続税の課税対象としているようです。

しかし、日本の相続税法は日本国籍を持たない相続人を想定して
いませんでした。

そのため、一部の富裕層は法定相続人や孫に外国籍を取得させるという
節税対策が行われていました。

例えば、父親がアメリカに預貯金や不動産を多額に所有している場合で
法定相続人である長男がアメリカ在住でアメリカ国籍を取得している
場合、改正前の相続税法ではアメリカの預貯金と不動産は課税対象外でした。

しかし、日本経済のグローバル化に伴い課税の公平を維持するために
このような租税回避を防ぐ必要が高まりました。

そこで、「日本国内に住所を有しない個人で日本国籍を有しないものが、
日本国内に住所を有する者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得した
国外財産を、相続税又は贈与税の課税対象に加える。」と改正されました。

(注)上記の改正は、平成25年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は
贈与により取得する国外財産に係る相続税又は贈与税について適用します。

今後、日本の税制も国際的な視点からの改正が予想されます
海外を利用した節税プランはこれから先は、役に立たなくなる可能性が
高いと考えたほうがいいと思われます

あまり極端な節税プランには慎重に取り組んだほうが賢明かもしれません。
 

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2013.05.05

【相続税質疑応答編-34 小規模企業共済契約者死亡により相続人が承継通算した場合】

個人事業主の方は、将来廃業をしても退職金を受取ることが
出来ないので、節税対策を兼ねて小規模企業共済を掛けている
方が多いと思います

 小規模企業共済の毎年の掛金は、その全額が所得控除として
扱われるため所得税の節税効果があります

 一方、小規模企業共済の契約者(個人事業主)が契約途中で
死亡した場合、その小規模企業共済契約に基づく一時金を、
相続人は受け取ることができます。

 また、契約者(個人事業主)の相続人がこの契約者の事業を
1人で相続によりすべて承継した場合には、上記一時金の支給を
請求しないで契約者が掛けていた納付月数を子に承継通算する
ことができます(共済法第13条第2項)。

 通常、この小規模企業共済契約に基づく一時金は、相続税の
計算をする時の相続財産にみなし相続財産(退職手当金等)
として含まれ、一定の金額について非課税として取り扱われます。

(500万円×法定相続人の人数までは非課税です。
 遺族が受取る退職金について、国税庁のHPでご確認ください
 http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4117.htm )

 もし、上記のように一時金の請求をせず、相続人の契約に承継
通算することとなった場合には、契約者の相続税の計算をする際
の相続財産として、どのように評価をすればよいのでしょうか。

このことについて国税庁で照会事例が公表されていますので
ご紹介します。

<国税庁HP:東京国税局の文書回答事例集より>
小規模企業共済契約者の死亡に伴い小規模企業共済掛金及び
掛金納付月数を相続人が承継通算した場合の相続税の課税関係について

http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/bunshokaito/souzoku/250125/01.htm

結論を簡単に申し上げますと、

1.上記承継通算されたとしても退職手当金等として
  みなし相続財産として取り扱われます。

2.評価額は一時金の支給を請求した場合に受け取ることができる金額
  
3.さらに、みなし相続財産として一定の金額について非課税として
  取り扱われる

詳細は、上記リンク先よりご確認ください。

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2013.04.21

【相続税改正情報:教育資金贈与のQ&A】

今年の税制改正の目玉の一つである教育資金贈与に関する
Q&Aが、国税庁と文部科学省のそれぞれのHPで公表され
ましたのでご案内いたします

国税庁のQ&Aは、下記URLです

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/sozoku/130401/pdf/130401_01.pdf

国税庁のQ&Aは、教育資金贈与に関する一般的な疑問について
図解で説明されています。 わかりやすい内容になっています
ので是非一度ご確認ください

また、文部科学省でも下記URLでQ&Aを公表しています

http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/zeisei/__icsFiles/afieldfile/2013/04/01/1332772_1.pdf

文部科学省のQ&Aは、国税庁のQ&Aよりもコンパクトにまとまっています
詳細については、是非国税庁のQ&Aでご確認ください

また、この制度の大まかな概要については国税庁作成の
下記パンフレットでご確認ください
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/01.pdf

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2013.03.31

【相続税質疑応答編-33 相続開始の日の判定】

【質問】
相続開始の時期は、人の死亡と同時に開始しますが、
社会問題化しつつある独居老人等のような場合で警察等からの
連絡で死亡の事実を知らされるというような事例(孤独死)
も発生しています。

では次のように戸籍の記載がある事例での相続税の課税時期
(相続開始の日)は、どのように判定されるのでしょうか。

(1)戸籍に記載された年月が明らかで、推定日に幅がある場合
   例:「12月1日から10日の間」
(2)戸籍では、推定月までしか記載がない場合
   例:「平成23年12月」
(3)戸籍に記載された年が明らかで、推定月に幅がある場合
   例:「平成24年1月から6月の間」
(4)戸籍では、推定年までしか記載がない場合
   例:「平成24年」
(5)戸籍の記載では、推定年に幅がある場合
   例:「平成23年から平成24年の間」

【回答】
(1)「12月1日から10日の間」の場合は、最後の推定日である
   「12月10日」となります。
  
(2)「平成24年12月」の場合は、推定月の末日である
   「平成24年12月31日」となります。

(3)「平成24年1月から6月の間」の場合は、最後の月の末日である
   「平成24年6月30日」となります。

(4)「平成24年」の場合は、その年の最終日である
   「平成24年12月31日」となります。

(5)「平成23年から平成24年の間」の場合は、最終の年の末日である
   「平成24年12月31日」となります。

【解説】
 相続開始の時期については、民法882条(相続開始の原因)では、
「相続は、死亡によって開始する。」旨規定していますし、この人の
死亡については、現実に死亡という事実が発生した時とされています。

 この相続開始の時期の判定は、相続税での課税年分や申告期限の
確定等の基準とされていることや相続人の範囲、資格、相続する順位の
決定や相続財産や遺留分の決定などにおいて、相続税法上で発生する
各種の問題の解決にも影響する重要な基準要素とされています。

 このことから実務的な対応としては、医学的な死亡の時として
判定されていることから、一般的には、その事実が戸籍に記載されている
死亡の年・月・日・時であるとして推定されています。

 また、事例のように戸籍の記載において、死亡推定時刻に時間的な
幅がある場合には、民法上は、その時間の終期をもって死亡推定時刻
とするものと解されています

 ちなみに、相続税の取扱いにおいても、これと異なる考え方を採る
とする合理的な理由はないので、特に明確な反証がない限り、民法の
考え方にならって相続開始の時期すなわち相続税の課税時期とするのが
妥当とされています。

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2013.03.17

【相続税質疑応答編-32 25年度税制改正のポイント:小規模宅地の特例】

25年度税制改正法案では相続税法の基礎控除引下げが織込まれているのは
すでにご案内の通りです。

この増税策に対応して、第2の基礎控除ともいわれる小規模宅地の特例が
大幅に拡大されていますのでポイントを説明いたします

まず現在(改正前)の小規模宅地の特例の概要については以下の国税庁HP
でご確認ください

http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm

次に、25年度改正案のポイントは以下のとおりです

1.特定居住用の場合の面積制限が240㎡から330㎡へ拡大されました。
この改正は、路線価の高い地域での相続税増税に対応した改正案です

また、この面積拡大は特定事業用宅地等と併用できるので
小規模宅地の適用対象となると宅地が特定居住用と特定事業用等のみの
場合は、特定居住用で330㎡+特定事業用等で400㎡=合計で730㎡の
小規模宅地の特例が適用できることになる予定です

ここで、留意すべきポイントは貸付事業用宅地は従来通り200㎡であることと
貸付事業用宅地等について特定居住用宅地等と併用する場合には
200㎡+330㎡=530㎡の適用はできないということです

貸付事業用宅地等のある場合のみ、適用対象面積の計算については
計算して調整しなければなりませんので十分にご留意ください

2.2世帯住宅の適用要件を緩和します
現行の税制では、2世帯住宅の場合建物の構造上それぞれ区分がある
場合には、内部で相互に行き来ができなければ、小規模宅地の特例を
適用できませんでした。

今回の改正では、内部の行き来ができるかどうかにかかわらず
2世帯住宅の場合に同居しているものとして、特例の適用ができる
予定です

3.終身利用権のある老人ホームに入居した場合
現行の税制では、終身利用権のある老人ホームに入居した場合には
特定居住用宅地等に該当しなくなっていました。
路線価の高い地域に自宅のある場合、この取り扱いは大きな税負担に
つながっていました。

そこで、今回の改正では一定の要件の下で終身利用権のある
老人ホームに入居した場合でも、特定居住用宅地等として
小規模宅地の特例を適用できる扱いに改正される予定です

なお、1の改正は平成27年1月からですが、2と3の改正は平成26年1月から
適用される予定です

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2013.02.11

【譲渡所得質疑応答-11保証債務の履行と譲渡所得税】

<事例>
Aさんは、弟Bの経営する株式会社Cが銀行から資金調達を
行うに当たって、保証人となっていました

Aさんは、保証人のまま死亡しました。Aさんの相続人は
長男Dのみです。

C社永年にわたり多額の債務超過に陥って
いたため業績の回復の見込みがなくなり、今年になって
解散しました。現在清算の手続き中です。

その後Aさんは亡くなりました

金融機関との交渉の結果、C社の債務5000万円については
今後1年以内に保証債務の履行としてAさんの相続人である
長男Dが返済することになりました。

さて、このような場合長男Dの相続税を計算するに当たって
保証債務5000万円を債務控除できますか?

また、長男Dが土地を売却して、その売却代金で5000万円の
保証債務を履行した場合、譲渡所得に計算に当たって
何らかの特例を適用することはできますか?

<解説>

上記事例の保証債務の債務控除については、過去のメルマガで
ご紹介しています。下記URLでご確認ください

https://www.kobesouzoku.com//menu11/#__qa_22__

『保証債務は、一般的には債務控除の対象になりません。
債務控除の要件として、『確実と認められる』債務でなければ
ならないからです。

(根拠条文:相続税法第14条)『前条の規定によりその金額を
控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。』

しかし、例外的に保証債務でも債務控除の対象になる場合があります。

(根拠条文:相続税基本通達14-3(1)但書『ただし、主たる債務者が
弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければ
ならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みが
ない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証
債務者の債務として控除すること。』

今回の事例の場合、C社は債務超過状態であり、かつC社は
清算手続き中であるため上記要件に該当すると考えられますので
債務控除は適用可能と考えられます

では、長男Dの譲渡所得の計算に当たって特例の適用は
できるでしょうか?

ここで相続人が保証債務を債務控除の対象にした場合において、
相続人が相続後に当該保証債務を履行するためにした
不動産の譲渡につき所得税法第64条第2項の保証債務の特例を
適用できるかどうかが問題になります。

結論は、適用可能です。
下記URLの国税庁HPで質疑応答事例集の回答をご確認ください。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/joto/11/07.htm

根拠条文は、所得税法基本通達64-5の3です。
『被相続人の保証債務を承継した相続人が、当該保証債務を履行するために
資産を譲渡した場合には、当該資産の譲渡は、その保証債務を被相続人の
債務として相続税法第13条《債務控除》の規定の適用を受けるときであっても、
法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合」
に該当するものとする。(昭56直資3-2、直所3-3追加)

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2013.02.03

【譲渡所得質疑応答-10 共有持分を別個の時期に相続と売買により取得した場合における譲渡所得の取得費の計算について】

<事例>
今回の事例は、名古屋国税局が平成24年12月11日に国税庁のHPで
回答を公開している内容です

詳細につきましては、下記URLをご確認ください
今回のメルマガでは、その要点をご紹介いたします
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/joto-sanrin/121211/index.htm

事例は、以下のとおりです

甲さんは、平成13年4月にA土地の共有持分1/3を父から相続により取得
しました。その後同じA土地の残りの2/3を甲の兄から2500万円で買取りました

つまり、甲さんはA土地について相続で1/3を取得しその後売買で2/3
を取得しました。 このように1筆の土地の共有持分について
それぞれ別個の原因で取得した結果単独所有となりました

この度、甲さんはこのA土地について地元の不動産業者に
6000万円で売却することになりました。

さて、この場合のA土地の取得費(取得原価)の金額は
いくらになるでしょうか?

<解説>
結論から申し上げますと、A土地の取得費は2600万円となります

まず、A土地の2/3部分つまり甲さんが兄から2500万円で買取った
部分については、兄からの買取価格2500万円が取得費であること
に問題はありません

さて、次に残りの1/3部分つまり甲さんが相続により取得した
部分ですが、この部分については昭和30年代に甲さんの父が
売買により取得した土地ですが、売買価格を証明する書類が
発見できませんでした。

その場合の取得費の考え方としては
6000万円×1/3×5%=100万円となります

以上より、A土地全体の取得費は
2500万円+100万円=2600万円となります。

名古屋国税局の回答の詳細については、上記URLで
ご確認ください

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2012.12.24

【相続税質疑応答編-31 相続税の申告漏れ財産の傾向】

今回は、年末も近いので簡単な内容の情報をご紹介します
先月、このメルマガで平成23年度中の相続税税務調査の傾向を
ご紹介いたしました。

今日は、その内容に若干追加いたします。

まず、平成23年度中の相続税の税務調査件数は全国で13,787件
でした。 その結果申告漏れとして指摘された金額は3,993億円
平均すると、1件当たり2,896万円の申告漏れとなります。

上記申告漏れ財産3,993億円のうち

現預金  1426億円
有価証券  631億円
土地    630億円

となっています。

特に、現預金の申告漏れが申告漏れ財産全体の36%と際立っています
なおかでも、借名財産の申告漏れが多いようです

借名財産とは、以下のような財産のことです
例えば、親が生前に子あるいは孫の名義で預金して入る場合で
親と子孫との間で贈与が認められないケースの預金を言います。

この場合、名義は親ではないので相続財産として申告しない場合が
多いようです。

しかし、相続税の税務調査では配偶者・子・孫の預貯金
の中に借名財産が混ざっていないかどうかを徹底的に調査します。

『親からもらったことにすれば大丈夫』という甘い判断は
税務調査で痛い目にあってしまうリスクがあります。

相続税の申告の際には、借名財産は正直に申告したほうが
よさそうです

預貯金と同様に、証券会社の口座でも借名財産が散見される
ようです。

次に、土地の申告漏れの具体例としては
1.登記簿面積よりも実測面積の方が大きい場合に登記簿面積で
財産評価を実施しているケース

⇒この事例は、稀に発生しているようです。登記簿記載の面積が
必ずしも正しいとは限りませんので注意が必要です。

2.曽祖父等の名義の不動産で名義変更漏れの土地があった場合に
相続財産として申告が漏れているケース

⇒この事例も、うっかりしていると漏れてしまうケースです。
不動産の所有者が亡くなっても名義変更をしないことも多いので
要注意です。

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2012.12.02

【相続税質疑応答編-30 1次相続が未分割の場合の2次相続の申告】

今日の事例は、できるようで実はできない制度をご紹介します

<事例>
甲と乙の夫婦にはABの子がいました。
今年、夫の甲が亡くなりその3カ月後に妻の乙が死亡しました。
甲乙ともに遺言書を作成していなかったので、ABは遺産分割で
悩みました。

その結果、妻乙の相続税の申告期限までに夫甲の遺産について未分割
でした。 つまり、2次相続(妻乙の相続)に係る相続税の申告に
当たっては、妻乙の固有の財産に加えて、夫甲の遺産のうちの
妻乙の法定相続分に相当する部分も妻乙の遺産として申告をしました

しかし、第2次相続(妻乙の相続)に係る相続税の申告書の提出後に
第1次相続(夫甲)の相続財産が、妻乙の法定相続分よりも少なく
決まりました。

この場合、相続人であるABは第2次相続について払い過ぎの税額を
還付するための更正の請求をすることはできますか?

<解説>
結論から申し上げると、できません。

論点を改めて整理すると

今回の事例は、夫甲が妻乙よりも先に死亡しましたが妻乙の相続税の
申告期限まで夫甲の遺産分割が成立しなかったために妻乙の相続財産
に夫甲の遺産の1/2が必然的に加算されました。

つまり、ABの兄弟は妻乙の相続税の申告に当たって妻乙の遺産を
以下の算式で計算した金額で計上しました

<妻乙の遺産=妻乙の固有の財産+夫甲の遺産の1/2(法定相続分)>

しかし、その後夫甲の遺産分割が成立したところ妻乙の遺産は

<妻乙の遺産=妻乙の固有の財産+夫甲の遺産の1/2より少ない金額>
となりました。

このとき、妻乙の遺産を過大に計上したことによって当初支払過ぎている
ABの相続税額を、還付できるのか?というのが今回の論点ですが、
できません。

それは、相続税法32条に定められていないからです。
相続税法32条の細かな解説は、ここでは割愛させていただきます

上記のような事例は、実務では時々あります。
でも、過払いの相続税額を還付請求できないのでご注意ください

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書込みをしていますのでご覧ください

2012.11.10

【今年の税制調査会の会議資料から税制改正の方向性を確認します】

衆議院の解散総選挙の時期を巡って駆け引きが行われていますが
その一方で、税制調査会では平成25年度の税制改正の議論が行われて
います。

 この時期から税制改正の議事録を読んでいると25年度税制改正の
方向性がある程度予想できます

 そこで、今回は平成24年10月31の税制調査会議事録の添付資料から
25年税制改正のポイントを紹介いたします

10月31日の税制調査会資料では、税制改正の課題として以下の点が
挙げられています

(イ)個人所得課税⇒所得税の最高税率引上げを検討しています

「所得税については、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、
最高税率の引上げ等による累進性の強化に係る具体的な措置について
検討を加え、その結果に基づき、平成 24 年度中に必要な法制上の措
置を講ずる。」【税制抜本改革法附則第 20 条】

・ 金融所得課税

「金融所得課税については、平成 26 年1月から所得税並びに個人の
道府県民税及び市町村民税をあわせて100 分の 20 の税率が適用される
ことを踏まえ、その前提の下、平成 24 年度中に公社債等に対する
課税方式の変更及び損益通算の範囲の拡大を検討する。」
【税制抜本改革法第7条第2号イ】

(ロ)資産課税⇒基礎控除の引下げ等の増税案を再度検討しています

・相続税、贈与税の見直しの検討

「相続税の課税ベース、税率構造等、及び贈与税の見直しについて検討し、
その結果に基づき平成 25 年度改正において必要な法制上の措置を講ずる
旨の規定を附則に設ける。

具体化にあたっては、バブル後の地価の大幅下落等に対応して基礎控除
の水準を引き下げる等としている今回の政府案を踏まえつつ検討を進める。

資産課税については、格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化
の進展への対処等の観点からの相続税の課税ベース、税率構造等の見直し
及び高齢者が保有する資産の若年世代への早期移転を促し、消費拡大を
通じた経済活性化を図る観点からの贈与税の見直しについて検討を加え、
その結果に基づき、平成 24 年度中に必要な法制上の措置を講ずる。」

・事業承継税制 ⇒まったく使われていない税制なので条件緩和を検討
 します

「事業承継税制について、中小企業における経営の承継の円滑化に関
する法律に基づく認定の運用状況等を踏まえ、その活用を促進する
ための方策や課税の一層の適正化を図る措置について検討を行い、
相続税の課税ベース、税率構造等の見直しの結果に基づき講ぜられる
措置の施行に併せて見直しを行う。」

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http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2012.10.28

【相続税質疑応答編-29 親から子への学費・生活費の援助は、無条件で贈与税非課税なの??? 】

<事例>

親が子の生活費あるいは教育費を負担するのは、あたりまえのことです。
したがって、生活費・学費の名目で親から子への資金送金には一切贈与税が
課税されません。

しかし、息子の大学生活の生活費と学費のために、大学入学時に500万円を一括で
息子の口座に入金し、それを生活費や学費に使うように指示しました。

この場合、贈与税の課税対象となるでしょうか?

