親が自分で購入した墓石等の未払い代金の相続税債務控除適用可否
[相談]
私の家には先祖代々のお墓があるのですが、遠方にあり
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって
お墓参りが年々困難になってきています。
このため、今後の家族の負担も考えて、近くでの墓石・墓地の買い替えを検討しています。
そこでお聞きしたいのですが、私が新たな墓石・墓地等の購入契約を結び
かつ、私の死亡時にその代金が未払いとなった場合、私の相続税の計算上
それらの購入費用は私の遺産総額から差し引くことができるのでしょうか。
教えてください。
[回答]
ご相談の墓石・墓地購入についての未払い代金は、遺産総額から差し引くこと
(相続税法上の債務控除の規定を適用すること)はできません。
[解説]
1.相続税法上の債務控除とは
相続税の計算上、亡くなった方(被相続人)が残した借入金などの債務は
その遺産総額から差し引くことができます(※1)。この制度のことを
「債務控除」といいます。
このとき、遺産総額から差し引くことができる債務は
被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。
- ※1 債務を遺産総額から差し引くことができる人は
- 相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所があることなどの
- 一定の要件を満たす人で、実際にその債務を負担することになる相続人等です。
2.相続税法上の非課税財産
相続税法上、墓所、霊びょう(※2)、祭具など(※3)の価額は
遺産総額に含めない(相続税非課税財産)と定められています。
- ※2 「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石、おたまや
- (先祖の霊や貴人の霊をまつる殿堂のことで、みたまやともいわれます)
- のようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地
- その他の物件も含むものとして取り扱われています。
- ※3 上記のほか、庭内神し(ていないしんし:民家などの庭の中に祠や
- 社(やしろ)を建て神仏を祀る小規模な施設のこと)
- 神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で
- 日常礼拝の用に供しているものも相続税非課税財産に含まれますが
- 商品、骨とう品または投資の対象として所有するものは対象外とされています。
3.被相続人が生前に購入した墓石等の未払い代金の取扱い
上記2.のとおり、墓石・墓地等は相続税非課税と定められています。
このことから、相続税法上、被相続人の生存中に墓石・墓地等を買い入れ
その代金が未払いであるような場合には、その未払い代金については
上記1.の債務控除の適用がないものとして取扱われています。
したがって、今回のご相談の墓石・墓地購入費用が
ご相談者の死亡時に未払いとなった場合であっても
その未払い代金については
ご相談者の遺産総額から差し引くことはできないこととなります。
遺産分割前における預貯金の払戻し制度
[相談]
父が先日亡くなり、私が喪主として葬儀を執り行い、葬儀費用も負担しましたが
相続人間での遺産分割協議は時間がかかりそうです。
父の預金で葬儀費用の負担分を賄いたいと考えていますが
「相続人全員で遺産分割協議が成立しなければ、故人の預貯金は凍結され、引き出すことはできない」
と聞きました。
遺産分割協議が成立するまで預貯金の引き出しは全くできないのでしょうか?
