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2023.05.26

相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が相続又は遺贈により財産を取得しない場合

今回も、大阪国税局の資料から

『相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が

相続又は遺贈により財産を取得しない場合』の相続税の申告について

ご紹介します

間違った取扱い

甲は、令和4年6月に死亡した父から相続財産を

取得しなかったが、同年5年に父から財産の贈与を受けていたことから

当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格とみなして

相続税の申告を行った

正しい取扱い

相続又は遺贈により財産を取得した者が

相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から

贈与を受けていた場合、その贈与により取得した財産の

価額を加算した価額が相続税の課税価格とみなされ

その者が相続開始の年に贈与を受けていた場合

贈与税の申告は不要となる

 

しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得していない者には

これらの規定は適用されない

 

したがって、甲は相続税の申告は不要であり

贈与については令和4年分の贈与税の申告の対象となる

 

ただし、甲が相続時精算課税適用者であった場合

又は当該贈与について相続時精算課税を適用する場合には

贈与税の申告は不要であり、相続税の課税対象となる

2023.05.12

米ドル建て終身保険を活用した贈与は、ほんとに節税???

[相談]

3年前に父が亡くなったとき、母(現在70歳)は預金約1億円と賃貸アパート

(相続税評価額2億円)を相続しました。以後、母は二次相続の税負担を心配して

母の相続人となる私と妹に毎年100万円ずつ預金を贈与しています。

先日、母が「贈与に有効な生命保険の活用方法がある。預金にしておくよりもよい」

と銀行から生命保険の提案を受け、私と妹で検討することになりました。

先に亡くなった父は、私と妹を受取人に指定して父が保険料を払う形で契約していました。

父が契約していた形態とどのような違いがあるのか

また、今回銀行から提案されている内容について検討のポイントを教えてください。

  【銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)】

  1. 保険種類:米ドル建て終身保険
  2. 契約者・保険料負担者:私、妹(それぞれ同じ契約1件ずつ)
  3. 被保険者:母
  4. 死亡保険金受取人:契約者
  5. 保険金額:100,000$
  6. 保険料:年払8,600$(払込期間 10年)

 

[回答]

お父様が契約されていた生命保険は

支払われる死亡保険金がみなし相続財産と扱われるため

相続税の対象となります。

他方、今回銀行から提案されている保険料贈与プランについて

支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税の対象(一時所得)となります。

今回銀行から提案されている内容についての検討のポイントは、

詳細をご確認ください。

[詳細]

1.お父様が契約されていた生命保険

お父様のように自らが契約者(保険料負担者)となる生命保険契約では

支払われる死亡保険金はみなし相続財産と扱われ

他の財産と合算して相続税の対象になります。

また、受取人が相続人であれば、相続税の計算上、一定の非課税枠が適用できます。

2.保険料贈与プラン

保険料贈与プランにおける契約者(保険料負担者)は受贈者です。

お母様が亡くなったときに支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税(一時所得)の対象として扱われます。

一時所得は以下の計算方法で算出します。

課税が発生する場合は、課税対象額を他の所得と合算して税金を計算します。

保険料贈与プランは、贈与によりすでにお母様の財産から切り離された

子の資金を保険料に充てた契約であるため

受け取る死亡保険金はお母様の相続財産や相続税の計算に影響を及ぼしません。

一般的に被相続人の相続財産が多額で相続税が高く

相続人の所得が低いなど、それぞれに適用される税率の差が大きいほど

保険料贈与プランの効果が出やすいと考えられます。

 

3.今回のプランでの検討ポイント

  1. ➡想定されるお母様の相続財産全体と税率
  2. ➡子2人(相談者様と妹様)の所得、税率
  3. ➡納税資金の準備状況
  4. ➡為替変動リスク許容度
  5. ➡払込期間中にお母様からの贈与が途絶える可能性

銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)は米ドル建てであり

相続発生時の為替レートは予測不能です。そのため

支払保険料累計と死亡保険金を円で計算すると

死亡保険金が支払保険料累計を下回る可能性があります。

米ドルで受け取ることもできますが

この保険を納税資金に充てる場合は円に交換する必要があります。

為替変動に左右されるため、結果的に税金面の効果も期待したほど出ないかもしれません。

上記のポイントをおさえて、専門家に相談しながら判断されることをお勧めします。

2023.02.25

贈与税における誤りやすい事例/贈与資金で土地を先行取得した場合

 贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等のための金銭の贈与の特例についてです。

 

