贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の贈与の特例と住宅借入金等特別控除
贈与税の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、住宅借入金等特別控除の適用についてです。
誤った取扱い
令和3年中に親から贈与を受けた住宅取得等資金と住宅ローンにより
一戸建てを購入したことから、住宅取得等資金の贈与の特例を受ける贈与税の申告と
住宅借入金等特別控除の適用を受ける所得税の申告をした。
この申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は
住宅借入金等の年末残高と家屋等の取得対価の額のどちらか少ない方で判定し
住宅借入金等特別控除額の計算を行った。
正しい取扱い
住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合における
住宅借入金等特別控除額の計算については、住宅借入金等の金額が
家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を
受ける金額を控除した金額を超える場合には
この控除後の家屋等の取得対価の額が限度となる(措令26⑥㉕、措通41-23)。
よって、申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は
家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受ける金額を控除した金額と
住宅借入金等の年末残高のどちらか少ない方で判定し
住宅借入金等特別控除額の計算を行うこととなる。
贈与税における誤りやすい事例/贈与資金で土地を先行取得した場合
贈与税の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」
より、ピックアップしてご紹介します。
今回は、住宅取得等のための金銭の贈与の特例についてです。
誤った取扱い
令和3年10月に父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し
令和4年2月に自己資金で家屋を建てた。
今回の土地購入契約は、「家屋の新築請負契約と同時になされたもの」ではなく
また、「家屋の新築請負契約を締結することを条件とするもの」でもなかったため
「住宅用家屋の新築若しくは取得とともに取得する土地等」に当たらず
特例の適用は受けられないとした。
正しい取扱い
土地の購入に充てた2,000万円の贈与について
特例の適用を受けることができる。
特例の適用対象となる住宅取得等資金の範囲には
住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の
翌年3月15日までに行われたものに限る。)
に先行してするその敷地の用に供される
土地等の取得のための資金が含まれる(措法70の2①一、70の3①一)。
また、贈与により取得した金銭が、土地等の取得の対価に充てられ
住宅用家屋の新築の対価に充てられた金銭がない場合であっても
当該土地等の取得の対価に充てられた金銭は住宅取得等資金に該当することとなる。
ただし、当該贈与があった日の属する年の翌年3月15日までに
住宅用家屋の新築(新築に準ずる場合を含む。)をしていない場合には
当該贈与により取得した金銭については特例の適用はない
(措通70の2-3、70の3-2(注)1)。
高齢者が加入する一時払終身保険と相続税対策
[相談]
父(78歳)が銀行から相続税対策として生命保険を勧められ
よく理解しないまま契約手続きの約束をしてしまいました。
現在、父は既往症があり生命保険に加入していません。
今回、高齢者でも健康状態の告知なく加入できるといわれ契約することにしたようです。
父の理解が乏しいため、契約手続きに長男である私も同席する予定です。
相続が発生したときに相続税が非課税になると説明を受けたようですが
私もよくわかりません。
一般的に相続税対策としてどのような効果が期待できるのか
また、契約前に確認しておくことなどを教えてください。
想定する父の法定相続人は、母(配偶者)、私(長男)、弟(次男)の3人です。
【銀行からの提案プラン】
- 保険種類:一時払終身保険(円建て)
- 契約者:父
- 被保険者:父
- 死亡保険金受取人:私(長男)、弟(次男)
- 保険金額:1,500万円
- 一時払保険料:1,495万円
[回答]
預金を一時払終身保険の保険料に一括して充当することで資産が生命保険に変わり
上手く設計すれば相続税の非課税枠が適用できます。
お父様の資産が多く、他に加入する生命保険がない場合
非課税枠の確保は相続税対策として有効と考えられます。
また、契約前に確認しておくことについては、詳細解説をご参照ください。
[詳細]
1.相続税対策としてどのような効果があるのか
亡くなった人が契約者、被保険者となっている生命保険で
相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の計算上
みなし相続財産として相続税の対象となりますが
受け取る金額が「500万円×法定相続人の数」までは非課税(非課税枠)として扱われます。
今回の提案プランは、お父様が他に生命保険に加入していないことを前提に
想定されるお父様の法定相続人の数にあわせて非課税枠分の1,500万円で設定されたものと考えられます。
一般的に、下記の背景が明確なケースであれば
生命保険の非課税枠確保は相続税対策として有効と考えられます。
- お父様の資産が多く、保有状況から相続税の対象となることが見込まれる
- 他に非課税枠が適用できる生命保険に加入していない
2.契約前に確認しておくこと
契約にあたっては、主に次の点に注意、確認しておきましょう。
- ①生命保険は預金と比べて流動性が低く、途中解約時の返戻金は
- 払い込んだ保険料より少ないことが多いため、経過ごとに返戻金がどれくらいになるか確認しておく
- ②契約手続き時に渡される「注意喚起情報」の内容をしっかり確認する
- ③預金を保険料に充当することでお父様の手元資金が減るため
- 生活設計に支障がないか十分に検討しておく
- ④保険会社の健全性を示す指標を確認しておく
