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2023.05.26

相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が相続又は遺贈により財産を取得しない場合

今回も、大阪国税局の資料から

『相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が

相続又は遺贈により財産を取得しない場合』の相続税の申告について

ご紹介します

間違った取扱い

甲は、令和4年6月に死亡した父から相続財産を

取得しなかったが、同年5年に父から財産の贈与を受けていたことから

当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格とみなして

相続税の申告を行った

正しい取扱い

相続又は遺贈により財産を取得した者が

相続開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から

贈与を受けていた場合、その贈与により取得した財産の

価額を加算した価額が相続税の課税価格とみなされ

その者が相続開始の年に贈与を受けていた場合

贈与税の申告は不要となる

 

しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得していない者には

これらの規定は適用されない

 

したがって、甲は相続税の申告は不要であり

贈与については令和4年分の贈与税の申告の対象となる

 

ただし、甲が相続時精算課税適用者であった場合

又は当該贈与について相続時精算課税を適用する場合には

贈与税の申告は不要であり、相続税の課税対象となる

2023.05.19

住宅取得等資金の贈与税の特例と令和5年度税制改正

[相談]

孫が結婚を機に、マイホームを取得しようか検討しています。

そこで、結婚祝いとしてマイホームを取得するための金銭の贈与を予定していますが

マイホームの取得がいつになるか現時点ではわからないため

贈与するタイミングを待っています。

マイホームを取得するための金銭の贈与については

一定額まで贈与税が非課税となると聞いています。

これが今年(2023年)の年末までと聞きましたが

令和5年度税制改正で延長はされないのでしょうか?

[回答]

ご相談の非課税は、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度と考えられますが

こちらについては、令和5年度税制改正で延長は予定されていないため

2023年12月31日の適用期限をもって廃止となります。

[詳細]

1.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

父母や祖父母など直系尊属からの贈与により

自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築

取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下、住宅取得等資金)を取得した場合において

一定の要件を満たすときは、一定の非課税限度額までの金額について

贈与税が非課税となります。

これを「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

(以下、非課税制度)」といいます。

この非課税制度については適用期間が定められており

令和4年(2022年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日となっています。

2.令和5年度税制改正

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には

この非課税制度について何ら記載されていません。

そのため、この非課税制度は適用期限である令和5年(2023年)

12月31日の到来をもって、廃止されることが予定されます。

なお、今回の贈与について“結婚祝い”が背景にあるのならば

令和5年度税制改正により適用期限が2年延長される

「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」について

ご検討いただくとよいでしょう。

適用対象となる資金の範囲に、マイホーム取得のための金銭は含まれていませんが

結婚・子育てに要する一定の資金が対象となります。

ただし、この制度には様々な要件があります。

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2023.05.12

米ドル建て終身保険を活用した贈与は、ほんとに節税???

[相談]

3年前に父が亡くなったとき、母(現在70歳)は預金約1億円と賃貸アパート

(相続税評価額2億円)を相続しました。以後、母は二次相続の税負担を心配して

母の相続人となる私と妹に毎年100万円ずつ預金を贈与しています。

先日、母が「贈与に有効な生命保険の活用方法がある。預金にしておくよりもよい」

と銀行から生命保険の提案を受け、私と妹で検討することになりました。

先に亡くなった父は、私と妹を受取人に指定して父が保険料を払う形で契約していました。

父が契約していた形態とどのような違いがあるのか

また、今回銀行から提案されている内容について検討のポイントを教えてください。

  【銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)】

  1. 保険種類:米ドル建て終身保険
  2. 契約者・保険料負担者:私、妹(それぞれ同じ契約1件ずつ)
  3. 被保険者:母
  4. 死亡保険金受取人:契約者
  5. 保険金額:100,000$
  6. 保険料:年払8,600$(払込期間 10年)

 

[回答]

お父様が契約されていた生命保険は

支払われる死亡保険金がみなし相続財産と扱われるため

相続税の対象となります。

他方、今回銀行から提案されている保険料贈与プランについて

支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税の対象(一時所得)となります。

今回銀行から提案されている内容についての検討のポイントは、

詳細をご確認ください。

[詳細]

1.お父様が契約されていた生命保険

お父様のように自らが契約者(保険料負担者)となる生命保険契約では

支払われる死亡保険金はみなし相続財産と扱われ

他の財産と合算して相続税の対象になります。

また、受取人が相続人であれば、相続税の計算上、一定の非課税枠が適用できます。

2.保険料贈与プラン

保険料贈与プランにおける契約者(保険料負担者)は受贈者です。

お母様が亡くなったときに支払われる死亡保険金は

受贈者の所得税(一時所得)の対象として扱われます。

一時所得は以下の計算方法で算出します。

課税が発生する場合は、課税対象額を他の所得と合算して税金を計算します。

保険料贈与プランは、贈与によりすでにお母様の財産から切り離された

子の資金を保険料に充てた契約であるため

受け取る死亡保険金はお母様の相続財産や相続税の計算に影響を及ぼしません。

一般的に被相続人の相続財産が多額で相続税が高く

相続人の所得が低いなど、それぞれに適用される税率の差が大きいほど

保険料贈与プランの効果が出やすいと考えられます。

 

3.今回のプランでの検討ポイント

  1. ➡想定されるお母様の相続財産全体と税率
  2. ➡子2人(相談者様と妹様)の所得、税率
  3. ➡納税資金の準備状況
  4. ➡為替変動リスク許容度
  5. ➡払込期間中にお母様からの贈与が途絶える可能性

銀行からの提案プラン(保険料贈与プラン)は米ドル建てであり

相続発生時の為替レートは予測不能です。そのため

支払保険料累計と死亡保険金を円で計算すると

死亡保険金が支払保険料累計を下回る可能性があります。

米ドルで受け取ることもできますが

この保険を納税資金に充てる場合は円に交換する必要があります。

為替変動に左右されるため、結果的に税金面の効果も期待したほど出ないかもしれません。

上記のポイントをおさえて、専門家に相談しながら判断されることをお勧めします。

2023.05.05

贈与税における誤りやすい事例/店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

親から住宅取得等資金の贈与を受け、店舗兼住宅を購入した。

その家屋の居住用部分の床面積が200㎡(家屋全体の床面積300㎡)

であることから、面積制限(40㎡以上240㎡以下)の要件を満たしているため

住宅取得等資金の贈与の特例の適用があるとして申告を行った。

 

正しい取扱い

店舗兼住宅の場合の床面積基準の判定については

居住の用以外の用に供されている部分の床面積を含めた

家屋全体の床面積で判定することになる。

このことから、居住用部分の200㎡ではなく

家屋全体の床面積300㎡で判定することになる

(措通70の2-6で準用する70の3-6(1))。

したがって、特例の適用を受けられない。

※2人以上の者で共有されている家屋の床面積基準の判定についても

持分に対応する床面積で判定するのではなく

家屋全体の床面積で判定することになる

(措通70の2-6、70の3-6(2))。

2023.04.21

相続時精算課税制度の贈与額から基礎控除を控除

[相談]

相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、令和5年度税制改正により

基礎控除が控除できるようになると聞きました。

これまでは基礎控除がなかったと思いますが、本当でしょうか?

