相続人の事業により被相続人の生計の維持が必要
東京高等裁判所は、被相続人が所有する土地上で事業を営んでいた控訴人(被相続人の親族)が
相続で取得した土地に「小規模宅地特例」が適用されるか否かを巡り争われた事件について
控訴人の控訴を棄却しました
東京高裁は、控訴人が営んでいた事業により被相続人の生計が支えられていたとはいえないことなどから
本件土地は、同特例の適用対象となる「被相続人と 生計を一 にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」
には該当しないと判断しました
生計一か否かが問題になります
被相続人の甥であり養子である相続人Aは、被相続人が所有する本件土地上で大工業を営んでいました。
相続人Aは、被相続人と同居していなかったものの、生前から日常の世話をしており
被相続人が老年期認知症にり患したことに伴って被相続人の成年後見人として
財産管理を行うことになりました。
平成26年8月に被相続人が死亡したことにより、相続人Aが本件土地を相続しました。
相続人Aが,本件土地に小規模宅地の特例の適用があることを前提に相続税の申告を行いましたが
国が更正処分等を行ったことで裁判となりました。
争点は、本件土地が「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等(特定事業用宅地等)」
に該当するか否かが問題となりました。
東京高裁の判断・・・国の更正処分等は適法
東京高裁は、まず,小規模宅地特例の趣旨について
「被相続人の事業の用に供されていた宅地等」は、被相続人の生前から
一般にそれが事業の維持のために欠くことのできないものであって
その処分について相当の制約を受けることが通常であることを踏まえて
相続財産としての担税力の有無に着目し、相続税の負担の軽減を図ることとしたものであるとし
被相続人から「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」を相続した場合も
その宅地等には担税力がないため、相続税の負担の軽減を図る必要があるとした。
そして、「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」は
相続人の生計だけでなく, 被相続人の生計 をも支えていた相続人の事業の用に供されていた宅地等を指しており
被相続人の生計が支えられていない場合には、相続人の営む事業は被相続人の生計とは関係がないため
被相続人が生前、同宅地等を処分することに制限がなく、同宅地等に担税力の減少は生じていないことから
相続人の相続税の負担を軽減するという同特例の趣旨には当たらないとの解釈を示しました
その上で相続人Aが本件土地上で営んでいた大工業により、被相続人の生計が支えられていたとはいえないため
本件土地は「被相続人と生計を一にしていた相続人(親族)の事業の用に供されていた宅地等」には該当しないと指摘したうえで
国の更正処分等は,適法と判断しました