誤った取扱い

令和3年10月に父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し

令和4年2月に自己資金で家屋を建てた。

今回の土地購入契約は、「家屋の新築請負契約と同時になされたもの」ではなく

また、「家屋の新築請負契約を締結することを条件とするもの」でもなかったため

「住宅用家屋の新築若しくは取得とともに取得する土地等」に当たらず

特例の適用は受けられないとした。

 

正しい取扱い

 土地の購入に充てた2,000万円の贈与について

特例の適用を受けることができる。

 特例の適用対象となる住宅取得等資金の範囲には

住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の

翌年3月15日までに行われたものに限る。)

先行してするその敷地の用に供される

土地等の取得のための資金が含まれる(措法70の2①一、70の3①一)。

 また、贈与により取得した金銭が、土地等の取得の対価に充てられ

住宅用家屋の新築の対価に充てられた金銭がない場合であっても

当該土地等の取得の対価に充てられた金銭は住宅取得等資金に該当することとなる。

 ただし、当該贈与があった日の属する年の翌年3月15日までに

住宅用家屋の新築(新築に準ずる場合を含む。)をしていない場合には

当該贈与により取得した金銭については特例の適用はない

(措通70の2-3、70の3-2(注)1)。

2023.01.28

贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否

 贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より

ピックアップしてご紹介します。今回は、相続時精算課税についてです。

 

誤った取扱い

平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。

その後、平成12年に二男が生まれた。

令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け

それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。

 

正しい取扱い

相続時精算課税の適用に当たっては

受贈者は、贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある

(相法21の9①、措法70の2の6①)。

また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである(民法727)。

したがって、養子縁組前に生まれた長男については

伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく

また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。

なお、二男については、養子縁組後に生まれているため

伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。

2023.01.20

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/元妻への財産分与と特例の判定時期

元妻への財産分与と特例の判定時期

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法41条の5

(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)についてです。

 

誤った取扱い

令和3年中に妻と離婚し、それまで居住していたマンションを元妻へ財産分与した。

この分与により譲渡損失が生じたが、居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算

及び繰越控除の特例(措法41の5)を適用できないとした。

正しい取扱い

譲渡人の配偶者及び直系血族などの特殊関係者に対する譲渡による損失については

この特例の適用はないこととされているが

その判定時期は、譲渡の時の状況によることとされている

(措通41の5-18で重用する31の3-20)。

この場合、分与時には、分与を受けた者は分与をした者の配偶者ではないので

措法41条の5の適用要件を満たすものであれば適用することができる。

2023.01.14

遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限

[相談]

遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが

これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?

[回答]

 ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。

[詳細]

1.遺産分割に関する民法改正

これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から

何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから
早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。

しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され

多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり
そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが
所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。
 そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして
遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ

相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく
法定相続分によることになりました
(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。
この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

(※)具体的相続分とは、

民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を
事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを
踏まえて算定されるものをいいます。

2.相続税の申告納税期限

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日

(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。

たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります

(この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。

この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。
なお、相続税の納税期限は、上記申告期限と同一です。

3.未分割の場合の相続税の申告納税期限

相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」)

であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。

未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものと

みなして申告納税を行うことを指します。

その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や

「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。

その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ

これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが
一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。

その点も良く考えて、遺産分割をお考えいただければ幸いです。

2023.01.03

相続で取得した不動産の減価償却方法

[相談]

私はこのたび、相続により父から賃貸用不動産(建物や構築物など)を取得しました。

このため、私は今年分から不動産所得の確定申告を行うこととなったのですが

その不動産所得の必要経費における賃貸借不動産の減価償却費について

どのような考え方・方法で計算すればよいのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却費の計算の基礎となる取得価額等

(取得価額・未償却残高・耐用年数・経過年数)については

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額等を引き継ぐこととなります。

なお、減価償却方法(定額法、定率法など)については、原則として

ご自身で選定された償却方法により行っていただくこととなります。

[解説]

1.相続等により取得した資産の取得費等の考え方

 所得税法上、納税者が贈与・相続・遺贈等により取得した減価償却資産

(不動産所得の基因となる建物など)の取得価額は、原則的には

その減価償却資産を取得した人(今回の場合は、賃貸用不動産を相続されたご相談者)