 

[回答]

改正前の相続時精算課税制度は、非課税贈与額は累計で2,500万円とし

これを超えた場合に一律で20%の贈与税が課される制度で

基礎控除はありませんでした。

これが、令和5年度税制改正において

基礎控除として毎年110万円を控除できるように改正が行われました。

 

[詳細]

1.相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において

自ら選択することで適用することができる制度です。

改正前における特徴としては、主に以下のとおりです。

  1. 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則
  2. この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を
  3. 超えるまで贈与税は課されず
  4. 超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。
  5. 暦年課税とは違い、基礎控除はありません。
  6. この制度を適用することができるのは
  7. 原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり
  8. それぞれに年齢制限があります。

 

  1. この制度を選択した場合には
  2. その後の相続時精算課税に係る贈与者(以下、特定贈与者)
  3. からの贈与については、相続時精算課税制度を適用して
  4. 贈与税の計算をしなければなりません。

 

  1. 特定贈与者が亡くなった場合には
  2. 相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)
  3. の合計額を相続財産として
  4. 相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で
  5. すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。
  6. その際、控除しきれない贈与税額があるときは
  7. 相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

なお、特定贈与者と受贈者の年齢制限については

以下のとおりです。

2.令和5年度税制改正

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には

次の改正が記載されました。

  1. 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係る
  2. その年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途
  3. 課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  4. 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる
  5. 当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は
  6. 上記の控除をした後の残額とする

そしてこの改正は、2023年3月28日に法案が成立したことで

2024年(令和6年)1月1日以後に贈与により取得する財産に

係る相続税又は贈与税について適用されることとなりました。

2023.04.14

贈与税における誤りやすい事例/教育資金非課税申告書は複数の銀行で提出できるか?

贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、教育資金の非課税制度についてです。

誤った取扱い

本年、祖父から1,000万円の教育資金の贈与を受け

A銀行で教育資金非課税申告書を提出した。

その後、祖母から500万円の教育資金の贈与を受け

B銀行で教育資金非課税申告書を提出した。

教育資金非課税申告書を提出しているため

それぞれについて教育資金の非課税の特例を受けることができるとした。

正しい取扱い

教育資金非課税申告書は

受贈者がすでに教育資金非課税申告書を提出している場合には提出することはできない

(措法70の2の2⑥)。

したがって、A銀行に提出した分については

教育資金の非課税の特例を受けることができるが、B銀行に提出した分については

教育資金非税申告書を重ねて提出することができないため

教育資金の非課税の特例を受けることができない。

また、この場合は

贈与を受けた500万円が本年分の贈与税の課税価格に算入されることとなる。

なお、非課税限度額(1,500万円)までであれば

最初に教育資金非課税申告書を提出した金融機関に「追加教育資金非課税申告書」を提出すれば

教育資金の非課税の特例を受けることができる(措法70の2の2④)。

 

 

2023.04.06

贈与税における誤りやすい事例/贈与者死亡時の子育て資金口座の残額の取扱い

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和4年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、結婚・子育て資金の非課税制度関係についてです。

 

誤った取扱い

令和元年6月に祖父から1,000万円の贈与を受け

結婚・子育て資金の非課税制度の適用を受けていたが

その後、本年10月に祖父が亡くなった。

1,000万円のうち700万円は子育て資金として使用し

結婚・子育て資金口座には300万円の残額(「管理残額」という)があったが

何も手続きをしなかった。

 

正しい取扱い

贈与者が死亡した事実を知ったときは

速やかに贈与者が死亡した旨を取扱金融機関の営業所等に届け出なければならない

(措法70の2の3⑫一)。

また、贈与者が死亡した日において管理残額があるときはその管理残額は

その贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされる

(措法70の2の3⑫二)。

したがって、受贈者は取扱金融機関の営業所等に管理残額を確認し

この残額と祖父から相続又は遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって

財産を取得した各人の課税価格の合計が

遺産に係る基礎控除額を超える場合は

相続税の申告をする必要がある。

2023.03.04

贈与税における誤りやすい事例/住宅取得等資金の贈与の特例と住宅借入金等特別控除

贈与税の処理における誤りやすい項目について
大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、住宅借入金等特別控除の適用についてです。

誤った取扱い

令和3年中に親から贈与を受けた住宅取得等資金と住宅ローンにより

一戸建てを購入したことから、住宅取得等資金の贈与の特例を受ける贈与税の申告と

住宅借入金等特別控除の適用を受ける所得税の申告をした。

この申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

住宅借入金等の年末残高と家屋等の取得対価の額のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行った。

 

正しい取扱い

住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合における

住宅借入金等特別控除額の計算については、住宅借入金等の金額が

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を

受ける金額を控除した金額を超える場合には

この控除後の家屋等の取得対価の額が限度となる(措令26⑥㉕、措通41-23)。

よって、申告に当たって、住宅借入金等特別控除額の対象となる金額は

家屋等の取得対価の額から住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受ける金額を控除した金額と

住宅借入金等の年末残高のどちらか少ない方で判定し

住宅借入金等特別控除額の計算を行うこととなる。

2023.02.25

贈与税における誤りやすい事例/贈与資金で土地を先行取得した場合

 贈与税の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、住宅取得等のための金銭の贈与の特例についてです。

 

誤った取扱い

令和3年10月に父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し

令和4年2月に自己資金で家屋を建てた。

今回の土地購入契約は、「家屋の新築請負契約と同時になされたもの」ではなく

また、「家屋の新築請負契約を締結することを条件とするもの」でもなかったため

「住宅用家屋の新築若しくは取得とともに取得する土地等」に当たらず

特例の適用は受けられないとした。

 

正しい取扱い

 土地の購入に充てた2,000万円の贈与について

特例の適用を受けることができる。

 特例の適用対象となる住宅取得等資金の範囲には

住宅用家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の

翌年3月15日までに行われたものに限る。)

