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2024.03.16

遺産分割協議が成立しない場合の相続税の申告書

遺産分割協議が成立しない場合

【質問】

相続税の申告書は、相続開始の日から10ヶ月以内に税務署に提出

しますが、その際に遺産分割協議が成立していない場合もあります。

その場合の相続税の申告書は、どのような申告になりますか?

複数の税理士が申告する場合もあります

【回答】

(1)複数の税理士が・・・

遺産分割がもめてまったくまとまらない場合に

すべての相続人が個別に税理士と契約して相続税の

申告書を作成することもありえます。

相続税の申告書を作成するために必要な情報を

すべての相続人が同じ情報を入手できません

そのため、被相続人が同じであっても

相続税の申告書に記載の財産と債務が完全に一致しない場合が

あります

 

(2)納税資金を確保するために

遺産分割がもめてまったくまもらなくても

申告期限=納税期限であることに変わりありません

相続人全員が自己資産から納税資金を賄うことができる場合は

問題ありませんが、そうでない場合が問題となります

納税資金を確保するために、相続財産に含まれる

金融財産の一部だけでも先に遺産分割をまとめる必要があります

 

(3)相続税をすこしでも少なくするために

遺産分割協議が成立していなければ適用できない特例があります

たとえば、小規模宅地の特例は対象となる土地の

遺産分割協議が成立していなければ適用できません。

もちろん、いったん未分割で申告書を提出し

遺産分割協議が成立後に小規模宅地の特例を適用して

更正の請求を税務署に提出することもできます

 

相続税の申告書類作成業務は、相続税の申告期限までに

遺産分割協議が成立して、なおかつ納税資金を確保しておく必要があります

もちろん、遺産分割協議は相続人間あるいは弁護士を交えて

行うため税理士は関与できません。

しかし、税理士は

未分割の場合にはどのような申告書を提出することになるのか

あるいは、未分割か否かによって税負担にどれだけの差が発生するのか

という、お客様の税金に対する疑問に臨機応変に対応する必要があります

相続税の申告業務と相続税対策は

相続税専門の税理士に相談することを勧めます

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2023.12.01

市街化区域内の農地の売却

[相談]

亡父が生前に畑として利用していた市街化区域内の土地を相続しました。

今後、誰もこの土地を利用する予定がないため、私の代で売却することを検討しています。

周辺は農地の多い地域ですが、近ごろでは戸建住宅が点在するようになりました。

この土地を住宅用地として第三者へ売却することは可能でしょうか。

また売却が可能な場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

なお、水路は使用していませんが

親の代から土地改良区に毎年賦課金を支払っています。

[回答]

市街化区域内の農地であることから

土地改良区への地区除外申請手続きを行うとともに

農業委員会に対して農地転用の届出を行うことで

住宅用地として第三者への売却が可能となります。

[詳細解説]

1.土地改良区とは
土地改良区とは、土地改良法に基づいて地域の農業関係者で組織され

農業用施設(水路、農道)等の整備(新設・更新)