が引き続き所有していたものとみなした場合における

その減価償却資産の取得価額に相当する金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、ご相談者が相続により取得した賃貸用不動産の取得価額は

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額をそのまま引き継ぐこととなります

(あわせて、その賃貸用不動産の未償却残高・耐用年数・経過年数も引き継ぐこととなります)。

2.相続等により取得した資産の減価償却方法

 所得税法上、納税者がその年12月31日において所有する減価償却資産につき

その償却費としてその人の不動産所得の金額、事業所得の金額等の金額の計算上

必要経費に算入する金額は、

その取得をした日及びその種類の区分に応じ償却費が毎年同一となる償却の方法(定額法)

償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法(定率法)等

の一定の方法の中から、その人がその資産について選定した償却方法

(償却方法を選定しなかった場合には、法定償却方法)

により計算した金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却方法については

亡くなられたお父様(被相続人)の減価償却方法をそのまま引き継ぐことはできず

あくまでも、ご相談者自身が選定された償却方法(選定をされなかった場合には

法定償却方法:今回のご相談の場合は定額法)により、その減価償却費を計算することとなります。

2022.09.30

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、取引相場のない株式の評価における株主区分の判定についてです。

誤った取扱い

未分割の取引相場のない株式を評価する場合

各相続人に適用されるべき評価方式を判定するに当たって

基礎となる「株式取得後の議決権の数」について

当該未分割の株式を法定相続分により取得したものとして計算した議決権の数とした。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式10,000株のうち2,500株(10,000株×1/4)を

取得したものとして判定した。

正しい取扱い

相続人ごとに、その所有する株式数にその未分割の株式数の全部を加算した数に

応じた議決権数とする

(評基通188、評価明細書通達第1表の1【3(5)イ】

     国税庁HP質疑応答事例「遺産が未分割である場合の議決権割合の判定」)。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式の全部(10,000株)を取得したものとして

それぞれ判定する。

コメント

株主区分の判定について

このような事例は間違いやすいです

ご注意ください

2022.07.08

相続等により取得した土地所有権の国庫帰属制度

[相談]

先日父親が亡くなり、土地を相続しました。私は別の場所で生活しているので

処分を考えています。

いらない土地を国にもらってもらえると聞いたのですが、可能でしょうか。

[回答]

令和5年4月27日から相続又は遺贈により土地の所有権を取得した者は

その土地を国庫に帰属させることができるようになります。

国庫に帰属させるためには、まず、法務大臣に対して承認申請手数料を支払い

承認申請します。

承認申請は、その土地が次のいずれかに該当するものであるときは

申請をすることができません。

  1. 1.建物の存する土地
  2. 2.担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 3.通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  4. 4.土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
  5. 5.境界が明らかではない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

法務大臣は承認申請に係る土地が次のいずれにも該当しないと認めるときは

 その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければなりません。

  1. 1.崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
  2. 2.土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
  3. 3.除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  4. 4.隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることが
  5.   できない土地として政令で定めるもの
  6. 5.1から4に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり
  7.   過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 

申請の内容によっては、法務局職員による当該土地の実地調査を受けることがあり

その際は、調査に協力する必要があります。

なお、承認申請が認められた後、10年分の管理に要する費用としての負担金を申請者が納付したとき

土地の所有権が国庫に帰属します。

土地の処分方法としては、売却する方法もあるので

十分検討の上で処分されたほうが良いでしょう。

その際はお近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。

2022.05.03

遺産分割前における預貯金の払戻し制度

[相談]

父が先日亡くなり、私が喪主として葬儀を執り行い、葬儀費用も負担しましたが

相続人間での遺産分割協議は時間がかかりそうです。

父の預金で葬儀費用の負担分を賄いたいと考えていますが

「相続人全員で遺産分割協議が成立しなければ、故人の預貯金は凍結され、引き出すことはできない」

と聞きました。

遺産分割協議が成立するまで預貯金の引き出しは全くできないのでしょうか?