先行してするその敷地の用に供される

土地等の取得のための資金が含まれる(措法70の2①一、70の3①一)。

 また、贈与により取得した金銭が、土地等の取得の対価に充てられ

住宅用家屋の新築の対価に充てられた金銭がない場合であっても

当該土地等の取得の対価に充てられた金銭は住宅取得等資金に該当することとなる。

 ただし、当該贈与があった日の属する年の翌年3月15日までに

住宅用家屋の新築(新築に準ずる場合を含む。)をしていない場合には

当該贈与により取得した金銭については特例の適用はない

(措通70の2-3、70の3-2(注)1)。

2023.02.11

高齢者が加入する一時払終身保険と相続税対策

[相談]

父(78歳)が銀行から相続税対策として生命保険を勧められ

よく理解しないまま契約手続きの約束をしてしまいました。

現在、父は既往症があり生命保険に加入していません。

今回、高齢者でも健康状態の告知なく加入できるといわれ契約することにしたようです。

父の理解が乏しいため、契約手続きに長男である私も同席する予定です。

相続が発生したときに相続税が非課税になると説明を受けたようですが

私もよくわかりません。

一般的に相続税対策としてどのような効果が期待できるのか

また、契約前に確認しておくことなどを教えてください。

想定する父の法定相続人は、母(配偶者)、私(長男)、弟(次男)の3人です。

【銀行からの提案プラン】

  1. 保険種類:一時払終身保険(円建て)
  2. 契約者:父
  3. 被保険者:父
  4. 死亡保険金受取人:私(長男)、弟(次男)
  5. 保険金額:1,500万円
  6. 一時払保険料:1,495万円

[回答]

預金を一時払終身保険の保険料に一括して充当することで資産が生命保険に変わり

上手く設計すれば相続税の非課税枠が適用できます。

お父様の資産が多く、他に加入する生命保険がない場合

非課税枠の確保は相続税対策として有効と考えられます。

また、契約前に確認しておくことについては、詳細解説をご参照ください。

 

[詳細]

1.相続税対策としてどのような効果があるのか

  亡くなった人が契約者、被保険者となっている生命保険で

相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の計算上

みなし相続財産として相続税の対象となりますが

受け取る金額が「500万円×法定相続人の数」までは非課税(非課税枠)として扱われます。

  今回の提案プランは、お父様が他に生命保険に加入していないことを前提に

想定されるお父様の法定相続人の数にあわせて非課税枠分の1,500万円で設定されたものと考えられます。

 一般的に、下記の背景が明確なケースであれば

生命保険の非課税枠確保は相続税対策として有効と考えられます。

  1. お父様の資産が多く、保有状況から相続税の対象となることが見込まれる
  2. 他に非課税枠が適用できる生命保険に加入していない

2.契約前に確認しておくこと

 契約にあたっては、主に次の点に注意、確認しておきましょう。

  1. ①生命保険は預金と比べて流動性が低く、途中解約時の返戻金は
  2.  払い込んだ保険料より少ないことが多いため、経過ごとに返戻金がどれくらいになるか確認しておく
  3. ②契約手続き時に渡される「注意喚起情報」の内容をしっかり確認する
  4. ③預金を保険料に充当することでお父様の手元資金が減るため
  5.  生活設計に支障がないか十分に検討しておく
  6. ④保険会社の健全性を示す指標を確認しておく
  7. ⑤契約手続き後にお父様の意思が急に変わったときに備え
  8.  クーリングオフの流れを確認しておく
  9. ⑥法改正により期待した税対策効果が得られない可能性や、経済情勢や金利変動によって
  10.  相対的に生命保険の資産価値が下がる可能性についても理解しておく

 

また、おそらく今回のプランでは考慮済かと思われますが、次の点にも留意しましょう。

  1. ①非課税枠を適用したい場合には、保険金受取人は相続人となる人
  2.  (=非課税枠を適用できる人)になっているか確認すること
  3. ②民法上、保険金は相続時の遺産分割の対象とならないため
  4.  誰を受取人とするか慎重に検討すること

 高齢者の生命保険契約においては、理解不十分なまま手続きを済ませ

後日、取り消したい等のトラブルが多いといわれています。

トラブルを避けるためにも、お父様の意思を確認し

同席するご家族の方も契約内容を一緒に確認していただくことをお勧めします。

2023.02.04

贈与税における誤りやすい事例/贈与の翌年3月15日までに居住しない場合の適用可否

贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より

ピックアップしてご紹介します。

 

誤った取扱い

令和3年中に親から住宅取得等資金の贈与を受け、翌年3月15日までに

贈与を受けた住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の取得のための対価に充てたが

令和4年3月15日までに居住しない予定であるため、特例の適用はないとした。

 

正しい取扱い

贈与を受けた年の翌年の3月15日までに居住しない場合であっても

取得した住宅用家屋を同日後遅滞なく受贈者の居住の用に供することが

確実であると見込まれる場合には、一定の書類の添付により

特例の適用が可能である(措法70の2①、70の3①)。

ただし、贈与を受けた年の翌年の12月31日(以下「居住期限」という。)

までに受贈者の居住の用に供されていない場合は、特例の適用ができないため

修正申告書の提出が必要となる(措法70の2④、70の3④)。

※ 新型コロナウイルス感染症に関し、感染拡大防止の取組に伴う工期の見直し

資機材等の調達が困難なことや感染者の発生などにより工期が延長されるなど

自己の責めに帰さない事由により居住期限までに居住できなかった場合は

「災害に基因するやむを得ない事情」に該当するものとして

居住期限の1年の延長が認められる(措法70の2⑩、70の3⑩)。

 

 

2023.01.28

贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否

 贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より

ピックアップしてご紹介します。今回は、相続時精算課税についてです。

 

誤った取扱い

平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。

その後、平成12年に二男が生まれた。

令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け

それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。

 

正しい取扱い

相続時精算課税の適用に当たっては

受贈者は、贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある

(相法21の9①、措法70の2の6①)。

また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである(民法727)。

したがって、養子縁組前に生まれた長男については

伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく

また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。

なお、二男については、養子縁組後に生まれているため

伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。

2023.01.20

土地等譲渡所得における誤りやすい事例/元妻への財産分与と特例の判定時期

元妻への財産分与と特例の判定時期

土地等譲渡所得の処理における誤りやすい項目について

大阪国税局が作成した「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和3年分用)」

より、ピックアップしてご紹介します。

今回は、措法41条の5

(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除)についてです。

 

誤った取扱い

令和3年中に妻と離婚し、それまで居住していたマンションを元妻へ財産分与した。

この分与により譲渡損失が生じたが、居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算

及び繰越控除の特例(措法41の5)を適用できないとした。

正しい取扱い

譲渡人の配偶者及び直系血族などの特殊関係者に対する譲渡による損失については

この特例の適用はないこととされているが

その判定時期は、譲渡の時の状況によることとされている

(措通41の5-18で重用する31の3-20)。

この場合、分与時には、分与を受けた者は分与をした者の配偶者ではないので

措法41条の5の適用要件を満たすものであれば適用することができる。

2023.01.14

遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限

[相談]

遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが

これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?