[回答]
ご相談の通り、金融機関が預貯金の名義人の死亡を知ることにより
故人の預貯金の口座の入出金は停止、凍結され、故人の預貯金は
相続の手続きが終わるまで基本的に動かすことができなくなります。
しかし、このことにより、相続人が過大な負担を強いられたり
迅速な被相続人の債務の弁済に支障を生じたりすることがあるため
令和元年7月1日施行の改正民法で仮払い制度が創設されました。
当面の費用を必要とする各相続人への簡易迅速な払戻しのため、遺産分割が確定する前でも
他の相続人の同意を得ることなく被相続人の預貯金を引き出すことができようになりました(民法909条の2)。
これにより各相続人は、相続預貯金のうち口座ごとに以下の計算式で求められる額については
家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から他の相続人の同意なしで払戻しを受けることができます。
ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)
からの払戻しは150万円が上限になります。
(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)
<計算例>
普通預金720万円の場合、法定相続分2分の1の相続人(配偶者)への払戻額
720万円×1/3×1/2=120万円 < 150万円
払戻限度額 120万円
なお、これらの制度により払い戻された預貯金は、後日の遺産分割において
調整が図られることになります。
この制度の利用を考えられた場合は、金融機関へのご相談又は お近くの弁護士などの専門家へご相談をお願いいたします。
|
成年年齢引き下げによる暦年贈与の特例税率への影響
[相談]
民法改正により、令和4年(2022年)4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが
贈与税(暦年課税)の特例税率の適用については、どのような影響が生じるのでしょうか。
[回答]
令和4年(2022年)4月1日から、暦年贈与の特例税率の適用を受けられる受贈者の年齢要件が
成年年齢の引き下げに合わせて、18歳以上に改正されました。
[解説]
1. 贈与税額の基本的な計算方法
相続税法上、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については
課税価格から110万円(基礎控除額)を控除すると定められています。
また、贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を、次の表
(一般贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して
それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から
下欄の控除額を控除して計算した金額となります。
2. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
上記1.にかかわらず、相続税法上、平成27年1月1日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した者の
の年中のその財産に係る贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を次の表
(特例贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して
それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から
下欄の控除額を控除して計算した金額となります。
上記の特例における「贈与により財産を取得した者」については年齢要件が設けられており
今般の成年年齢引き下げ前は「20歳以上」と定められていましたが
令和4年(2022年)4月1日からは「18歳以上」と改正されました。
なお、上記の年齢の判定日は、贈与年の1月1日と定められていますので、ご留意ください。
国税庁の全国の富裕層への対応と『出国税』
全国の国税局等には,いわゆる超富裕層を対象に特別な管理体制を敷く重点管理富裕層プロジェクトチーム(PT)
が置かれています。
さらに,東京,大阪,名古屋,関東信越国税局管内では,特定の税務署で「上位富裕層」
を対象に特別な管理体制が敷かれています。
上位富裕層への管理体制を整備しています
国税当局では昨今,富裕層PTを全国税局等に置くなど,調査必要度の高い富裕層への取組に力が
入れられています。富裕層PTでは,「重点管理富裕層」という富裕層の中でも特に高位にいる者を
管理対象としていますが,重点管理富裕層とまではいかないクラスの富裕層についても
富裕層PTと同様に特別な管理体制を敷くべきと考えられています。
そこで試行的に,富裕層PTの対象となる重点管理富裕層を除き
一定の基準で抽出した者を「上位富裕層」と位置付け,特定の税務署において上位富裕層に対する
「専担者(税務署の所得税等担当の特別国税調査官のうち国税局が指定した者)」が配置されています
上位富裕層は,“9つある抽出基準”のいずれかに該当する者から重点管理富裕層を除いた者をいいます
詳細は不明ですが,一定の保有見込資産額などがその基準として想定されています
専任担当者の役割
上位富裕層に対する専担者は,上位富裕層,その関係個人や関係法人(上位富裕層グループ)の抽出を担います
そして,上位富裕層グループに係る資料情報の集積と分析,調査企画及び情報提供
調査企画事案の調査実施担当部署への引継ぎを行っています
また,決定した上位富裕層グループに係る上位富裕層名簿を作成し,国税局に提出します
収集した資料情報などを基に課税上の問題点を分析検討し,区分をして
その区分に応じた対応を図ることになります。
集積すべき資料情報として例えば,所得税申告書等,国外送金等調書,国外財産調書
財産債務調書,自動的情報交換資料(CRS情報含む),国外証券移管等調書
資産の所有等に関する資料,その他部内資料,マスコミ情報,インターネット情報などが挙げられます
体制のイメージ
富裕層の分類と富裕層への対応のイメージ図は下記のとおりです
出国税
このような税務当局の動きに対応して
海外への移住を考える方もいらっしゃいますが
いわゆる『出国税』への対応も事前に検討する必要が
あります
出国税に関するFAQは国税庁の下記URLをご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/pdf/02.pdf