農地の区画整理等の土地改良事業(維持管理も含みます)を行う団体をいいます。

土地改良区が設立されると、その地域内の農業関係者全員が土地改良区の組合員とされ

当該組合員には、土地改良事業費の一部を賄うための賦課金の支払い義務が発生します。

すでに農地として耕作しなくなり

農業用施設を利用しなくなった場合でも賦課金は徴収されます。

2.必要な手続き

(1)土地改良区への地区除外申請手続き
売買による権利の移動を理由として

土地改良区への地区除外申請手続きを行う場合

土地改良法により決済金の支払いが義務付けられます。

土地改良事業費は借入金や賦課金等でも賄われており

農地が転用で除外されれば

これら費用の一部を残りの組合員で負担していくことになります

そのため

今後の負担を少しでも軽減させるために農地転用する面積に応じて決済金が請求されます。

決済金は土地改良区によって設定されますが

100~200円/㎡が目安といわれています。

管轄の土地改良区で決済金が確認できますので

それ以外にかかる費用の有無も含め事前にお問い合せされることをお勧めします。

(2)農業委員会に対する農地転用の届出

農地転用とは

農地を住宅や駐車場等の農業以外の目的に転用することをいいます。

市街化区域内の農地で転用と合わせ売買による権利の移動を行う場合

農業委員会に対して農地法第5条の届出が必要となります。

届出は、譲受人(買主)・譲渡人(売主)によって行いますが

行政書士による代行も認められています。

土地改良区への地区除外申請や農業委員会への農地転用の届出には

準備する書類も多岐にわたり時間と労力を費やします。

売却の検討をした段階で

行政書士等の専門家に相談されるとよいでしょう。

2023.11.12

代償分割が行われた場合における配偶者に対する相続税額の軽減の規定の適用可否

[相談]

甲株式会社の前社長(父)が死亡し、その妻(A)と長男(B)の2名が

その遺産を相続することになりました。

AとBによる遺産分割協議は相続税の申告期限までに整い、その結果

亡父の遺産である甲株式会社の株式(相続税評価額3億円)は長男(B)が

そのすべてを相続することとなりましたが、代わりに、B はAに対し

その2分の1相当である1億5,000万円を現金で渡しています(代償分割)。

今回のように代償分割が行われた場合であっても、Aについて

相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減の規定を適用することはできるのでしょうか。

[回答]

 ご相談の場合、配偶者に対する相続税額の軽減の規定は適用可能と考えられます。

[解説]

1.代償分割とは

代償分割とは、共同相続人又は包括受遺者のうち1人又は数人が

相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し

その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務

(代償債務)を負担する分割の方法をいいます。

このとき、代償財産の交付を受けた人(今回のご相談の場合は、B)の相続税の課税価格は

原則として、相続または遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた

代償財産の価額の合計額となり、代償財産の交付をした者(今回のご相談の場合は、A)

の相続税の課税価格は、原則として、相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から

交付をした代償財産の価額を控除した金額となります。

2.相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減制度の概要

相続税法上の配偶者に対する相続税額の軽減とは

被相続人の配偶者がその被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には

その配偶者が取得した財産については、①1億6,000万円と②配偶者の法定相続分相当額の

どちらか多い金額までは、原則として、配偶者に相続税はかからないという制度です。

ただし、相続税の申告期限までに「分割」されていない財産は

原則として、この税額軽減制度の対象にはなりません。

上記の「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により

取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい

その分割の方法が現物分割、代償分割もしくは換価分割であるか

またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問わないこととされています。

したがって、今回のご相談における代償分割された財産は

配偶者に対する相続税額の規定の適用要件における「分割された財産」に該当し

その財産は、配偶者に対する相続税額の軽減制度の対象となります。

[参考]
 相法11の2、19の2、相基通11の2-9、19の2-7、19の2-8など

2023.10.14

誤りやすい事例/未分割であった相続財産から生じた不動産所得

大阪国税局が作成した「個人課税関係 令和4年版 誤りやすい事例 所得税法」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、準確定申告で実務上間違いが多い事例の紹介です

誤った取扱い

未分割の相続財産から生ずる不動産所得について、法定相続分で申告したが

後日、法定相続分と異なる遺産分割が行われた場合は

相続時に遡及して是正しなければならないとした。

正しい取扱い

未分割の相続財産(不動産)から生ずる収入は、遺産とは別個のものであって

法定相続人各人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであるから

その帰属につき、事後の遺産分割の影響を受けることはない(最高裁平17.9.8判決)。

なお

遺産分割確定日以後の不動産収入についてはその遺産分割による相続分

により申告することとなる。

2023.08.31

保険料贈与の活用

[相談]

私の財産総額は約10億円です。相続対策として子(社会人)に対する現金贈与を

検討していましたが、贈与したお金が有効に活用されないことを懸念し

なかなか実行に踏み切れない状況です。 こうした状況で、金融機関に紹介された

コンサルタントから保険料贈与の提案を受けました。 贈与する資金の使途を明確にでき

相続発生時は死亡保険金を納税資金として活用できる点でも有効と説明を受けました。

贈与金額(保険料相当額)は相続税率や贈与税率などを考慮の上

以下の提案をいただいています。

提案内容について注意事項等があれば教えてください。

 