- ⑤契約手続き後にお父様の意思が急に変わったときに備え
- クーリングオフの流れを確認しておく
- ⑥法改正により期待した税対策効果が得られない可能性や、経済情勢や金利変動によって
- 相対的に生命保険の資産価値が下がる可能性についても理解しておく
また、おそらく今回のプランでは考慮済かと思われますが、次の点にも留意しましょう。
- ①非課税枠を適用したい場合には、保険金受取人は相続人となる人
- (=非課税枠を適用できる人)になっているか確認すること
- ②民法上、保険金は相続時の遺産分割の対象とならないため
- 誰を受取人とするか慎重に検討すること
高齢者の生命保険契約においては、理解不十分なまま手続きを済ませ
後日、取り消したい等のトラブルが多いといわれています。
トラブルを避けるためにも、お父様の意思を確認し
同席するご家族の方も契約内容を一緒に確認していただくことをお勧めします。
贈与税における誤りやすい事例/贈与の翌年3月15日までに居住しない場合の適用可否
贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した
「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
誤った取扱い
令和3年中に親から住宅取得等資金の贈与を受け、翌年3月15日までに
贈与を受けた住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の取得のための対価に充てたが
令和4年3月15日までに居住しない予定であるため、特例の適用はないとした。
正しい取扱い
贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても
取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが
確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により
特例の適用が可能である(措法70の2①、70の3①)。
ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」という。)
までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため
修正申告書の提出が必要となる(措法70の2④、70の3④)。
※ 新型コロナウイルス感染症に関し、感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し
資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工期が延長されるなど
自己の責めに帰さない事由により居住期限までに居住できなかった場合は
「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものとして
居住期限の1年の延長が認められる(措法70の2⑩、70の3⑩)。
贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否
贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した
「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。今回は、相続時精算課税についてです。
誤った取扱い
平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。
その後、平成12年に二男が生まれた。
令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け
それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。
正しい取扱い
相続時精算課税の適用に当たっては
受贈者は、贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある (相法21の9①、措法70の2の6①)。 また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである(民法727)。 したがって、養子縁組前に生まれた長男については 伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。 なお、二男については、養子縁組後に生まれているため 伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。 |
土地等譲渡所得における誤りやすい事例/元妻への財産分与と特例の判定時期
元妻への財産分与と特例の判定時期
土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」
より、ピックアップしてご紹介します。
今回は、措法41条の5
(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)についてです。
誤った取扱い
令和3年中に妻と離婚し、それまで居住していたマンションを元妻へ財産分与した。
この分与により譲渡損失が生じたが、居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算
及び繰越控除の特例(措法41の5)を適用できないとした。
正しい取扱い
譲渡人の配偶者及び直系血族などの特殊関係者に対する譲渡による損失については
この特例の適用はないこととされているが
その判定時期は、譲渡の時の状況によることとされている
(措通41の5-18で重用する31の3-20)。
この場合、分与時には、分与を受けた者は分与をした者の配偶者ではないので
措法41条の5の適用要件を満たすものであれば適用することができる。
遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限
[相談]
遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが
これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?