<解説>

扶養義務者からの生活費又は教育費で通常必要と認められるもの
につきましては、非課税財産として贈与税の課税対象とならないことが
相続税法で定められています。
(相法21の3(1)二)

しかし、上記非課税財産の対象となるためには、生活費又は教育費として
必要な都度、直接これらに充てるためのものに限られます
(相基通21の3-5)。

今回のケースですと、大学入学時において500万円が生活費又は教育費
として必要な金額かどうかが問題となります。

入学時において、500万円が生活費又は教育費として必要な金額であれば、
非課税となり、贈与税の課税対象とはなりません。

ただし、生活費又は教育費という名目で取得した財産を貯金した場合
又は株式の購入代金に充てた場合などは課税対象となります
(相基通21の3-5)。

入学時において、500万円が生活費又は教育費として必要な金額であれば、
非課税財産として認められると考えられますが、大学生活の生活費又は
学費として4年間分を贈与した場合等、一括して贈与した場合については、
贈与税の課税対象となります。

子・孫の学費という名目で一括で資金を送金している事例が実際には
多いようです。 その都度必要な金額以上に送金した結果、子・孫の
預金残高が増加しているような場合には、贈与税の課税対象となります。

重要な根拠条文となりますので、以下に「相続税法基本通達」の原文を
紹介いたします。

贈与の実務で、間違いやすいポイントですので原文を読んで正しく
理解してください。

≪参考:相続税基本通達21の3-5≫

『法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのもの
として贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として
必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産を
いうものとする。
 したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合
又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合
における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの
以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)』

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2012.10.21

【譲渡所得質疑応答-9 自宅売却後もその自宅で居住を継続する場合の特別控除の適用について】

<事例>

株式会社Aの代表取締役Bは、会社の業績が悪化して運転資金が
足りなくなりました。

しかし、金融機関からの借入金はこれ以上残高を増やしたくないので
自宅を売却することにしました

Bは、自宅の土地建物を売却して、譲渡所得の3000万円控除と譲渡所得の
軽減税率の適用を受けることにより、売却に関わる税額を減らすことを
検討してます

そこで、自宅の土地建物の売却案として次の2案を考えました。

1.Bの娘婿であるXに自宅土地建物を時価で売却し、Bさんは
自宅の土地建物でそのまま生活を継続する。ただしXに適正な家賃を
毎月支払う

2.株式会社Aの外注先で買掛金の支払いが滞っているY社に時価で
売却し、その後Bさんは自宅の土地建物でそのまま生活を継続する。
ただし、この場合もYに対して適正な家賃を毎月支払います

1案2案の場合で税務上の扱いは異なるのでしょうか?

<解説>

生活の拠点となっている自宅を売却した場合の所得税については
所得税の負担を軽減するためのいくつかの特例があります

その中でも一般的なのが3000万円の特別控除です
これは、所得税の課税対象となる自宅の売却益(譲渡所得)から
3000万円を控除することのできる特例です
(所法33、措法35、措令20の3、23)

この特例を適用するためには、以下の様な要件を満たす必要があります
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
 なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から
 3年目の年の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換えや
 マイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての
 損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(3) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など
 他の特例の適用を受けていないこと。

(4) ~省略~

(5) ~省略~

(6) 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
 特別な間柄には、このほか生計を一にする親族、内縁関係にある人、
 特殊な関係のある法人なども含まれます。

さて、今回の1案を上記要件に当てはめてみると
娘婿のXさんは直系血族でも生計を一にする親族でもないので
譲渡先の要件としてはクリアーです

また、自宅売却後もその家屋で生活を継続することによって
特例の適用は否認されません。 したがって売却先としてXを選択した
場合でも3000万円の特別控除は適用できます。

さらに、周辺の適正な相場から算出した家賃の相場の年間総額が例えば
贈与税の基礎控除(110万円)未満の金額である場合、課税上弊害が
無いと考えられるので、実際に家賃の支払いをしていない場合でも
贈与税の課税対象とはなりません(相続税基本通達9-10但書)

次に、2案の場合もY社は3000万円特別控除適用除外の譲渡先には該当しません。
また、自宅売却後もBさんがその家屋で生活を継続することによって
特例の適用が否認されることはありません。

さらには、BからY社への売却が譲渡担保の設定であるような場合には
一定の手続きを行うことによって譲渡所得税も課税されません

<参考>(所得税基本通達33-2 譲渡担保に係る資産の移転)

債務者が、債務の弁済の担保としてその有する資産を譲渡した場合において、
その契約書に次のすべての事項を明らかにしており、かつ、当該譲渡が
債権担保のみを目的として形式的にされたものである旨の債務者及び
債権者の連署に係る申立書を提出したときは、当該譲渡はなかったものとする。

この場合において、その後その要件のいずれかを欠くに至ったとき又は
債務不履行のためその弁済に充てられたときは、これらの事実の生じた時
において譲渡があったものとする。(昭52直資3-14、直所3-22改正)

(1) 当該担保に係る資産を債務者が従来どおり使用収益すること。

(2) 通常支払うと認められる当該債務に係る利子又は
  これに相当する使用料の支払に関する定めがあること。

(注)形式上、買戻条件付譲渡又は再売買の予約とされているものであっても、
 上記のような要件を具備しているものは、譲渡担保に該当する。

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2012.10.14

【相続税質疑応答編-27 オフィスビルの建物付属設備の未償却残高と株価の関係 】

<事例>
A社代表取締役B氏の相続税申告に当たって、A社の株価評価を
実施する必要があります。資産を精査していると財産評価でひとつだけ
問題が発生しました。

A社の本社は、第三者と賃貸借契約を締結しているオフィスビルの1室に
あります。

A社は、オフィスの利用に当たってA社の負担で内装工事の模様替え
付帯設備の改修工事を行いました。

A社の決算書には、上記工事の未償却残高が建物付属設備として
4000万円計上されています。

上記建物付属設備は、賃借したオフィスビルの一部を構成するモノであり
その追加工事部分だけを独立して取引の対象となる経済的価値は
ありません。

さて、上記のような場合でA社株式の評価を純財産額法で計算する
にあたって、上記建物付属設備の未償却残高4000万円は株価にどのように
影響を与えるでしょうか?

<解説>
結論から申し上げますと、上記の建物付属設備4000万円は
A社の株価算定上は、A社の財産として認識しない場合がありうるという
ことです

まず、上記建物付属設備4000万円をA社財産として認識するかどうか
という論点の前にA社が賃貸借契約をしている借家権そのもののが
客観的交換価値のある財産であるかどうかを検討する必要があります

そもそも財産評価基本通達94但し書きには
「ただし、この権利が権利金等の名称をもって取引される慣行のない
 地域にあるものについては、評価しない。」と定めています

特殊な地域を除いては、一般的には借家権そのものを客観的交換価値
のあるものとして取引する慣行がなく、相続財産として評価する対象と
なりません。

さらに、A社の決算書に計上される建物付属設備4000万円は
会社の期間損益計算の適正化のために、未償却残高が計上されている
にすぎず、その建物付属設備に4000万円の交換価値は無いと
考えるのが一般的です。

また、建物の賃借人が賃借中の建物に付属設備の工事を行った場合
その付属設備の所有権は建物所有者に帰属することになります

(民法第242条 「不動産の所有者は、その不動産に従として付合
 した物の所有権を取得する。)

したがって、賃借人は付属設備の経済価値について賃貸人に対して
償還請求権を所得することになるようです(民法608条)

ただし、一般的には上記償還請求権も建物の賃貸借契約書の中で
放棄している場合が多いようです。

上記より、賃借人であるA社が上記償還請求権を賃貸借契約書の
中で放棄していない場合には、上記償還請求権が債権として
A社の株価に影響を及ぼしますが

償還請求権を放棄している場合で、借家権そのものを
取引する慣行の無い地域であれば、建物の付属設備4000万円は
A社の株価算定上は、貸借対照表から除外することができます。

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2012.09.17

【譲渡所得質疑応答-8 ゴルフ会員権の譲渡所得の取得費に関する取扱が改正されました】

預託金会員制ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取得費の取扱いが変更されました。
  譲渡所得に関する税額が少なくなる改正なので、ご注意ください!!!

 1.従来の取扱い

(1)譲渡所得の基因となる預託金会員制ゴルフ会員権とは、契約上の地位であり、優先的施設
   利用権(いわゆるプレー権)と預託金返還請求権をその内容とする資産(事実上の権利)を
   いうものとされます。

(2)一方、預託金会員制ゴルフ場の経営会社においては、預託金の償還問題等に対して、民事
   再生法等による再建型処理つまり再生計画、更生計画及び整理計画に基づき、預託金債権を
   切り捨てた上、優先的施設利用権を保障する方策(自主再建型)を採ることがあります。

(3)自主再建型の場合、すなわち、

   ① 会社更生法に基づく更生計画による更生手続等により、預託金債権を切り捨てた上、ゴ
    ルフ場経営会社は営業を存続するというもので、単に契約内容の変更があったものにすぎ
    ず、ゴルフ会員権としての性質は維持するというものであり、その場合における譲渡所得
    の計算においては、切り捨てられた損失の金額は認識せず、取得価額も減額(付け替え)
    しないという取扱いがされてきました。

   ② また、預託金債権を100%切り捨てた上、優先的施設利用権だけが継続されるケース
    においては、上記(1)に述べたように、預託金会員制ゴルフ会員権は、優先的施設利用
    権と預託金返還請求権を内容とするものですから、優先的施設利用権のみのゴルフ会員権
    の取得価額とそのゴルフ会員権の時価相当額との差額としての損失は、譲渡所得等の各種
    所得の金額の計算上考慮されないものとされてきました(平成15年7月4日付国税庁資
    産課税課情報第13号「個人所有の預託金制ゴルフ会員権を巡る課税上の問題について
    (情報))。
 
2.今後の取扱い
   上記1の(3)②の場合、すなわち、預託金会員制ゴルフ会員権が上記の更生手続等(会社
  更生法に基づく更生計画による更生手続と同等の法的効果を有する民事再生法に基づく再生計
  画による再生手続等を含みます。)により、預託金債権の全額を切り捨てられたことにより、

  優先的施設利用権(年会費等納入義務等を含みます。以下同じです。)のみのゴルフ会員権と
  なったときであっても、当該更生手続等により優先的施設利用権が、次に掲げる状況その他の
  事情を総合勘案し、更生手続等の前後で変更なく存続し、同一性を有していると認められる場

  合には、その後に当該優先的施設利用権のみのゴルフ会員権を譲渡した際の譲渡所得の金額の
  計算において、当該譲渡による収入金額から控除する取得費については、更生手続等前の預託
  金会員制ゴルフ会員権を取得したときの優先的施設利用権部分に相当する取得価額とするとい
  うものです。

  ① 当該更生計画等の内容から、優先的施設利用権が会員の選択等にかかわらず、当該更生手
   続等の前後で変更がなく存続することが明示的に定められていること。

  ② 当該更生手続等により優先的施設利用権のみのゴルフ会員権となるときに、新たに入会金
   の支払いがなく、かつ、年会費等納入義務等を約束する新たな入会手続が執られていないこ
   と。
 
 3.所得税の還付手続

   上記2の取扱いの変更は、過去に遡って適用することとされます。
   したがって、これにより、過去の所得税の申告内容に異動が生じ、所得税が納めすぎとなる
  場合には、国税通則法第23条第2項の規定に基づき、この取扱いの変更を知った日の翌日か

  ら2月以内に所轄税務署長に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている所得税
  が還付されます(国税通則法23②三、同法施行令6①五)。

   更正の請求をする場合には、更生計画等上記2に掲げた内容が分かる書類を併せて提出する
  必要があります(国税通則法23③)。

   なお、法定申告期限等から既に5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額
  することはできないこととされています(国税通則法70①一)。
 

◎ 国税庁ホームページ>調達・その他の情報>お知らせ>「ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取
得費の取扱いについて」でご確認ください。
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/golf/01.htm

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2012.09.02

【相続税質疑応答編-26 離婚の財産分与・養育費・慰謝料と贈与税の関係】

<事例>
A(夫)とB(妻)は、家庭裁判所で離婚の調停が成立しました。
調停の結果、次のとおり話し合いがまとまりました

1.財産分与は3000万円
2.AからBへの慰謝料は1000万円
3.ABの娘Cは、Bが引取ることになったが大学卒業までの養育費と教育費
  はAが負担する

この場合のABの税務について教えてください
また、AからBへの分与を現金ではなく時価3000万円相当の土地の譲渡で
行った場合の税務も教えてください

<解説>

家庭裁判所の調停等によって財産分与や慰謝料の支払いを行った場合
支払い側・受取り側どちらにも課税関係は発生しません。

従って、上記1.2についてはABともに一切の課税はありません。

ただし、金銭の支払いにかえて時価3000万円相当の土地を譲渡した場合には
Aには譲渡所得税が課税されます。

根拠は:所得税基本通達33-1の4です
『(財産分与による資産の移転)民法第768条《財産分与》の規定による
財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、
その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
(昭50直資3-11、直所3-19追加、平18課資3-6、課個2-11、課審6-5改正)』

つまりAが財産分与として時価3000万円の土地を譲渡した場合に、その取得費が
2000万円であれば、差額の1000万円が譲渡所得の課税対象となります。

次に、時価3000万円相当の土地の取得したBですが贈与税は課税されません。

根拠は:所得税基本通達33-1の4の(注)1です。
『(注)1.財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益
を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、法第59条第1項《みなし譲渡課税》
の規定は適用されない。』

さらに、Bが今回取得した土地を第三者に売却する際の取得費は
今回の財産分与の金額である3000万円となります。

根拠は:所得税基本通達38-6です。
『民法第768条《財産分与》の規定による財産の分与により取得した財産は、
その取得した者がその分与を受けた時においてその時の価額により取得した
こととなることに留意する。(平18課資3-6、課個2-11、課審6-5改正』

最後に、Aが負担するCの養育費と教育費ですが離婚後も父親であるAの
扶養義務が消滅しないので、Cに贈与税は課税されません。

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2012.08.19

【譲渡所得質疑応答-7 生計を一にする母親が買換住宅に居住する場合の節税は?】

<事例>
今回は、生計を一にする母親のために住宅を買換えた場合の買換特例の
摘要について確認します。

Aは平成元年にに父親から相続により取得した自宅で母親と同居していました。
その後、平成20年にAは転勤のため会社の社宅に転居をしましたが
母親の生活費はすべてAが負担していました。

しかし、最近では母親が生活しているA名義の自宅も老朽化が進んだことと
Aの転勤生活もあと5年の目途がついていることから、現在のA名義の自宅
近くに自宅を買換えることにしました。

新しい自宅には引続き母親だけが生活しますが、5年後に転勤生活が
終わればAの家族とともに母親と同居する予定でいます。

さて、このような事例の場合に居住用財産の買換特例は適用できるでしょうか・

<解説>
今回の事例では、論点が以下のとおり2つあります
1.生計を一にする母親が一人暮らしをしているA名義の自宅は、
  買換特例の適用対象になるか?

2.買換える新居は、当分の間母親が一人暮らしをする予定で
  いつからAが同居するのかはまだ確定していない状況で
  買換特例の適用対象になるか?

まず、1つ目の論点ですが生計を一にするAの母親が生活をしている
A名義の自宅は、買換特例の適用対象となります。
根拠は、措置法通達31の3-6に規定されています

ポイントは以下の2点です
(1) 当該家屋は、当該所有者が従来その所有者としてその居住の用に供して
   いた家屋であること。
⇒Aは父親から相続により取得して平成元年から20年まで居住の用に供していました。
  

(2) 当該家屋は、当該所有者が当該家屋をその居住の用に供さなくなった日
   以後引き続きその生計を一にする親族の居住の用に供している家屋であること。
⇒Aは母親の生活費をすべて負担していました。

(3)(4)の内容は今回は割愛します

次に2つ目の論点ですが、今回の事例の場合は残念ながら該当しません
根拠は、措置法通達36の2-17に規定されています

ポイントは以下のとおりです

『買換資産を当該個人の居住の用に供したかどうかについては、
 買換資産である土地等については、当該土地等の上にあるその者の有する家屋
 をその者が居住の用に供したときに、当該個人の居住の用に供したことになる
 ことに留意する。』
⇒今回の事例では、Aが新居で生活するのは5年以上先の予定なので該当しません

以上より、今回の事例では買換特例を適用できません。
自宅を買換えする際の税務は、複雑ですので十分にご注意ください

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2012.08.11

【譲渡所得質疑応答-6 共有の居住用不動産を売却した場合の所得税の特例は?】

<事例>
消費税増税が成立しました。消費税が増税になる前に自宅の買換えを
検討する方が増えると思います。そこで今回は、すこし複雑な買換え特例の
パターンを検討してみます

ABの兄弟は、15年前に2階建ての2世帯住宅共有名義で購入しました。
その後15年間兄のAは、1階で家族とともに生活をしていました。

ところが、弟のBは5年目に関東へ転勤することになったため
家族とともに転勤先で賃貸マンション生活をすることになりました。
転勤の期間中、2階部分についてはBが他人に賃貸し家賃収入を得ていました。

その後Bは8年間の転勤生活を終えて、家族とともに2階部分での生活を
再開しました。 しかし、その2年後にABともにこの2世帯住宅を売却して
それぞれが新居を購入することになりました。

このような事例の場合に、どのような所得税の特例を適用できるのでしょうか

<解説>
一般的に、居住用不動産を売却する場合に適用できる特例としては

・3000万円の特別控除
・長期居住用不動産の軽減税率
・特定居住用財産の買換え特例

この3項目が考えられます。ABそれぞれの立場で上記特例が適用可能か
どうかの確認をします

・まず特定居住用財産の買換え特例ですが最初に確認すべき適用要件は
『売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において
 売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。』

この点に着目すると、兄のAは15年間引越しをしていないので適用できますが
Bは、途中で転勤があったため居住期間が7年間しかなく適用できません。

なお、詳細な適用要件は下記URLでご確認ください
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3355.htm
(措法36の2、36の3、措令24の2、措規18の4)

・次に3000万円の特別控除ですが、
この制度には居住用不動産の所有期間・居住期間の制限がありませんので
Bは、3000万円の特別控除を適用することができます。

一方でAは、上記の特定居住用財産の買換え特例と3000万円特別控除の
重複適用は認められていませんので、どちらかを選択する必要があります

詳細な適用要件は下記URLでご確認ください
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
(所法33、措法35、措令20の3、23、措規18の2、措通31の3-2)

・最後に長期居住用不動産の軽減税率ですが
この特例の適用要件のポイントは、所有期間であって居住期間ではありません
『売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間が
 ともに10年を超えていること。』

したがって、弟Bは3000万円の特別控除と、この長期居住用不動産の
軽減税率を併せて適用することができます

しかし、この特例も特定居住用財産の買換えとの併用ができません。
兄Aは、ここでもどの特例を適用するのかを選択する必要があります

詳細な適用要件は下記URLでご確認ください
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3305.htm

このように、居住用不動産を売却した場合の所得税の計算には
複雑な特例の適用要件の判断が必要となってきます。

実際に売却を検討する際には、事前に特例の適用要件を
充分に確認の上で資金繰りを計算する必要があります。

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書込みをしていますのでご覧ください

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2012.08.05

【相続税質疑応答編-25 介護付有料老人ホームの入居一時金の返還請求権と相続税】

<事例>
甲と乙の夫婦は、夫である甲所有の自宅で甲の収入で生活を営んでいました
妻である乙は、国民年金の収入のみです

乙は、数年前から軽度の認知症となったため甲だけでは介護が難しくなったため
近所の介護付き有料老人ホームの単身用の部屋に入居しました。

このホームは、入居者が死亡するか契約を解除するまで継続して介護を受けて
生活することができるので、甲は安心して任せることにしました

入居に関する一時金1000万円と、その後の月額サービス料20万円はすべて
夫である甲の預貯金から支払っていました。

入居一時金は、60ヶ月で均等償却する契約になっています。60ヶ月未満で
死亡あるいは解約すると未償却残高が返還されます。一方、60ヶ月を超えて
死亡あるいは解約すると一切返還金はありません。

しかし、夫である甲は妻乙が有料老人ホームに入居後まもなく死亡しました
さて、この場合妻乙の有料邦人ホームの入居一時金に関する相続税・贈与税の
扱いはを教えてください

<解説>
有料老人ホームに入居している場合の入居一時金の取扱や
小規模宅地の特例の適用については、様々な論点がありますが今回は
入居一時金を負担した夫が先に死亡した場合の論点を解説いたします

まず、夫甲が死亡した場合でも妻乙は引き続きホームで生活を継続しています
ので入居一時金の返還はありえません。

従いまして、入居一時金の未償却残高を甲の相続財産として算入する必要は
ありません。

次に、甲が乙の入居一時金を負担した事実が贈与税の課税対象として扱われるか
どうかが論点になります

つまり甲が乙の入居一時金を負担した事実が

1.扶養義務の履行に該当するかどうか
2.扶養義務の履行の範囲を超えるものであっても扶養義務者相互間において
  生活費に充てるために通常必要と認められるものであるかどうか

という2つのポイントを確認する必要があります。

まず相続税法第1条で配偶者は扶養義務者であることを定めています
しかし、有料老人ホームの入居一時金の全額を負担する行為が扶養義務の履行の
範囲であるかどうかは意見が分かれるようです

次に、仮に入居一時金が扶養義務の範囲を超えた行為であると考えた
場合であっても、相続税法21条の3第1項第2号に以下のように定めています

『扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした
 贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの』は、贈与税の課税価格
に算入しない。

つまり、今回の甲が乙の入居一時金を負担した行為が、扶養義務者間相互において
生活費に充てるために通常必要と認められるものの範囲と考えられれば
贈与税の課税対象となりません。

この点につきましては、裁決事例としては上記条文を適用して
贈与税の非課税財産と判断した事例と、上記条文の適用外として
贈与税を課税した事例と見解が分かれているようです

なお、上記条文の適用外として贈与税の課税対象とした事例では
入居一時金が1億円を超えている事例です

入居一時金の負担については、税務の判断によって贈与税・相続税の
税額に大きく影響を与えますので事前に税の専門家である税理士に
ご相談ください

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2012.07.28

【相続税質疑応答編-24 売買契約中の土地を相続した場合の課税関係】

<事例>
Aさんは所有する土地XをBさんに売却する契約を7月1日に締結しました。
売買価格は5000万円でしたが、契約当日は手付金の1000万円しか
受け取りませんでした。