【提案内容】

  1. 契約者、死亡保険金受取人:子
  2. 被保険者:私
  3. 保険種類:終身保険
  4. 保険金額:3,000万円
  5. 年間保険料:250万円(10年払込)

[回答]

今回の提案内容の場合、贈与する資金の使途を明確にすることができるため

資金の使い込み防止にも有効と思われます。

ただし、元本割れの可能性など留意すべき点がいくつかありますのでご注意ください。

[詳細]

ご相談の提案内容は、コンサルタントからの説明のとおり

毎年相談者様からお子様に保険料相当額を贈与し

お子様が契約者として保険料を支払います。

相談者様が亡くなった時は、お子様が死亡保険金を受け取り

支払われた死亡保険金を納税資金として活用することができます。

また贈与された資金の使途が明確になるため

懸念されている資金の使い込み防止にも有効です。

 

保険料贈与を活用する際の注意点

 保険料贈与を活用する際の注意点は、以下のとおりです。

(1)元本割れの可能性
解約をする場合の意思決定者は契約者(お子様)となります。

保険料払込期間中に途中解約をした場合は、元本割れとなる可能性があります。

保険料贈与を行う目的、途中解約時のリスクを

契約者(お子様)自身が正しく認識した上で、手続きを行うようにしましょう。

また、外貨建て保険や変額保険を活用する場合は

為替変動や運用実績により死亡保険金や解約返戻金の受取金額が

変動する点にも注意が必要です。

(2)贈与の事実を明確にする
贈与の事実が確認できない場合、実質的な保険料負担者が

相談者様とみなされる可能性があります。

税務調査等により贈与が否認されないよう

下記の点に注意してください。

  1. ●贈与契約書を毎年作成する
  2. ●受贈者が贈与を受けたことを認識しており、受贈者自身で贈与財産の管理を行う
    ⇒贈与者は受贈者名義の銀行口座に振り込みを行う
  3. ●受贈者名義の銀行口座から生命保険料を支払う
  4. ●保険料贈与で加入した契約の生命保険料控除を、贈与者(相談者様)が受けないこと

(3)死亡保険金に対する課税

契約者(保険料負担者)、保険金受取人=子、被保険者=相談者様の場合

死亡保険金は相続税ではなく子の所得税(一時所得)の対象となります。

親の財産総額が多いほど、相続税率は高くなります。

相続税率と所得税率を比較した場合、一般的には親の財産総額が多く

子の所得が少ないほど、税負担の観点では有効と考えられます。

ただし、相続税の計算においては

死亡保険金に対する非課税制度があります。

この制度も検討するとよいでしょう。

 

(4)生前贈与加算(相続財産としての加算)

ご相談者様の相続開始にあたり、お子様が相続または遺贈により財産を取得した場合

お亡くなりになった日から遡って3年(改正後は7年)間の贈与は相続税の対象となります。

この期間内に本件の保険料贈与があれば、相続税の対象となる点に注意してください。

贈与する保険料の適正額は

親の財産に対する相続税率や贈与する保険料に対する贈与税率

子の所得税率により異なります。

2023.08.25

誤りやすい事例/結婚・子育て資金の非課税の特例を受けていた場合の相続税の加算

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 相続税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、結婚・子育て資金の贈与税の非課税の特例についてです。