[回答]
ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。
[詳細]
1.遺産分割に関する民法改正
これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から 何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから
早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。
しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され 多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり
そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが
所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。
そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして
遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。
たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ 相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく
法定相続分によることになりました
(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。
この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。
(※)具体的相続分とは、 民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を
事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを
踏まえて算定されるものをいいます。
2.相続税の申告納税期限 相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日 (通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。
たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります (この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。
この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。 3.未分割の場合の相続税の申告納税期限 相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」) であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。
未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものと みなして申告納税を行うことを指します。
その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や 「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。
その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが
一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。
その点も良く考えて、遺産分割をお考えいただければ幸いです。 |
相続で取得した不動産の減価償却方法
[相談]
私はこのたび、相続により父から賃貸用不動産(建物や構築物など)を取得しました。
このため、私は今年分から不動産所得の確定申告を行うこととなったのですが
その不動産所得の必要経費における賃貸借不動産の減価償却費について
どのような考え方・方法で計算すればよいのでしょうか。教えてください。
[回答]
ご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却費の計算の基礎となる取得価額等
(取得価額・未償却残高・耐用年数・経過年数)については
亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額等を引き継ぐこととなります。
なお、減価償却方法(定額法、定率法など)については、原則として
ご自身で選定された償却方法により行っていただくこととなります。
[解説]
1.相続等により取得した資産の取得費等の考え方
所得税法上、納税者が贈与・相続・遺贈等により取得した減価償却資産
(不動産所得の基因となる建物など)の取得価額は、原則的には
その減価償却資産を取得した人(今回の場合は、賃貸用不動産を相続されたご相談者)
が引き続き所有していたものとみなした場合における
その減価償却資産の取得価額に相当する金額とすると定められています。
したがって、今回のご相談の場合、ご相談者が相続により取得した賃貸用不動産の取得価額は
亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額をそのまま引き継ぐこととなります
(あわせて、その賃貸用不動産の未償却残高・耐用年数・経過年数も引き継ぐこととなります)。
2.相続等により取得した資産の減価償却方法
所得税法上、納税者がその年12月31日において所有する減価償却資産につき
その償却費としてその人の不動産所得の金額、事業所得の金額等の金額の計算上
必要経費に算入する金額は、
その取得をした日及びその種類の区分に応じ償却費が毎年同一となる償却の方法(定額法)
償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法(定率法)等
の一定の方法の中から、その人がその資産について選定した償却方法
(償却方法を選定しなかった場合には、法定償却方法)
により計算した金額とすると定められています。
したがって、今回のご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却方法については
亡くなられたお父様(被相続人)の減価償却方法をそのまま引き継ぐことはできず
あくまでも、ご相談者自身が選定された償却方法(選定をされなかった場合には
法定償却方法:今回のご相談の場合は定額法)により、その減価償却費を計算することとなります。
死亡後に相続人が受けるがん診断給付金等
[相談]
先月がんで亡くなった母の書類を整理したところ、がんと診断されたときや
がんの治療で入院した際の“給付金”と、死亡保険金が受け取れる保険(以下、がん保険)
に加入していたことがわかりました。
保険会社に連絡をいれたところ契約は有効に続いており
生前は何も手続きをしていなかったようで
給付金の請求手続きをするように言われました。
父はすでに亡くなっており、このたびの相続人は私(長女)と妹の合計2人です。
私が手続きを行いますが、受け取る給付金は相続においてどのように扱われるのでしょうか?
