預金の相続手続きと遺産の未分割申告
[相談]
被相続人は父親、相続人は長男と長女の2名です。
相続財産は預貯金と土地(宅地)です。
相続開始後、長女の承諾のもと、長男は預貯金のすべてについて
相続による名義替えを行い、自身の口座に入金しました。
現在、相続財産目録を作成して分割協議の途中ですが
納税額が多額になること、今後の土地の管理(売却等)について考えがまとまら
未分割のままで相続税の申告を行うことを検討しています。
この場合、既に長男の口座に入金した預貯金について
「代償金の振替額が未定の預り金」として未分割財産として取り扱うことはできますか。
[回答]
金融機関が被相続人口座からの預貯金の払戻し手続きに際し
どのようなケースで認めるのかやどのような書類を要求するのかは
各金融機関で異なります。
ご相談のケースでは、金融機関は、遺産分割協議はまだ済んではないものの
特定の相続人が他の相続人全員の委任を受けて払戻すことを許容しており
その結果、遺産分割協議は未了だが、他の相続人全員からの委任を受けた
払戻であることが確認できたことから、長男口座にすべて入金されている
という状態となっているのではないかと推測されます。
(少額の預金であれば、例外的に相続人の代表者だけの手続きで
処理できることがありますが、相応の金額の場合、相続人全員の署名押印
(印鑑証明)は必要と思います。)
この場合、長男口座への入金は、あくまで相続人全員の共有財産としての
預貯金の管理としての意味しかなく、法律上預り金にすぎないため
その後に遺産分割協議をして、預貯金について誰が相続するか
決めることが予定されていると考えられます。
したがって、長男口座に入金されている被相続人の預貯金を
未分割の遺産として扱うことは可能であり
遺産分割は未了として相続税申告を行うということで問題ないと思われます。
なお、相続人が上記の意図で払戻(長男口座で管理)を選択したのであれば
特に残すべき書類もないと思いますが、この点が明確でないのであれば
被相続人名義の口座を解約して払い戻した金額は、未分割の遺産として
長男名義の口座で管理する、という覚書のようなものを相続人で残しておいた方が良いかもしれません。
(この書面が調印できるのであれば、そもそも未分割という認識があるので
問題になることもないと思いますが。)