誤った取扱い

孫は、祖父から令和2年4月に1,000万円の贈与を受け

結婚・子育て資金の非課税制度の適用を受けていたが

令和4年1月に祖父が死亡した。

死亡日における結婚・子育て資金口座の管理残額は300万円

(700万円は子育て資金として支出済み)であったため

相続税の計算にあたっては、管理残額300万円を相続財産に加算した。

また、受贈者(孫)は祖父の一親等の血族(その被相続人の直系卑属が相続開始前に死亡し

又は相続権を失ったため、代襲して相続人となったその被相続人の直系卑属を含む。)ではないので

相続税の計算にあたり、相続税額の2割に相当する金額を加算した。

なお、受贈者(孫)は祖父から相続又は遺贈により管理残額以外の財産を取得していない。

正しい取扱い

令和3年3月31日以前に贈与により取得した金額に係る管理残額については

受贈者が被相続人の一親等の血族に該当するか否かにかかわらず

当該管理残額に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の規定(措法18)は適用されない

(令和3年改正法附則75⑤、令和3年改正令附則29⑦)。

したがって、事例の場合、管理残額300万円に対応する相続税額については

相続税額の加算は不要である。

ただし、令和3年4月1日以後に贈与者から金銭等を取得したものがある場合における

その取得分に対応する管理残額に相当する相続税額については

相続税額の2割加算の規定が適用される(措法70の2の3⑫)。

※教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の規定により

管理残額を相続又は遺贈により取得したものとみなされる場合の

管理残額に対応する相続税額についても同様となる(措法70の2の2⑫)。

2023.08.18

いつの相続から改正が影響しますか?/生前贈与加算の改正

[相談]

生前に贈与した財産について、死亡の日からさかのぼって相続財産に加算

(以下、生前贈与加算)される期間が7年に延長されたと聞きました。

令和6年(2024年)からの適用だと雑誌に書いてありましたが

令和6年の相続から適用になるのでしょう?

[回答]

生前贈与加算の改正である、加算期間の3年超7年以内については

令和6年1月1日以後の贈与に係る相続税の計算から適用されます。

つまり、令和9年1月2日以後の相続から順次この改正の影響を受けることとなります。

[詳細]

1.生前贈与の加算

相続又は遺贈により財産を取得した人が、その相続開始前一定期間内に暦年課税に

係る贈与によって被相続人から取得した財産があるときは

その人の相続税の計算上、相続財産に当該財産の価額を加算します。

この場合の加算対象となる“一定期間内”とは、改正前は、3年以内

(その相続に係る被相続人の死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)

とされていました。

これが令和5年度税制改正により、7年以内に延長されました。

ただし、今般の改正部分である3年超7年以内に関しては

その間の生前贈与の価額の合計額から100万円を控除した残額が加算対象となります。

なお、“暦年課税”とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間のうちに

もらった(贈与を受けた)財産の合計額から基礎控除額(110万円)を

差し引いた残額に対して贈与税を計算する方式です。

2.生前贈与加算期間の推移

上記1.の令和5年度税制改正は、令和6年1月1日以後に贈与により

取得する財産に係る相続税から適用されることとなります。

具体的には、令和9年1月2日以後の相続から改正の影響を受けることとなり

徐々に加算する期間が延びていきます。

そして、令和13年1月1日以後の相続から「7年以内」となります。

2023.07.22

認知症と公正遺言証書

[相談]

母には法定相続人として私(長男)と弟の2人がいるのですが

最近、私や私の家族と同居している母が私に財産を残すために遺言を作成したいと言っております。

ただ、他方で母は軽度ではありますが認知症を患っており

主治医からは今後も症状は進行していくだろうといわれています。

母には、今のうちに上記の内容にしたがって公正証書遺言を作成してもらいたいと考えているのですが

可能でしょうか。

[回答]

1.遺言能力について

遺言者において公正証書遺言を含めて遺言を作成するにあたっては

遺言能力が必要になります(民法963条)

この遺言能力の有無は、遺言者の精神上の障害の存否・内容・程度、遺言者の年齢

遺言作成の動機や理由、相続人又は受遺者との関係といった諸般の事情が考慮されて判断されます。

そのため、認知症であることをもって直ちに遺言者の遺言能力が

否定されるわけではありませんが、症状の進行度によっては遺言能力がないと判断され
公正証書遺言を作成することができない可能性もあります。
したがって、本件のような場合には
可能な限り早めに作成に取り掛かることをお勧めいたします。

2.公正証書遺言の作成に関して

公正証書遺言を作成する場合、作成に先立ち公証人が遺言者の遺言能力を確認しますので

通常の自筆証書遺言による場合に比べて、相続開始後における遺言の有効性に関する
争いの発生を抑えることが期待できます
ただし、公正証書遺言の方法によっても遺言者の遺言能力が欠如しているとして
当該遺言が無効であると判断されたケースもあります。
東京高裁平成25年3月6日判決、東京地裁平成28年8月25日判決等。