[回答]

 ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。

[詳細]

1.遺産分割に関する民法改正

これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から

何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから
早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。

しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され

多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり
そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが
所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。
 そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして
遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ

相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく
法定相続分によることになりました
(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。
この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

(※)具体的相続分とは、

民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を
事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを
踏まえて算定されるものをいいます。

2.相続税の申告納税期限

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日

(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。

たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります

(この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。

この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。
なお、相続税の納税期限は、上記申告期限と同一です。

3.未分割の場合の相続税の申告納税期限

相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」)

であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。

未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものと

みなして申告納税を行うことを指します。

その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や

「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。

その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ

これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが
一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。

その点も良く考えて、遺産分割をお考えいただければ幸いです。

2023.01.07

相続人が海外に居住する場合の小規模宅地等の特例の適用可否

[相談]

  1. 下記案件で、小規模宅地の特例が適用できるかどうか
  2. ご教示ください
  3. ・被相続人は国内居住で、被相続人に配偶者はいない(本件相続発生前に死別)
  4. ・本件相続財産は、被相続人の居住の用に供されていた国内の土地、建物、現金など
  5. ・相続人は1名のみ(被相続人の子)で、その相続人に配偶者はいない
  6. ・相続人は15年以上海外に居住し、海外の企業(相続人と特別の関係はない)が
  7.  所有する賃貸不動産に居住している
  8.  (相続人の国籍は日本。また、相続人は過去に居住用家屋を一度も所有したことはない)
  9. ・本件相続開始時から相続税申告期限まで、継続して上記の土地建物を所有する(見込み)
  10. [回答]

  11. ご相談の場合、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の
  12. 適用を受けられるものと考えられます。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

相続税法上の小規模宅地等の特例とは

個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続の開始の直前において

その相続若しくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた

その被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で

一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているもので

一定のものがある場合には、その相続又は遺贈により

財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち

その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部で

この規定の適用を受けるものとして一定の方法により選択をしたもの

に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は

その小規模宅地等の価額にその小規模宅地等の区分に応じた一定の割合

(※2)を乗じて計算した金額とする、という制度です。

 ※1 特定居住用宅地等である選択特例対象宅地等については、330㎡
 ※2 特定居住用宅地等である小規模宅地等については、20%

2.特例対象宅地等の要件

 上記1.の特例対象宅地等とは、相続開始の直前において

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、一定の区分に応じ

それぞれ一定の要件に該当する被相続人の親族が相続または

遺贈により取得したものをいいます。

 その具体的な要件は、その宅地等が被相続人の居住の用に供されていたものであり

かつ、その宅地等の取得者がその被相続人の配偶者又は相続開始の直前において

その被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でない場合には

次のとおりとなります。

  1. ①居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと
  2. ②被相続人に配偶者がいないこと
  3. ③相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた
  4.  家屋に居住していた被相続人の相続人がいないこと
  5. ④相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者
  6.  取得者の3親等内の親族または取得者と特別の関係がある
  7.  一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
  8. ⑤相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前の
  9.  いずれの時においても所有していたことがないこと
  10. ⑥その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること

 したがって、今回のご相談の場合、本件土地は上記要件を満たすことから特例対象宅地等に該当し

 相続人は小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けられるものと考えられます。

 

2023.01.03

相続で取得した不動産の減価償却方法

[相談]

私はこのたび、相続により父から賃貸用不動産(建物や構築物など)を取得しました。

このため、私は今年分から不動産所得の確定申告を行うこととなったのですが

その不動産所得の必要経費における賃貸借不動産の減価償却費について

どのような考え方・方法で計算すればよいのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却費の計算の基礎となる取得価額等

(取得価額・未償却残高・耐用年数・経過年数)については

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額等を引き継ぐこととなります。

なお、減価償却方法(定額法、定率法など)については、原則として

ご自身で選定された償却方法により行っていただくこととなります。

[解説]

1.相続等により取得した資産の取得費等の考え方

 所得税法上、納税者が贈与・相続・遺贈等により取得した減価償却資産

(不動産所得の基因となる建物など)の取得価額は、原則的には

その減価償却資産を取得した人(今回の場合は、賃貸用不動産を相続されたご相談者)

が引き続き所有していたものとみなした場合における

その減価償却資産の取得価額に相当する金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、ご相談者が相続により取得した賃貸用不動産の取得価額は

亡くなられたお父様(被相続人)の取得価額をそのまま引き継ぐこととなります

(あわせて、その賃貸用不動産の未償却残高・耐用年数・経過年数も引き継ぐこととなります)。

2.相続等により取得した資産の減価償却方法

 所得税法上、納税者がその年12月31日において所有する減価償却資産につき

その償却費としてその人の不動産所得の金額、事業所得の金額等の金額の計算上

必要経費に算入する金額は、

その取得をした日及びその種類の区分に応じ償却費が毎年同一となる償却の方法(定額法)

償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法(定率法)等

の一定の方法の中から、その人がその資産について選定した償却方法

(償却方法を選定しなかった場合には、法定償却方法)

により計算した金額とすると定められています。

  したがって、今回のご相談の場合、相続された賃貸用不動産の減価償却方法については

亡くなられたお父様(被相続人)の減価償却方法をそのまま引き継ぐことはできず

あくまでも、ご相談者自身が選定された償却方法(選定をされなかった場合には

法定償却方法:今回のご相談の場合は定額法)により、その減価償却費を計算することとなります。

2022.11.10

相続における土地・家屋名寄帳の使用用途

[相談]

先日、父が亡くなりました。

父は生前、実家の土地建物を祖父から相続したと話していました。

父名義になっているのであれば名義を変更しなければならないと思うのですが

本当に父が相続していたのかも分かりません。調べるにはどうしたらよいですか。

[回答]

不動産を所有している可能性のある市町村が分かっているのであれば

名寄帳の写しを取得されるとよいでしょう。

[解説]

 名寄帳とは、固定資産の状況や価格を明らかにするために

市町村が作成している固定資産課税台帳(地方税法(以下、法)第380条)

