贈与税における誤りやすい事例/養子縁組の日と、孫の相続時精算課税の適用可否
贈与税の処理における誤りやすい項目について、大阪国税局が作成した
「資産課税関係 誤りやすい事例 贈与税関係 令和3年分用」より
ピックアップしてご紹介します。今回は、相続時精算課税についてです。
誤った取扱い
平成10年に長男が生まれ、翌年の平成11年に私は伯父と養子縁組をした。
その後、平成12年に二男が生まれた。
令和3年に長男及び二男は伯父からそれぞれ1,000万円ずつ現金の贈与を受け
それぞれ相続時精算課税を選択して贈与税の申告をした。
正しい取扱い
相続時精算課税の適用に当たっては
受贈者は、贈与をした者の直系卑属である推定相続人又は孫である必要がある (相法21の9①、措法70の2の6①)。 また、養子縁組により親族関係が生ずるのは、養子縁組の日からである(民法727)。 したがって、養子縁組前に生まれた長男については 伯父と当然に直系卑属関係になるわけではなく また、孫にも当たらないため、相続時精算課税の適用を受けることはできない。 なお、二男については、養子縁組後に生まれているため 伯父の孫に当たり、この特例の適用を受けることができる。 |
遺言書のススメ
[相談]
私は先日夫を亡くしました。私には子がおらず、父母・祖父母はすでに他界しており
兄弟姉妹・甥姪もいないため、身寄りがありません。
私が亡くなったら、面倒を見てくれている亡夫の姪に財産を渡したいと思っていますが
どうすれば良いでしょうか。
[回答]
亡ご主人の姪御さんはあなたの法定相続人ではありません。
あなたには法定相続人がいないため、遺言書がない限りあなたの遺産は原則国庫に帰属します。
姪御さんにお世話になっていたり、今後お世話になったりなどの事情から
あなたが亡くなったあとに残った財産を姪御さんに渡したいときは
遺言書を作成されることを強くお勧めします。
[詳細解説]
法定相続人がいない(相続人不存在)場合、相続開始時から相続財産は法人となり
家庭裁判所によって選任された相続財産管理人が相続財産を管理し
相続人を捜索し、相続財産を精算する手続きを行うことになります。
あなたが亡くなったあと遺言がない場合でも、上記の一連の手続きで
姪御さんが療養看護に努めたことなどを以って、特別縁故者として相続財産の分与を家庭裁判所に請求し
認められれば相続財産の全部または一部を姪御さんが受け取ることができます。
ただし、姪御さんが確実に財産を受け取れる方法ではありません。
また、家庭裁判所の手続きが煩雑であり、時間もかかります。
姪御さんに遺贈する旨の遺言書を作っておくことが確実です。
遺言は、作成の方式を満たし、遺言の要旨が明らかであれば自筆証書であっても
公正証書であっても効力は同じですが、自筆証書による遺言は
法務局で遺言書の保管をしない限り家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。
一方、公正証書による遺言は、検認の手続きが不要であることと
公証人が遺言者本人の遺言意思を確認して作ってくれることから遺言の要旨も明らかであるため
紛争が生じる恐れも少なくなります。
したがって、遺言をされる場合は、公正証書で作成されることをお勧めします。
その他ご参考までに、近年高齢の方たちが相続人になるケースで散見される相続の課題として
推定相続人に行方不明者や認知症の方がいる場合があります。
遺産分割協議は、全員が参加し、相続人のうち誰が
何を、どれだけ相続するかを話し合わなければ成立しません。
当事者の行方が分からない場合であっても、認知症で相続の意思を表明できない場合であっても
そのような相続人を含め、全員が参加する必要があります。
行方が分からない相続人がいるときは相続財産管理人に
認知症などで判断能力の不十分な相続人がいるときは
後見制度を利用し後見人にそれぞれ相続人の代理人になってもらい
遺産分割協議に参加してもらうことになります。
これらの制度は状況や事情によっては使えず、遺産分割が進められないこともあります。
このような相続関係が予想されるときは
遺言を作成して遺産分割協議の余地をなくすことが必要です。