そして、公証人による遺言者の遺言能力の確認方法については

公証人によって異なりますが、口頭で遺言者の氏名・生年月日
相続人又は受遺者と遺言者の関係、これから作成する遺言の内容の概要の聞き取りを行い
これらについて遺言者自身が理解できていれば作成可能と判断することが多いように思われます。

したがって、お母様におかれまして

この点をクリアできるのであれば公正証書遺言を作成できる可能性があります。

3.公正証書遺言の有効性を争われるリスクに備えて

相続人間で当該公正証書遺言の有効性について争いになる場合に備え

公正証書遺言作成当時における遺言者の医療記録の保管や
公正証書遺言作成時における作成過程を動画にて撮影するといった方法により
当時の遺言者の遺言能力に問題がないことを裏付ける資料を残しておくことも
紛争の早期解決に向けて有用だと考えます。
2023.06.10

教育資金、結婚・子育て資金贈与Q&Aの改訂版が公表されました

国税庁は5月26日に

「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」と

「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」について

令和5年度改正を反映した改訂版を公表しました

 

今回の改正では、教育資金贈与の非課税制度について

教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡し

その相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは

受贈者が23歳未満である場合等であっても

死亡日における管理残額が相続税の課税対象とされました

令和5年4月1日以後に取得した信託受益権等に適用されます。

 

教育資金贈与Q&Aでは、改正に伴い管理残額の計算等に関する問などが改訂されたほか

取扱金融機関に相続税の課税価格に関する確認書類等を提出したが

相続税の申告期限後に修正申告書等の提出等により相続税の課税価格の

合計額が5億円超又は5億円以下となる場合には

税務署長から取扱金融機関に通知されることから

受贈者は取扱金融機関への手続が不要であること等が示されました

 

また、両制度について、資金管理契約終了時の残額に

暦年課税の贈与税が課されるときは、一般税率(改正前:特例税率)

を適用するという見直しを受け

両Q&Aでは、資金管理契約終了時の贈与税の計算方法に関する問が追加されました

(教育資金贈与Q5-4、結婚・子育て資金贈与Q5-3)

 

加えて、両制度の資金管理契約の終了に関する調書について一部様式が変更され

「一般贈与財産とみなされる金額」の欄が追加されました

 

2023.06.02

よくある間違い・・・債権放棄に伴う株価上昇分は・・・

代表者から後継者へのみなし贈与に該当

令和5年度改正における相続時精算課税制度の見直しにより

相続時精算課税制度について、相続財産への加算不要の110万円の基礎控除が創設等されました

(令和6年1月1日以後の贈与等に適用)。

基本的に、納税者有利の改正であるため、同制度を適用した生前贈与を検討するケース

が多くなることが想定されます。

 

同制度は、相続財産への加算対象額が贈与財産の「贈与時の時価」で固定されるため

事業承継に伴う株式の贈与時に活用されることも多いですが

予期せぬ“みなし贈与”が存在する点に留意する必要があります。

例えば、会社の代表者(特定贈与者)から今後の値上がりが見込まれる株式を

後継者(精算課税適用者)に贈与する場合において

代表者が会社に貸し付けていた金銭(貸付金債権)の放棄に伴い生じた株価上昇分は

代表者から後継者へのみなし贈与として、相続財産への加算対象額に含まれることになります。

例えば

例えば、

①同族会社X社(非上場)に金銭を貸し付けている代表者(父・特定贈与者)が

②後継者(子・精算課税適用者)にX社株式(贈与時の時価3,000)を贈与した上で

③代表者がX社に係る貸付金債権を放棄し

④X社に生じた債務免除益によりX社株式の価額が500上昇した

 (贈与時の時価3,000→債権放棄時の価額3,500)とする。

 

この場合、代表者がX社に係る貸付金債権を放棄したことにより生じた

X社の債務免除益(経済的利益)は、X社が代表者から贈与で取得したものとされます

そして、同債権放棄に伴うX社株式の価額の上昇分500は、

“株主である後継者が代表者(債権放棄をした者)から贈与により取得したもの”と取り扱われます

つまり、相続財産への加算対象額は、通常であれば、X社株式の贈与時の時価3,000であるものの

債権放棄に伴うX社株式の価額の上昇分500も、後継者が“みなし贈与”により取得したものと取り扱われるため

結果、相続財産への加算対象額は3,500(X社株式の贈与時の時価3,000+上昇分500)となります

 

