<事例>
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から
最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。
この制度の詳細については、下記URLの国税庁HPの解説でご確認ください
http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
この制度の適用は、マイホームの土地と建物の所有者が一人の場合には簡単に
判断できるのですが、マイホームの土地と建物の所有者が異なる場合の適用に
当たっては慎重な判断が必要となります。
今回は、中小企業等(個人事業を含む)でよくあるパターンでこの制度の適用
について概略を説明いたします。たとえば、次のような事例です
AとBは夫婦で、Cはその長男です。土地XはA・B・Cがそれぞれ1/3づつ所有して
います。 土地Xの上に建つ3階建ての建物は1階がAが営む事業の事務所として
利用しています。2階はAとBの居住スペースです。Bは専業主婦です。
3階は、長男Cの家族の居住スペースです。
この建物の所有権も土地と同様にA・B・Cそれぞれ1/3づつです。
また、AとBは生計が一ですが、AとCは生計が一ではありません。
このような場合に、土地Xと建物を売却した際の譲渡益が土地Xについて
A,B,Cそれぞれ2000万円づつ、建物についてはA,B,Cそれぞれ200万円づつ
発生したとします。 この場合の3000万円特別控除は、どのように適用されますか。
<解説>
今回は複雑な事例なので結論から申し上げますと
妻Bは、2000万円+200万円
夫Aは、800万円
長男Cは、2000万円+200万円 となります。
長男Cについては、A,Bと生計が別であるため土地と建物の譲渡益全体の2200万円について
3000万円控除を適用できることになります
夫婦であるABについて若干問題となります。
まず、BはCと同様に土地と建物の譲渡益2200万円について3000万円控除を適用できます
しかし、特別控除が800万円控除不足となります。
この控除不足は、一定の条件を満たす場合に夫Aからも控除できます。
その条件が、租税特別措置法通達35-4で明記されていますので下記で引用いたします
『居住用家屋の所有者以外の者がその家屋の敷地の用に供されている土地等の全部又は
一部を有している場合において、その家屋の譲渡に係る長期譲渡所得の金額又は短期譲渡
所得の金額(以下この項において「長期譲渡所得の金額等」という。)が措置法第35条第1項
の3,000万円の特別控除額に満たないときは、その満たない金額は、次に掲げる要件の全てに
該当する場合に限り、その家屋の所有者以外の者が有するその土地等の譲渡に係る長期譲渡所得
の金額等の範囲内において、当該長期譲渡所得の金額等から控除できるものとする。
(1)その家屋とともにその敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。
(2)その家屋の所有者とその土地等の所有者とが親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
(3)その土地等の所有者は、その家屋の所有者とともにその家屋を居住の用に供していること。
今回のABは、上記のすべての条件を満たしていますのでAからも800万円の控除を適用できます。
土地と建物の所有関係が複雑な居住用財産の譲渡に当たっては、ご注意ください
この記事以外にも、下記URLのマイベストプロ神戸に私のコラムの
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