残金の4000万円は、2週間後に受け取る約束でした。
しかし、Aさんは残金4000万円を受け取る期日の前に急死しました。

その後、Aさんの相続人であるCさんは残金4000万円を受け取り
土地XをBさんに引き渡しました。

この場合、土地Xに関する相続税の申告と所得税の申告について
教えてください

<解説>
今回の事例では、相続税に関する論点と譲渡所得に関する論点がありますので
別々に解説いたします

まず、相続税に関する論点ですがそもそも相続税の課税対象となる財産は
土地Xなのか、未収代金4000万円の請求権なのかという点がポイントになります

つまり、未収代金の請求権であれば相続財産の評価は4000万円になりますが
土地Xが課税対象の財産であれば路線価に基づき評価すると評価額が
4000万円を下回る可能性が高いと考えられます。

相続人Cさんとしては、少しでも相続税を少なくしたいと考えるので
当然土地Xを相続税の課税対象財産と考えたいところです。

しかし、この点につきましてはバブル期に問題となったために
昭和61年に相続税の課税対象財産は、「残代金請求権」であるとの
最高裁の判例があります。

従いまして、今回の事例では4000万円の残代金請求権を
相続税の課税対象財産とします

次に、譲渡所得の申告ですがAさんの準確定申告として申告する
方法と、相続人Cさんが確定申告で申告する方法と2通りあります

Aさんの準確定申告として申告する場合の留意点は以下のとおりです
1.準確定申告の結果計算された所得税額は、相続税の計算上債務として
  扱われます。
2.次に住民税の課税ですが、住民税は翌年1月1日にAさんは生存していません
  ので土地Xの譲渡に伴う住民税の課税はされません

次に土地Xの譲渡所得を引渡日を基準としてCが確定申告する場合の
留意点は以下の通りです
1.Aさんの相続税の一部を土地Xの取得費に加算できます
  この特例の詳細につきましては下記URLでご確認ください

  http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3267.htm

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2012.07.21

【相続税質疑応答編-23 納税資金確保のために未分割の不動産を売却する際の注意点】

【相続税質疑応答編-23 納税資金確保のために未分割の不動産を売却する際の注意点】

<事例>
Aの妻Bと長男C次男Dは、Aの遺産分割協議がまだ成立していません。
しかし、納税資金を確保するためA名義の不動産の一部を売却することを
検討していました。

そこでBCDは協議の結果、Aのすべての財産を未分割のままで
A名義の土地Zを不動産会社Yに6000万円で売却することにしました。

土地Zの売却代金は、一旦全額を配偶者であるBが保管し
その後、売却代金の分割は協議の結果B3000万円、C2000万円、
D1000万円の割合で分割することとなりました。

この場合、譲渡所得の申告とCの贈与税について解説してください

<解説>
相続財産である不動産を売却する場合、分割協議が成立してから
売却する場合と、未分割のままで売却する場合で課税関係が異なります

今回の事例の場合、未分割の状態で売却することになりますから
売却時には、法定相続割合で仮に登記したうえで売却することになります

この時、売却代金を一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の
対象に含める合意を予め行っている場合には、不動産の換価分割が行われた
と考えられます。(最高裁昭和54年2月22日第一小法廷判決)

今回の事例も、売却代金の全額を一旦Bが保管した後に、分割協議に
よってそれぞれの取得金額がB3000万円、C2000万円、D1000万円と
決まりましたので、土地Zを換価分割したと考えられます

この場合、土地Zの譲渡所得は売却代金の分割比率つまり
B:C:D=3:2:1の割合で申告することになります。

また、CとDの法定相続割合は本来50%づつですが、換価分割によって
C:D=2:1の分割割合が成立しているため、50%を超えるCの所得割合
については、贈与税は課税されません。

納税資金を確保するために不動産を分割協議成立前に売却する際には
譲渡所得及び相続税への影響も考慮する必要があります。

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2012.07.15

【譲渡所得質疑応答-5 交換の特例の適用要件って???】

<事例>
兄弟ABは、15年前に父親から相続した土地甲と乙をそれぞれ
1/2づつ割合で共有しています。

土地甲と乙は、それぞれ月極め駐車場として利用しており
サラリーマンであるABの副収入となっています。

土地甲と乙は、ほぼ同じ面積で所在地も近いことから時価も
ほぼ同額です。

この度長男Aは、2世帯住宅建築資金を得るために土地の売却
を検討しています。しかし、甲乙いずれも共有持分であるため
ABの所有する甲乙の持分を、それぞれ交換してから売却しようと
考えています。

このような場合に、交換の特例の適用は可能でしょうか?

<解説>
所得税法58条の交換特例の適用要件につきましては
前回のメルマガでご案内いたしました。

詳しくは、下記URLでご確認ください。
http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/28544/

さて、今回の事例についてあてはめてみますと
問題になるのは、土地甲乙を交換後に長男Aが売却を考えている
ということです。

この場合に、前回の記事で紹介した交換特例適用要件の(5)
つまり、「交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の
用途と同じ用途に使用すること。」という要件を満たさないのでは
ないか、という心配があります。

この点について、所得税基本通達58-8には以下の様に定めています。
『固定資産を交換した場合において、取得資産をその交換の日の属する
年分の確定申告書の提出期限までに譲渡資産の譲渡直前の用途と同一
の用途に供したときは、交換特例の規定を適用することができるもの
とする。』

したがって、今回の事例の場合では長男Aは甲乙土地の持分を
交換した後に、いったん月極め駐車場の経営を継続しておけば
その後、売却したとしても交換特例は適用できると考えられます。

さらに、今回の様な事例の場合には「特定事業用資産の交換の
特例」を適用できる場合もあるので検討しておく必要があります。

ただし、所得税法58条の交換特例では交換資産の時価がほぼ
同額である今回の場合、所得税は課税されませんが

「特定事業用資産の交換の特例」では、交換差金のない等価交換
であっても収入および取得費を譲渡資産の20%で計算した金額
で譲渡所得を計算することに留意する必要があります。

(等価交換の場合でも必ず税額発生してしまうということです。)

また、交換により取得した資産を取得した日から1年以内に事業
(今回は月極め駐車場)として使わなければなりません。
さらに、交換により取得した資産を取得してから1年以内に事業に
使用しなくなった場合は、原則として特例は受けられません。

つまり、今回のように交換後直ちに売却を予定している場合には
「特定事業用資産の交換の特例」は、適用できません。

固定資産の交換・買換えの特例は複雑な税法の判断が必要です
実際に実行するに当たっては、慎重な判断が必要となります。

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2012.07.08

【相続税質疑応答編-22 贈与をしても贈与税が課税されない場合って? 】

<事例>
A(母)とB(娘)は、X(Aの亡夫)から土地甲を1/2づつ相続しました。
その後、Bが事業に失敗し多額の負債を負うことになりました。

ABがそれぞれXから相続した土地甲を売却しても負債の全額返済には
足りませんが、それでも土地甲を有効活用して少しでも返済したいと
考えています。

そこで、Aが甲土地の持分を売却する方法・Aが甲土地持分を放棄する
方法が考えれらえますが、それぞれの場合の課税関係を教えてください

<解説>
まず、一般的に考えられるのがAが甲持分を売却して売却代金をBに
贈与する方法だと思います。

しかし、この場合Aの譲渡所得には所得税が課税されます。
事例の場合、Xから相続により取得した土地なので長期譲渡所得としても
譲渡所得に対して20%が課税されます

そこで、Aが持分を放棄する方法が考えられます。
全体のストーリーとしては、以下のとおりです

Aが相続により取得した甲の持分を放棄します。この場合放棄した持分は
Bに帰属することになります(民法255条)

『共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人が
 ないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。』

この場合、Aの持分放棄については譲渡所得の課税はありません。
さて、次にBに対する課税関係を確認すると

一般的には、Aの持分放棄によりBに帰属した甲土地の持分について
贈与税が課税されます。

しかし、今回の事例では贈与税も課税されません
BはAから得た経済的利益によっても負債の全額を返済することが
できず、BとAは扶養義務の関係にあるからです
(相続税法9条但書、民法877条)

なお、この場合Bに対して贈与税は課税されませんが
所得税も課税されないと考えられます。

相続税法9条但書
『ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を
弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から
当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、
その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうち
その債務を弁済することが困難である部分の金額については、
この限りでない。』

民法877条
『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。』

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2012.07.01

判断が困難な交換特例の適用要件の確認

<事例>AさんとBさんは、Aさんが長期にわたり保有しているX土地500㎡
とBさんの保有しているY土地350㎡との交換を話し合っています

Aさんの土地は、バブル期以前から保有している土地ですがBさんの土地は
2年前に取得した土地です

AさんとBさんは、地目がいずれも宅地で時価もほぼ等価なので交換の特例
が適用できると考えています。

しかし、BさんがX土地を2年前に取得していて、そのことについて
「Bさんが交換のために取得したことではないこと」の立証が困難であると
考えています。

このような場合に、交換の特例は適用できるでしょうか。

<解説>
今回は、交換特例の適用要件のひとつである
「交換のために取得したものではないこと」という要件について確認します。

結論から申し上げますと、今回の事例で交換特例は問題なく適用できます。

交換特例を適用するに当たって、交換の対象となる資産について
双方ともに1年以上の所有期間で、交換目的で取得したものではないこと、
という条件を満たさなければなりません。

しかし、「交換目的で取得したものではないこと」という要件を
客観的に立証することは困難です。

そこで、昭和40年の改正時に「1年以上所有していること」という要件を
追加することによって、客観的に「交換目的で取得したものではないこと」
を判定することにしました。

交換の特例を適用するに当たっては、留意すべき事項が数多くありますので
税の専門家である税理士に是非相談してください。

固定資産の交換特例の概要については、国税庁の下記HPで
ご確認ください

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3502.htm

1 制度の概要
 個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、
譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。

2 特例を受けるための適用要件
(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
 不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、
  特例の対象になりません。

(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物
  のように互いに同じ種類の資産であること。この場合、借地権は土地の種類に含まれ、
  建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。

(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。

(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、
     かつ交換のために取得したものでないこと。

(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
 この用途については、次のように区分されます。

 交換譲渡資産の種類と区分

 土地⇒ 宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他
 建物⇒ 居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用

(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、
これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

また、交換の適用要件の(5)については所得税法基本通達58-6で以下のように
定められています

(取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供したかどうかの判定)
法第58条第1項に規定する資産を交換した場合において、取得資産を譲渡資産
の譲渡直前の用途と同一の用途に供したかどうかは、その資産の種類に応じ、
おおむね次に掲げる区分により判定する。
(平20課資3-4、課個2-33、課審6-18改正)

(1) 土地 宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他の区分

(2) 建物 居住の用、店舗又は事務所の用、工場の用、倉庫の用、その他の用の区分

(注) 店舗又は事務所と住宅とに供用されている家屋は、居住専用又は店舗専用若しくは
 事務所専用の家屋と認めて差し支えない。

(3) 機械及び装置 その機械及び装置の属する減価償却資産の耐用年数等に関する
 省令の一部を改正する省令(平成20年財務省令第32号)による改正前の
耐用年数省令別表第2に掲げる設備の種類の区分

(4) 船舶 漁船、運送船(貨物船、油そう船、薬品そう船、客船等をいう。)、
 作業船(しゅんせつ船及び砂利採取船を含む。)、その他の区分

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2012.06.23

【最新情報です、相続税改正案が削除されました!!! 】

来週早々には、消費税法改正法案が可決されるかもしれません
そこで、最新の改正法案を確認してみると、

驚いたことに、相続税改正法案が削除されていました。
昨年から、相続税法改正法案は浮上しては消えてましたが
今回も、見事に削除されています

基礎控除の引下げによって、相続税の増税という
改正法案が削除されていることは、下記URLの
民主党HPの

『消費税法等改正案修正案新旧対照表』でご確認ください

http://www.dpj.or.jp/article/101171/%E3%80%90%E8%A1%86%E9%99%A2%E7%
A4%BE%E4%BF%9D%E3%83%BB%E7%A8%8E%E4%B8%80%E4%BD%93%E6%94%B9%E9%9D%A9
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2012.06.16

土地売却時の宅地造成費用の取扱

<事例>
Aさんは、祖父の代から(60年前)所有し続けているX土地100㎡
を父親から相続により取得しました。
AさんはX土地を月極め駐車場として利用していました。

その後3年前になって、X土地の西隣のY土地100㎡を購入すること
ができたため、XYを併せて月極駐車場として駐車場経営を
行っていました。

この度、Aさんは自宅購入資金等が必要となったために
X土地とY土地を宅地として造成したうえで一括して売却する
ことに決めました。

土地の造成費用は1000万円でした。

そこで、譲渡所得を計算するに当たってXYの土地造成費用の
取扱について教えてください

<解説>
今回の事例を検討するに当たっては、所有期間の異なるXとYを
別々に検討する必要があります。

まず、所有期間が3年で短期譲渡所得に該当するY土地については
Y土地購入時に金額に今回の造成費用の1/2を取得費として加算する
ことに問題はありません。

問題となるのは、X土地です。
X土地の当初の取得費が契約書等で証明できる場合と、取得費が
不明の場合に分けて検討する必要があります。

1.X土地の当初の取得費が契約書等で判明する場合には、Y土地と
同じ考え方で譲渡所得を計算します。

つまり、X土地の当初の取得費に今回の造成費用の1/2を取得費に
加算することができます。

2.問題となるのは、X土地の当初取得費が判明しない場合です。

税法では、昭和27年以前から所有している土地で取得費が判明しない
場合には土地売却代金の収入金額の5%を取得費とする旨の定めが
あります

今回の場合X土地の売却代金の5%を取得費として計算することが
できます。

そこで問題となるのが、
・5%の取得費に今回の造成費用の1/2を加算することができるか?
・あるいは、造瀬費用の1/2を取得費に加算せずに譲渡時の費用とする
 ことができるか?

という二つの論点です。
結論から申し上げますと、2つともに×です。

そもそも5%の取得費には、その土地の取得及び改良に要した一切の
費用を含むと考えられますので、5%に今回の造成費を加算することは
できません。

また、造成費用は本来取得費の一部を構成する支出と考えられるので
譲渡時の費用(仲介手数料等)の一部と考えることはできません。

譲渡時に造成工事を行う場合には、譲渡所得の計算に留意する
必要があります。

参考:租税特別措置法第31条の4 
『個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は
建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額
から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、
当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。』

なお、上記5%の概算取得費に関する租税特別措置法第31条の4は、
昭和28年以降に取得した土地についても適用できます

参考:租税特別措置法通達31の4-1 
『措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き
所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、
昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、
同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。』

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2012.06.09

【譲渡所得質疑応答-2 居住用不動産を譲渡した場合の3000万円特別控除について】

<事例>
 マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から
最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
 これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。
この制度の詳細については、下記URLの国税庁HPの解説でご確認ください

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm

 この制度の適用は、マイホームの土地と建物の所有者が一人の場合には簡単に
判断できるのですが、マイホームの土地と建物の所有者が異なる場合の適用に
当たっては慎重な判断が必要となります。

 今回は、中小企業等(個人事業を含む)でよくあるパターンでこの制度の適用
について概略を説明いたします。たとえば、次のような事例です

 AとBは夫婦で、Cはその長男です。土地XはA・B・Cがそれぞれ1/3づつ所有して
います。 土地Xの上に建つ3階建ての建物は1階がAが営む事業の事務所として
利用しています。2階はAとBの居住スペースです。Bは専業主婦です。
3階は、長男Cの家族の居住スペースです。 
 この建物の所有権も土地と同様にA・B・Cそれぞれ1/3づつです。
また、AとBは生計が一ですが、AとCは生計が一ではありません。

 このような場合に、土地Xと建物を売却した際の譲渡益が土地Xについて
A,B,Cそれぞれ2000万円づつ、建物についてはA,B,Cそれぞれ200万円づつ
発生したとします。 この場合の3000万円特別控除は、どのように適用されますか。

<解説>
今回は複雑な事例なので結論から申し上げますと
妻Bは、2000万円+200万円
夫Aは、800万円
長男Cは、2000万円+200万円 となります。

長男Cについては、A,Bと生計が別であるため土地と建物の譲渡益全体の2200万円について
3000万円控除を適用できることになります

夫婦であるABについて若干問題となります。
まず、BはCと同様に土地と建物の譲渡益2200万円について3000万円控除を適用できます
しかし、特別控除が800万円控除不足となります。

この控除不足は、一定の条件を満たす場合に夫Aからも控除できます。
その条件が、租税特別措置法通達35-4で明記されていますので下記で引用いたします

『居住用家屋の所有者以外の者がその家屋の敷地の用に供されている土地等の全部又は
一部を有している場合において、その家屋の譲渡に係る長期譲渡所得の金額又は短期譲渡
所得の金額(以下この項において「長期譲渡所得の金額等」という。)が措置法第35条第1項
の3,000万円の特別控除額に満たないときは、その満たない金額は、次に掲げる要件の全てに
該当する場合に限り、その家屋の所有者以外の者が有するその土地等の譲渡に係る長期譲渡所得
の金額等の範囲内において、当該長期譲渡所得の金額等から控除できるものとする。

(1)その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。

(2)その家屋の所有者とその土地等の所有者とが親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。

(3)その土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住の用に供していること。

今回のABは、上記のすべての条件を満たしていますのでAからも800万円の控除を適用できます。
土地と建物の所有関係が複雑な居住用財産の譲渡に当たっては、ご注意ください

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2012.06.03

非上場株式を相続して会社に譲渡した場合のみなし配当課税について

【相続税質疑応答編-21 非上場株式を相続して会社に譲渡した場合のみなし配当課税について 】

<事例>
 今回は、国税庁HPより東京国税局での実際にあった相談事例を
紹介いたします。

詳細については下記URLより国税庁HPでご確認ください
http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/bunshokaito/joto-sanrin/120417/index.htm
今回はその概要を解説いたします

具体的な事案は、以下の通りです

『甲は、非上場会社であるA社の株式20,000株を所有していたところ、平成22年○月14日に
母が死亡し、母が所有していたA社株式40,000株のうち13,333株を相続により取得したため、
現在は33,333株を所有しています。
 甲は、その所有するA社株式のうち3,600株を、母の相続に係る相続税の申告書の提出期限
の翌日以後3年を経過する日までの間に、譲渡時の時価でA社へ譲渡する予定です。

 なお、母の相続に係る相続税の申告において、甲には納付すべき税額が生じています。
このように、甲が、その所有するA社株式のうち3,600株を譲渡した場合には、
本件譲渡予定株式の全てが母から相続により取得したものからなるものとして、
租税特別措置法第9条の7《相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合
のみなし配当課税の特例》第1項に規定する特例の適用があると解してよろしいかお伺いいたします。』

以上が国税庁で紹介されている実際の事案です

<解説>

今回の事案をさらに簡単に解説すると

まず上記の事案が仮に相続による取得ではない場合の課税関係を確認しておく必要があります。
上記3600株が相続により取得した株式ではない場合には、A社に売却した1株当たりの売買金額が
A社の1株当たりの資本金等を上回る金額には、みなし配当課税が適用されます。

配当金に対する課税と同じ扱いになりますので、甲さんのその他の給与所得等と合算されて
所得税が課税されます。 その場合甲さんの所得に応じて税率も高い税率が課税されますので
最高で40%の税率で課税されます

しかし、今回のように相続により取得した非上場株式を株式の発行会社であるA社へ売却するのは
多くの場合納税資金の資金調達の必要がある場合が多いと考えられます。

そのような場合にまで最高税率を課税するのは適切な課税ではないので
今回の事例のような場合、みなし配当課税の適用をせずに通常の譲渡所得として課税される
という特例があります。つまり最高で15%の所得税率となるので25%も税率が下がることになります。

≪根拠条文:租税特別措置法9-7≫

(詳細な解説は、下記の国税庁HPでご確認ください
   http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1477.htm)
 
ただし、この特例にも一つだけ問題があります。
今回の具体的事案でも問題になっていますがもともと20,000株所有してた甲さんが相続により
13,333株を取得して、その後3,600株を売却した場合に売却した3600株が、当初より甲さんが
所有してた20,000株からの売却からなのかあるいは相続により取得した13,333株からの売却なのか、
明らかではないために、特例の適用が可能かどうか判断できないという問題です。

そこで今回の東京国税局の回答では、甲さんの3600株の売却は相続により取得した
13,333株からの売却であるとみなして、特例の適用を認めるという判断でした。

その根拠は、措置法通達39-20です。

内容は以下の通りです。相続により取得した財産を譲渡する場合に、相続税の一部が
財産を譲渡する際の経費の一部として認められるという規定です。

その規定の中で今回のように、すでに所有している株式から譲渡したのか、相続により
新たに取得した株式から譲渡したのかが、明らかでない場合には相続により取得した株式から
優先的に譲渡したとみなす規定が明らかになっているからです。

そのため、みなし配当課税を適用しないというぞ脆特別措置法9-7についても
相続により取得した株式から優先的に譲渡したとみなされます。
 
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書込みをしていますのでご覧ください

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2012.05.27

【相続税質疑応答編-20 相続開始後に被相続人の配偶者が受領した被相続人の入院に係る給付金の課税関係 】

<事例>
 被相続人の配偶者が、被相続人に係る入院給付金(生命保険契約に基づく給付金)
を相続開始後に受取った。
 なお、配偶者は、当該保険契約における死亡保険金及び入院給付金の受取人と
なっていた。この場合、配偶者が受取った入院給付金に係る課税関係はどうなるか

<解説>
 配偶者が受取った入金給付金は、被相続人に係る相続税の課税対象とならない
また、配偶者の所得として所得税が課税されることもない(非課税となる)

この事例には、いくつかの論点があります。
まず、入院給付金の受取人が被相続人以外であれば相続税の課税対象となりません

【相続税法基本通達3-7】
「法第3条第1項第1号の生命保険契約又は損害保険契約の保険金は、
被保険者の死亡を保険事故として支払われるいわゆる死亡保険金に限られ、
被保険者の傷害疾病その他これらに類するもので死亡を伴わないものを保険事故
として支払われる保険金又は給付金は、当該被保険者の死亡後に支払われたもの
であっても、これに含まれないのであるから留意する。」

ただし、同じ基本通達3-7の注意書きでは以下のように定めている
『被保険者の傷害、疾病その他これらに類するもので死亡を伴わないものを
保険事故として被保険者に支払われる保険金又は給付金が、当該被保険者の
死亡後に支払われた場合には、当該被保険者たる被相続人の本来の相続財産
になるのであるから留意する。』

従って、相続税基本通達3-7注意書が根拠となって今回の事例の入院給付金は
相続税の課税対象となりません

次に、入院給付金が配偶者の所得税の課税対象とならないという
根拠は、所得税法基本通達9-20です

【所得税法基本通達9-20】
令第30条第1号の規定により非課税とされる「身体の傷害に基因して支払を受けるもの」は、
自己の身体の傷害に基因して支払を受けるものをいうのであるが、その支払を受ける者と
身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害
を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、
当該保険金又は給付金についても同号の規定の適用があるものとする

 
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2012.05.19

土地は代償分割と換価分割どっちが得?