相続時精算課税制度を適用している場合において

債権放棄に伴う株式の価額の上昇分が相続財産への加算対象額に含まれることは

裁決事例(大裁(所・諸)令3第37号、令和4年3月16日裁決、未公表)でも示されており

同制度の適用時には改めて注意が必要となります

2023.05.26

相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が相続又は遺贈により財産を取得しない場合

今回も、大阪国税局の資料から

『相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が

相続又は遺贈により財産を取得しない場合』の相続税の申告について

ご紹介します

間違った取扱い

甲は、令和4年6月に死亡した父から相続財産を

取得しなかったが、同年5年に父から財産の贈与を受けていたことから

当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格とみなして

相続税の申告を行った

正しい取扱い

相続又は遺贈により財産を取得した者が

相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から

贈与を受けていた場合、その贈与により取得した財産の

価額を加算した価額が相続税の課税価格とみなされ

その者が相続開始の年に贈与を受けていた場合

贈与税の申告は不要となる

 

しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得していない者には

これらの規定は適用されない

 

したがって、甲は相続税の申告は不要であり

贈与については令和4年分の贈与税の申告の対象となる

 

ただし、甲が相続時精算課税適用者であった場合

又は当該贈与について相続時精算課税を適用する場合には

贈与税の申告は不要であり、相続税の課税対象となる

2023.05.19

住宅取得等資金の贈与税の特例と令和5年度税制改正

[相談]

孫が結婚を機に、マイホームを取得しようか検討しています。

そこで、結婚祝いとしてマイホームを取得するための金銭の贈与を予定していますが

マイホームの取得がいつになるか現時点ではわからないため

贈与するタイミングを待っています。

マイホームを取得するための金銭の贈与については

一定額まで贈与税が非課税となると聞いています。

これが今年(2023年)の年末までと聞きましたが

令和5年度税制改正で延長はされないのでしょうか?

[回答]

ご相談の非課税は、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度と考えられますが

こちらについては、令和5年度税制改正で延長は予定されていないため

2023年12月31日の適用期限をもって廃止となります。

[詳細]

1.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

父母や祖父母など直系尊属からの贈与により

自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築

取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下、住宅取得等資金)を取得した場合において

一定の要件を満たすときは、一定の非課税限度額までの金額について

贈与税が非課税となります。

これを「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

(以下、非課税制度)」といいます。

この非課税制度については適用期間が定められており

令和4年(2022年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日となっています。

2.令和5年度税制改正

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には

この非課税制度について何ら記載されていません。

そのため、この非課税制度は適用期限である令和5年(2023年)

12月31日の到来をもって、廃止されることが予定されます。

なお、今回の贈与について“結婚祝い”が背景にあるのならば

令和5年度税制改正により適用期限が2年延長される

「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」について

ご検討いただくとよいでしょう。

適用対象となる資金の範囲に、マイホーム取得のための金銭は含まれていませんが

結婚・子育てに要する一定の資金が対象となります。

ただし、この制度には様々な要件があります。

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2023.05.12

米ドル建て終身保険を活用した贈与は、ほんとに節税???

[相談]

3年前に父が亡くなったとき、母(現在70歳)は預金約1億円と賃貸アパート

(相続税評価額2億円)を相続しました。以後、母は二次相続の税負担を心配して

母の相続人となる私と妹に毎年100万円ずつ預金を贈与しています。

先日、母が「贈与に有効な生命保険の活用方法がある。預金にしておくよりもよい」

と銀行から生命保険の提案を受け、私と妹で検討することになりました。

先に亡くなった父は、私と妹を受取人に指定して父が保険料を払う形で契約していました。

父が契約していた形態とどのような違いがあるのか

また、今回銀行から提案されている内容について検討のポイントを教えてください。

  【銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)】

  1. 保険種類:米ドル建て終身保険
  2. 契約者・保険料負担者:私、妹(それぞれ同じ契約1件ずつ)
  3. 被保険者:母
  4. 死亡保険金受取人:契約者
  5. 保険金額:100,000$
  6. 保険料:年払8,600$(払込期間 10年)