[回答]

 ご相談の通り、金融機関が預貯金の名義人の死亡を知ることにより

故人の預貯金の口座の入出金は停止、凍結され、故人の預貯金は

相続の手続きが終わるまで基本的に動かすことができなくなります。

 しかし、このことにより、相続人が過大な負担を強いられたり

迅速な被相続人の債務の弁済に支障を生じたりすることがあるため

令和元年7月1日施行の改正民法で仮払い制度が創設されました。

当面の費用を必要とする各相続人への簡易迅速な払戻しのため、遺産分割が確定する前でも

他の相続人の同意を得ることなく被相続人の預貯金を引き出すことができようになりました(民法909条の2)。

 これにより各相続人は、相続預貯金のうち口座ごとに以下の計算式で求められる額については

家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から他の相続人の同意なしで払戻しを受けることができます。

ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)

からの払戻しは150万円が上限になります。

 

(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

  <計算例>
    普通預金720万円の場合、法定相続分2分の1の相続人(配偶者)への払戻額
    720万円×1/3×1/2=120万円 < 150万円
    払戻限度額 120万円

 

なお、これらの制度により払い戻された預貯金は、後日の遺産分割において
調整が図られることになります。
この制度の利用を考えられた場合は、金融機関へのご相談又は
お近くの弁護士などの専門家へご相談をお願いいたします。

 

 

2022.04.22

成年年齢引き下げによる暦年贈与の特例税率への影響

[相談]

民法改正により、令和4年(2022年)4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが

贈与税(暦年課税)の特例税率の適用については、どのような影響が生じるのでしょうか。

[回答]

令和4年(2022年)4月1日から、暦年贈与の特例税率の適用を受けられる受贈者の年齢要件が

成年年齢の引き下げに合わせて、18歳以上に改正されました。

[解説]

1. 贈与税額の基本的な計算方法

相続税法上、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については

課税価格から110万円(基礎控除額)を控除すると定められています。

また、贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を、次の表

(一般贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

2. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

上記1.にかかわらず、相続税法上、平成27年1月1日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した者の

の年中のその財産に係る贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を次の表

(特例贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

上記の特例における「贈与により財産を取得した者」については年齢要件が設けられており

今般の成年年齢引き下げ前は「20歳以上」と定められていましたが

令和4年(2022年)4月1日からは「18歳以上」と改正されました。

 なお、上記の年齢の判定日は、贈与年の1月1日と定められていますので、ご留意ください。

2022.03.26

45万人が活用する贈与税の暦年課税

【1】暦年課税の申告者は45万人弱

相続対策として生前贈与を活用することがあります。

ここでは2021年6月に国税庁が発表した資料(※)から

暦年課税による贈与税の申告状況をみていきます。

 

(※)国税庁「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
 2021年(令和3年)6月に発表された資料です。

申告人員は2019年分と2020年分が翌年4月末まで

それ以前の年は翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。

 

直近5年分の暦年課税(1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から基礎控除額

(110万円)を控除した残額(基礎控除後の課税価格)について

贈与者と受贈者との続柄及び受贈者の年齢に応じて贈与税額を計算するもの)

の申告状況をまとめると、下表のとおりです。

 

2020年分の申告人員は44.6万人で前年と同程度となりました。

うち申告納税額有が35.1万人、申告納税額無が9.5万人です。

2018年分以降は申告納税額有が35万人台で推移しています。

申告納税額がある割合は78.7%で2年連続の低下となりました。

 

【2】申告納税額は2,000億円台で推移

2020年分の申告納税額は2,177億円で前年より増加し

3年連続で2,000億円を超えました。1人当たり申告納税額は62万円で申告納税額と同様

前年に比べ増加しました。

2018年分以降の申告納税額は、2017年分以前より高い水準で推移しています。

暦年課税を実行するにあたっては注意点等がございます。

また、贈与税の改正の動きにも注目が集まっています。ご留意ください。

 

 

2021.12.25

配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合

[相談]

30年前、父が建売住宅を購入して、そこに家族で住んでいました。

弟はすでに独立し、長男である私は結婚後に、この家をリフォームして現在二世帯で暮らしています。

先月、父が死亡し、これから遺産分割協議をするのですが、母が死亡した後の相続を考えると

この家は母が存命の間に私が相続しておきたいと考えています。

とはいえ、母としても何かあったときにこの家から追い出されるのではないか

との懸念もあるようなので、配偶者居住権を設定しておきつつ

建物と土地は私が相続することでどうか、と提案したところ

母から了承を得ました。

弟には弟の相続分も考えて伝えたところ、母がいる手前か

概ね了承してくれています。

この相続によって相続税がいくらかかるのか試算したいのですが

仮に私がこの土地建物を相続した場合、相続税評価額はどうやって計算するのでしょうか?