<事例>
Aさんの相続人は、長男Bと長女Cです。Aさんの相続財産は
駐車場経営をしている土地Xだけでした。

この土地Xは、路線価評価8000万円(時価1億円)です

長男B長女CともにAさんの住む関西から遠く離れた街で生活を
してるため、土地Xを相続して駐車場経営を継続する予定は
全くありません。

そこで、BCが相談した結果以下のように遺産分割が成立しました。

土地XをBが相続し、売却代金1億円から長女Cの法定相続分である
5000万円(1億円の1/2)をCに対して支払う。

さて、この場合の課税関係について教えてください。
また、これ以外の方法で節税できる方法があれば教えてください

<解説>
 今回、BCが相談によって成立した遺産分割の方法を「代償分割」
といいます。

『代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人
又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の
共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合
に行われる方法です。』   <国税庁HPより>

今回のような代償分割の場合、Bが土地Xを単独で取得して売却する
ことになります。 さらに、BからCへ支払われる5000万円の代償金は
所得税の計算上取得費としても譲渡費用として扱われることはありません。

その結果、土地Xの売却から発生する所得税はBのみが負担することに
なりまります。最終的には長男Bは、土地売却に伴う所得税分だけ
Cよりも手取り金が少なくなってしまいます。

しかし今回のような事例で一般的には不動産の売却を予定している場合には、
「換価分割」という方法を選択したほうが節税できます

換価分割の場合以下のようなプロセスになります
1.不動産を遺産分割協議書に基づいて登記します
2.BCの共有名義で土地Xを売却します

『代償分割』と『換価分割』との違いは以下の2点です
1.土地X売却に伴う所得税をBCともに負担すること
2.相続税の取得費加算をBCともに適用できるので節税できる

相続により取得した不動産を分割するに当たっては充分にご注意ください

なお、今回の質疑応答事例に類似した論点として

【相続税質疑応答編-7 遺留分の減殺請求と相続税・譲渡所得税の関係 】
があります。下記URLで詳細に解説をしていますので
併せてご確認ください。

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/24659/

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2012.05.13

【譲渡所得質疑応答 オーナー社長が土地を自社に安く土地を譲渡した場合の課税】

<事例>
オーナー社長であるX氏は、自らが代表取締である甲社の経営基盤を強化するため
X氏所有の土地を、売却することにしました。

そこで甲氏は、できるだけ安く売却することを考えた結果
時価が5000万円の土地を2600万円で売却することに決めました。

この場合の課税関係について教えてください
なお、甲社の株主構成はX氏が60%・残りの40%の株主は配偶者と長男です。

<解説>
X氏名義の時価5000万円の土地を、2600万円で甲社に譲渡することについては
実際の売買金額である2600万円を基にした所得税が課税されます。

ここで、注意すべきポイントは個人から法人へ時価の1/2未満の対価で資産を譲渡した
場合には、時価で譲渡したとみなして所得税が課税されます。(所得税法59条)

つまり、今回の場合X氏がこの土地を甲社に対して2000万円(時価の40%)で
譲渡した場合は、5000万円で譲渡したとみまして所得税が課税されるということです。

次に、時価が5000万円の土地を2600万円で取得した場合の甲社の他の株主に対する
影響を検討すると、時価と実際の売買価額との差額が株価の上昇要因となります。

株価の立場からすると、X氏の配偶者と長男の所有する甲社株の株価の上昇分は
X氏から配偶者と長男へ贈与されたものとして扱われます。

根拠は、相続税法基本通達9-2です(参考のために以下で全文を紹介します)

(相続税法基本通達9-2)
同族会社の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したとき
においては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当
する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うも
のとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、
債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。

(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者

(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者

(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 
   当該債務の免除、引受け又は弁済をした者

(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 
   当該財産の譲渡をした者

ここで注意すべきポイントは、時価の50% 以上の売買価額であっても上記の相続税法
基本通達9-2に記載されている「著しく低い価額」に該当する場合があるということです。

さらに、冒頭で時価の50%以上の価額で売買すればみなし所得税は課税されないという
所得税法59条をご紹介しましたが、たとえ50%以上の価格による売買でも

X氏の所得税を不当に減少される行為であると税務署長から認定されると
時価による売買があったものとして、所得税の再計算を行わなければなりません。

(所得税法基本通達59-3)
山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産を
法人に対し時価の2分の1以上の対価で譲渡した場合には、法第59条第1項第2号の規定の
適用はないが、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、
その譲渡が法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定に該当する場合には、
同条の規定により、税務署長の認めるところによって、当該資産の時価に相当する
金額により山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することができる。

オーナー一族と同族会社との不動産取引には、様々な税務上の問題があります。
実際の取引に当たっては、事前に充分に検討する必要があります。

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2012.05.04

遺留分の減殺請求とその後の相続税の申告

<事例>
Aさんは妻を10年前に亡くし、相続人は長女B次女C長男Dの3人が
相続人となっている。
 BとCは、Aの近所に住んでいたこともあって妻亡き後のAの
日常生活を支えていた。一方でDは、就職もせずAの財産をあてに
生活を続けていた。
 そのため、Aは自宅及び預貯金のすべての財産をBCに半分づつ
相続させる旨の遺言書を作成していた。

 Aの死後、BCは遺言書に基づき不動産の名義変更を行いました。
預貯金については、解約及び名義変更に当たってDの実印も必要と
なることから、名義変更手続きは仕掛中です。 
 相続税の申告については、遺言書の内容に基づいてBC二人で
申告・納税ともに済ませました。

 そのことを知ったDは、遺留分の減殺請求の訴えを起こしました。
その結果Dは、「遺産総額の1/6に相当する金銭をBCから受取る」
という内容で和解しました。

 この場合、BC、Dの税務上の対応はどのようにすればいいでしょうか。

<解説>
 今回の事例は、実務では非常によくあるパターンですので
基本事項の確認も含めて解説をいたします

 まず、Dの合意なくBCが不動産の相続登記を行うことができるのか
という問題です。 

 これは過去の最高裁判例で「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」
趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人
死亡の時に直ちに当該遺産当該相続人に相続により承継される」
(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁参照)という考え方
が明示されています。

 従いまして不動産の相続登記自体に問題はありません。
しかしDは、遺留分(つまり法定相続割合の半分なので1/6)の主張を
当然に行うことができます。

 そこで、今回の和解のように遺留分相当額の金銭を支払うことで
BCvsDは、合意することになります。

 実務上の留意点としては、法的に有効な遺言書が存在しても
法定相続人全員の合意がなければ、金融機関は被相続人の口座の名義
変更は行ってくれません。 

 したがって、今回の事例の場合もBCがDの訴えに応じて和解しない限り、
A名義の預金口座は凍結されたままになってしまうという問題が発生します。

 さて、この場合の相続税上の対応ですが、当初は遺言書に基づいて
Aの全財産を半分づつ相続していたBCですが、Dの訴えにより
和解することにより、相続財産が1/12づつ減ることになりました。

 そこで、和解の翌日から4ヵ月以内に更正の請求(税金の還付手続)
をすることができます(相続税法32条3項)
 また、Dは相続による財産を取得したわけですから、相続税の申告
をすることができます

 ただし、BCDいずれも更正の請求や相続税の申告をすることが
できるという規定になっていますから、何もしなくても税務上
問題はありません。 

 しかし、実務上はBCが払い過ぎの相続税を還付する手続きを
するのが一般的です。 その場合、Dは相続税の申告納税を
しなければ、税務署から相続税額の決定をされてしまいます。

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2012.04.28

相続税精算課税が適用される受贈者が相続人ではなくなる場合

<事例>
Aさんは配偶者Bと長男C,長女Dが推定相続人でした。
長女Dの結婚後、Dの夫であるEとAは養子縁組をしました。

Aは、相続税対策として自らの財産を減らすため
相続時精算課税を利用してC,D,Eに均等に金融財産の贈与を
行いました(金額は2500万円以上)。

しかし、BはAの財産がCDEの3名に均等に贈与されると
長男CがAから贈与される財産よりも、DE夫婦がAから贈与される
財産の方が多くなることが納得できませんでした。
そもそもBは、DEの結婚も反対していました。

最近では、BはAE間の養子縁組を離縁するか、あるいは
Aの相続発生時にはEは相続放棄をするか、どちらかを
Eに要求するまでになりました。

さて、Bの要求に基づいて離縁するか相続放棄をする場合に
Eの課税関係はどうなるでしょうか。

<解説>
今回の事例は、相続税精算課税の適用時には推定相続人であった者が
実際の相続開始時には、相続人ではなくなった場合に相続税精算課税の適用が
どのような扱になるのか、という論点です

結論から申し上げますと、EはAさんと養子縁組を協議離縁しても
EがAさんの相続開始時に相続放棄しても、相続税精算課税を選択して
Aから贈与された金融財産(2500万円以上)については、Aの相続税計算時に
相続税の課税対象となります。

相続税精算課税制度を選択する場合、「相続時精算課税選択届出書」を
税務署に提出します。(相続税法21条の9第2項)

相続時精算課税を選択した者は、上記選択届出書を提出後に推定相続人
ではなくたったとしても、相続時精算課税制度が適用されて税額の計算を
行うことになります(相続税法21条の9第5項)

さらに相続時精算課税選択届出書は、一度提出するいかなる場合でも
撤回はできません(相続税法21条の9第6項)

このように一度選択すると後戻りできないのが、相続時精算課税制度です

一般的には、時価変動の影響を受けにくい預貯金の贈与に相続時精算課税制度を
利用する場合が多いようです。

短期的な贈与税の節税という視点だけで判断するのではなく、
財産の構成・相続税の節税対策・さらには2次相続の対策まで検討してから
相続時精算課税の選択を慎重に検討する必要があります。

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2012.04.22

【相続税質疑応答編-16 非上場企業株式の生前贈与と遺留分の関係 】

<事例>
株式会社Xの代表取締役甲には、長男乙と長女丙の二人が
法定相続人となる予定です(甲の妻は既に亡くなっています)

甲は、株式会社Xの代表取締役であり100%株主です。X社は
設立以来業績が順調に右肩上がりで、株価も上昇傾向にあります。

長男乙は、既に後継者として役員に就任していますが
長女丙は、会社経営にまったく関与していません。

甲の財産のほとんどは、株式会社X社の株式です

さて、甲は乙への事業承継と自らの相続税対策を検討するに
当たって、ひとまず株式会社Xの株式を乙に贈与することにしました。

X社株式を乙に贈与するのは、まだまだ株価が上昇する
見込みのあるX社株については、相続時精算課税で次期後継者に
贈与したほうが、乙の税負担が少ないと判断したからです。

しかし、自らの財産のほとんどがX社株式である甲は
X社株式を乙に贈与することによって、丙に遺してあげる
財産がほとんどないことが心配です。

甲が、留意すべき点を教えてください。

<解説>
まず、今後も株価が上昇する見込みのX株を相続時精算課税で
後継者乙に贈与する案は、税法上は問題ありません。

相続時精算課税は、贈与財産であるX社株の評価額が贈与時の
評価額で確定します。そのためX社の株価が、実際に甲の相続が発生
した時点で贈与時の株価よりも上昇している場合、相続税の節税対策
として有効な手段となります。

しかし、今回の事例では民法上は検討すべき課題があります。

甲の相続財産のほとんどがX社株となっているためX社株を乙に
贈与した場合、長女丙が遺留分の減殺請求を主張する
リスクがあるので留意する必要があります。

遺留分の減殺請求については、民法では以下のように
定められているようです

遺留分減殺請求の対象となる財産は、贈与については相続開始の1年前に
したもののみが算入されます。 ただし、当事者双方が遺留分権利者に
損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にした
ものについても、遺留分減殺請求の対象財産に算入します
(民法1030条)

また、特別受益に該当する財産は贈与の時点を問わず遺留分の
減殺請求の対象となる、という最高裁判例もあるようです

これらの民法の規定を考慮して、事業承継と相続税対策を同時に
実現させるためには、長女丙に遺留分の放棄を適法にしてもらう
必要があります。

(*特別受益・遺留分の放棄等については弁護士先生にご確認ください)

なお、平成20年10月から施行されている中小企業経営承継円滑化法では
後継者への株式の贈与等について、民法の遺留分の規定を緩和する
特別な措置が定められています。

ただし、適用に当たっては厳格な要件を満たす必要がありますので
事前に慎重に検討する必要があります。

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2012.04.15

【相続税質疑応答編-15 遺産分割協議が成立しない場合の銀行預金の払戻し】

<事例>
被相続人Aの法定相続人は、配偶者Bと長男C・次男Dです。
相続財産は、預金2億円のみです。遺産分割協議は当初からもめていて
申告期限までに遺産分割協議が成立する見込みがありません

配偶者であるBは、当初遺産分割協議が円満に成立し「配偶者の税額の軽減」
(相法19の2)を適用し相続税額は0円になると考えていました。

(配偶者の税額の軽減は以下のURLでご確認ください)
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4158.htm

遺産分割協議が成立しない場合、Bは相続税の納税資金が足りません。
配偶者Bさんは、どのような対応をするべきでしょうか。

<回答>
配偶者Bは、遺産分割協議が成立しない場合でも被相続人Aの銀行預金を
払戻ししたうえで、配偶者の税額の軽減を適用し相続税額を0円にすることが
できる場合があります

今回のように、遺産分割が成立しない場合すべての相続財産は相続人の共有財産
となります(民法898条)

しかし、金銭債権などの可分債権がある場合、その債権は、法律上当然に分割
されて各相続人がその相続分に応じて権利を承継するという最高裁判決があります
(最高裁昭和29年4月8日)

一般的に銀行の実務では、相続人全員の合意が成立している遺産分割協議書の
提出が無い場合、預金の払戻しには応じていないようです

しかし、今回の事例のように遺産分割協議が成立していない場合でも法定相続分の
相当する預金の払戻しを求めて訴訟を起こす場合があります。

その場合、上記最高裁判決に基づいて預金の払戻しが実現する場合もあるようです。

さらに、自己の法定相続分の払戻しを求めた訴訟に勝訴して1億円の払戻しを
配偶者Bが受けた場合は、「配偶者の税額の軽減」を適用することができると
考えられています。

いずれにしても遺産分割協議が申告期限までに成立する見込みがない場合には
納税資金の準備のために、できるだけ早く対策を検討する必要があります。

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2012.04.07

【相続税質疑応答編-14 平成24年度税制改正は、いつ決まるの?】

消費税の増税法案が、まだ成立していないのは連日の報道で
多くの方がご存知のことと思いますが

相続税・贈与税関連の税制改正は、いったいどうなってるの?
というお問い合わせが多くあります

そこで、現在(4月7日)までに成立している相続・贈与関連の
税制改正をご案内いたします

最新の情報をリアルタイムで詳細に知ることができるのは
財務省の「第180回国会における財務省関連法律」というHPです

http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/180diet/index.htm

その中で、消費税・相続税・所得税などの改正はどれも
成立していないことがわかります。

現時点で成立しているのは、租税特別措置法の改正だけです
その中で、相続税・贈与税に関連する内容の主な項目は
以下の通りです

「租税特別措置法等の一部を改正する法律案要綱」本文より抜粋

(1) 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置につ
いて、非課税限度額(現行 1,000 万円)を次のとおり拡充した上、その適用
期限を3年延長することとする。(租税特別措置法第 70 条の2関係)

  住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用の家屋が省エネルギー性・耐
震性を備えた良質な住宅用の家屋である場合
イ  平成 24 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者  1,500 万円
ロ  平成 25 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者  1,200 万円
ハ  平成 26 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者  1,000 万円

  住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用の家屋が上記の住宅用の家屋
以外の住宅用の家屋である場合
イ  平成 24 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者  1,000 万円
ロ  平成 25 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者    700 万円
ハ  平成 26 年中に住宅取得等資金の贈与を受けた特定受贈者    500 万円

(注)上記の改正は、平成24年1月1日以後に贈与により取得をする住宅取得
等資金に係る贈与税について適用する。(附則第41条関係)

(2)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の
特例について、その適用期限を3年延長することとする。(租税特別措置法第
70条の3関係)

以上より、「住宅取得資金の贈与制度の拡充と延長」と「住宅取得資金の
相続時精算課税制度の延長」については、3月末までに成立しています

相続税の基礎控除引下げ等はまだ、成立していません。

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2012.03.30

特別受益者がいて未分割の場合の申告は?

<事例>
Aさんは、配偶者が既に亡くなっていたので法定相続人は長男B,次男C,
三男Dが法定相続人でした。

この度、Aさんが亡くなったので3兄弟で遺産分割の話し合いを始めましたが
その際に、長男Bさんが父親Aさんの相続開始の8年前に5000万円の現金贈与を
受けていたことが明らかになりました。

この5000万円は、Bさんの生計の資本としてAさんから贈与されたものであり
Bさんは、申告期限までに贈与税の申告書を提出して贈与税の納税も済ませて
いました。

当初、Aさんの相続財産は1億3000万円と思われていて円満な遺産分割と
なるはずでしたが、特別受益が明らかになったことによって
遺産分割の話し合いが、長引く結果となってしまいました。

特別受益がある場合で、遺産分割協議が申告期限までに間に合わない場合の
相続税の申告について教えてください。

なお、父親Aさんの債務は6000万円であったとします。

<回答>
相続税の申告期限になっても未分割の場合、一旦法定相続割合で
分割して相続税の申告書を提出しなければなりません。

今回、長男Bが特別受益5000万円を受贈しているため法定相続割合の
分割の方法が問題となっていますが、結論は以下の通りです

父親Aさんの遺産総額は1億3000万円と当初は考えられていましたが
特別受益5000万円が明らかになったことによって、これらの総額
1億8000万円を遺産総額とみなします。

次に、1億8000万円を3兄弟の法定相続割合で分割しますと
各人が6000万円となります。しかし、長男Bの6000万円には
特別受益5000万円が含まれていますので、今回の相続で長男Bが取得する
財産は、1000万円となります。

つまり、未分割の相続税の申告書上では各人の取得財産は
B=1000万円,C=6000万円,D=6000万円となります。
(根拠条文:民法903条)

次に、債務控除ですが未分割の申告ですので債務もB,C,Dの各人が
3000万円づつとなります。

しかし、Bの特別受益分5000万円には債務控除の適用がないため
Bは、取得財産1000万円に対して3000万円の債務控除となり
2000万円の控除不足が発生します。

この場合、2000万円の控除不足をC,Dからそれぞれ1000万円づつ
控除することによって、債務の全額に対して債務控除を適用する
ことが可能となります。
(根拠条文:相続税基本通達13-3:本文及び但書)

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2012.03.24

【相続税質疑応答編-12 保証債務も債務控除できる場合があります。】

前回の、連帯債務に続き今回も債務控除の話題です。
今回は、保証債務の債務控除です。

保証債務は、一般的には債務控除の対象になりません。
債務控除の要件として、『確実と認められる』債務でなければならない
からです。

(根拠条文:相続税法第14条)『前条の規定によりその金額を控除すべき
債務は、確実と認められるものに限る。』

しかし、例外的に保証債務でも債務控除の対象になる場合があります。

(根拠条文:相続税基本通達14-3(1)但書『ただし、主たる債務者が
弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければ
ならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みが
ない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証
債務者の債務として控除すること。』

では、上記要件に該当するような事例としてはどのような
場合が該当するでしょうか

例えば、

被相続人甲氏は同族会社乙(株)の代表取締役社長で
乙(株)の銀行借入の連帯保証人になっています。

乙(株)は、数年前から業績が急速に悪化し銀行借入のここ数年
返済が滞っています。本業の業績不振で、債務超過の状態が
数年続いています。 乙(株)は、現在では実質的には休眠状態と
なっており、乙(株)が資金調達を行い銀行借入金を返済できる
見込みはないと考えられます。

このような、状態であれば被相続人の甲氏について
乙(株)の保証債務を債務控除できると考えられます

仮に、乙(株)の連帯保証人が複数人いる場合には
連帯保証人間で特に定めていない場合には、
債務控除できる金額は、連帯保証人の人数で均等に
割った金額となります

(民法第427条)
『数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示
がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で
権利を有し、又は義務を負う。』

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2012.03.17

【相続税質疑応答編-11 銀行借入の連帯保証がある場合相続財産から控除できる債務の割合は? 】

【相続税質疑応答編-11 銀行借入の連帯保証がある場合相続財産から控除できる債務の割合は? 】

<事例>
Aさんは、個人事業を営んでいます。
この度、事業用の設備投資のため銀行から借入をすることになりました。

しかし、融資の条件として連帯保証人が必要とのことでした。そこで
Aさんは、国家公務員である長男Bに連帯保証人を依頼しました

Bは、Aさんの事業を継ぐつもりは全くありませんが
親子であること、返済リスクの高い融資ではないことを考え
連帯保証を快諾しました。

それを受けて、Aさんは銀行から5000万円の融資を実行したがその直後
不慮の事故により無くなりました。

Aさんの相続税申告を行うに当たって
Aさんの相続財産から控除できる債務の金額は、いくらですか?