 

[回答]

お父様が契約されていた生命保険は

支払われる死亡保険金がみなし相続財産と扱われるため

相続税の対象となります。

他方、今回銀行から提案されている保険料贈与プランについて

支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税の対象(一時所得)となります。

今回銀行から提案されている内容についての検討のポイントは、

詳細をご確認ください。

[詳細]

1.お父様が契約されていた生命保険

お父様のように自らが契約者(保険料負担者)となる生命保険契約では

支払われる死亡保険金はみなし相続財産と扱われ

他の財産と合算して相続税の対象になります。

また、受取人が相続人であれば、相続税の計算上、一定の非課税枠が適用できます。

2.保険料贈与プラン

保険料贈与プランにおける契約者(保険料負担者)は受贈者です。

お母様が亡くなったときに支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税(一時所得)の対象として扱われます。

一時所得は以下の計算方法で算出します。

課税が発生する場合は、課税対象額を他の所得と合算して税金を計算します。

保険料贈与プランは、贈与によりすでにお母様の財産から切り離された

子の資金を保険料に充てた契約であるため

受け取る死亡保険金はお母様の相続財産や相続税の計算に影響を及ぼしません。

一般的に被相続人の相続財産が多額で相続税が高く

相続人の所得が低いなど、それぞれに適用される税率の差が大きいほど

保険料贈与プランの効果が出やすいと考えられます。

 

3.今回のプランでの検討ポイント

  1. ➡想定されるお母様の相続財産全体と税率
  2. ➡子2人(相談者様と妹様)の所得、税率
  3. ➡納税資金の準備状況
  4. ➡為替変動リスク許容度
  5. ➡払込期間中にお母様からの贈与が途絶える可能性

銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)は米ドル建てであり

相続発生時の為替レートは予測不能です。そのため

支払保険料累計と死亡保険金を円で計算すると

死亡保険金が支払保険料累計を下回る可能性があります。

米ドルで受け取ることもできますが

この保険を納税資金に充てる場合は円に交換する必要があります。

為替変動に左右されるため、結果的に税金面の効果も期待したほど出ないかもしれません。

上記のポイントをおさえて、専門家に相談しながら判断されることをお勧めします。

2023.05.05

贈与税における誤りやすい事例/店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

親から住宅取得等資金の贈与を受け、店舗兼住宅を購入した。

その家屋の居住用部分の床面積が200㎡(家屋全体の床面積300㎡)

であることから、面積制限(40㎡以上240㎡以下)の要件を満たしているため

住宅取得等資金の贈与の特例の適用があるとして申告を行った。

 

正しい取扱い

店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定については

居住の用以外の用に供されている部分の床面積を含めた

家屋全体の床面積で判定することになる。

このことから、居住用部分の200㎡ではなく

家屋全体の床面積300㎡で判定することになる

(措通70の2-6で準用する70の3-6(1))。

したがって、特例の適用を受けられない。

※2人以上の者で共有されている家屋の床面積基準の判定についても

持分に対応する床面積で判定するのではなく

家屋全体の床面積で判定することになる

(措通70の2-6、70の3-6(2))。

2023.03.18

贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の非課税制度と相続時精算課税

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

父から2,500万円の贈与を受け、省エネ等住宅を新築したため

1,000万円の非課税の特例の適用を受けることとしている。

2,500万円から1,000万円を控除した残額の1,500万円については

相続時精算課税を選択できないと考え、暦年課税となるとした。

正しい取扱い

この特例を適用した後の残額については

①暦年課税の基礎控除額(110万円)又は

②相続時精算課税の特別控除額(2,500万円)選択することができる

  (措法70の3①)。

2023.03.04

贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の贈与の特例と住宅借入金等特別控除

贈与税の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、住宅借入金等特別控除の適用についてです。

誤った取扱い

令和3年中に親から贈与を受けた住宅取得等資金と住宅ローンにより

一戸建てを購入したことから、住宅取得等資金の贈与の特例を受ける贈与税の申告と

住宅借入金等特別控除の適用を受ける所得税の申告をした。

この申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

住宅借入金等の年末残高と家屋等の取得対価の額のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行った。

 