を所有者別にまとめたものです。

 固定資産課税台帳には、所有者の氏名・住所、所在地(地番・家屋番号)

や面積、固定資産税の評価額・課税標準額・税額等が記載されていますので

名寄帳を取得すれば、亡くなられた方が所有している不動産の詳細が分からなくても

同じ市町村内の所有不動産の情報を一覧として確認することができます。

〈依頼するときのポイント〉

 名寄帳を発行してもらう際には、共有名義(①)のものや免税点未満(②)

のものについても記載してもらうよう依頼しましょう。

  1. ①共有名義の場合、納税通知書は代表者のみに送付されます。
  2. 代表者が亡くなった本人ではなく他の共有者になっていると
  3. その共有不動産については亡くなった本人宛に納税通知書が届きません。
  4. ②同一名義人が所有する不動産の課税標準額の合計が
  5. 土地であれば30万円・家屋であれば20万円・償却資産であれば
  6. 150万円未満であるものについては、課税されません
  7. (今回は免税点未満と表現します。)(法第351条)。
  8. 相続登記の漏れを防ぐため、共有名義のものや免税点未満のもの
  9. についても記載してもらいましょう。

 市町村は名寄帳を備えなければならないと決められています

(法第387条)が、市町村によっては納税通知書と一緒に課税明細書を

同封している等の理由のため、名寄帳の写しを交付していないところもあります。

その場合は、どのようにすれば亡くなった本人が所有するすべての

不動産を確認できるかを役所の方に確認し、その際も

上記の共有名義のものや免税点未満のものについて確認してもらうよう依頼しましょう。

 近年、相続登記がされない等の理由で所有者不明土地

(所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても所在が不明で連絡がつかない土地)

が増えており、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まない等の事態になっています。

 このような問題を減らし、予防するため、令和6年4月から相続登記が義務化されます

(不動産登記法第76条の2)。

もし、亡くなられた方が複数の市町村で不動産を所有している可能性があれば

相続登記に抜け漏れがないよう、

可能性のあるすべての市町村に名寄せ請求して確認することをお勧めします

2022.10.07

相続で契約者変更をした保険の税金

[相談]

 亡くなった父の相続手続きにあたり、父が管理していた書類を整理したところ

契約者が父、被保険者が私(A)になっている生命保険が見つかりました。

2年後満期になったときに満期保険金がおりる契約です。

保険会社に確認したところ、契約者を父から私に変更して引き継ぐよう案内され

この手続きは完了しました。

 引き継いだ生命保険は、父の相続に係る相続税においてどのように扱われるのでしょうか。

また、引き継いだ後、私が受け取る満期保険金の税金についても教えてください。

 

【契約内容】

  1. 保険種類:養老保険
  2. 保険期間:10年満期(残2年)
  3. 保険金額(死亡・満期):500万円
  4. 保険料払込方法:全期前納払い(全額父負担)
  5. 契約者:父(契約引継ぎ後:A)
  6. 被保険者:A
  7. 死亡保険金受取人:父(契約引継ぎ後:Aの配偶者)
  8. 満期保険金受取人:父(契約引継ぎ後:A)

[回答]

 ご相談のケースでは、相続により引き継いだ生命保険は
「生命保険に関する権利」として
お父様がお亡くなりになった時点の解約返戻金相当額に未経過保険料等を加算等した額が相続税の課税対象となります。また、質問者(A)様が受け取ることとなる満期保険金は、所得税(一時所得)の対象となります。

[詳細]

1.被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合

被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合は、契約者の変更を行います。
変更後の新しい契約者は、その契約の権利を引き継ぐことになります。

2.相続時の税務上の取扱い

引き継いだ生命保険は、「生命保険に関する権利」として相続税の課税対象となります。

(1)評価額

評価額は、原則、契約者が死亡した時点の解約返戻金の額となります。

ただし、ご相談のケースのように、保険料が前納されており解約返戻金とは別に受け取ることができる未経過保険料がある場合や、配当金等がある場合は、解約返戻金に未経過保険料や配当金の額を加えた額が評価額になります。

なお、解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合は、当該金額を控除することができます。

(2)相続財産の評価

“生命保険”となると、死亡保険金の非課税枠を思い浮かべるかと思います。

しかし、ご相談のケースは保険事故が発生していない生命保険であり、本来の財産として取扱われます。死亡保険金の非課税枠(※)の適用ができる被相続人の死亡を保険事故として受け取る生命保険とは異なるため、死亡保険金の非課税枠を適用することはできません。

  1. ※(500万円×法定相続人の数)を限度として、相続税の計算上非課税とすることができる制度です。

3.満期保険金に係る税務上の取扱い

将来質問者(A)様が受け取る満期保険金は、契約者と満期保険金受取人が同一であるため、所得税(一時所得)の対象となります。一時所得の計算においては、相続により権利を引き継いだ生命保険は、引き継いだ契約者自らが当初から保険料を負担したものとして取扱います。

なお、契約者が被保険者より先に亡くなって引き継がれる生命保険は、相続財産の確認において漏れやすいため、税制改正により保険会社から税務署へ発行される調書の見直しがされており、現状では死亡により契約者が変更された一定の契約については、一定事項を記載した支払調書が所轄税務署長へ提出されることとなっています。

税務署にとっては死亡による契約者変更の事実を把握しやすくなりましたが、ご遺族としてはどのように扱えばよいか分かりづらい契約形態であることには変わりありません。

2022.09.30

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価における誤りやすい事例/株式が未分割である場合の議決権割合の判定

財産評価の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した

「資産課税関係 誤りやすい事例 財産評価関係 令和2年分」より

ピックアップしてご紹介します。

今回は、取引相場のない株式の評価における株主区分の判定についてです。

誤った取扱い

未分割の取引相場のない株式を評価する場合

各相続人に適用されるべき評価方式を判定するに当たって

基礎となる「株式取得後の議決権の数」について

当該未分割の株式を法定相続分により取得したものとして計算した議決権の数とした。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式10,000株のうち2,500株(10,000株×1/4)を

取得したものとして判定した。

正しい取扱い

相続人ごとに、その所有する株式数にその未分割の株式数の全部を加算した数に

応じた議決権数とする

(評基通188、評価明細書通達第1表の1【3(5)イ】

     国税庁HP質疑応答事例「遺産が未分割である場合の議決権割合の判定」)。

 【具体的な事例】
  未分割株式 10,000株
  法定相続人 被相続人の子4名
  法定相続分 4分の1

各相続人は、未分割株式の全部(10,000株)を取得したものとして

それぞれ判定する。

コメント

株主区分の判定について

このような事例は間違いやすいです

ご注意ください

2022.05.03

遺産分割前における預貯金の払戻し制度

[相談]

父が先日亡くなり、私が喪主として葬儀を執り行い、葬儀費用も負担しましたが

相続人間での遺産分割協議は時間がかかりそうです。

父の預金で葬儀費用の負担分を賄いたいと考えていますが

「相続人全員で遺産分割協議が成立しなければ、故人の預貯金は凍結され、引き出すことはできない」

と聞きました。

遺産分割協議が成立するまで預貯金の引き出しは全くできないのでしょうか?

