誤りやすい事例/遺留分侵害額請求の訴訟が提起されている場合の特例の適用
税務処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した
「資産課税関係 誤りやすい事例 相続税関係 令和4年分用」より
ピックアップしてご紹介します。
今回は、小規模宅地等の課税価格の特例についてです。
誤った取扱い
令和4年3月に死亡した父は
相続財産をすべて長男に相続させる旨の公正証書遺言を作成していたが
他の相続人から、遺留分侵害額請求の訴訟が提起された。
そのため、小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択についての
同意が得られないとして、同特例を適用せず期限内申告書を提出した。
正しい取扱い
他の相続人から遺留分侵害額請求の訴訟が提起されていたとしても
長男は、遺言により不動産も含め相続財産のすべてを取得しているのであり
小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択について他の相続人の同意を要しないから
同特例を適用して申告することができる(措令40の2⑤、相基通⑪の2-4)。
なお、相続税の申告期限後に
長男が他の相続人に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなり
長男がこれに代えて小規模宅地等の特例の適用を受けた宅地
(以下「特例宅地」という)の所有権を他の相続人に移転させたとしても
当該所有権の移転は、遺留分侵害額に相当する金銭を支払うための譲渡
(代物弁済)と考えられ、長男が遺贈により特例宅地を取得した事実に異動は生じないことから
長男が小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなるということはない。
また、長男から特例宅地の所有権の移転を受けた他の相続人については
上記のとおり、相続又は遺贈により取得したものとはいえないため
特例の適用を受けることはできない。
よって、長男は原則として、遺留分侵害額に相当する価額により
特例宅地を譲渡したとして、所得税が課税される(所法33-1の6)。