正しい取扱い

住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合における

住宅借入金等特別控除額の計算については、住宅借入金等の金額が

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を

受ける金額を控除した金額を超える場合には

この控除後の家屋等の取得対価の額が限度となる(措令26⑥㉕、措通41-23)。

よって、申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受ける金額を控除した金額と

住宅借入金等の年末残高のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行うこととなる。

2023.02.25

贈与税における誤りやすい事例/贈与資金で土地を先行取得した場合

 贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等のための金銭の贈与の特例についてです。

 

誤った取扱い

令和3年10月に父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し

令和4年2月に自己資金で家屋を建てた。

今回の土地購入契約は、「家屋の新築請負契約と同時になされたもの」ではなく

また、「家屋の新築請負契約を締結することを条件とするもの」でもなかったため

「住宅用家屋の新築若しくは取得とともに取得する土地等」に当たらず

特例の適用は受けられないとした。

 

正しい取扱い

 土地の購入に充てた2,000万円の贈与について

特例の適用を受けることができる。

 特例の適用対象となる住宅取得等資金の範囲には

住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の

翌年3月15日までに行われたものに限る。)

先行してするその敷地の用に供される

土地等の取得のための資金が含まれる(措法70の2①一、70の3①一)。

 また、贈与により取得した金銭が、土地等の取得の対価に充てられ

住宅用家屋の新築の対価に充てられた金銭がない場合であっても

当該土地等の取得の対価に充てられた金銭は住宅取得等資金に該当することとなる。

 ただし、当該贈与があった日の属する年の翌年3月15日までに

住宅用家屋の新築(新築に準ずる場合を含む。)をしていない場合には

当該贈与により取得した金銭については特例の適用はない

(措通70の2-3、70の3-2(注)1)。

2022.08.26

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度と暦年課税の基礎控除との併用可否

[相談]

私はこのたび、住宅を新築することとなりました。

それにあたって、両親からその新築費用の一部の贈与を受ける予定です。

そこでお聞きしたいのですが、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の

贈与税の非課税制度と、贈与税の暦年課税の基礎控除(110万円)の規定は

併用できるのでしょうか。

[回答]

ご相談の非課税制度は、暦年課税の基礎控除と併用可能です。

[解説]

1.直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の概要

 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税とは

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属(自分の両親、祖父母など)

からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者(※1)が

一定の要件(※2)に該当するときは、原則として

その贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額

(最大1,000万円(※3))までの金額については、贈与税の課税価格に算入しない

(=贈与税が非課税になる)という制度です。

 

  1. ※1 特定受贈者とは、直系尊属から贈与により財産を取得した個人のうち
  2. 住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日において18歳以上であって
  3. その年分の所得税法上の合計所得金額が2,000万円
  4. (住宅取得等資金を充てて新築等をした住宅用家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合には、1,000万円)
  5. 以下である人をいいます。
  6. ※2 特定受贈者が、贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の
  7. 翌年3月15日までにその住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築等のための対価に
  8. 充ててその住宅用家屋の新築等をした場合等において、同日までに新築等をした
  9. 住宅用家屋をその特定受贈者の居住の用に供すること等が要件となります。
  10. ※3 住宅資金非課税限度額は、特定受贈者ごとに
  11. その住宅用家屋が省エネ等住宅である場合には1,000万円
  12. それ以外の住宅用家屋である場合には500万円と定められています。

2.贈与税の基礎控除額との併用可否

 贈与税額は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の価額を合計して

「課税価格」を計算し、さらに、その課税価格の合計額から110万円(贈与税の暦年課税の基礎控除額)

を差し引いた金額に対して一定の贈与税率を乗じて計算した金額の合計額となります。

 上記の贈与税の基礎控除額(110万円)の規定と

上記1.の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の規定は

併用可能ですので、例えば、上記1.の住宅取得資金非課税限度額が500万円である場合には

基礎控除額110万円とあわせた610万円まで贈与税非課税となります。

[参考]
 相法21の5、措法70の2、70の2の4、70の2の5、措令40の4の2など

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