ただし、事例を単純化するため
Aさんの相続人はBのみとします。また相続財産は1億円とします

<解説>

連帯債務の場合に、相続財産から控除できる債務の金額については
銀行との金銭消費貸借契約書のどこにも記載がありません

連帯債務である以上、銀行から5000万円の返済を要求された場合
Aさん・Bさんどちらに拒むことはできません

しかし、AさんとBさんが当事者間で負担割合を明確に取り決めることは
可能です。

例えば、今回のような場合親子ですから父親であるAさんが100%負担する
という親子間の取り決めるすることも可能です。

その場合には、債務控除できる金額は5000万円全額となります

しかし、一般的にはAさんとBさんの間にそのような取り決めが無い場合が
多いと考えれらえます。

その場合には、債務の負担割合は平等となりますので
債務控除できる金額は、2500万円となります

根拠条文民法427条
『数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、
各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。』

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2012.03.11

【相続税質疑応答編-11 会社経営者が会社に対する債権を放棄した時に相続税は課税されますか? 】

<事例>

Aさんは、自らが代表取締役を務める株式会社Xに対して
1億円の貸付債権があります。(株式会社Xでは、役員借入金に計上
されています。)

Aさんは、昨今の不景気を考えると会社の業績が回復することは
困難であると考え、また長男Bが株式会社Xの代表取締役を
継いでくれることから、貸付金1億円の債権放棄を検討していました

そこで、Aさんは株式会社Xへの貸付債権1億円を放棄する旨の
公正証書遺言を作成しました。

株式会社Xには、繰越欠損金が5000万円しかありません。

さて、この場合の課税関係を教えてください
(株式会社Xは、株主全員がAさんの法定相続人とします)

<解説>

業績が悪化した場合、代表取締役が法人に資金を貸付することは
よくあることです。また、その貸付金の回収がほぼ不可能であるにも
かかわらず、残高だけは多額に膨らんでいるケースも少なからずあります。

さて、Aさんは1億円の債権放棄する旨の公正証書遺言を作成しました。
相続は、個人にしか財産の承継ができませんが遺贈であれば法人への
財産の承継も可能です。

ただし、法人の場合は相続税ではなく法人税が課税されることになります
今回の場合、Aさんの債権放棄により株式会社Xには1億円の
債務免除益が計上されます。

一方で、繰越欠損金が5000万円計上されていますので
実質的には1億円-5000万円=5000万円が法人税の課税対象となります

つまり、Aさんの配慮で行った債権放棄によって株式会社Xには
多額の法人税の納税負担を強いる結果となってしまいます。

さらに、1億円の債務免除益が計上されることによって株式会社Xの
株価の増加があり得ます。

その場合、みなし遺贈として他の株主に対して相続税が課税されます
今回の場合、Aさんの法定相続人全員が株式会社Xの株主となっていますので
法定相続人全員に、みなし遺贈が発生します

【相続税基本通達9-2】

 同族会社の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して
増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額
のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与
によって取得したものとして取り扱うものとする。

 この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供が
あった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時による
ものとする。

(1)会社に対し無償で財産の提供があった場合 
  当該財産を提供した者

(2)時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 
  当該現物出資をした者

(3)対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 
  当該債務の免除、引受け又は弁済をした者

(4)会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 
  当該財産の譲渡をした者

以上より、Aさんの公正証書遺言によって、法人も法定相続人も
すべて課税される結果となってしまいます。会社経営者が債権放棄する
場合は、課税関係も充分に考慮したうえで行ってください

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2012.03.04

【相続税質疑応答編-10 不動産を死因贈与する場合の留意事項を教えてください】

【相続税質疑応答編-10 不動産を死因贈与する場合の留意事項を教えてください】

<事例>
Aさんは、不動産賃貸業を営んでいます。将来を考えて孫にもAさん名義の
不動産を死因贈与することにしました。さて、この場合Aさんが留意すべき
項目を教えてください

<解説>
死因贈与は、Aさんが死亡することによって効力が発生する贈与です。
民法の考え方では「贈与」ですが、税金の計算上は相続税の課税対象となり
贈与税の課税対象とはなりません。

相続税の考え方としては、死因贈与を遺贈(遺言書により相続財産を取得)と
同様と考えて贈与税ではなく相続税の課税対象としています。

死因贈与も遺贈もAさんが死亡すれば、孫がAさん名義の不動産を取得する
という点で同じです。

しかし、以下の点でAさんは留意しなければなりません。

遺贈の場合、Aさんが遺贈内容について生前に孫たちに説明する
必要はありません。

死因贈与の場合、Aさんは生前に孫たちと贈与内容について合意して
おかなければなりません。

つまり、贈与なので孫たちが贈与内容について知らない場合
死因贈与が有効に成立しなくなります。

そのため、Aさんと孫たちが生前に贈与の内容について合意したこと
を客観的に証明しなければなりません。

具体的な方法としては、
・公正証書で死因贈与契約書を作成しておく
・死因贈与の対象となる不動産射、死因贈与の仮登記をしておく

上記の方法を実施し、Aさんの相続税申告時に死因贈与契約が有効に
成立していたことを明らかにする必要があります

では、死因贈与契約が有効に成立していたことを明らかにできない
場合の課税関係はどうなるのでしょうか。

孫たちは、Aさんの法定相続人ではありませんので遺言書が無い場合
Aさんの財産を一切相続できません。

そのため、Aさんが孫たちに死因贈与する予定であった不動産は
一旦Aさんの法定相続人が相続した後で、法定相続人から孫へ
贈与されることになります。

つまり、死因贈与契約が有効に成立していることを明らかにできない
場合、相続税の次に贈与税まで課税されることになってしまいます。

死因贈与契約を検討中の方は、くれぐれもご注意ください亜。

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2012.02.26

【相続税質疑応答編-9 死亡退職金の支給対象者が未定の場合の課税関係は?】

【相続税質疑応答編-9 死亡退職金の支給対象者が未定の場合の課税関係は?】

<事例>
株式会社甲の取締役Xがプライベートの旅行中の事故でこの度亡くなりました。
甲社は、退職金規定に基づいて、死亡退職金5000万円と死亡弔慰金1000万円
の支給を決定しました。

株式会社甲の退職金規定では、退職金の支給対象者を定めていないので
通常は、「ご遺族ご一同様」を対象に支給されます。

この場合の、課税関係はどうなりますか?
なお、取締役甲の月額役員給与は100万円で、甲の法定相続人は
配偶者Yと長男Zの3名です。

<解説>
今回の事例には、論点が2つあります。
1.退職金と弔慰金を支給された場合の相続税法の取扱
2.支給対象者が未定の場合の取扱

では、1つの論点から説明します。
死亡弔慰金については、相続税法基本通達3-20で以下のとおり定めています

(相続税基本通達3-20 一部省略)
『被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける弔慰金等」については、、
次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額として取り扱い、当該金額を超える
部分の金額があるときは、その超える部分に相当する金額は退職手当金等に
該当するものとして取り扱うものとする。

1.被相続人の死亡が業務上の死亡であるときは、その雇用主等から
受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の
普通給与の3年分に相当する金額

2.被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、その雇用主等から
受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の
普通給与の半年分に相当する金額』

今回の事例では、事故死なので上記2に該当します。その場合
会社の支給する弔慰金1000万円のうち600万円を上回る400万円が
死亡退職金として取り扱われます。その結果、相続税の対象となる
死亡退職金は、本来の退職金5000万円に400万円を加算して5400万円と
なります。

次に、論点2の説明をします。
会社の退職金規定に死亡退職金の支給対象者が明示されていない場合について
相続税基本通達3-25に、退職金の支給を受けたものを定めています

(相続税基本通達3-25 一部省略)

『被相続人に支給されるべきであった退職手当金等の支給を受けた者とは、
次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる者をいうものとする。

1.退職給与規程等の定めによりその支給を受ける者が具体的に
定められている場合当該退職給与規程等により支給を受けることとなる者

2.退職給与規程等により支給を受ける者が具体的に定められていない場合
又は当該被相続人が退職給与規程等の適用を受けない者である場合

イ 相続税の申告書を提出する時又は更正若しくは決定をする時までに
当該被相続人に係る退職手当金等を現実に取得した者があるときは、その取得した者

ロ 相続人全員の協議により当該被相続人に係る退職手当金等の支給を受ける者
を定めたときは、その定められた者

ハ イ及びロ以外のとき その被相続人に係る相続人の全員。この場合には、
各相続人は、当該被相続人に係る退職手当金等を各人均等に取得したものとして
取り扱うものとする。』

上記の定めに基づくと、今回の事例では2-ハに該当します。
そのため、X取締役の妻Yと長男Zは5,400万円の死亡退職金を
2700万円づつ受取ったとして相続税の計算を行うことになります。

ただし、死亡退職金については法定相続人1人につき500万円の非課税金額が
定められていますので、Y・Zともに2200万円づつが相続税の課税
対象金額となります。

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2012.02.20

【相続税質疑応答編-8 死亡退職金は相続税が課税されますか? 】

<事例>
Aさんは、株式会社Xの代表取締役であると同時に株式会社Yの
取締役会長でしたが、平成20年1月に死亡しました。

X社、Y社ともに諸般の事情により死亡退職金の金額がなかなか
決定できませんでした。

そのためAさんの相続人である妻Bさんは、死亡退職金については
相続税申告書に一切記載しませんでした。

その後、平成22年6月(Aさんの死後2年6ヶ月経過)にX社の
取締役会で、Aさんの死亡退職金1000万円を配偶者であるBさんに
支給することが決定しました。 

また、平成23年6月(Aさんの死後3年6ヶ月経過)にY社の
取締役会で、Aさんの死亡退職金500万円を同じくBさんに支給する
ことが決定しました。

さて、X社とY社から支給される死亡退職金に対する課税は
どのように扱われるでしょうか。

Aさんの相続人は、配偶者のBさんだけでした。
 
<解説>

X社の死亡退職金は、相続税の課税対象となります
Y社の死亡退職金は、Bさんの所得税の課税対象となります

相続税法では、死後3年以内に支給が確定した退職金等を
相続税の課税対象財産として定めています(相続税法3条1項2号)

今回の事例では、X社の死亡退職金が該当します。

ここで、注意すべきポイントがあります。
相続税法3条1項2号で定める死亡退職金には、生前に退職しその後
退職金の金額が、死亡後3年以内に確定した場合も含まれるという
点です。

(相続税法基本通達3-31)
『被相続人の生前退職による退職手当金等であっても、その支給
されるべき額が、被相続人の死亡前に確定しなかったもので、
被相続人の死亡後3年以内に確定したものについては、
法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等に該当する』

以上より、X社の死亡退職金が確定したことによってBさんは
相続税の修正申告をしなければなりません。

ただし、このような事例の場合修正申告書について「正当な
理由があると認められる」ため、過少申告加算税は課税されません。

次に、Y社の死亡退職金ですがAさんの死後3年以上経過していますので
相続税の課税対象には該当せず、配偶者であるBさんの所得税の
課税対象(一時所得)になります。

そのため、Bさんは平成23年度の所得税確定申告でY社から受取る
Aさんの死亡退職金500万円を一時所得で申告しなければなりません。

(所得税基本通達34-2)
『死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後
に支給期の到来するもののうち9-17により課税しないものとされるもの
以外のものに係る所得は、その支払を受ける遺族の一時所得に該当する』

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2012.02.05

【所得税確定申告編-6 土地と建物の名義が異なる場合の譲渡所得の節税方法】

今回は、あまり多くないですが該当した場合にうまくすると所得税が
大幅に節税できる事例をご紹介します。

<事例>
父親Xは、地主さんAから借りている土地に家を建てて生活をしていました。
また、父親Xは長男Yとこの家で同居し生計を一にしてました。
その後、長男Yは地主Aさんから父親の借地権の底地を買取りました。
と、同時に父親Xは長男Yに地代の支払いをしなくなりました。

<質問>
このような場合に、税務上で留意すべき点があったら教えてください

<回答>
今回の場合、所轄税務署に「借地権の地位に変更が無い旨の申出書」
を提出しておかなければなりません。

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/38.htm

上記書類を直ちに提出しておかなければ、父親Xから長男Yに借地権が贈与
されたと扱われます。

さらに、上記のような場合に父親Xと長男Yが生活している土地建物を
売却した場合の売却益については、居住用財産を譲渡した場合の3000万円の
特別控除を最大で2人分利用することができます。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm

具体的に申しあげますと、土地建物を売却することによって
Xは2500万円の、Yは1000万円の売却益があったとします。

その場合、
1.家屋とともに、その土地(借地権)の譲渡があったこと
2.家屋の所有者と、土地等の所有者が親族関係を有し、かつ、
  生計を一にしていること
3.その土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を
  居住の用に供していること

この3項目の条件をすべて満たす場合、父親Xの譲渡所得から3000万円を
控除し、控除しきれなかった500万円を長男Yの譲渡所得1000万円から
控除することができます。

不動産の譲渡所得は、複雑な税制が絡み合いますので
充分にご注意ください。

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2012.01.28

【所得税確定申告編-5 住宅ローン控除制度の適用に当たっての留意事項を国税庁が発表しました】

確定申告のシーズンが迫ってまいりました。
皆さん、準備は整ってますでしょうか。

さて、住宅ローン控除の適用に当たっては
初年度だけ確定申告を実施しなければなりません。

住宅ローン控除も、単なる新築住宅のローンだけではなく
耐震工事、リフォームなど適用できる場面が複数あります

そのため、実際に制度の適用に当たっては
複雑な制度を正しく理解しておく必要があります

そこで、国税庁が実際に各制度の内容と
留意事項をHPで解説してくれていますので
是非、ご確認ください。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/111227_2/index.htm

また、以下の18の項目についてQ&A形式で解説もあります。

1 補助金等
2 定住奨励金
3 経済的利益の付与
4 利子補給金の取扱い
5 これらに準ずるもの
6 被災者生活再建支援金
7 補助金等の見込控除
8 住宅の取得等の対価の額等から控除する方法
9(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の増改築等における金額要件の判定
10 金額要件の判定と増改築等住宅借入金等の金額の関係
11 住宅取得等資金の控除
12 適用関係
13 計算明細書
14 家屋の取得対価等の額が記載されている年末残高等証明書
15 添付書類
16 交付を受ける補助金等の課税関係
17 住宅耐震改修特別控除の改正の概要
18 標準的な費用の額

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2012.01.26

【所得税確定申告編-4 譲渡所得の3000万円控除をうまく使う方法!】

ご自宅を売却して利益が発生した場合に、3000万円控除の制度を
活用すると、所得税が課税されないという節税の制度は、既にご案内
させていただきましたが、

今回は、その3000万円控除制度をうまく活用する方法を
ご案内いたします。

まず、3000万円控除の制度の概要の説明につきましては
下記URLで、ご確認ください

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/24372/

さて、次に今回の事例ですが

<事例>
たとえば、建物の名義は夫であるXさん100%で土地の名義は
夫であるXさんと、妻であるYさんが50%づつであった場合。
当然、夫婦なので生計は一です。

この夫婦が、将来の老老介護の準備として山の手の高級住宅街の
一戸建てを1億円で売却して、駅前の高級マンション
に引っ越ししました。

<回答>
まずはじめに事例解説に当たって、土地建物の具体的な価格設定は
話が細かくなりすぎますので、土地建物の合算価格で説明をいたします。
このメルマガでは、あくまでも節税対策のイメージをお伝えする
ことが目的ですので。

この場合、一戸建てのもともとの購入価格を5000万円とします。
売却価格が1億円であれば、土地の所有権が50%づつなので
利益も50%づつとなります。

つまりXさんとYさんともに2500万円づつの土地譲渡益が
発生しますが、Xさんには3000万円控除が適用できますが
Yさんには、3000万円控除の適用ができません。

なぜなら、この3000万円控除は居住用家屋と土地の所有者が
一致していることが基本的な適用要件だからです。

そのため、このような場合には居住用不動産の夫婦間贈与を活用して
事前に建物の名義の一部を妻Yさんに贈与しておきます。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4452.htm

そうすると、XさんだけでなくYさんも譲渡益2500万円に対して
3000万円控除が適用できます。

その結果、5000万円の譲渡益全体が非課税になるという仕組みです。

具体的な適用に当たっては、税金の専門家である
税理士に相談してください。

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2012.01.09

【相続税質疑応答編-7 遺留分の減殺請求と相続税・譲渡所得税の関係を教えてください 】

<事例>

 父親が、全財産を次男に遺贈する旨の公正証書遺言を作成
していました。次男は、公正証書遺言に基づき相続税の申告
を行ない納税も済ませていました。
 ところが、長男は父親の相続開始直後から法的手続きに基
づいて遺留分の減殺請求を行っていました。

 7年の年月が経過し、この度やっと兄弟間で話し合いがまと
まりました。その内容は以下の通りです。

『長男は、次男から価格弁償としてX土地を取得する。』

さて、この場合以下の課税関係について教えてください。

1.相続開始から7年経過して、相続財産を取得した長男は
 相続税の申告義務はありますか?

2.次男は、価格弁償のためにX土地を長男に譲渡しますが
 この場合、次男に所得税は課税されますか?

3.長男は、X土地を取得後しばらくしてから売却を考えています。
 この場合、長男の譲渡所得の課税関係は?

<解説>
今回の事例は、遺留分に関連して遺産分割を検討する際に、最終的な
手取り金額に大きく影響しますので内容を正確に理解しておく必要があります。

1.長男の相続税の申告義務についてですが、遺留分の減殺請求中
であったとはいえ、本来の申告および納付期限の延長はありません。

しかし、遺留分の減殺請求に基づき新たに財産を取得した場合の
期限後申告については、無申告加算税は課税されません。
また、申告後直ちに納税すれば延滞税も課税されません。

更に、今回の事例の長男の場合、相続税の申告期限から5年を経過して
いますので、相続税の申告書を提出する必要もありません。
(国税通則法70条3項)

2.大前提として遺留分の減殺請求より取得した財産でも
「返還された財産」と「価格弁償により取得した財産」では
性質が異なるという点です。

遺留分権利者が減殺請求に基づき受遺者等から返還を受けた財産は、
遺留分権利者が被相続人から相続により取得した財産と解する
ことができます。

一方で、遺留分権利者が減殺請求に基づき受遺者等から価格弁償
により取得した財産は、民法上の相続により取得した財産には
該当しませんが、相続税の課税対象財産になります。

これらの法的背景による違いのため、受遺者等の課税関係に
違いがあります。

つまり、
次男が土地Xを相続財産の返還に応じる場合には
次男に譲渡所得は課税されませんが、

次男が土地Xで価格弁償に応じる場合には、次男に譲渡所得が
課税されます。

(根拠条文:所得税法基本通達33-1の5『(現物による遺産の分割に代え
共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させる
方法により行う遺産の分割をいう。以下同じ。)により負担した債務が
資産の移転を要するものである場合において、その履行として当該資産
の移転があったときは、その履行をした者は、その履行をした時において
その時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。』

3.長男が価格弁償により取得したX土地は、相続税の課税対象と
されますが、民法の「相続」により取得した財産ではありません。
しがたって、長男が直ちに売却すると短期譲渡所得になります。

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http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2012.01.01

【社会保障と税の一体改革素案が公表されました。】

新年あけましておめでとうございます。
今年もこのメルマガで、税に関する最新情報を皆様にお届けできるよう
頑張ります。

さて、新年最初のコンテンツは2011年12月30日に税制調査会のHPで
公表された、「社会保障と税の一体改革素案」です。

新年早々細かな内容を読む気にならないと思いますので
関心のある方のみ、下記URLから原文をご確認ください

http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/12/30/23zen30kai2.pdf

簡単に申し上げますと、2015年に政府が実現させたいのは

1.消費税の増税
2.納税者番号制度の導入
3.給付付き税額控除の導入

この1.2.3を三位一体で導入したいのです。
それによって社会保障の不足を税によって補うというのが趣旨なのですが

納税者番号制度について、十分に国民の理解を得ているでしょうか?
給付付き税額控除制度については、国民にはまったく説明すらない状況です。

すでに給付付き税額制度を導入しているアメリカでは、給付金受給のための
確定申告の30%が不正申告という状況です。
我が国においても、給付付き税額控除の制度設計については綿密な制度設計を
しなければ、今まで以上に不公平税制となることは明からです

我が国政府は、どこを目指しているんでしょうか???