[回答]

 ご相談の通り、金融機関が預貯金の名義人の死亡を知ることにより

故人の預貯金の口座の入出金は停止、凍結され、故人の預貯金は

相続の手続きが終わるまで基本的に動かすことができなくなります。

 しかし、このことにより、相続人が過大な負担を強いられたり

迅速な被相続人の債務の弁済に支障を生じたりすることがあるため

令和元年7月1日施行の改正民法で仮払い制度が創設されました。

当面の費用を必要とする各相続人への簡易迅速な払戻しのため、遺産分割が確定する前でも

他の相続人の同意を得ることなく被相続人の預貯金を引き出すことができようになりました(民法909条の2)。

 これにより各相続人は、相続預貯金のうち口座ごとに以下の計算式で求められる額については

家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から他の相続人の同意なしで払戻しを受けることができます。

ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)

からの払戻しは150万円が上限になります。

 

(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

  <計算例>
    普通預金720万円の場合、法定相続分2分の1の相続人(配偶者)への払戻額
    720万円×1/3×1/2=120万円 < 150万円
    払戻限度額 120万円

 

なお、これらの制度により払い戻された預貯金は、後日の遺産分割において
調整が図られることになります。
この制度の利用を考えられた場合は、金融機関へのご相談又は
お近くの弁護士などの専門家へご相談をお願いいたします。

 

 

2022.04.22

成年年齢引き下げによる暦年贈与の特例税率への影響

[相談]

民法改正により、令和4年(2022年)4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが

贈与税(暦年課税)の特例税率の適用については、どのような影響が生じるのでしょうか。

[回答]

令和4年(2022年)4月1日から、暦年贈与の特例税率の適用を受けられる受贈者の年齢要件が

成年年齢の引き下げに合わせて、18歳以上に改正されました。

[解説]

1. 贈与税額の基本的な計算方法

相続税法上、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については

課税価格から110万円(基礎控除額)を控除すると定められています。

また、贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を、次の表

(一般贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

2. 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例

上記1.にかかわらず、相続税法上、平成27年1月1日以後に直系尊属からの贈与により財産を取得した者の

の年中のその財産に係る贈与税の額は、基礎控除額の控除後の課税価格を次の表

(特例贈与財産用の贈与税の速算表)の上欄に掲げる金額に区分して

それぞれの金額に同表の中欄に掲げる税率を乗じて計算した金額から

下欄の控除額を控除して計算した金額となります。

上記の特例における「贈与により財産を取得した者」については年齢要件が設けられており

今般の成年年齢引き下げ前は「20歳以上」と定められていましたが

令和4年(2022年)4月1日からは「18歳以上」と改正されました。

 なお、上記の年齢の判定日は、贈与年の1月1日と定められていますので、ご留意ください。

2022.04.03

[相談]

ここのところ、雑誌等で贈与税の生前贈与分が相続時に取り込まれる

いわゆる“相続税と贈与税が一体化”されるような情報を目にするようになりました。

令和4年度の税制改正大綱が発表され、税制改正関連の法律が成立しましたが

改正項目として含まれたのでしょうか?

[回答]

 令和4年度税制改正では、具体的な改正項目はありませんでした。

ただし、今後の税制改正にあたっての基本的な考え方の中で

「相続税・贈与税のあり方」としての方向性が示されました。

[詳細]

1.政府与党が公表した令和4年度税制改正大綱
2021年12月10日付で、政府与党が令和4年度税制改正大綱を公表しました。

この中で、今後の税制改正にあたっての基本的な考え方として

以下のとおり述べています。

相続税・贈与税のあり方:
 高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに

相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており

結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

 高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば

その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。

 一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。

高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば

格差の固定化につながりかねない。

 このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ

資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。

 わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、

贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。

このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては

生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で

相当に高額な相続財産を有する層にとっては

財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら

多額の財産を移転することが可能となっている。

今後、諸外国の制度も参考にしつつ

相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から

現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど

格差の固定化防止等の観点も踏まえながら

資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて

本格的な検討を進める。

 あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置

限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して

何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について

格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

2.資産移転時期の選択に中立的な税制

 『資産移転時期の選択に中立的な税制』とは、どのような税制でしょうか。

この点については、2020年11月13日開催の第4回税制調査会内で

財務省が作成した説明資料が参考になります。

この資料の中で財務省は、「資産移転の時期の選択に中立的」とは

“資産の移転の時期(回数・金額含む)にかかわらず、納税義務者にとって

生前贈与と相続を通じた資産の総額に係る税負担が一定となることをいう”と記しています。

具体的なイメージは、下図のとおりです。

出典:内閣府HP「説明資料〔資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築等について〕

これによって、いつ贈与しても税負担は変わらない、というのが財務省の意見です。

特に暦年課税は、相続時に持ち戻されて相続税が課されるのは

死亡前3年以内の贈与分のみであって、それよりも前の暦年課税による贈与分は

持ち戻されず相続税は課税されません。この点について財務省は

資産移転の時期に中立的でないと示しています。

3.経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置

 現状、経済対策として講じられている主な贈与税の非課税措置は、以下のとおりです。

  1. 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
    [平成25年(2013年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの措置]
  2. 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
    [平成27年(2015年)4月1日から令和5年(2023年)3月31日までの措置]
  3. 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
    [平成27年(2015年)1月1日から令和5年(2023年)12月31日までの措置]

 これらの措置について、今後どういった見直しがされていくのか注視していきましょう。

 

2022.03.26

45万人が活用する贈与税の暦年課税

【1】暦年課税の申告者は45万人弱

相続対策として生前贈与を活用することがあります。

ここでは2021年6月に国税庁が発表した資料(※)から

暦年課税による贈与税の申告状況をみていきます。

 

(※)国税庁「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
 2021年(令和3年)6月に発表された資料です。

申告人員は2019年分と2020年分が翌年4月末まで

それ以前の年は翌年3月末日までに提出された申告書の計数です。

 