[回答]

まず、建物部分については、建物全体の相続税評価額から

配偶者居住権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。

土地部分も同じく、土地全体の相続税評価額から敷地利用権の価額を

控除した金額が相続税評価額となります。

なお、土地部分については一定の要件を満たした場合

小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

[詳細]

1.配偶者居住権・敷地利用権とは

配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に

相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。

この配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合

その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して

配偶者が相続等により取得したものと考えられています。

この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。

2.配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合

ご相談のケースで、お父様(以下、被相続人)が所有していた

居住用の土地建物について、配偶者居住権・敷地利用権(以下、配偶者居住権等)

を設定した上で相続した場合の相続税評価額は

それぞれ次の算式により計算します。

建物の相続税評価額:建物全体の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額
土地の相続税評価額:土地全体の相続税評価額 - 敷地利用権の価額

いずれも

まずは配偶者居住権等の価額を計算した上で控除することとなる点にご留意ください。

なお、土地については、小規模宅地等の特例の要件を満たした場合には

小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。その点もあわせてご注意ください。

2021.12.11

未登記の建物を相続した場合

[相談]

相続した実家の建物が登記されていないことが分かりました。

建物が登記されていない理由は何が考えられるのでしょうか。

また、そのまま登記しない場合、何か問題はありますか?

[回答]

建物の未登記の要因としては、

“登記は任意である”と誤った認識をお持ちであった

という可能性が考えられます。

また、未登記の状態であると、法律上の問題の他、第三者への対抗などで

デメリットが生じると考えます。

[詳細解説]

1.建物の未登記

 建物を建築等した場合には、主に以下①→②の順に登記を行います。

  1. ①建物表題登記:建物の構造・床面積等の物理的状況を明らかにする登記
  2. ②所有権保存登記:所有権の登記のない不動産について、最初に行う所有権の登記
  3. ①は、不動産登記法により、その建物の所有権を取得してから1ヶ月以内に
  4. 登記を行わなければならないと定められており、登記を行う必要があります。
  5. 他方、②は、①のように義務ではなく任意となりますが、
  6. 住宅ローンを利用する場合は、金融機関が当該建物に抵当権を設定するため
  7. ②の登記が必須となります。

したがって、建物が未登記の理由の一つとしては、住宅ローンを利用せず建物を建築したため

②の登記が任意となり、①の登記も行う必要がないといった誤った認識のもと

未登記の状態になっていることが考えられます。実際、未登記建物は数多く存在します。

なお、登記されていない建物は、「未登記建物」といわれています。

2.未登記建物であることでの問題点

(1)法律上の問題
未登記建物であることの問題については、法律上の義務である上記1.

①の建物表題登記がなされていない

厳密にいえば罰則が科せられる可能性がある状態であることとなります。

また、相続による所有権の移転登記や住所変更登記に関しては

法律で義務付けられる改正がなされています。その点もあわせてご注意ください。

(2)第三者への対抗
未登記建物であると、その建物の所有について第三者へ主張することが困難です。

(3)税務上の問題
建物が未登記であるということは、その建物が建っている敷地部分に

建物がない状態で固定資産税が課税されている可能性が考えられます。

通常、土地の上に住宅が建っている場合の当該土地に係る固定資産税は

更地である状態よりも軽減措置が設けられています。

3.未登記建物の登記手続き

相続した未登記建物を第三者へ売却する際、上記1.①及び②の登記が必須となります。

将来の売却を予定されている場合は、予め登記しておくとよいでしょう。

なお、上記1.①には、登録免許税は課税されませんが

上記1.②の登記には課税(固定資産税評価額の4%)されますので、ご注意ください。

また、この登記手続きは、通常、土地家屋調査士もしくは司法書士

(以下、専門家)に依頼しますが、ご自身で行うことも可能です。

なお、専門家に依頼される場合は、建築当時の設計図面などがあれば

費用を軽減できる可能性がありますので

設計図面の有無について、事前に確認されるとよいでしょう。

建物全体が未登記であることの他、増築や改築部分が登記されていないこともあります。

建物が登記されている場合でも、建築当時の設計図面があれば

現状と比較し、増築や改築による未登記部分が生じていないか確認されるとよいでしょう。

未登記建物を相続された場合は、専門家に相談の上、適切に対処されることをお勧めします。

2021.12.04

相続した実家を売却したい

[相談]

親が亡くなり、実家を相続することになりました。私には持ち家があり

住む予定もないため、売却する予定です。実家は築後50年を経過し定期的な修繕も行っていないため

現状のまま利用することは困難です。

こうした場合、家屋を取り壊してから売却した方がよいのでしょうか?