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http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2011.12.22

【相続税質疑応答編-6 遺産分割が成立していない場合に、死亡退職金に対する相続税の課税は? 】

被相続人Aさんは、株式会社Xの取締役でした。この度急病により
亡くなりました。Aさんの法定相続人は、配偶者のBさんと長男C長女Dです。

 株式会社Xは、役員退職金規定に基づき死亡退職金9000万円を、配偶者である
Bさんに支給することを決定しました。Bさんへの死亡退職金の支給も
申告期限までに間に合いそうです。

 しかし、他の相続財産(4億円)の遺産分割協議が相続税の申告期限までに
間に合う目途が立ちそうにありません。この場合、Aさんの死亡退職金のに
対する相続税の課税は、どのような扱いになるのでしょうか?

<解説>
 そもそも、生命保険金や退職金等は、民法上の相続財産とは考えられて
いません。しかし、相続税の計算上は生命保険金や退職金等を相続によって
所得したとみなされる財産です。このような財産を「みなし相続財産」といいます。

 「みなし相続財産」は、他の相続財産の遺産分割が成立していなくても
本来の受取人(受給者)固有の財産と考えられます。 
 
 つまり、今回の事例の場合も4億円のAさんの遺産について、遺産分割は
成立していませんが、死亡退職金9000万円は、配偶者であるBさん固有の財産で
あることから、死亡退職金9000万円について未分割と考える必要はありません。
(根拠条文:相続税法基本通達55-2)

 死亡退職金につきましては、500万円×法定相続人の数だけ非課税限度額が
設けられています。今回の事例では、500万円×3=1500万円が非課税となりますので
9000万円-1500万円=7500万円が、相続税の課税対象財産となります。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4117.htm

 従いまして、未分割財産4億円のうち配偶者であるBさんは法定相続分
2億円を取得したものとし、さらにみなし相続財産である死亡退職金
のうち7500万円を加算して相続税の申告をすることになります。

 なお、今回の事例では死亡退職金の受給者が申告期限までに決定し
支給されましたが、仮に死亡退職金の受給者を法人側で決定せず
相続人側でも決定しない場合には、相続人全員が均等に取得したものとして
取り扱います。(根拠条文:相続税法基本通達3-25)

 したがいまして、仮に今回の事例で9000万円の死亡退職金の
受給者が法人側でも相続人側でも決定していない場合には、B,C,Dが
3000万円づつ取得したものとして相続税の申告を行います。
 
 これは、死亡退職金はみなし相続財産であって民法でさだめる相続財産では
ないことから、法定相続分ではなく相続人の人数に応じて均等に分ける
ことを定めています。

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書込みをしていますのでご覧ください

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2011.12.20

【所得税確定申告編-2 所有期間が10年を超える自宅を売却した場合の税金は、安くなる!】

【所得税確定申告編-2 所有期間が10年を超える自宅を売却した場合の税金は、安くなる!】
<事例>
 Aさんは、30年前に自己が所有する山の手の住宅街にある土地に建築した建物を第三者
に賃貸していましたが、7年前から自宅として利用していました。 
 しかし、山の手にある自宅での日常生活は不便を感じるようになったので、
駅前のマンションへの引っ越しを考えるようになりました。

 自宅は、7000万円で売却できるようです。30年前の自宅土地建物の取得費は2000万円だった
ため売却益が5000万円となります。 少しでも税金を少なくしたいので、買換え特例の適用を
検討しています。 Aさんは、買換え特例は適用できますか?

<解説>
 Aさんの場合、本人の居住期間が10年以上ではないため「買換え特例」の適用はできません。

まず、買換え特例ですが平成24年度税制改正大綱18ページで適用期限が
2年延長される旨が記載されています。

買換え特例の適用要件については、下記URLの私のコラムでご確認ください
http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/24228/ 

Aさんのように、本人の居住期間が10年以上でない場合でも適用できる
特例が2つあります。

1つ目の特例は、3000万円の特別控除です。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm

この制度は、本人の居住期間の長短に全く影響されません。
適用要件の詳細は、以下のとおりです

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
 なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、
 マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(3) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。

(4) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(5) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の二つの要件すべてに当てはまること。

  イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から
    3年目の年の12月31日までに売ること。

  ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(6) 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
 特別な間柄には、このほか生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
 

2つ目の特例は、マイホームを売却した場合の軽減税率の特例です
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3305.htm

(1) 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。
 なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
 また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。

(3) 売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。

(4) 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。
 ただし、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。

(5) 売り手と買い手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
 特別な間柄には、このほか、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

では、上記の特例を適用した場合のAさんの税金を計算してみましょう

(7000万円-2000万円)-3000万円=2000万円←課税対象となる長期譲渡所得金額です

所得税 2000万円×10%=200万円
住民税 2000万円×4%=80万円    合計で税金の総額は280万円です

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2011.12.12

【所得税確定申告編-1 親から相続した自宅に10年以上住んでいます。売却時の所得税は?】

<事例>
 Aさんは、親から相続した住宅に10年以上住んでいます。
この度老朽化が目立つため売却して、近所の新築一戸建て住宅に買換えようと
考えています。

 しかし、親から相続した住宅は取得価格が不明なため多額の所得税が
課税されるという話を友人から聞きました。

さて、Aさんには本当に多額の所得税が課税されるのでしょうか?

<解説>
 Aさんが所得税を支払わなくてもいい場合もありえます。
Aさんのように、本人の居住期間が10年以上である場合
「特定の居住用財産の買換え特例」と呼ばれる制度を適用できる場合があります。

 この制度は、「本人が住んでいる土地建物等を売却した場合に、
売却代金以上の価額で新しい土地建物等を購入すれば、今回の買換え時には
税金はかからず新しく買った土地建物等を売却するまで、売却益に対する税金を
猶予してもらえる制度です。」

(平成24年度税制改正大綱で適用期限2年延長と記載されています。)

 この制度の適用に当たっては、以下のような厳しい要件があります。

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
 なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目
 の12月31日までに売ること。

(2) 売った年の前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例
 又はマイホームを売ったときの軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失について
 の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(3) 売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるもので、
 売ったマイホームについて、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。

(4) 売却代金が2億円以下であること。この特例の適用を受けるマイホームと一体として
 利用していた部分を別途分割して売却している場合における2億円以下であるかどうかの
 判定は、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間の分割して売却した
 部分も含めた売却代金により行います。このため、マイホームを売却した年、
 その前年及びその前々年の売却代金の合計額が2億円以下であることから、
 この特例を受けていた場合で、マイホームを売却した年の翌年又は翌々年にこの特例の
 適用を受けたマイホームの残りの部分を売却して売却代金の合計額が2億円を超えた
 場合には、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。

 (平成24年度税制改正大綱で、上記2億円が1.5億円に引下げられています。)

(5) 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において
 売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。

(6) 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、
 買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。

(7) マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホーム
 を買い換えること。また、買い換えたマイホームには、一定期限までに住むこと。
 買い換えたマイホームを住まいとして使用を開始する期限は、
 そのマイホームを取得した時期により次のようになります。

イ 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで

ロ 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで

(8) 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、
 取得の日以前25年以内に建築されたものであること。ただし、耐火建築物以外の
 中古住宅及び平成17年4月1日以後取得する耐火建築物である中古住宅のうち
 一定の耐震基準を満たすものについては、建築年数の制限はありません。

(9) マイホームを売った人とそれを買った人との関係が、
 親子や夫婦など特別な間柄でないこと。特別な間柄には、
 このほか生計を一にする親族、内縁関係にある人、
 特殊な関係のある法人なども含まれます。

この買換え特例は、いわゆる「3000万円の特別控除」と選択適用になります。
「3000万円の特別控除」は、次回解説いたします。

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2011.12.10

【相続税質疑応答編-5 生命保険金を相続人間で分割した場合の課税関係 】

<事例>
Aさんは、先日亡くなりました。Aさんの相続人はB,C,Dの3人兄弟
でした。 Aさんの財産は、3000万円の自宅、5000万円の預貯金でした。
それ以外に、受取人を長男Bとする生命保険7000万円でした。

仲のいい3兄弟は3000万円+5000万円+7000万円=1億5000万円
となることから、各人の相続分を5000万円とすることに決めました。

具体的には、次男Cは5000万円の預貯金全額を相続します。三男Dは
賃貸マンションに住んでいたので、父親の住んでいた自宅3000万円を
相続します。 そして長男Bは、生命保険金7000万円を取得しますが
そのうち、2000万円を三男Dに代償分割することにしました。

さて、以上のような遺産分割の課税関係はどうなるでしょうか?

<解説>
上記遺産分割の場合、長男Bから三男Dへの2000万円の代償分割は
贈与税の課税対象となります。

そもそも、生命保険金は遺産ではなく生命保険金受取人の固有の
財産となります。 そのため、今回の遺産分割案で長男Bは父親の
遺産を相続で取得することなく、生命保険金のみを受取ることになります。

その場合、B⇒Dの2000万円は厳密には代償分割ではなく、単なる
贈与に該当します。

仮に、上記のような場合に代償分割を実施するのであれば
長男Bが、生命保険金7000万円を受取るとともに自宅3000万円を
相続し、BからDへ現預金3000万円の代償分割を行うと贈与税が
課税されません。 しかし、結果として5000万円づつの遺産分割
は実現できません。

今回のポイントは、代償分割を実施する場合長男Bが相続により
取得した財産以上の金額の代償分割を行うと、越えて金額が
贈与税の課税対象になるということです。

根拠は、東京地裁平成11年2月25日の判決です。

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2011.12.04

【相続税質疑応答編-4】相続放棄した場合の生命保険と葬儀費用の負担はどうなる?

<事例>
 被相続人Aの相続人は、長男Xと次男Yでした。
Aの相続財産は、1億円でした。それ以外にXとYを受取人とする生命保険
契約がそれぞれ2000万円づつありました。
Aの葬儀費用は、XとYの兄弟が100万円づつ均等に負担しています。
Aの債務は、銀行からの借入金1000万円がありました。

 長男Xは自らの事業が成功していましたが、次男Yは勤務先が倒産したため
長男Xは、適法な手続きにより相続を放棄することにしました。

 この場合、相続税の申告に当たって死亡保険金と債務控除はどのような
計算になるでしょうか?
 
<解説>
 
 まず、生命保険についてはXYともにそれぞれを受取人とする
2000万円の生命保険金を受取ることができます。

 ただし、生命保険の非課税限度額の計算と適用に当たって注意する必要が
あります。

 つまり、非課税限度額の計算に当たっては相続放棄をしたXも
法定相続人ですから、人数にカウントされます。
つまり、今回の事例では500万円×2人=1000万円の非課税限度額となります。

 更に、この非課税限度額の適用ですが相続放棄したXは適用できませんので
相続税の課税対象となる生命保険金の額は、
長男Xの場合は、2000万円
次男Yの場合は、2000万円-500万円×2=1000万円 ということになります。

 次に、債務控除についても留意すべき点があります。
 Aの銀行借入1000万円については、長男Xが相続放棄の手続きをしていますので
次男Yの相続財産から債務控除することになります。 
 
 最後に、葬儀費用の取扱です。今回の事例では、葬儀費用をXYがそれぞれ
一旦立替払いして100万円づつ負担しています。 このような場合、
次男Yが、100万円の葬儀費用を1億円の相続財産から債務控除できることに
ついては、異論がないところです。

 問題は、相続放棄している長男Xのみなし相続財産である生命保険金
2000万円から葬儀費用100万円を債務控除できるのか?という論点です。

 この点につきましては、相続税基本通達13-1で次のように定めています

(相続を放棄した者等の債務控除)『相続を放棄した者及び相続権を失った者
については、法第13条の規定の適用はないのであるが、その者が現実に
被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、
その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても
差し支えないものとする。』

 これは、たとえ相続放棄をしていても遺族であれば社会通念上
葬儀費用を負担することはありうることなので、道義的な立場から
定められた規定です。 

 上記規定の文言で『遺贈により取得した財産』には、生命保険金も
含むと解されています。

 したがいまして、今回の長男Xは生命保険金2000万円から葬儀費用
100万円を控除した1900万円が、相続税の課税対象金額となります。

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2011.11.27

【相続税質疑応答編-3】土地の共有者が死亡し、共有者に相続人がいない場合の相続税は?

<事例>
X氏は、婚姻歴もなく養子縁組もしなかったため相続人がいません。
X氏の所有する財産のほぼすべては、X氏単独の名義です。

しかし、土地Aについては甲さんとの共有名義となっています。
甲さんとは、血縁関係はありません。土地AをX氏が取得した経緯は
Xの父親が甲さんと共有名義で所有していた土地Aを、父親の死亡により
相続により取得したものです。

さて、X氏がこの度死亡しました。遺言書はありません。
甲さんと共有名義の土地Aについて、なんらかの税金は発生しますか?

<解説>
相続人の存在しない、相続財産は最終的には国庫に帰属することになります。
今回の事例の場合、土地Aの共有者であるX氏と甲さんとは血縁関係になく
遺言書もないことから、土地AのX氏持分については相続人が存在しない
状態であると考えられます。

この場合、土地Aについては共有者である甲さんという存在がありながら
X氏持分だけが、国庫に帰属することになるのでしょうか?

結論は、X氏の持分は共有者である甲さんの持分となるということです
根拠条文は、民法255条と相続税法基本通達9-12です

民法255条では
『共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、
 その持分は、他の共有者に帰属する。』と定めています

また、相続税法基本通達9-12では
『共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)
 したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、
 その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得
 したものとして取り扱うものとする。』

つまり、土地Aの共有者である甲さんは、X氏が死亡したことにより
土地Aに関するX氏の共有持分を、相続により取得することになります。

その結果、土地Aの評価額次第では相続税が発生することになります。
今回の事例の場合、X氏の土地A以外の相続財産は、すべて国庫に帰属
することになりますので、甲さんは相続税の納税資金を自己の財産から
調達する必要があります。

上記のように共有持分のある不動産の場合、本来であれば
法定相続人でない方でも、相続税が課税されるリスクがあります。
共有名義の不動産には要注意です。

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2011.11.20

【相続税対策編 平成23年度中の相続税改正は、なくなりました!!!】

以前このMLで、平成23年度中に最後の税制改正があるかもしれ
ません、という内容をお伝えしましたが、

 先日の税制調査会で、平成23年度中の相続税改正は見送られることが
決まりました。

 その結果、相続税の基礎控除引下げ等の改正は、平成24年度税制改正
に織込まれる見込みとなりました。

 そこで、今週の相続税関連のMLネタは、相続税税務調査の最近の
動向をご案内いたします。

 相続税の調査は、平成20年中及び平成21年中に発生した相続税を中心に、
国税局及び税務署において収集した資料情報に基づいて、申告額が過小と
想定されるものや、申告義務がありながら無申告となっていることが想定
されるものなどについて実施されます。
 
1.調査件数等
 その調査件数は13,668件(対前事務年度比98.6%)、そのうち、申告漏れ
等の件数は11,276件(対前事務年度比96.0%)といずれも僅かながら減少
しておりますが、申告漏れ課税価格は3,994億円と対前事務年度比1億円
の減少にとどまっております。
   
 また、重加算税賦課件数は1,897件と対前事務年度比96.3%と減少し、
重加算税賦課対象額も609億円と対前事務年度比87.2%と減少しております。
 
2.申告漏れ財産の状況
 調査により把握された申告漏れ財産の構成比をみますと、不表現資産
である現金・預貯金等及び有価証券の申告漏れウエイトが49.8%と高い
ことから、相続税の調査は、従来同様、不表現資産の把握に重点をおい
て行われているといえます。つまり、借名財産に調査のポイントが
おかれているということです
 
3.海外資産の申告漏れ
 海外資産関連事案に係る調査事績は、最近の経済の国際化と国際交流
の進展を反映して国外資産の保有が多くなっていることから、調査件数
は695件(対前事務年度比130.9%)、申告漏れ件数は549件(対前事務年
度比128.9%)といずれも急増しており、

 また、重加算税賦課件数も81件(対前事務年度比106.6%)と増加して
おります。相続税の申告書作成に際しては、相続人から海外資産の所有の
有無を確認することが肝要です。
 
4.無申告事案に係る調査結果
 相続税の申告義務があるにもかかわらず無申告となっているものの把握
に重点的に取り組んだ結果、調査件数は1,050件(対前事務年度比167.7%)
申告漏れ件数は795件(対前事務年度比150.6%)と大幅に増加し、
申告漏れ課税価格も1,055億円(対前事務年度比139.5%)とかなり
増加しております。
 
今回のMLの詳細な内容につきましては、下記URLの国税庁HP
をご覧ください

http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2011/sozoku_chosa/sozei_chosa.pdf

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2011.11.13

【相続税質疑応答編-2】養子縁組した孫が代襲相続人の場合の法定相続人の数は?

<事例>
妻に先立たれたAには、X,Y,Z3人の子がいた。
しかし、Xは病弱であったために先日亡くなった。
そこでAは、Xの子Mを養子縁組した。
また、YとAは以前からの話し合いにより、Yが相続放棄することで
合意した。 その直後、Aが死亡した。
この場合の法定相続人の人数は、何人でしょうか?

<解説>

今回は、実際にはなかなかありえない複雑な身分関係です。
論点を整理すると、

MがAの養子でありながら、Xの代襲相続人という2重の身分関係になっている
という点と、

Yが、法的手続きに基づいて相続放棄をしているという点です。

まず、簡単な結論から申し上げますと相続放棄したYは、
民法上の法定相続分は0となります

しかし、基礎控除の計算の基礎となる法定相続人の人数にはカウントされます
また、相続税の総額を計算する際の、法定相続人にもカウントされます

つまり、Yにつきましては民法上の法定相続人にはカウントされませんが
相続税法上は、1人としてカウントされるということです。

次に、養子と代襲相続人の2重身分となったMのカウントですが
民法上の法定相続分は、2/3となります。つまり、法定相続人は
Zと養子Mと代襲相続人Mなります。

その結果、民法上の法定相続分はZ:M=1:2になります

次に、基礎控除の計算の基礎となる法定相続人は、M,Y,Zの
3名となります。ここでは、Mの2重身分は考慮されません

最後に、相続税の総額を計算する法定相続分は、Mの養子と代襲相続人の
2重身分を考慮して、M:Y:Z=2:1:1となります。

養子と代襲相続人の2重資格の場合、民法と相続税法で扱いがことなります。
複雑な相続税の申告の場合は、是非相続税専門の税理士に相談してください

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2011.11.06

【相続税質疑応答編-1】不幸な事故で親子が同時に死亡した場合の法定相続人は誰?

今回は、不幸な災害に遭遇し親子ともに死亡した場合の相続に関する
質疑応答です

<事例>

父親Aと娘Bは、不幸にも災害に遭遇し死亡しました。
AとBの親族関係は、次のとおりです

Aの配偶者(Bの母親)は、5年前に病死していました。
Aには長女Bと長男Cの二人の子がいた
BはXと7年前に結婚し、小学生の長男Zがいた

この場合、Aの財産の相続人は誰ですか?

<解説>

不幸にして、親子が同時に災害に遭遇した場合、死亡時刻の前後が
不明となる場合もありえます

その場合、民法では『数人の者が死亡した場合において、そのうちの
一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、
これらの者は、同時に死亡したものと推定する。』(民法32条の2)
と定めています。

つまり、今回の事例に当てはめるとAとBは同時に死亡したと推定
されます。

次に、民法は『被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、
又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を
失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。』
(民法887条2項)

つまり、今回の事例に当てはめるとBがAの相続開始以前
(同時に死亡も含む)に死亡した場合には、Bの子Zが代襲相続人と
なることを定めています。

その結果、今回の法定相続人はAの長男Cと、Aの孫Z(Bの子)の
2名となります。

さて、ここで仮にAが遺産の分割について長女Bに不利な内容の
遺言を残していた場合は、どうなるでしょうか?