【契約内容】
- 保険種類:がん保険
- 契約者:母
- 被保険者:母
- 給付金受取人:被保険者(母)
- 死亡保険金受取人:私(相談者)
[回答]
ご相談のケースのように、被保険者の生前に請求手続きが行われず
死亡後に請求をする場合、給付金受取人が誰になっているかにより税金の扱いが異なります。
具体的な取扱いについては、詳細解説をご参照ください。
[詳細]
がん保険を含む医療保障の給付金は、被保険者が亡くなった後も保険契約が有効で
所定の要件を満たしていれば請求することができます。
被保険者の容態や事情により生前に請求手続きを行えず、死亡後に請求するケースは少なくありません。
この場合、誰が給付金受取人になっているかによって税金の扱いが異なります。
なお、同時に請求する死亡保険金は他の生命保険金と同様に
民法上は受取人固有の財産になりますが、相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象となります。
1.給付金受取人
(1)被保険者本人の場合
本来、被保険者(被相続人)が受け取るものであるため
死亡後に受け取る給付金は相続財産として、相続税の課税対象となります。
この場合、相続手続き上は相続人の誰が受け取ったとしても相続人共有の財産であり
未収金として遺産分割協議の対象になります。
(2)被保険者の配偶者等(直系血族・生計を一にする親族)の場合
配偶者や子など被保険者以外が受取人に指定されている場合
被保険者が生前か死亡後かに関係なく指定された受取人の財産となります。
死亡後に給付金を受け取っても受取人の財産であるため
相続税の課税対象にはなりません。
また、この場合、保険契約に基づいて病気やケガによる身体の傷害に
基因して支払いを受けるものは、所得税法上、非課税とされています。
したがって、相続税、所得税ともに課税されません。
2.ご相談のケース
ご相談のケースにおける給付金受取人は、上記1.(1)に該当します。
死亡保険金の受取人であるご相談者が給付金と死亡保険金の請求手続きを行うため
保険会社からまとめて支払われるものと想定されます。
給付金と死亡保険金は相続税の課税対象となる点では同じですが
給付金は相続人共有の財産として遺産分割協議の対象になる点で
死亡保険金とは異なります。
支払明細等によって整理する必要がありますので、ご留意ください。
財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定
財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定
財産評価の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した
「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、取引相場のない株式の評価における株主区分の判定についてです。
誤った取扱い
未分割の取引相場のない株式を評価する場合
各相続人に適用されるべき評価方式を判定するに当たって
基礎となる「株式取得後の議決権の数」について
当該未分割の株式を法定相続分により取得したものとして計算した議決権の数とした。
【具体的な事例】
未分割株式 10,000株
法定相続人 被相続人の子4名
法定相続分 4分の1
各相続人は、未分割株式10,000株のうち2,500株(10,000株×1/4)を
取得したものとして判定した。
正しい取扱い
相続人ごとに、その所有する株式数にその未分割の株式数の全部を加算した数に
応じた議決権数とする
(評基通188、評価明細書通達第1表の1【3(5)イ】
国税庁HP質疑応答事例「遺産が未分割である場合の議決権割合の判定」)。
【具体的な事例】
未分割株式 10,000株
法定相続人 被相続人の子4名
法定相続分 4分の1
各相続人は、未分割株式の全部(10,000株)を取得したものとして
それぞれ判定する。
コメント
株主区分の判定について
このような事例は間違いやすいです
ご注意ください
成年年齢引き下げによる暦年贈与の特例税率への影響
[相談]
民法改正により、令和4年(2022年)4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが
贈与税(暦年課税)の特例税率の適用については、どのような影響が生じるのでしょうか。
[回答]
令和4年(2022年)4月1日から、暦年贈与の特例税率の適用を受けられる受贈者の年齢要件が
成年年齢の引き下げに合わせて、18歳以上に改正されました。
[解説]
1. 贈与税額の基本的な計算方法
相続税法上、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については
課税価格から110万円(基礎控除額)を控除すると定められています。
また、贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を、次の表
(一般贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して
それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から
下欄の控除額を控除して計算した金額となります。
2. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
上記1.にかかわらず、相続税法上、平成27年1月1日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した者の
の年中のその財産に係る贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を次の表
(特例贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して
それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から
下欄の控除額を控除して計算した金額となります。
上記の特例における「贈与により財産を取得した者」については年齢要件が設けられており
今般の成年年齢引き下げ前は「20歳以上」と定められていましたが
令和4年(2022年)4月1日からは「18歳以上」と改正されました。
なお、上記の年齢の判定日は、贈与年の1月1日と定められていますので、ご留意ください。
45万人が活用する贈与税の暦年課税
【1】暦年課税の申告者は45万人弱
相続対策として生前贈与を活用することがあります。
ここでは2021年6月に国税庁が発表した資料(※)から
暦年課税による贈与税の申告状況をみていきます。
(※)国税庁「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
2021年(令和3年)6月に発表された資料です。
申告人員は2019年分と2020年分が翌年4月末まで
それ以前の年は翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。
直近5年分の暦年課税(1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から基礎控除額
(110万円)を控除した残額(基礎控除後の課税価格)について
贈与者と受贈者との続柄及び受贈者の年齢に応じて贈与税額を計算するもの)
の申告状況をまとめると、下表のとおりです。
2020年分の申告人員は44.6万人で前年と同程度となりました。
うち申告納税額有が35.1万人、申告納税額無が9.5万人です。
2018年分以降は申告納税額有が35万人台で推移しています。
申告納税額がある割合は78.7%で2年連続の低下となりました。
【2】申告納税額は2,000億円台で推移
2020年分の申告納税額は2,177億円で前年より増加し
3年連続で2,000億円を超えました。1人当たり申告納税額は62万円で申告納税額と同様
前年に比べ増加しました。
2018年分以降の申告納税額は、2017年分以前より高い水準で推移しています。
暦年課税を実行するにあたっては注意点等がございます。
また、贈与税の改正の動きにも注目が集まっています。ご留意ください。
住宅取得資金の贈与 贈与者との関係
[相談]
マイホームを取得するために親族から受けた資金援助については
一定の金額まで贈与税がかからない特例があると聞いています。
私は年内にマイホームの取得を予定しており
その取得資金の一部について義父から援助を受ける予定です。
この場合、この特例は使えますか?