[回答]

利用困難な建物が土地上に建っている場合でも、基本的には「建物解体更地渡し」の条件付きで

古家付きのまま販売を開始することが多いです。

[詳細解説]

1.固定資産税の軽減措置

古家付きのまま販売を開始する理由の一つは

固定資産税(都市計画税含む。以下同じ)の住宅用地(住宅の敷地)に対する軽減措置です。

固定資産税は、毎年1月1日現在の所有者に課税されますが、住宅用地の場合

固定資産税の計算の基礎となる課税標準額は、たとえば面積200㎡以下の小規模住宅用地であれば

固定資産税評価額(価格)の6分の1(都市計画税は3分の1)に軽減されます。

そのため建物を取り壊し更地の状態で1月1日を迎えた場合

住宅用地の軽減措置の対象外となり、固定資産税は大幅に増加します。

実務的には、不動産取引の現場では、古家付きの土地の場合は

「建物解体更地渡し」の条件付きで販売し、売買契約締結後に

建物を取り壊して更地の状態で買主へ引き渡すことが通例になっています。

ただし、早い段階で更地にした方が売りやすくなる場合もありますので

販売状況や1月1日までの期間を見計らいながら

更地の状態で販売するために、前倒しで建物の解体を行うこともあります。

2.空き家の3,000万円特別控除

建物が昭和56年5月31日以前に建築されているなど一定の要件を充たすことで

“空き家の3,000万円特別控除”といわれる税制措置が利用できる可能性があります。

この制度の利用により税負担を軽減することができますので

譲渡所得が発生する場合は、税制措置の利用可否について

事前に確認されることをお勧めします。

2021.05.08

課税時期に近い直後期末に退職金の支給が予定されていた場合の株価算定

事例

被相続人Aが100%株式を所有するX社は業績が悪化したため

2021年3月末までに希望退職者を募り、退職金1億円を

支払う予定にしていました。しかし、その直前の2021年2月に

A氏の相続が開始しました。この場合、X社の株価の算定に当たって

予定されていた退職金を計上することはできるのでしょうか?

解説

純資産価額方式により株価を算定する場合課税時期における仮決算を行い

各資産及び各負債の相続税評価額及び帳簿価額を基として評価するのが

原則です

 

しかし、一般的には課税時期に仮決算を行っていません

その場合は、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について

著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときに限り

課税時期における各資産及び各負債の金額は、直前期末の

各資産及び各負債の金額を対象として評価しても差支えない

とされています

 

また、課税時期が直後期末に近く、課税時期から直後期末までの間に

資産及び負債の金額について著しく増減がないと認められる場合には

資産及び負債について経理操作を行っているなど課税上弊害がある場合を

除き、直後期末の各資産及び負債の金額を課税時期における各資産及び

各負債の金額とみて評価額を計算して差し支えありません

回答

今回の事例の場合、課税時期と直後期末が非常に近いので

以下の要件が満たされる必要があります

・課税時期から直後期末までに資産負債について著しく変動がないこと

・経理操作を行うなど課税上弊害がある場合ではないこと

・仮決算を行っていないこと

 

そのうえで、早期退職の退職金の取扱いですが

課税時期ではあくまでも見込金額にとどまります

そのため、退職金の見込み額を計上したうえで

直後期末の資産負債の金額から純資産価額方式で

株価を算定することはできません

2021.01.23

同族会社のオーナーから会社への株式を譲渡する際の株価

制度の概要

同族企業のオーナーから会社に株式を譲渡する際の

株価の算定に当たって、多くの論点がありますが

その中の一つについて、令和2年中に最高裁判例がありました

判例に基づいて、国税庁から資産課税課情報が発表されました

その一部を、ご紹介します

 

資産課税課情報

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