例えば、全財産の7割を長男C、残り3割を長女Bのものとする
という内容の場合。

今回の事例の場合、この遺言書の効力はありません。
根拠は、『遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、
その効力を生じない。』民法994条です。

このように、相続税の計算に当たっては相続税法と民法の接点と
なる部分が数多くあります。

遺言書作成等に当たっては、税の専門家である税理士だけでなく
法律の専門家である弁護士にも充分にご相談ください

この記事以外にも、下記URLのマイベストプロ神戸に私のコラムの
書込みをしていますのでご覧ください

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/

2011.10.30

【相続税対策編5】親と同居するための改装費用を長男が支払った場合の税金は?

親と同居するための改装費用を、これから改装する長男が支払った場合に
税金は課税されるのでしょうか? 具体的な事例を基に解説いたします。

(事例)
従来より平屋で生活してきた親と同居するため、関西に転勤で戻ってきた
長男が、2階建への改装費用1500万円全額を支払いました。
改装前の平屋の建物の時価(第三者へ売却するとした場合の相場)は、500万円
でした。 このような場合、父親か長男のどちらかに税金は課税されるでしょうか?

(解説)
今回の問題は、民法と贈与税の絡む問題です。
従来の平屋を2階建てへと改装(リフォーム)した場合、その改装部分の所有権も
父親にものになります。これは民法242条に定める不動産の付合という規定に
基づきます。

また、長男は父親に対して改装費用1500万円の代金返還請求をすることができます
(民法248条)

しかし、一般的には父親は改装費用を長男に返すこともしなければ
長男が、父親に対して改装費用の返還請求もしません。

従いまして、登記簿上は2階建ての建物の所有権は父親のままで
不動産の価値が増加しますので、何もしなければ長男が父親に改装費用
1500万円を贈与したことになり、父親に贈与税が課税されることになります。

この課税を回避するためには、従来の平屋の時価500万円と改装費用1500万円の
比率、つまり父親と長男で1対3の比率で新しい自宅の所有権登記をする必要が
あります。

実務上も、実際の改装費用の支払いと、その後の登記とをチェックすると
その評価額の比率が間違っている事例が多くあります。

これから、改装工事を検討していらっしゃる方は
同居に向けての改装費用で、税務上のトラブルが発生しないように
税の専門家である税理士に是非ご相談ください

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2011.10.22

【所得税対策編3】個人の事業用資産を買換えて節税するなら、23年12月末までに!!

【所得税対策編 3】個人の事業用資産を買換えて節税するなら、23年12月末までに!!

 年内に事業用資産の買換えをしてみませんか。買換え時に売却益が発生する方は
年内の買換えをおすすめします。

 例えば、事務所とその敷地を売却し、別の場所で事務所とその敷地を構えた場合、
売却による儲けの約8割に相当する課税を繰り延べることができる制度があります。
これを「特定資産の買換え特例」といいます。

 この特例を適用するためには、複雑な要件をすべて満たす必要があります。
しかし、この特例の中で要件がもっとも緩いのは第9号という特例です。

 第9号の特例を適用するための要件をここで、ご紹介します。

『譲渡する日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えている
国内の土地等、建物、構築物を売却し、国内の土地等、建物、構築物、
又は、機械装置を取得すること』です。

 簡単に申し上げますと、個人の事業用資産を買換えるに当たって
10年以上所有している事業用資産で、売却時に利益が発生する場合に
年内に買換えておくと、売却時の所得税の80%が将来に繰延べられるという
不景気な今、おいしい税法なのです。

 しかし、この制度は、平成23年12月31日が適用期限とされています。
次回の税制改正で期限が延長がされない限り、年内で適用期限が到来してしまいます。

 そのため、個人で事業をされている方で資産を買換えたいとお考えの場合には、
早急に検討してする必要があります。

 もし年内の買換えが困難となった場合でも、
「特定資産の買換え特例」が即適用できなくなるわけではありません。

⇒年内に売却できたが年内に購入できなかった、
⇒あるいは年内に購入できたが年内に売却できなかった場合には、
一定の要件の下、第9号の適用が受けられる場合があります。

 実際に、第9号の適用に当たっては税の専門家である税理士に
是非一度ご相談ください。

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2011.10.16

速報です!!23年中にあと1回税制改正があるかもしれません!!!

速報です!!23年中にあと1回税制改正があるかもしれません!!!

10月11日の税制調査会で、復興関連の税収確保に関する税制改正大綱が、
税制調査会の資料として公表されました。相続税も24年1月1日から
課税強化がほぼ決定です。

興味のある方は、下記URLで原文をご覧ください。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/10/11/23zen11kai8.pdf

 以下、主なものを抜粋しました。

相続税・贈与税:
(1)継続中の平成23年度税制改正法案に関する項目の修正案
 ①相続税
  基礎控除の引下げ及び税率構造等の見直し
  (施行時期)平成23年4月1日→平成24年1月1日 へ変更の上、実施
 ②贈与税
  税率控除の緩和及び相続時精算課税の対象拡大
  (施行時期)平成23年1月1日→平成24年1月1日 へ変更の上、実施

所得税:
(1)復興特別所得税(付加税)の創設
 ①税額
  年分の基準所得税額×4%
 ②基準所得税額
  居住者……すべての所得に対する所得税額
  内国法人…利子等及び配当等などに対する所得税額
  非居住者・外国法人…国内源泉所得のうち利子等及び配当等などに対する所得税額
 ③対象期間
  平成25年分から平成34年分の10年間

(2)継続中の平成23年度税制改正法案に関する項目の修正案
  給与所得控除の上限設定及び成年扶養控除の見直しに係る源泉徴収
  (適用開始時期)平成24年1月1日→平成24年7月1日 へ変更の上、実施

個人住民税:
(1)均等割の引き上げ
  ①税額
   年額500円の引き上げ(現行4,000円のため、引上げ後は4,500円となる)
  ②対象期間
   平成26年度から平成30年度までの5年間

法人税:
(1)復興特別法人税(付加税)の創設
 ①税額
  各年度の基準法人税額×10%
 ②基準法人税額
  各事業年度の所得に対する法人税額
  (留保金課税、所得税額控除等を適用する前の法人税額)
 ③対象期間
  平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度
  (清算予納申告事業年度を除く)

(2)継続中の平成23年度税制改正法案に関する項目の修正案
  次の項目について変更の上、実施
  ┌───────────┬─────────┬─────────┐
    │         項目         │       原案       │      修正案     │
    ├───────────┼─────────┼─────────┤
    │                      │施行時期:       │施行時期:       │
    │法人税率の引下げ等    │平成23年4月1日以後│平成24年4月1日以後│
    │                      │に開始する事業年度│に開始する事業年度│
    ├───────────┼─────────┼─────────┤
    │エネルギー需給構造改革│廃止時期:       │廃止時期:       │
    │推進投資促進税制等の特│平成23年4月1日   │平成24年4月1日   │
    │別措置の廃止          │                 │                 │
    └───────────┴─────────┴─────────┘

法人住民税及び法人事業税:
(1)継続中の平成23年度税制改正法案に関する項目の修正案
 法人税率引き下げ及び課税ベース拡大等に伴う法人住民税及び法人事業税に係る所要措置
  (施行時期)平成23年4月1日→平成24年4月1日 へ変更の上、実施

 なお、これらは税制改正大綱の内容なのですべて改正されるかどうかは、
現時点では定かではありません。

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2011.10.08

有料老人ホームの入居前にできる相続税対策があります。

有料老人ホームの入居前にできる相続税対策があります。

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最近よくある相続税対策の誤りが、ご自宅に関する相続税対策です。
その中でも、非常に残念なのが、配偶者が有料老人ホームに入居してしまった場合です。

有料老人ホーム(終身利用権付き)に入居すると、たとえ住民票が以前の
自宅のままであっても、相続税を計算するうえでは配偶者の自宅は老人ホームに
なります。

つまり、相続税の計算上だけ夫婦は別居扱いになります。
これが、どんな相続税の計算上どんな影響を及ぼすかというと

ご夫婦で同居しているご自宅の土地は、相続税の計算上だけ
240㎡までは、評価額を80%減額できるという特例を
使えなくなります。

具体的に申し上げますと、240㎡で4000万円の評価額の土地に家を
建てて生活していたとします。

この場合、夫が亡くなった場合4000万円の土地は80%評価減されるので
240㎡の自宅土地が、4000万円ではなく800万円で評価されます。

この3200万円の評価減は、ストレートに相続税の減額に反映しますので
最高税率50%の方であれば、1600万円の節税になります。

しかし、亡くなった夫が有料老人ホームに入居しいた場合には
上記80%評価減の特例が使えなくなります。

そこで、事前の相続税対策として以下のようなプランがあります。

例えば、240㎡相続税評価額4000万円(時価5000万円)の自宅土地が
夫の単独名義だった場合で、将来夫が有料老人ホームへの入居を
考えている場合。

まず、奥様に3000万円の預貯金があれば、奥様は夫から上記の自宅土地の
3000万円相当分を買取ります。次に、残りの2000万円相当部分につきましては
贈与税の配偶者控除を適用して贈与税0円とします。

贈与税の配偶者控除につきましては、国税庁の下記HPでご確認ください。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4452.htm

さらに、奥様から夫に支払った3000万円については
生命保険をうまく活用する方法も考えられます。

このプランを実行するに当たってのポイントは、
夫婦間の土地の売買であっても、通常の取引価格で売買をしなければ
ならない、という点です。

特に課税上問題がないと認められる場合には、路線価評価で
売買価格を決定する場合もあるようですが、原則として
通常の取引価格で売買する必要があることにご注意ください。

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2011.09.23

金を売却した際の支払調書の書式って気になりませんか?

金を売却した際の支払調書の書式って気になりませんか?

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

金の価格が日々上昇しています。そこを狙ったかのように税法改正が
あったことをご存知でしょうか?

平成24年4月1日以降で、金・プラチナを専門業者に売却すると
売却価格が200万円以上の場合に限り、その業者は

いつ
誰から
何を(金・プラチナ)
いくらの金額で

買取ったのか、という内容を記載する書類(支払調書と言います)
を税務署長に提出することが、義務付けられました。

これは、従来から金の売却益に対する所得税の課税漏れが問題視されて
いたことに対する税法の改正です。

この支払調書の制度が始まると、200万円以上で金を売却した際に
所得税の確定申告をしないと、後日税務署から申告漏れの連絡があります。

また、200万円未満であれば支払調書の提出はありませんが
自主的に所得税の確定申告をしなければならないのは、従来通りです

なお、支払調書の書式が気になる方は国税庁の下記URLで
実物を確認できますのでご覧ください

http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/annai/pdf/1251.pdf

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 雇用促進計画の受付が8月1日より開始されています。
 この雇用促進計画は、雇用促進税制の適用を受けるために必要な書類です

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  今月は、「雇用促進計画書はいつまでに提出すればいいですか?」というテーマです
  雇用促進税制を具体的に適用するに当たっての条件と手続きを、
  わかりやすく会話形式で解説していますので、是非ご覧ください。

⇒『旬の特集』

  中小企業を取り巻く経営環境は3月の東日本大震災によって、
 再び先行きが不透明になっています。また、節電などによる生産活動への制約など、
 直接震災の被害を受けていない企業にも影響を及んでいます。
 こうした厳しい状況の中、中小企業は何が必要だと感じているのでしょうか。
 ここでは7月に公開された2011年版の中小企業白書から、
 中小企業が考える今後の取り組むべきことをご紹介します。

2011.09.19

他よりも安い家賃で、家族に賃貸マンションを貸すと課税される?

他よりも安い家賃で、家族に賃貸マンションを貸すと課税される?

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

不動産賃貸業を営むAは、大学を卒業しても就職先がなかなか決まらない
長男Bのために、A所有の賃貸マンションの1室を他の入居者よりも
有利な条件で貸すことにしました。

そこで、家賃は通常は12万円ですが、固定資産税の月割額である4万円で
貸すことにしました。
さて、この場合長男Bになんらかの課税はされるのでしょうか。

不動産賃貸業を営んでいらっしゃる場合、家族には他よりも
有利な条件で貸してあげることは、よくあることだと思います。

その場合の、課税関係をここで整理しておきます。

今回は、結論に至るプロセスが非常に大切なのであえて結論は
最後まで、記載しません。

今回の事例は、月額12万円(年間144万円)の家賃を月額4万円
(年間48万円)にしたことによる差額年間96万円について、Bに贈与税が
課税されるかどうかが、論点となります。

相続税法9条では、著しく低い価額で利益を受けた場合をみなし贈与として
贈与税の課税対象としています。

今回の144万円と48万円との差額96万円が、相続税法9条の課税対象か否かを
検討する必要があります。

ここで、Bは賃貸マンションの固定資産税相当額の家賃を支払うことになっていますが
固定資産税相当額の家賃を支払っただけでは、賃貸借ではなく
使用貸借であると、過去の最高裁判決では判断されています。

この考え方を当てはめると、A-B間の関係も賃貸借ではなくて使用貸借と
なります。

A-B間が使用貸借となると、相続税法基本通達9-10を当てはめて
考える必要があります。通達の原文は下記URLでご確認ください

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku/01/06.htm#a-9_10

上記基本通達9-10のただし書きには、以下の記述があります。
『ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、
 強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。』

つまり、使用貸借関係によるBの受ける経済的利益が「少額である場合」には
贈与税の課税はされないということです。

さて、ここでBの受ける経済的利益の金額ですが、年間96万円であり
贈与税の基礎控除110万円を下回っています。

そのため、「利益を受ける金額が少額である」と判断され贈与税の
課税はありません。

このように、親子間などで家賃等を設定する場合には様々な税務上の
判断が必要になります。

中途半端な、相続税対策は後で思わぬ高額課税になりかねません。
相続税対策は、税の専門家の適切な助言に基づいて行ってください。

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 被相続人の孫が遺贈により保険金を取得しました。その孫(被相続人と養子縁組をしていません。)
  は、被相続人から2年前に現金200万円の贈与を受け贈与税9万円を納付しています。
  この生前贈与の200万円については被相続人の相続財産に加算されますか?

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 再び先行きが不透明になっています。また、節電などによる生産活動への制約など、
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2011.09.11

内閣官房主催の納税者番号シンポジウムに参加して感じたこと

昨日行われた、内閣官房主催の納税者番号制度シンポジウムの参加者は、老若男女様々な方が参加してらっしゃいました。

参加者との質疑応答の時間が、時間を30分以上延長して行われました。政府(民主党)としては、税と社会保障の一体改革を給付付き税額控除を導入することによって実現したいと考えているようです。

そのために、すべての国民の所得・納税額・社会保障給付のデータを一元管理する必要があり、そのツールとして納税者番号制度(マイナンバーと言います)の導入を検討しているようです。

どのような制度を設計しても、必ずメリットとデメリットがあると思います。昨日のシンポジウムは、政府側が番号制度導入によるメリットばかりを強調していました。

住民基本台帳があって、国民全員に付番されているにもかかわらず、あえて新しい番号制度を導入することの必要性やデメリットは、軽く流されていました。

参加者から、その点を質問されても軽く流していたような印象です。さらには、最終的な目標である給付付き税額控除制度については、全く何の説明もありません。

この給付付き税額控除という制度は、すでに導入済みの諸外国でも様々な問題が発生している制度です。アメリカでは、給付付き税額控除のための申告書類のうち30%が不正還付申告であるという、アメリカ政府の発表がありました。

また、昨日の内閣官房のコメントでは、日本にこの制度を導入するにあたって、初期投資が6000億円、毎年のランニングコストが500億円かかるそうです。会場からは、番号制度を導入するのではなく、その経費を社会保障に振り替えた方がいいのではないですか?という意見もありました。

今回のシンポジウムは、まだ全国の都市で順次行われます。関心のある方は、誰でも参加できますので、是非参加してみてください。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/symposium/moushikomi.html

2011.09.10

夫婦で事業を営む場合の正しい節税対策とは!?

夫婦で事業を営む場合の正しい節税対策とは!?

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

夫Aが小売業を個人事業で営んでいて妻Bが不動産賃貸業を
営んでいます。

最近Aの小売業・Bの不動産賃貸業ともに業績が悪化傾向にあるので
Aの経費削減とBの資金繰り改善のために

Aの店舗をBの所有する賃貸ビルの1階に移転することにしました
AがBに支払う家賃は、Bの所有する賃貸ビルの他のテナントと
同額とします。

A,Bはそれぞれ次のように考えました
Aは、同じ家賃を支払うなら妻Bが所有するビルに家賃を支払えば
結局夫婦の財布にお金が戻ってくる。Aの帳簿上では家賃を計上するが
夫婦の財布としては支出が0となる、と考えました

Bは、いつまでも1階のテナントが入らないのであれば
夫Aから家賃をもらって、Aの節税と同時に夫婦の資金繰りも
改善できるこの方法がベストだ、と考えました。

果たして、このプランは所得税法上正しい節税対策でしょうか?

結論は、間違ってます。
上記の場合、所得税法上の正しい処理は

Aは、妻Bに支払う家賃はAの帳簿上は経費として処理できません。
その代わり、妻Bが支払う固定資産税のうち、Aの店舗部分に関る
固定資産税がAの事業の必要経費となります

Bは、Aから入金がある家賃を売上に計上しなくてもいいです
ただし、固定資産税のうちAに貸している店舗部分の固定資産税は
必要経費となりません。

これは、所得税法56条に規定があります
また、参考条文として所得税基本通達56-1があります。

さらに、「生計を一にすることの意義」については
国税庁の下記URLにてご確認ください

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

今週は、通常のML以外に
日本と香港との租税条約締結に関する速報をマイベストプロ神戸
のコラムに書き込みしています。興味のある方は、下記URLで
ご確認ください。

http://mbp-kobe.com/kobe-souzoku/column/22427/

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東日本大震災関連の税務情報のUP DATE

● 更新情報

 岩手県、宮城県、福島県の3県の一部の地域に納税地を有する法人の皆様への申告書等用紙の発送再開に係るお知らせ」を追加しました(平成23年8月8日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/hojin/index_2.htm

「東日本大震災に係る国税の申告・納税等の期限延長に係る一部の地域における期日の指定について」を更新しました(平成23年8月5日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/hisai/kijitsu_shitei0805.htm

「平成23年分の所得税の予定納税について(東日本大震災関連)」を更新しました(平成23年8月5日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/yoteinouzei.htm

 期限の延長が、具体的に公表されていますので上記URLでご確認ください。

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○
下記の内容については、私の事務所HPのトップページに
記載がありますので、興味のある方はご確認ください

http://www.marlconsulting2.com/

⇒『相続税の1時間無料相談始めました』
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⇒『やさしい税務会計ニュース』
 青色申告が認められないサラリーマンが、ゴルフ会員権を譲渡して譲渡損失が出た場合と、
 不動産所得があるサラリーマンで、青色申告を毎年している人がゴルフ会員権を譲渡して
 譲渡損失が出た場合とで、譲渡損失の取扱いでどのような違いがあるのでしょうか?

⇒『経理総務担当者のための今月のお仕事のカレンダー』

   経理総務担当者様が毎月実施すべき業務をカレンダーでご案内
  しています。ご確認ください。9月のお仕事カレンダーです

⇒『会話形式で楽しく学ぶ税務基礎講座』
 
  今月は、「雇用促進計画書はいつまでに提出すればいいですか?」というテーマです
  雇用促進税制を具体的に適用するに当たっての条件と手続きを、
  わかりやすく会話形式で解説していますので、是非ご覧ください。

⇒『旬の特集』

  中小企業を取り巻く経営環境は3月の東日本大震災によって、
 再び先行きが不透明になっています。また、節電などによる生産活動への制約など、
 直接震災の被害を受けていない企業にも影響を及んでいます。
 こうした厳しい状況の中、中小企業は何が必要だと感じているのでしょうか。
 ここでは7月に公開された2011年版の中小企業白書から、
 中小企業が考える今後の取り組むべきことをご紹介します。

2011.09.08

ついに、香港も日本と租税条約を締結!!!

ついに、香港も日本と租税条約を締結!!!