なお、義父と養子縁組はしていません。
[回答]
ご相談のケースにおける義父からの贈与は、マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例
「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」は適用できません。
[詳細]
1.住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例
マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例
(住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例、以下、特例)は
様々な要件があります。そのうちの1つに贈与者と受贈者との間柄があります。
贈与者と受贈者との間柄(要件): 受贈者は、贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること |
2.直系尊属、直系卑属
直系尊属(卑属)の“直系”とは、自分を中心に縦の関係にある者をいいます。
(1)直系尊属
“尊属”は、自分を中心に上の者、つまり前の世代を指します。
よって直系尊属とは、自分からみて父・母・祖父・祖母などを指します。
(2)直系卑属
“卑属”は、自分を中心に下の者、つまり次の世代を指します。
よって直系卑属とは、自分からみて子・孫などを指します。
3.義父は直系尊属?
ご相談のケースは、“義父”からの贈与でした。
“義父”は、受贈者と養子縁組をしている場合を除き
受贈者からみて直系尊属には該当しません。
そのため特例の要件に該当せず、適用を受けることはできないことになります。
この“義父”との間の贈与については
暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率にも影響があります。
暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率は
『一般税率』と『特例税率』があり、特例税率の方が
『一般税率』に比べて税率が低い傾向にあるのが特徴ですが
“義父”との間の贈与は『一般税率』を適用することとなります。
なお、この特例を適用するための要件は、上記以外にもたくさんあります。
マイホームを取得するための資金贈与をお考えの場合には、ご留意ください。
配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合
[相談]
30年前、父が建売住宅を購入して、そこに家族で住んでいました。
弟はすでに独立し、長男である私は結婚後に、この家をリフォームして現在二世帯で暮らしています。
先月、父が死亡し、これから遺産分割協議をするのですが、母が死亡した後の相続を考えると
この家は母が存命の間に私が相続しておきたいと考えています。
とはいえ、母としても何かあったときにこの家から追い出されるのではないか
との懸念もあるようなので、配偶者居住権を設定しておきつつ
建物と土地は私が相続することでどうか、と提案したところ
母から了承を得ました。
弟には弟の相続分も考えて伝えたところ、母がいる手前か
概ね了承してくれています。
この相続によって相続税がいくらかかるのか試算したいのですが
仮に私がこの土地建物を相続した場合、相続税評価額はどうやって計算するのでしょうか?
[回答]
まず、建物部分については、建物全体の相続税評価額から
配偶者居住権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。
土地部分も同じく、土地全体の相続税評価額から敷地利用権の価額を
控除した金額が相続税評価額となります。
なお、土地部分については一定の要件を満たした場合
小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
[詳細]
1.配偶者居住権・敷地利用権とは
配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に
相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。
この配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合
その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して
配偶者が相続等により取得したものと考えられています。
この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。
2.配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合
ご相談のケースで、お父様(以下、被相続人)が所有していた
居住用の土地建物について、配偶者居住権・敷地利用権(以下、配偶者居住権等)
を設定した上で相続した場合の相続税評価額は
それぞれ次の算式により計算します。
建物の相続税評価額:建物全体の相続税評価額 - 配偶者居住権の価額 土地の相続税評価額:土地全体の相続税評価額 - 敷地利用権の価額 |
いずれも
まずは配偶者居住権等の価額を計算した上で控除することとなる点にご留意ください。
なお、土地については、小規模宅地等の特例の要件を満たした場合には
小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。その点もあわせてご注意ください。
相続した実家を売却したい
[相談]
親が亡くなり、実家を相続することになりました。私には持ち家があり
住む予定もないため、売却する予定です。実家は築後50年を経過し定期的な修繕も行っていないため
現状のまま利用することは困難です。
こうした場合、家屋を取り壊してから売却した方がよいのでしょうか?