直近5年分の暦年課税(1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額(課税価格)から基礎控除額

(110万円)を控除した残額(基礎控除後の課税価格)について

贈与者と受贈者との続柄及び受贈者の年齢に応じて贈与税額を計算するもの)

の申告状況をまとめると、下表のとおりです。

 

2020年分の申告人員は44.6万人で前年と同程度となりました。

うち申告納税額有が35.1万人、申告納税額無が9.5万人です。

2018年分以降は申告納税額有が35万人台で推移しています。

申告納税額がある割合は78.7%で2年連続の低下となりました。

 

【2】申告納税額は2,000億円台で推移

2020年分の申告納税額は2,177億円で前年より増加し

3年連続で2,000億円を超えました。1人当たり申告納税額は62万円で申告納税額と同様

前年に比べ増加しました。

2018年分以降の申告納税額は、2017年分以前より高い水準で推移しています。

暦年課税を実行するにあたっては注意点等がございます。

また、贈与税の改正の動きにも注目が集まっています。ご留意ください。

 

 

2022.03.06

住宅取得資金の贈与 贈与者との関係

[相談]

マイホームを取得するために親族から受けた資金援助については

一定の金額まで贈与税がかからない特例があると聞いています。

私は年内にマイホームの取得を予定しており

その取得資金の一部について義父から援助を受ける予定です。

この場合、この特例は使えますか?

なお、義父と養子縁組はしていません。

[回答]

ご相談のケースにおける義父からの贈与は、マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例

「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」は適用できません。

[詳細]

1.住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例

 マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例

(住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例、以下、特例)は

様々な要件があります。そのうちの1つに贈与者と受贈者との間柄があります。


贈与者と受贈者との間柄(要件):

受贈者は、贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること
→言い換えると、
贈与者は、贈与をしたときに受贈者の直系尊属であること」

2.直系尊属、直系卑属

直系尊属(卑属)の“直系”とは、自分を中心に縦の関係にある者をいいます。

(1)直系尊属

 “尊属”は、自分を中心に上の者、つまり前の世代を指します。

よって直系尊属とは、自分からみて父・母・祖父・祖母などを指します。

(2)直系卑属

“卑属”は、自分を中心に下の者、つまり次の世代を指します。

よって直系卑属とは、自分からみて子・孫などを指します。

3.義父は直系尊属?

ご相談のケースは、“義父”からの贈与でした。

“義父”は、受贈者と養子縁組をしている場合を除き

受贈者からみて直系尊属には該当しません。

そのため特例の要件に該当せず、適用を受けることはできないことになります。

この“義父”との間の贈与については

暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率にも影響があります。

暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率は

『一般税率』と『特例税率』があり、特例税率の方が

『一般税率』に比べて税率が低い傾向にあるのが特徴ですが

“義父”との間の贈与は『一般税率』を適用することとなります。

なお、この特例を適用するための要件は、上記以外にもたくさんあります。

マイホームを取得するための資金贈与をお考えの場合には、ご留意ください。

 

 

2022.01.09

賃貸人からの解約~賃貸借契約書がない場合

[相談]

築40年の貸家を相続しました。

当初から賃借人との間で賃貸借契約書は作成されておらず、一定の賃料が支払われているだけで

契約期間も定まっていません。また、賃料と保証金以外は把握しておらず

賃貸人に賃貸借契約を解約する権利があるか否かも分かりません。

私は、貸家から離れた場所にある持家に住んでおり、今後、自ら使用する予定はなく

建物の維持管理にも手間がかかるため、この貸家を売却したいと考えています。

貸家の立地は、交通利便性や住環境がよいため、売却額が高く見込める更地として売却したいのですが

そのためには、賃借人との間で賃貸借契約を解約し退去してもらう必要があります。

賃貸借契約書を作成していない場合でも、賃貸人が契約を解除することは可能でしょうか。

[回答]

建物の賃貸借においては、原則として借地借家法が適用され

下記詳細解説にある“正当事由”に該当しないため、賃貸人からの一方的な解約手続だけでは

解約合意の意思表示をしていない賃借人の退去は難しいと思われます。

仮に賃借人の退去を希望される場合は

立退交渉等について弁護士等にご相談をされることをお勧めします。

[詳細解説]

1.賃貸借契約とは
賃貸借は、民法第601条において、「当事者の一方がある物の使用及び収益を

相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び

引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって

その効力を生ずる」と規定されています。

つまり賃貸借契約は、この賃貸借について法的効果を生じさせる行為をいいます。

2.賃貸借契約書の有無による解約
民法では、売買契約は当事者の口頭による合意だけで成立するとされており

必ずしも書面(契約書)の作成は必要ではありません(民法第555条)。

これは賃貸借契約も同様で、賃貸借契約書がなく

口頭で取決めされた内容であっても、賃貸借契約の効力は有効です。

賃貸借契約書がある場合は、通常、契約期間が定められており

賃貸人が期間内に解約することができる旨の期間内解約条項がなければ解約はできません。

他方、賃貸借契約書がなく、口頭でも賃貸借の期間の定めがない場合に

民法では、当事者はいつでも3ヶ月の予告をもって

賃貸借契約を解約できるものと定められています(民法第617条)。

3.ご相談のケースの場合
今回は、上記2.の民法に従えば、賃貸借契約書がないため

当事者はいつでも3ヶ月の予告をもって、賃貸借契約を解約できるようにみえます。

しかし、賃貸借の期間内解約に関する

上記2.の民法の規定は、借地権者や建物の賃借人を保護する目的の借地借家法が

適用される場合には、特別法である借地借家法の規定が優先的に適用されることになります。

今回の賃貸借契約の場合は、借地借家法が適用されますので

民法の期間内解約の内容が、下記の通り修正されることになります。

  1. ①賃貸人による期間内解約の申入れは、6ヶ月の予告が必要であること(借地借家法第27条)。

    なお、賃借人による期間内解約の申入れは、民法の規定に則り3ヶ月の予告で期間内解約ができます。

  2. ②建物賃貸借の解約申入れには、借地借家法第28条に定める正当事由が必要であること。

    賃貸人側の正当事由としては、「賃貸人が居住する等の建物使用の必要があること」

  3. や「建物の老朽化による大規模修繕等の必要があること」等があげられます。
    更地での売却を希望する等といった理由で、賃借人に退去を求めるという場合は
  4. ただちに借地借家法に定める正当事由が認められるとは限りませんので
  5. 財産上の給付(立退料の支払い等)をすることで
  6. 正当事由の具備が認められるか否かが論点となってきます。
  7. つまり今回のご相談のケースで賃借人の退去を希望される場合は
  8. 立退交渉等について弁護士等にご相談をされた上で慎重に進めていかれることをお勧めします
  9. なお、弁護士法第72条に抵触するため、宅建業者が立退交渉を代理することはできませんが
  10. 請求の価格(立退料)が140万円以内であれば
  11. 法務大臣の認定を受けた司法書士が立退交渉を代理することは可能です。