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

スイス、ケイマン諸島と日本との租税条約締結から
1年もたたないうちに、ついに香港と日本が租税条約を締結しました。

 先頃財務省は、我が国と香港との間の経済関係の緊密化を踏まえ、
これまで存在しなかった租税協定締結の正式交渉を平成22年3月から実施し、

同年11月9日に「日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間の租税協定」
が署名され、本協定が平成23年8月14日に発効し、

平成24年1月1日から適用開始する旨を公表しました。

詳細は、下記URLでご確認ください

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy221109ho.htm

租税条約を締結したらどうなるの???
と、いう疑問があると思いますが

簡単に申し上げますと、国際間の二重課税・課税漏れを
国家間の相互協力によって実現させるのが狙いです。

ポイントは、下記URLに記載があります

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/sy221109aho.htm

やはり、中でも

『2.税務当局間の情報交換に関する規定
税務当局間において、租税に関する情報を相互に交換することができることとなります。』
が、大きなポイントになると思います。

海外を利用した相続税の節税対策も、ほとんどできなく
なります。日本国内での節税対策をしっかりと検討しましょう。

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東日本大震災関連の税務情報のUP DATE

● 更新情報

 岩手県、宮城県、福島県の3県の一部の地域に納税地を有する法人の皆様への申告書等用紙の発送再開に係るお知らせ」を追加しました(平成23年8月8日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/hojin/index_2.htm

「東日本大震災に係る国税の申告・納税等の期限延長に係る一部の地域における期日の指定について」を更新しました(平成23年8月5日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/hisai/kijitsu_shitei0805.htm

「平成23年分の所得税の予定納税について(東日本大震災関連)」を更新しました(平成23年8月5日)
  http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/yoteinouzei.htm

 期限の延長が、具体的に公表されていますので上記URLでご確認ください。

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  生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の計算上、控除することができる保険料又は掛金について、
  事業者又は法人の所得の計算上必要経費又は損金の額に算入されるもののうち、
  使用人の給与にしなかった部分(つまり、会社経費として処理しながらも、使用人の給与にしなかった分)は、
  含めることができない改正が、なされました。その内容について簡単に解説しています

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  今月は、「海外の遺産や所得は、日本で課税されますか?」というテーマです
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  中小企業を取り巻く経営環境は3月の東日本大震災によって、
 再び先行きが不透明になっています。また、節電などによる生産活動への制約など、
 直接震災の被害を受けていない企業にも影響を及んでいます。
 こうした厳しい状況の中、中小企業は何が必要だと感じているのでしょうか。
 ここでは7月に公開された2011年版の中小企業白書から、
 中小企業が考える今後の取り組むべきことをご紹介します。

2011.09.03

兄弟間で不動産売買します。さて、税務上問題のない売買価額は?

兄弟間で不動産売買します。さて、税務上問題のない売買価額は?

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

《事例》
XとY(兄弟)は、いずれも父親からの相続により多額の現預金と
貸家等を取得していました。 XとYが将来の生活設計を考えるに当たって
兄弟間で不動産の売買をすることになりました。

売買対象となる物件Aは、Y所有の築年数の浅い賃貸アパートです。
この物件Aの通常の取引価格は1億円ですが、路線価による相続税評価額は8000万円でした。
XとYは、話し合いの結果物件AをYからXに8000万円で売却することにしました。

この場合、通常の取引価格は1億円ですが8000万円で売買することについて
税務上の問題はありませんか?

《回答と解説》
結論から申し上げますと、問題ありません。

まず、個人間の対価を伴う不動産売買については通常の取引価額に相当する金額によって
評価するという内容の個別通達が公表されています(いわゆる負担付贈与通達)

次に、相続税法7条では、「みなし贈与」を定めています。
つまり、一般的な取引価格よりも「著しく低い価額」で売買する場合、
買主側は、「著しく低い価額」で買い取ることができたことにより
通常の取引価額と「著しく低い買取価額」との差額について経済的な利益を受けることになります。

つまり、YからXへの売却価額が「著しく低い価額」でなければ税務上問題ないということになります。
ここで、「著しく低い価額」とは、その価額に経済合理性がないことが明らかな場合を
言うと考えられています。

今回の事例では、売買価額を通常の取引価額ではなく路線価に基づく相続税評価額
としています。

そもそも相続税や贈与税の課税対象となる財産(不動産)の評価は、財産評価基本通達
に基づくと定められています。これは、個々の財産の客観的交換価値の評価は困難なので
課税の公平と事務処理の簡便のために定められています。

また、上記財産評価基本通達による相続税評価額は、地価公示価格の概ね80%とされています。
そのため相続税評価額と同水準かそれ以上の価額で売買が行われた場合に
経済合理性のないことが明らかとは、いい難いと考えられています。

以上より、XYの兄弟間で相続税評価額に基づいて不動産売買を行っても
贈与税が課税されるリスクは無いと考えられます

ただし、実際の不動産売買に当たっては個別具体的に検討すべき課題を
税の専門家と十分に検討する必要があります。ご注意ください。

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「東日本大震災に係る国税の申告・納税等の期限延長に係る一部の地域における期日の指定について」を更新しました(平成23年8月5日)
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2011.08.27

相続税の納税資金がないぞ!困った!立て替えてもらったらどうなるの!?

相続税の納税資金がないぞ!困った!立て替えてもらったらどうなるの!?

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

遺産分割協議がなかなか成立しないというケースがよくあります。
その典型的なパターンは、預貯金・有価証券・不動産などの
遺産のうち、不動産の占める比率が高い場合です。

遺産に占める不動産の占める比率が高いと、不動産を分筆するにしても
共有するにしても、分割が困難な場合が多いです。 さらに、不動産
の占める比率が高いと、相続財産によって納税資金を準備できない
場合があるからです。

例えば、被相続人Aの相続人は、配偶者Bと長男X、次男Yの場合でした。
遺産分割協議の結果、相続人全員が法定相続割合の遺産を取得することに
なりました。

しかし、被相続人Aの遺産は不動産がほとんどであったため
長男X,次男Yは、納税資金を取得することができませんでした。

このようなケースで、配偶者B(XとYの母親)がXとYの相続税を
XとYに代わって納税する場合があります。

さて、BがXYの相続税を代わりに納付した場合に、XYに贈与税は
課税されないのでしょうか?

その答えは、きちんと対策をしておけば贈与税の課税はされません。

相続税はそもそも連帯債務です。根拠となる条文は、相続税法34条です。
『同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者は、
 その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、
 当該相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、
 互いに連帯納付の責めに任ずる。』と、定めています。

今回の事例の場合、連帯納付義務を負うBがXYの相続税を納税しても
XYは、単に相続税の納付義務がなくなっただけです。

その代わりに、Bへの返済義務が新たに発生しました。
つまり、XYの債権者が税務署からBに代わっただけです。

このような場合に、BがXYに対する債権を放棄した場合に
XYには贈与税が課税されます。

そのため、BはXYへの債権を放棄しない旨の書面を作成して
保存しておけば、贈与税のリスクを回避することができます。

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ください。

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 6月22日に成立した平成23年度税制改正について、
 6月30日付の官報で詳細部分が明らかとなりました。
 このうち今回は、主にマイカー通勤者に影響が出る通勤手当の限度額改正について、
 お届けしたいと思います

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2011.08.21

親子間で家賃を0円にした場合、贈与税は課税されるの???

親子間で家賃を0円にした場合、贈与税は課税されるの???

【法人と個人の税金対策に役立つ神戸の税理士のメルマガ】

例えば、『親が自宅以外に家屋を所有していて、長男家族が
そのうちの1つの家屋で家賃0円で生活をしている』
というようなケースは、不動産オーナーではよくあることです。

この場合、長男は家賃を支払わないことによって経済的な利益を
受けるわけですから、贈与税が課税されるとも考えられますが
一般的には、贈与税が課税されていない事例が多いようです。
なぜでしょうか?

このような場合に課税されない根拠は以下の通達によります。

「夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、
。。。(途中省略)。。。これらの特殊関係のある者間において、
無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、
法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。

ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、
強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。」(相続税基本通達9-10)

上記通達は、原則として贈与税の課税対象であることを定めていますが
「ただし」書き以降で一定の条件をクリアした場合のみ贈与税の課税の緩和を
定めています。

つまり、「利益を受ける金額が少額であること」「課税上弊害がないこと」
この二つのポイントをクリアしない場合には、贈与税が課税される
場合がありうるということです。

例えば、親が多額の借金をして高級マンションを購入し
そのマンションに、長男家族が家賃0円で生活しているような
ケースでは、贈与税が課税される場合もあるかもしれません。

毎月の家賃をいくらにするのか?という問題は、単に今回の
贈与税の問題だけにとどまらず、借地権の評価にも関係します

そのため、所有財産全体の評価に占める不動産評価額の割合、
納税資金、遺産分割案など様々な要素を考慮に入れて
検討すべき課題と考えられます。

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 「海外の遺産も日本で課税されますか?」
 上記質問に、具体的に回答しています。ご確認ください。

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  従業員の不正の報道を時折耳にします。不正が起こる責任は、
  当事者である従業員だけでなく、その会社のリスク管理体制にもあります。
  不正が起こらないよう、日頃から対策を心がけるのも経営者の大切な務めです。
 主に経理部門での対策を中心に、従業員の不正を防ぐポイントをまとめました。

2011.08.13

賃貸アパートを長男に贈与した場合の贈与税はどうなるの???

賃貸アパートを長男に贈与した場合の贈与税はどうなるの???

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父親が賃貸アパート経営をしていましたが、このアパートは
人気の物件であるため常に満室です。そこで、父親はこのアパートを
長男に贈与しました。

この場合、贈与税の計算を行うに当たってはいくつかのポイントがあります。

まず一つ目のポイントは、賃貸アパートを贈与(所有権移転)した場合には
、そのアパートに関連する敷金・預り保証金の返還債務も父親から長男に
承継されます。これは、過去の判例で明らかとなっています。

従って、上記賃貸アパートの通常の取引価格が5000万円で、預り保証金が
1000万円とした場合、父親は5000万円のアパートに1000万円の保証金返還債務を
付けて長男に贈与したことになります。

二つ目のポイントは、贈与税の計算に当たって課税対象となる財産の評価額
ですが、上記の用に債務とともに財産を贈与することを「負担付き贈与」と言いますが、

負担付き贈与の場合、贈与財産の価額は、負担がないものとした贈与財産の価額から
負担を控除した価額となります(相続税法基本通達21の2-4)

さらに、その贈与財産が土地又は家屋等の場合には、それらの財産の評価額は
相続税評価額ではなく、通常の取引価格によって評価しなければなりません
(個別通達・平成元年3月29日付直評5)。

従って、上記アパートの固定資産税評価額が仮に3500万円であっても
通常の取引価格5000万円が贈与財産となります。

上記、の二つのポイントから長男の贈与税はの課税対象は
5000万円(アパート建物)-1000万円(保証金返還債務)=4000万円となります。

そして最後に、三つ目のポイントとして、仮に預り保証金1000万円に相当する
現金も父親から長男に贈与した場合を参考までに確認しておきますと、

この場合は、長男は1000万円の現金も手にするわけですから実質的には
保証金の返還債務の負担はゼロになります。そのため、上記のような
負担付き贈与の扱いはなくなります。

その場合の、贈与税の課税対象は
3500万円(アパート固定資産税評価額)×(1-0.3(満室の借家権))=2450万円
となります。

この結果を見る限り、あえて負担付き贈与にするよりも、保証金1000万円も
長男に贈与したほうが、有利と考えられます。

しかし、一般的な贈与にするのか、負担付き贈与にするのかは個別具体的な
事例に基づいて慎重に検討する必要があるようです。

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 青色申告者の帳簿書類の保存期間は何年でしょうか?
 法人でも個人でも同じでしょうか?
 また、帳簿の種類によって期間が違うこともあるのでしょうか?

 上記質問に、具体的に回答しています。ご確認ください。

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2011.08.06

7年前贈与契約書を作成し親子で土地を贈与したが、登記は今年です。贈与税は課税されますか?解説をご覧ください。

7年前贈与契約書を作成し親子で土地を贈与したが、登記は今年です。
贈与税は課税されますか?

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 今日も、実務でよくある出来事の税務です。親子間で不動産の贈与は
よくあることです。

【事例】父親名義の土地を長男に贈与することにしました。
親子であっても公証人役場で確定日付印をもらった契約書を作成しました。

しかし、法務局で名義変更の手続きをしていなかったので登記簿上は
所有者は父親のままです。 そのため、親子間の贈与後も固定資産税は
父親が支払つづけました。

今年になって、名義変更を忘れていたことに気づき贈与の登記をしました。

【父親からの相談】
贈与は、契約時に成立していて本来はその時点で贈与税の申告をしなければ
ならなかった。しかし、うっかり7年も忘れていた。この場合時効が成立して
贈与税は課税されないのでは?

【回答】
結論から申し上げますと、今回贈与による名義変更の登記をおこなったこと
により、贈与税が課税されます。

【解説】
贈与によって財産を取得した時期は、契約書を作成している場合には
契約書の効力の発生時期とされています(一般的には、契約書の作成日付)

(根拠条文:民法549条、相続税法基本通達1の3・1の4共-8)

しかし、不動産のように登記しなければならない財産については
その取得時期の特例が以下のように定められています

「特に反証がない限りその登記又は登録があった時に贈与があったものとして
取り扱う」(根拠条文:相続税法基本通達1の3・1の4共-11)

以上より、今回の事例の場合も確定日付のある贈与契約書が存在していても
登記の日付で贈与が履行されたと考えられます。

贈与税の時効が6年間で成立するから、7年後に登記すれば贈与税を課税されなくて
すむ、という考えは間違っていますからご注意ください。

この論点につきましては、平成11年に最高裁判決があります。

親族間で贈与を行う場合には、契約書作成にとどまらず
名義変更の登記まで忘れずに行いましょう。その際に税務申告も
忘れないようにご注意ください。

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「個人事業者の方へ消費税の中間申告について」を更新しました(平成23年8月5日)
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   相続税の課税財産の計算の際、相続財産から差し引かれる債務控除について、
  被相続人が使用していたクレジットカードの相続後の引落分についても
  被相続人の債務に含まれますか?

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  どうしたらいいですか?(後篇)」というテーマです
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2011.07.30

意外と知られていませんが、祖父から孫に大学の学費を贈与しても贈与税が課税されないってご存知でしたか?

意外と知られていませんが、祖父から孫に大学の学費を贈与しても
 贈与税が課税されないってご存知でしたか?

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 祖父が孫の大学の学費全額を贈与しても贈与税は課税されません。
意外と知られていないので、根拠となる条文を明示しながら解説します。

まず最初に、相続税法では「贈与税の非課税財産」を明確に定めています

「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与
により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」(相続税法21条の3第1項2号)

さて、ここで気になるのが以下のポイントだと思います

1.「扶養義務者間」って?今回の祖父と孫の関係は該当する?
2.「教育費」って?義務教育だけじゃないの?
3.「通常必要と認められるもの」って?

以上のポイントについて簡単に解説いたします。

1の「扶養義務者間」ですが、相続税法第1条の2第1号で配偶者や直系血族を
扶養義務者と定めています。つまり、今回の祖父と孫は相続税法で定める扶養義務者に
該当するので問題ありません。

また、扶養義務者間に扶養の優先順位は法律で定められていません。

2の「教育費」とは、相続税法基本通達21の3-4で「被扶養者の教育上通常
必要と認められる学資、教材費、文具等をいい、義務教育費に限らないので
留意する」と定められています。

3の「通常必要と認められるもの」とは、相続税法基本通達21の3-6で、
「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当
 と認められる範囲の財産をいうものとする」と定められています。

以上のポイントから
父親が健在であっても、祖父から孫への大学の学費を贈与しても
贈与税は課税されません。

ただし、孫の大学の学費という名目で父親への贈与があり
実際には父親が大学の学費を支払わず家計の足しにした場合は、
贈与税の課税対象となってしまいます。

さらに、大学の学費とせずに父親が生活費の足しにしていた場合には
相続発生時に特別受益に該当する可能性があるので、ご注意ください。

2011.07.23

ほとんど報道されていませんが、源泉所得税の改正があります。

ほとんど報道されていませんが、源泉所得税の改正があります。
ご確認ください。

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東日本大震災の影響で平成23年度税法改正が、延期になっていましたが23年6月30日に23年度税法改正が公布されたことについては既にご案内のとおりです。

その中で、マスコミではほとんど報道されていませんが源泉所得税の改正がありました。

詳細につきましては、国税庁のHPで「源泉所得税の改正のあらまし 平成23年7月」というタイトルでパンフレットがDLできますのでご確認ください

ここでは、主な改正点の概略だけをご案内いたします

1.上場株式等の配当等の源泉徴収税率につきましては、、平成23年12月31日までは 所得税7%+住民税3%と軽減税率が適用されていましたが、この期限が平成25年12月31日まで延長されました。

2.自動車などを利用して通勤する人の通勤手当の非課税限度額が変わります。平成24年1月1日以降、自動車などを利用して通勤する人の非課税限度額が引下げられます。

3.住宅ローン控除の計算をする場合に、住宅の取得に当たって一定の補助金等を受け取る場合には、住宅価格から補助金等の額を控除した金額を基礎とすることになります。この改正は平成23年6月30日以後の住宅取得に適用されます

4.公的年金等の受給者が寡夫(寡婦)の場合、公的年金等の金額から特別の寡婦の場合3万円、それ以外の寡婦(寡夫)の場合2万5000円の控除後の金額で源泉徴収されることとなります。この改正は平成25年1月1日以後の公的年金等で適用されます

5.非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税制度の施行日が2年延長され、平成26年1月1日となりました。これは日本版ISAと言われている制度です。非課税口座内の上場株式については、口座開設後10年以内であれば配当等と譲渡所得については所得税及び住民税を課税しないという制度です

それ以外に、平成22年度の税法改正ですでに決定している内容で平成24年1月1日以降適用される大きな改正としては、生命保険料控除の見直しがあります

現状では、生命保険料控除と言えば一般生命保険料控除5万円と個人年金保険料控除5万円で合計10万円の控除がありますが

平成24年1月1日以降は、
一般生命保険料控除4万円、個人年金生命保険料控除4万円、介護医療保険料控除4万円で合計12万円の控除となります。ご注意ください

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東日本大震災関連の税務情報のUP DATE

・「東日本大震災により被害を受けた場合の相続税・贈与税・譲渡所得・
 登録免許税の取扱について」が更新されました
 http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/tokurei/pdf/01.pdf

・「震災特例法の施行に伴う自動車重量税の取扱について」が更新されました
 http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/tokurei/jidosha_01/230630.pdf
 
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下記の内容については、私の事務所HPのトップページに
記載がありますので、興味のある方はご確認ください

http://www.marlconsulting2.com/

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 下記のALLABOUTのURLをご覧ください
 http://profile.allabout.co.jp/pf/oumi/s/s-2016/

⇒『やさしい税務会計ニュース』
 今週は、7月1日に公表された路線価の解説を行っています

⇒『経理総務担当者のための今月のお仕事のカレンダー』

   経理総務担当者様が毎月実施すべき業務をカレンダーでご案内
  しています。ご確認ください。7月のお仕事カレンダーです

⇒『会話形式で楽しく学ぶ税務基礎講座』
 
  今月は、「源泉所得税の納付を忘れてしまいました。
  どうしたらいいですか?(後篇)」というテーマです
  是非ご覧ください

⇒『旬の特集』

  社員の退職にあたっては、行わなければならない手続きが多くあります。
  処理をスムーズにすすめるために、日頃から書式やチェックリストを
  まとめておくと便利です。また、退職者の意見は自社の組織風土改善の
  参考になる場合が少なくありません。退職者との面談を行うことを制度として、
  情報収集を行うことも重要です。

2011.07.16

親子間で無利子で金銭の貸し借りがあった場合の贈与税って!?

親子間で無利子で金銭の貸し借りがあった場合の贈与税って!?

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今日は、実際によくある質問について回答いたします。
「親子間で無利子で金銭の貸し借りがあった場合に、無利子であること
によって贈与税は課税されるのでしょうか?」という質問です。

例えば次のような事例を想定してみます

長男Aは、銀行借入の毎月の返済が厳しくなったので父親Xから残債額を
借りて銀行に一括返済した。AとXは親子間といえども金銭消費貸借契約を
締結し、毎月AはXの銀行口座に返済している。ただし、この契約書では
無利子の契約となっている。

さて、この場合の課税関係を確認します。

まず、XがAの銀行借入の一括返済のためにお金を貸した件につきましては
毎月Xの銀行口座に返済があるので、贈与税の課税はありません。

問題は、無利子の部分への贈与税課税があるかどうかです。

一般的に、無利子でお金を借りた場合には、その経済的利益の部分に
つきましては、「対価を支払わないで受けた利益」として課税されます
(相続税法9条、相基通9-10本文)

ところが、民法877条で配偶者・直系血族・兄弟姉妹には相互に
扶養義務があることを定めています。さらに、相続税の考え方は
生計を一にする三親等内の親族については、特別の事情がなくても
扶養義務者に該当すると定めています(相基達1の2-1)

このような扶養義務者相互関係の贈与については、贈与税の課税上
一定の配慮がなされます。

つまり今回の事例の用に親子間の貸し借りで無利子にすることによる
経済的利益にまで杓子定規に課税する必要は無いということです。

その点につきまして、条文では次のように定めています
「その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと
 認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。」
 (相基達9-10ただし書き)

最後に注意すべき点をお伝えします。今回の規定が適用されるのは
あくまでも、課税上弊害が無いと認められるほど少額の経済的利益であることです。

実際に、親子間でお金の貸し借りをする場合の金利の設定等につきましては
税理士に確認したうえで判断してください。

☆参考条文 相基達9-10 

(無利子の金銭貸与等)
9-10 夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、
無利子の金銭の貸与等があった場合には、
それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったもので
あるかどうかについて念査を要するのであるが、
これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の
貸与があった場合には、
法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。
ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は
課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても
妨げないものとする。

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