[回答]
利用困難な建物が土地上に建っている場合でも、基本的には「建物解体更地渡し」の条件付きで
古家付きのまま販売を開始することが多いです。
[詳細解説]
1.固定資産税の軽減措置
古家付きのまま販売を開始する理由の一つは
固定資産税(都市計画税含む。以下同じ)の住宅用地(住宅の敷地)に対する軽減措置です。
固定資産税は、毎年1月1日現在の所有者に課税されますが、住宅用地の場合
固定資産税の計算の基礎となる課税標準額は、たとえば面積200㎡以下の小規模住宅用地であれば
固定資産税評価額(価格)の6分の1(都市計画税は3分の1)に軽減されます。
そのため建物を取り壊し更地の状態で1月1日を迎えた場合
住宅用地の軽減措置の対象外となり、固定資産税は大幅に増加します。
実務的には、不動産取引の現場では、古家付きの土地の場合は
「建物解体更地渡し」の条件付きで販売し、売買契約締結後に
建物を取り壊して更地の状態で買主へ引き渡すことが通例になっています。
ただし、早い段階で更地にした方が売りやすくなる場合もありますので
販売状況や1月1日までの期間を見計らいながら
更地の状態で販売するために、前倒しで建物の解体を行うこともあります。
2.空き家の3,000万円特別控除
建物が昭和56年5月31日以前に建築されているなど一定の要件を充たすことで
“空き家の3,000万円特別控除”といわれる税制措置が利用できる可能性があります。
この制度の利用により税負担を軽減することができますので
譲渡所得が発生する場合は、税制措置の利用可否について
事前に確認されることをお勧めします。
離婚によって元夫が元妻に自宅マンションを財産分与した場合の税金
[相談]
夫妻の離婚が成立し、元夫は元妻へマイホームを財産分与しました。
この件に関し、その財産分与を行った元夫には経済的利益がないことから
所得税の課税は行われないとの認識でよろしいでしょうか。
[回答]
ご相談の財産分与については、譲渡所得課税が行われることとなります。
詳細は下記解説をご参照ください
[解説]
1.離婚による財産分与として不動産の移転があった場合の課税関係
民法では、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して
財産の分与を請求することができる。」と定められています。
所得税法上、民法の規定による財産分与による資産の移転については
財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であることから
その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により
その資産を譲渡したこととなるものとして取り扱われています。
したがって、今回のご相談の場合、離婚による財産分与により元夫から
元妻への不動産(マイホーム)の移転が行われたことから
財産分与をした元夫に対して譲渡所得課税が行われることとなります。
2.その他留意すべき事項
離婚時の財産分与による資産の移転は贈与ではないため
所得税法上のみなし譲渡課税の規定は適用されません。
また、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例については
その適用対象となる譲渡から、その個人の配偶者その他のその個人と
一定の特別の関係(※)がある者に対してする譲渡が除かれることと定められていますが
離婚による財産分与は配偶者への譲渡には該当しないことから
他の要件を満たしていればその特例を適用することが可能となります。
- ※特別な関係には、生計を一にする親族、家屋の譲渡後その譲渡した家屋で
- 同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人などが該当します。
遺産分割における不動産の評価額
[相談]
亡夫の財産について遺産分割をしたいと考えています。
私たちには子がおらず、夫の両親もすでに亡くなっているため
相続人は私と夫の姉の2人です。
主な財産は自宅不動産と預貯金で、不動産は現在居住している
私が相続したいと考えていますが、遺産分割の際
不動産はどのような評価額を基に話し合いをすればよいでしょうか。
[回答]
不動産には固定資産税評価額、相続税評価額、時価など
様々な価格の捉え方がありますが、遺産分割の際には
基本的に相続人全員の合意があればどのような評価額を
基にしても問題ありません。
各相続人が取得する遺産の割合についても
法定相続分は定められていますが(民法900条)
相続人全員の合意があれば法定相続分に関わらず
