賃貸住宅と電気自動車用の充電設備
[相談]
賃貸住宅の大家業を営んでいます。今回、新たに賃貸住宅を建築することになったのですが
付加価値を高めるためEV(電気自動車)用の充電設備を設置することを業者から勧められています。
しかし、EVの普及はそれほど進んでいないようにも思われ、
なによりも設置費用がかかるのでどうしようか迷っています。
賃貸住宅に電気自動車用の充電設備を設置することのメリットとデメリットを教えてください。
[回答]
「EV」というと純粋にバッテリーの電気だけで走る車をイメージしがちですが
広い意味では「ハイブリッド自動車(HV)」、「プラグインハイブリッド自動車(PHV)」
「燃料電池自動車(FCV)」も「EV」に含まれます。
このため、純粋にバッテリーの電気だけで走る自動車を「BEV(Battery Electric Vehicle)
」ということもあります。これらのうち、外部の充電設備を必要とするものが「BEV」と「PHV」です。
この「BEV」と「PHV」ですが、現時点での普及率は両者を合わせても1%強に過ぎず
我が国でエコカーといえば「HV」が代名詞という状況が続いています。
これは「BEV」と「PHV」の車種が国産車ではコンパクトカーやセダンタイプ
外国車では高級車に限られるため消費者が選択できる車種が少ない一方
「HV」はコンパクトカーから売れ筋のミニバンやSUVまで幅広い車種が揃っているという
商品選択上の理由という側面もありますが
なによりも住宅事情が大きいものと思われます。
一戸建て住宅であれば、最近では大手ハウスメーカーを中心に
EV用の200Vのコンセントが標準装備となるなどEVと親和性が高いのですが
既存の分譲マンションの場合は、管理組合の同意が必要となり充電器を設置するハードルが高く
新築でも充電設備を設置している分譲マンションはまだまだ少数です。
賃貸住宅の場合も、借主が設置を希望しても結局は家主次第ということになります。
したがって、人口が多く共同住宅の比率が高い大都市部では
住宅事情により「BEV」や「PHV」に乗りたくても乗れないという人も多く
結果的に普及の足かせとなっています。
現状のように「BEV」や「PHV」の普及が進んでいないなかで
ご質問にある新たな賃貸住宅に充電設備を導入するメリットとデメリットは以下のように考えられます。
(メリット)
- ①現時点でEV用の充電設備を導入している賃貸住宅は少ないので
- BEVやPHVを所有する入居希望者に対してはアピールポイントとなる。
- ②設置の際、国などの補助金を活用できる可能性がある。
(デメリット)
- ①現在の「BEV」や「PHV」の普及率では、充電設備を設置したとしても
- 使用を希望する入居者がなかなか現れず、費用倒れになる可能性がある。
- ②誰がどれだけ電力を使用したかの把握に工夫が必要となるとともに
- 使用料を徴収するための手間とコストがかかる。
国も共同住宅における充電設備の増加が「BEV」や「PHV」の普及の鍵と考えているようですし
電力事業者なども設置者の負担にならない形での導入を促進する施策を講じるようになっています。
賃貸住宅は今後20年、30年と稼働を続けるものですし
なによりも大切なことは長期間に渡って入居率を維持し、物件の価値を保っていくことです。
そのなかでEV用の充電設備の導入がそれにどう資するのか。
それは、立地や入居者のターゲットにより異なってきます。
したがって、自身が建てられる物件の特性をよく分析された上で導入の是非を判断されるのがよいのではないでしょうか。
固定資産税精算金がある場合の、空き家に係る3,000万円特別控除適用への留意点
ご相談
私は昨年(令和2年)1月に父を亡くし、その父から家屋とその敷地(亡くなった父の居住用家屋とその敷地)
を同年中に相続しています。諸般の事情により、今年(令和3年)の12月頃をめどにその家屋と敷地を売却する予定なのですが
その家屋と敷地の売却(譲渡)に関して、所得税法上の被相続人の居住用財産(空き家)に係る
譲渡所得の特別控除の特例(空き家に係る3,000万円の特別控除)の適用を受けることは可能でしょうか。
なお、その家屋と敷地の売却予定額は計9,950万円で、別途、固定資産税精算金60万円を買主から受け取る予定です。
回答
ご相談の場合、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用を受けることはできません。
解説1.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の概要
所得税法上、相続又は遺贈により被相続人の居住用家屋(※1)及び被相続人居住用家屋の敷地等(※2)
の取得をした相続人が、令和5年12月31日までの間に、その相続又は遺贈により取得をした被相続人居住用家屋
の譲渡など一定の譲渡をした場合には、原則として、その譲渡所得の金額から最高で3,000万円を控除することが
できると定められています。この制度を、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
(空き家に係る3,000万円の特別控除)といいます。
- ※1 昭和56年5月31日以前に建築されたことなどの一定の要件を満たすものに限ります。
- ※2 相続の開始の直前において、被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
解説2.固定資産税精算金がある場合の注意点
所得税法上、家屋や敷地の売却(譲渡)代金とは別に固定資産税精算金の支払を受ける場合には
その金額は譲渡所得の収入金額に算入することとされています。また、上記1.の被相続人の居住用財産
(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、その売却(譲渡)代金の合計額が1億円を超える
こととなるときは、適用しないと定められています。
このため、今回のご相談の場合、家屋と敷地の売却代金と固定資産税精算金との合計額が1億円を超える
(1億10万円)ことから、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
(空き家に係る3,000万円の特別控除)の適用は受けられないこととなります。