このように、長年保有している財産を相続した場合

後から問題となるケースは少なくありません。相続は生前からの対策が重要です。

2021.07.30

満期を過ぎた外貨建て保険と相続

[相談]

外貨建て養老保険に加入していた夫が、今年1月に満期を迎えた保険金の

請求手続きを行うことなく、4月に亡くなりました。

保険証券を確認したところ、死亡保険金の受取人は配偶者である私と長男

5割ずつ指定されています。外貨で受け取ることができる旨の記載もあるので

私も長男も外貨受け取りを希望しています。

満期が過ぎている契約ですが、死亡保険金として請求をするのでしょうか。
 また、税金はかかりますか?
 なお、相続人は、私(配偶者)、長男、次男の3人です。

  【外貨建て養老保険の契約内容】

  1. 保険種類:米ドル建て養老保険
  2. 契約期間:10年
  3. 契約者(保険料負担者):夫
  4. 被保険者:夫
  5. 満期保険金受取人:夫
  6. 死亡保険金受取人:配偶者・長男 各5割
  7. 死亡、満期保険金:200,000米ドル
  8. 全期前納保険料:175,000米ドル

[回答]

ご相談の契約は、ご主人がお亡くなりになる前に満期が到来しているため

保険会社への請求手続きは死亡保険金ではなく、未請求であった満期保険金となります。

この満期保険金は、ご主人の所得として所得税の課税対象となる他、ご主人の相続財産に加算します。

また、所得税が課税されることにより納付すべき所得税が発生した場合は

相続税の計算上、ご主人の債務として遺産総額から控除できます。

なお、申告上、外貨建ての財産は円建てに換算する必要があります。

換算する際の為替レートは決められており

各々適用される為替レートは詳細解説にてご確認ください。

 

1.死後に行う満期保険金の請求手続き

保険金の請求手続きが被保険者の死亡後であっても

被保険者が死亡する前に満期を迎えていれば、死亡保険金としては扱われず

満期保険金としての請求手続きとなります。

この満期保険金の課税の取扱いは、以下のとおりです。

(1)所得税
ご相談の満期保険金は、満期が到来した年分のご主人の一時所得として

所得税の課税対象となります。実務上は、ご主人に代わり相続人が準確定申告を行い

納付すべき所得税が生じた場合には納付することとなります。

(2)相続税
相続税の計算上、ご相談の満期保険金は、相続人共有の財産(未収入金)として

相続財産に加算します。死亡保険金ではないため、保険金の非課税制度

(500万円×法定相続人の数)を適用することはできません。

また、(1)により所得税を納付することとなった場合には

その所得税は相続税の計算上、債務として遺産総額から控除できます。

 

2.外貨で受け取るときの為替レート

外貨建て保険を外貨で受け取る場合、税金を計算する上では

円換算する必要があります。この際に適用される為替レートは、次のとおりです。

【所得税の評価】

  1. 全期前納保険料:原則として払込日(保険会社受領日)のTTM(※)
  2. 満期保険金:原則として支払事由発生日(満期日)のTTM(※)

【相続税の評価】

  1. 未請求であった満期保険金相当額:原則として支払事由発生日(死亡日)のTTB(※)
  1. (※)TTS…対顧客直物電信売相場、TTB…対顧客直物電信買相場、TTM…TTSとTTMの仲値

請求すべき手続きの放置期間が長くなるほど

証拠書類が探し出せずに手続きが煩雑になりがちです。

他に手続きが放置されているものがないか、確認をしましょう。

 

 

 

2021.07.09

事業用資産の買換特例(面積制限5倍)

事例

甲市の自社ビル(土地40㎡と建物)を売却して、乙市で土地を800㎡取得しました

800㎡の土地の内訳は

X氏から取得した600㎡(10万円/㎡)

Y氏から取得した200㎡(20万円/㎡)

です。この場合、買換特例の適用対象となる土地とその価額はいくらですか

結論

X氏から取得した土地のうち150㎡(1500万円)

Y氏から取得した土地50㎡(1000万円)が買換資産となります

解説

買換え特例の適用に当たって、買換えにより取得した土地の面積が

譲渡した土地の面積の5倍を超える場合には、5倍を超える面積については

適用対象外となります

また、買換資産に該当する土地等を2以上取得してその合計面積が

制限面積を超える場合には以下の通りとなる

 

甲市の土地・・・40㎡

X氏から取得した土地・・・600㎡×10万円=6000万円・・・A

Y氏から取得した土地・・・200㎡×20万円=4000万円・・・B

以上のような場合の買換資産の取得価額の合計金額は

(A+B)×40㎡×5倍/(X氏600㎡+Y氏200㎡)=2500万円

その場合、X氏から取得した土地のうち特例適用対象は

40㎡×5倍×X氏600㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=150㎡

150㎡×10万円=1500万円

さらに、Y氏から取得した土地のうち特例適用対象は

40㎡×5倍×Y氏200㎡/X氏600㎡+Y氏200㎡=50㎡

50㎡×20万円=1000万円

2021.07.02

事業用資産の買換特例の手続き(翌年買換えと先行取得)

質問

特定の事業用資産の買換えの特例を受ける場合の手続きについて教えてください

回答

・所得税確定申告書の「特例適用条文」欄に「措置法第37条」と記入する

・確定申告書に次の書類を添付する

  •  ①譲渡所得計算明細書
  •  ②登記事項証明書など買換資産の取得を証する書類
  •  ③譲渡資産や買換資産が特定の地域内にある旨等の市町村等の証明書

(この証明書は必要が無い場合もある)

翌年買換の場合

資産を譲渡した譲渡した日の属する年の翌年中に買換資産を取得する見込みであり

かつ、 その取得の日から1年以内に事業の用に供する見込みの場合は

確定申告書に買換え予定資産の取得価額の見積額等を記載した書類を添付しなければならない

なお、このような場合は、上記②の書類は買換資産の取得後4カ月以内に提出しなければならない

先行取得の場合

譲渡した年の前年以前に取得した資産を買換資産としてこの特例の適用を受けるためには

取得した年の翌年3月15日までに『先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書』

を提出しなければりません

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