分割の内容や取得割合を自由に定めることができます(民法907条)。
事業用資産の買換特例(面積制限5倍)
事例
甲市の自社ビル(土地40㎡と建物)を売却して、乙市で土地を800㎡取得しました
800㎡の土地の内訳は
X氏から取得した600㎡(10万円/㎡)
Y氏から取得した200㎡(20万円/㎡)
です。この場合、買換特例の適用対象となる土地とその価額はいくらですか
結論
X氏から取得した土地のうち150㎡(1500万円)
Y氏から取得した土地50㎡(1000万円)が買換資産となります
解説
買換え特例の適用に当たって、買換えにより取得した土地の面積が
譲渡した土地の面積の5倍を超える場合には、5倍を超える面積については
適用対象外となります
また、買換資産に該当する土地等を2以上取得してその合計面積が
制限面積を超える場合には以下の通りとなる
甲市の土地・・・40㎡
X氏から取得した土地・・・600㎡×10万円=6000万円・・・A
Y氏から取得した土地・・・200㎡×20万円=4000万円・・・B
以上のような場合の買換資産の取得価額の合計金額は
(A+B)×40㎡×5倍/(X氏600㎡+Y氏200㎡)=2500万円
その場合、X氏から取得した土地のうち特例適用対象は
40㎡×5倍×X氏600㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=150㎡
150㎡×10万円=1500万円
さらに、Y氏から取得した土地のうち特例適用対象は
40㎡×5倍×Y氏200㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=50㎡
50㎡×20万円=1000万円
事業用資産の買換特例の手続き(翌年買換えと先行取得)
質問
特定の事業用資産の買換えの特例を受ける場合の手続きについて教えてください
回答
・所得税確定申告書の「特例適用条文」欄に「措置法第37条」と記入する
・確定申告書に次の書類を添付する
- ①譲渡所得計算明細書
- ②登記事項証明書など買換資産の取得を証する書類
- ③譲渡資産や買換資産が特定の地域内にある旨等の市町村等の証明書
(この証明書は必要が無い場合もある)
翌年買換の場合
資産を譲渡した譲渡した日の属する年の翌年中に買換資産を取得する見込みであり
かつ、 その取得の日から1年以内に事業の用に供する見込みの場合は
確定申告書に買換え予定資産の取得価額の見積額等を記載した書類を添付しなければならない
なお、このような場合は、上記②の書類は買換資産の取得後4カ月以内に提出しなければならない
先行取得の場合
譲渡した年の前年以前に取得した資産を買換資産としてこの特例の適用を受けるためには
取得した年の翌年3月15日までに『先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書』
を提出しなければりません
事業用資産の買換特例の事例紹介1(使用貸借中の土地建物の買換え)
事例紹介1
AはBから無償で借りた土地の貸店舗用建物を建築して賃貸しています
この度、このA所有の貸店舗とB所有の底地を一括して譲渡しました。
譲渡代金でA,Bそれぞれが事業用の土地建物を取得する予定です。
この場合、A,Bそれぞれが事業用sh試案の買換え特例を適用できますか?
結論
A,Bが生計を一にする親族であれば、A,Bともに事業用資産の買換え特例を適用できます。
ただしAが買換資産とできるのは新たに取得した土地建物のうち建物部分だけとなります。
また、Bは新たに取得する土地建物のいずれも買換資産と扱うことができますが
取得した土地について5倍の面積制限が適用されます
論点整理
論点整理①使用貸借している土地が、事業用資産に該当するのか
論点整理②A,Bそれぞれが取得する土地建物は買換資産に該当するのか
論点1
Aの所有する建物が、譲渡する日の属する年の1月1日において
所有期間が10年を超えていれば建物については問題は無い。
しかし、Bが所有する敷地について使用貸借で貸し付けられているので
それが事業用といえるかどうかについて疑問が残る。
その点について、譲渡資産が所有者と生計を一にする親族の事業の用に供されている場合
については、譲渡資産は所有者にとっても事業の用に供されているものと取り扱うこととされている。
論点2
論買換資産として土地を取得する場合、譲渡資産の土地の面積の5倍を超える場合
その超える部分の面積に対応する部分は買換資産に該当しないとされています
そのため
Aの取得した土地はすべて特例適用の対象外。
B取得の土地は面積制限の範囲内で特例が適用できます